Wed.

葡萄酒運びの護衛 4  

2日目から御者がエレンに変わった。
街道を外れるとあまりのでこぼこ道に、慎重に馬車を操る必要があったので、村で一番の腕前だと自負する彼女が、手綱をギルから取ったのだった。
馬車はその後、順調に進み、その晩は山のふもとで野宿となった。

3日目、冒険者たちは山に入った。
その途端、エレンが急にそわそわし始めた。
怯えた表情で何度も周囲を見回している。

そういえば、この山は山賊が出ると宿の亭主が言っていた。

ギルがさり気なくエレンの隣に移動し、いつでも得物を抜けるように体勢を整える。
アウロラが護身用のナイフを、ミナスがポケットの中の礫を軽く握った。
ジーニがじっとエレンを見つめる中、アレクとエディンは周囲の様子をじっと探っていた。

「心配するな」

と、ギルが柄に手を乗せたままエレンに言った。

「え?」
「山賊が出るんでしょう?警戒は私たちに任せて、エレンさんは運転に専念してくださいな」
「あ、そうですよね・・・・・・。ごめんなさい、私ったらつい・・・・・・」

ギルが軽くエレンの方を叩いた。力を入れすぎていては、馬にその緊張が伝わってしまう。
その仕草をどうとったのか、エレンは、

「何だか怖いです・・・・・・。でもこの山を越えないと、村には帰れない・・・・・・」

と、心なしか青白い顔で呟いた。
それまで、山賊や野生動物が襲ってくる気配を探っていたエディンとアレクが口を開いた。

「恐らく戦闘になるぜ。覚悟を決めて進むしかないな」
「人数までは、はっきり掴めないが・・・これは待ち伏せてるな」
「ミナス」

ギルが呼ぶと、ミナスは初の冒険で得た呪文を唱え始めた。【蛙の迷彩】だ。
これは、魔法の結界で、周囲の風景と味方全員を同化させる効果があり、敵の攻撃を一時的に回避しやすくなる。
ミナスの気力は随分と奪われたが、その結界は心強い。
一行は馬車を進めるよう、エレンに進言した。

「ねえ、1つ気になっていたことがあるんだけど・・・・・・」

それまでエレンを見つめて黙っていたジーニが、口を開く。

「何だ?」
「この山には山賊が出るんでしょ?エレンさんは来た時もこの道を通ったの?」
「・・・・・・そ、そうですけど・・・・・・」
「何が言いたいのですか?」
「アレクもアウロラもさあ、思わない?不自然じゃない?エレンさんは1人で宿にいた」

エレンの顔色がドンドン悪くなっていくのを見ながら、なおもジーニは続けた。

「行きがけの護衛はどうしたの?」
「・・・・・・」
「言われてみれば・・・・・・そうだな。他の村人と一緒に来たのなら、その人がいないのはおかしい・・・・・・」

エディンの台詞に、アウロラがはっと気付いたように言った。

「それに、護衛がいたのなら帰りだけ私達に頼む必要もないですしね」
「そ、それは・・・・・・」

その時、木の上から矢の雨が降ってきた。
得物を持った者達全員で、それを弾いた後、だみ声が上がった。

「へへへっ・・・・・・。やるじゃねえか」
「今度はプロの冒険者を雇ったみてえだな」
「『今度は』?」

山賊たちの言葉に、ミナスは首を傾げた。
山賊は、ニヤニヤとした薄ら笑いを浮かべたまま、エレンを行きがけに襲い、彼女をかばった連れの若者を、エレンが置いて逃げたことを告げた。

「私は最低の女です・・・・・・」

そう言って嘆く依頼人の姿に、山賊へたいして憤った冒険者たちは得物を向けた。
たちまち始まる剣戟だったが、ミナスの唱えた魔法効果がよく効いている。
山賊のショートソードが、山の景色に溶け込んだ冒険者たちの姿を、なかなか捉えることができないでいる。

そして、冒険者側はギル一人が負傷する程度で、山賊のリーダーを仕留めることができた。
ギルやエディン、アレクが少しずつかすり傷を負わせ、山賊のリーダーが避けきったと油断した所を、アウロラのナイフが急所を抉ったのだ。

ScreenShot_20120719_151832406.png

リーダーを失った山賊たちは、冒険者たちの目論見どおり、一斉に逃げ出した。
恐らく、もうこの山に戻って来ることはないだろう・・・・・・。

2012/07/25 21:15 [edit]

category: 葡萄酒運びの護衛

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