Sun.

花を巡りて・・・ 2  

 一行は、ヴィアーシーの研究所で彼の代わりに助手、レミラを加えてレピア村へと向かっていた。
 レミラは、先程からジーニと医術研究所に志望した理由について話している。

「医術研究はまだ新しい部類の学問で、人々には比較的馴染みのない物では・・・?」
「ええ・・・・・・でも、新薬の調合とかってけっこう楽しいですよ?それに結果が出れば、本当に多くの人を救えると思っていますし・・・根本的な所は変わりませんよ」

 ふーん・・・と感心したように相槌を打つアレクに手を引かれつつ、ミナスは珍しく仏頂面のままだった。
 ひょこ、とジーニがその顔を覗き込む。

「やけにおとなしいわね、ミナス。まださっきのことを気にしているのかしら?」
「・・・・・・別に」
「・・・どうかしたんですか?」

 戸惑っているレミラに狼の隠れ家でのやり取りを伝えると、彼女は深々と頭を下げて謝った。

「いや、別にあなたが悪いわけじゃないんです」

 慌ててアウロラがフォローを入れ、ふうっと息をついたギルがミナスの頭を撫でて言う。

「・・・本当に冒険者を信用していないなら、そもそもこんな依頼自体出さないぜ」
「・・・・・・」

 ミナスもその理屈は分かるのだが、感情が納得しないのだ。

「お前が彼の話に納得がいかないのは分かる。でも、彼の言い方はともかく、話は正論だ」
「うー・・・」
「スタンスが違うだけで、志自体は医者・・・それに俺たちと変わらない。もちろんレミラも・・・な」
「・・・分かってるよ」

 そこでレミラが「あの・・・」と口を挟んだ。

「先生、根っからの研究者っていう所があるし、自分の信念は絶対に曲げない人だから・・・・・・。でも、医術に関しては本当に誠実な人なんです」

 それだけはと続けようとしたレミラのセリフを最後まで言わせず、ミナスは「分かってる」とだけぶっきらぼうに言って、アレクの手を引いたまま歩調を速めた。
 ミナスは一人で冒険に出た経験もある。精一杯、目の前の人を助けてきたつもりだし、多数のために少数が犠牲になることを認めたくなかった。それは、あの日聖北教会から見放された女たちの悲しみを知り、そのために強くあろうと決心した自分を、否定することだから。
 ・・・結局、その日は何事もなく、目標の地点までゆうに着くことが出来たのだが、翌日の昼前に・・・。

「・・・前の依頼の時みたいに、ウィードが群生してたり、物騒な罠が仕掛けられたりしてなきゃいいがな・・・」

 エディンが前に商人を護衛した時のことを呟きながら辺りを調査する。
 少し歩き始めた頃・・・。
 「ん?」と呟いたジーニがふと足を止める。

「どうかしたか?」
「いえ・・・・・・何か、妙じゃない?」
「・・・・・・さあ?」
「うまく言えないんだけど・・・妙な違和感がね・・・」

 彼女に返事をしていたエディンやアレクが、そう促されて辺りを警戒するものの、特におかしなものは見つからない。
 一行は用心しつつ再び歩き始めた。
 少し経つと、白い柵と森の続く小道に出たのだが、そこで案内役であるレミラが首を捻る。

「・・・どうかしたか、レミラさん?」
「いえ・・・この風景。なぜか見覚えが無いような・・・」

ScreenShot_20130116_110906562.png

 彼女の言うには、いつもこの道を通ってリューンとレピアを往復していると言う。
 道を間違えたわけでもないらしいので、エディンが示す立て札のせいではないかと皆で覗き込んでみた。物騒なことが書いてある。

「命が惜しいもの、立ち入るべからず・・・・・・」
「・・・この街道を通るな、ってこと?」

 顔を見合わせた大人コンビが不審な様子で言葉を交わした。盗賊の視点で確認したところ、この立て札はごく最近にできたもの・・・どうも、レピアへ向かう道に最近何か異変があったとしか思えない。
 レミラさんに全力で守ると約束し、一行は一抹の不安を抱えながらも先へ入ることにした。

「・・・待った」

 しばらくするとエディンが仲間を手で制し、前方を見据えた。
 ゴブリンの小集団が、粗末な武器を手に歩いている。その集団はすぐに木々の向こう側へ消えていったのだが、「一戦交えることになるかもしれないな」というギルの言葉に皆がそれぞれの得物を握り直した。
 しかし、その心配はどうも杞憂だったらしく、陽に暖められた風に顔を撫でられつつ、一行は森を歩んでいく。

2013/01/20 16:44 [edit]

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