Sat.

深き闇への洞窟 4  

 続いて”金狼の牙”たちが立ち入ったのは、真四角の部屋だった。奥の壁に並んだスイッチをエディンがいち早く見つける。

「ジーニ、それ見てくれ」
「ん?・・・ああ、また古代文字ね」

 スイッチの右手に鎮座している石碑の文字を、ジーニが中腰になって覗き込み解読する。

「『道を開くには全てのスイッチを押せ。スイッチは押したスイッチに隣接するスイッチ全てを反転させる』」
「うえええ、パズルか・・・・・・」

ScreenShot_20130113_230440515.png

 ギルが解読されていく石碑の指示に頭を抱えた。
 猪突猛進で楽観的な彼は、決して頭は悪くない・・・というか勘がいいのに、こういうのは苦手にしているらしい。

「『また、一定の回数スイッチを押すたびに矢が飛んでくるであろう』・・・ありゃー、不正解でダメージ食らうって?」
「そいつはたまらんな」

 エディンが嘆息した。丈夫なギルやアレクならともかく、ジーニやミナスに刺さっては困る。
 壁に並んだ二つのスイッチを眺め、アウロラが人差し指を伸ばした。

「おいおい、分かるのかよ?」
「パズルなら得意ですよ。まずはここをこうして・・・」

 一度だけ、アウロラに飛んできた矢をアレクが盾となって受け止めた場面はあったものの、あとはすいすいと迷いも無く彼女の指がスイッチを押し、何かが動く音がした。
 見ると、今まで天井に隠されていたらしい階段が現われている。
 今までの階段と違って仕掛けを施されている、ということは他の階段とは何かが違うはずだとエディンが気づき、一人で少し先行することにした。
 その間に、アウロラは新しく覚えた法術【活力の法】を庇ってくれたアレクに施している。

「便利な技だな。毒霧の部屋じゃ【血清の法】のように解毒をしてくれたろう?」
「はい。同時に生命エネルギーを与え体力を回復させる術でもあります。迷いましたが、学んでおいて良かったですね」
「おい、ちょっと来てくれ」

 先に上の階を調査してきたエディンが、階段を半ばまで降りてきて言った。

「どうした?」
「敵はいない。その代わり、おそらく昔、人が住んでいたと思われる形跡がある」

 その言葉に生気を取り戻したのはジーニだった。

「魔術師の私室!?となれば、日記とかがあるのが常道よね!」
「あんたホントに凄いよたまに・・・」
「誉め言葉と受け取っておくわ、エディ」

 エディンががっくりと頭を下げた。降参、のしるしだ。
 ・・・・・・全員が一番奥の部屋に移動すると、ジーニはたちまち部屋で一番目に付く本棚へと駆け寄った。

「かなり傷んでるものが多いわね・・・」

 ぶつぶつと文句をつけながらも、マニキュアを塗った指が三回、たくさん並んでいる背表紙の途中で止まる。

「これとこれ。あと、こっちの日記。それ以外は駄目ね。虫が喰ってるから読めないわよ」
「日記じゃないのはなんだ?」
「技能書。多分、背表紙からすると天候に関わる魔術と、強力な結界の生成法だと思うけど、詳しく読むまでは確かなことは言えないわね。ギルバート、何から読む?」
「・・・・・・日記。技能書に何か仕込んでたら困るから」
「はいはいっと」

 ジーニが古代の日記を開くと、そこもまた石碑のような古代文字が並んでいたが、慣れたもので彼女は淀みなく朗読を始めた。

ScreenShot_20130113_233448718.png

「『この部屋まで到達できた人がいるかどうかは分からない、また、言語が違うかもしれないが私はこの日記に私の願いを残しておこう』か。個人で研究を続けていた人っぽいわねー。『私には金銀財宝等は無い』とかきっぱり書いてあるわよ」
「えー」

 ミナスががっくりと項垂れた。宝探しの冒険は、この年頃の少年にはひどく刺激的なのだ。目的の宝が無いというのは寂しすぎる。
 そんな少年を慰めるように、ジーニが微笑した。

「膨れなさんな。続きに、『だが私の研究の成果を持ち帰ってもよい』ってあるわよ」
「研究の成果?」
「そう。『死者には必要の無いものだ。だが、ここの存在は誰にも言わないでほしい。私は静かにここで眠りたい』・・・こう書かれているわ」
「・・・・・・となると、技能書には罠を張ってるとは思いにくいな」
「日記の中身見てると、淡白な性格の人っぽいわね。突破してきたなら、ご褒美くらいはあげないと悪いかってニュアンスにも読み取れるから、そっち持ち帰っても怒られはしないんじゃない?・・・・・・眠りを脅かさない限り」
「死者の眠りを無用に妨げる権利は、我々にはありませんよ」

 おどけるようなジーニの口調に、あくまで真面目にアウロラが応じる。
 アウロラの意見に、ギルは首を縦に振った。

「そうだな。依頼人には悪いが、ただの洞窟だった・・・・・・と報告することにしよう」
「嘘も方便、か」
「依頼人の好奇心を満足させた上で、ここの元の主の意見も尊重すると言ってくれ」

 幼馴染のツッコミにギルは笑って背中を叩いた。
 こうして、洞窟を脱出した”金狼の牙”たちは依頼主に「ただ危険が多いだけの洞窟だった」と嘘の報告をし、狼の隠れ家へと帰っていった。

※報酬500sp、【絶対の防壁】【嵐の創造】入手※

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■後書きまたは言い訳
25回目のお仕事は、ラッキーさんのシナリオで深き闇への洞窟です。こういう、広さはなくても仕掛けが満載で頭を捻るというショートダンジョンは、非常に私の好みだったりします。
しかもこのシナリオ、役に立つ呪文が二つも手に入ります。今回、残念ながら【嵐の創造】は売り払ってしまったのですが、いつもはスタメンでお世話になってます。相手の回避下げてくれる全体攻撃呪文の汎用性って、どうしてあんなに高いのでしょう・・・。
あ。もう一つの【絶対の防壁】は、4ラウンドだけですが防御力・抵抗力の最大値上昇と、魔法無効化状態になる呪文です。単体ですが、それが逆に便利に使える事も・・・。

さて、次回はとあるシナリオの続編となります。
どっちの選択肢を取っても後悔しない、そんな冒険者に私はなりたい。(何)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/01/19 14:06 [edit]

category: 深き闇への洞窟

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