Sat.

深き闇への洞窟 2  

 5階では3階のように真っ暗になった。

「また?」

 アレクがややうんざりしたように言うが、調査を行っているエディンはそれどころではなかった。

「油のにおいはない。が、何か・・・変だぞ」

 その言葉を聞いて、たちまちルーンマスター(魔法を扱う者)たちが小声でそれぞれの詠唱を始める。
 手の空いていたギルが、ミナスが持っているのとは別の明かりを用意すると・・・。

「!?」

 なにやら妙な虫たちが群れをなして迫ってきているのを見て、ミナスがぎょっと立ちすくんだ。
 蜘蛛のようだが足は6本しかなく、その身体はアリなどの昆虫と違ってくびれというものが見当たらない。ジーニが下の階で蹴飛ばした小石のような質感を備えていた。

「なにこれ!?気持ち悪いっ」
「我慢してミナス。こいつら・・・岩石虫だわ」
「岩石虫~?なんだよそれ!」

 こちらに襲ってくる個体を斧でさばきながらギルが叫ぶ。

ScreenShot_20130113_213008359.png

「こういう、真っ暗な洞窟の奥に生息する虫よ。光に反応すると興奮して襲ってくるの・・・素早いし硬いし、火も氷も意味がない厄介な虫だわね」
「げっ」

 ジーニの台詞を聞いてエディンが細剣に溜めていた冷気を収める。
 彼が使う【花散里】は、本来は扇で空気中の水分を花弁に似せた鋭利な氷に結晶化して舞わせる技だが、彼は細剣の刀身に結晶化した氷を集めて敵へ振るう。しかし、相手が氷による凍傷がないとなれば、あまり有効な攻撃とは思えない。

「能力としては、【闇に隠れる】を使うくらいしかしないんだけど・・・」
「それは武器攻撃がスカになるってことか!?」

 あわてたギルが言う。彼には魔法攻撃の手段がない。

「しばらく戦ってりゃ、何匹かは向こうから逃げてくれるとは思う」
「逆に言えば、しばらくは戦わないと駄目ってことです?」
「土壇場のアンタの冷静さには頭が下がるわよ、アウロラ・・・」
「・・・仕方ない、やるか。【召雷弾】!」

 アレクの右手の人差し指に集まった稲妻が、真っ直ぐ虫に突き刺さる。
 ジーニとミナスの召喚した魔法も猛威を奮い、最後の一匹がジーニを護る【旋風の護り】に吹き飛ばされると、一行はやれやれと階段を上がることにした。幸い、怪我をした者はいない。

「ん・・・・・・?ちょっとギルバート、ここの部屋人工物よ?」
「えっ?」

 ジーニの指し示す壁を見ると、確かにあからさまに人工的に作られたものになっている。
 どうやら今までのような自然に出来た場所ではないようだ。
 アレクが一歩進み、辺りを興味津々に見渡す。
 部屋の中央には泉のようなものがあった。水は澄んでいて、何かが泳いでいる様子はない。

ScreenShot_20130113_214458750.png

「ここは一体・・・洞窟ではなかったというのか。ならばここは何だ」
「さあてねえ。下の階を見る限りは妙なモンスターのいる洞窟だと思ってたけど・・・」

 ジーニが入り口の近くにある何かの石碑に近づいた。

「そういうことね。書いてあることが分かったわ」
「もう解読できたの?」
「もちろんよ。あたしは鑑定人だからね・・・『ここより先は魔術の創造に生涯を費やした魔術師の墓である。我は静かに眠ることを望む。これより先の通行は禁ずる。なお、我が墓には金銀財宝等は存在せず。』だって。こう書かれているわ」

 一行は互いに顔を見合わせた。この石碑の言うことが本当なら、これ以上進んでも得るものはまったく無いといっていい。だが・・・。
 まずアウロラが口火を切った。

「これ以上進む場合、魔術師の墓だと言うのであれば、今まで以上に危険な罠が待ち受けていると予想できます」
「ただなあ。この石碑が全部本当のこと言ってるとはかぎらねえ」
「そうねー。何も無いなら、何でこんなもの作ったって話だし」

 大人コンビがアウロラらしい慎重論に水をさす。この二人は、他人の言を鵜呑みにする危険性を十分以上に心得ている。
 ギルはミナスを見やり、彼の意見を促した。

「・・・・・・こんな中途半端なとこで終わりにするのは、ちょっと面白くないよね」
「お前さん、冒険者らしくなったな。・・・アレクはどう思う?」
「ミナスに賛成だ。第一・・・」
「第一?」
「『らしく』と言うのであれば、お前らしくならどうなる?」 

 幼馴染の示唆に思い当たったらしく、ギルはにやりと小さく笑う。

「撤退は最後の手段だな。退路はまだある。泉の向こうには階段が続いてるし、墓であることを確認してから帰るのでも遅くはない」

 リーダーの決定に各々が頷き、泉をどうやって渡るかと話し合うことになった。

2013/01/19 13:41 [edit]

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