Wed.

奇塊 1  

 エディンが手に取った依頼書には、こうあった。

”リューンの国営施設で事件が発生。本役所では、これを解決してくれる生存術に長けた冒険者を募集しています。我こそはと思う方は下記の所までご連絡ください。”

 最後はリューン清掃局調査班、ダスキン・モップと綴られている。

「親父さん、この貼り紙・・・」

と呼びかけた時。

ScreenShot_20130108_085234718.png

「ビンゴ!はいはい!それ僕ですっ!」
「はぁ?」

 カウンターに座っていた若い男が突然、話に割り込んできた。ひょろりとした身体つきの見るからに頼りない青年だ・・・。

「いやぁ、今日はついてるなぁ。貼り紙出した途端に大当たりだ」
「ちょっと待て、どなたさん?」
「あ、ごめん、自己紹介が遅れたね。僕はダスキン・モップ、リューンの清掃局の者です」
「なるほど、この依頼書を出した本人か」

 エディンと青年が話しているのを見つけた仲間たちが、手にパンや杯を持ったまま近づいてくる。
 それに目を留めた依頼者の青年は、ここぞとばかりにまた舌を回転させ始めた。

「いやぁ、それにしても冒険者って職業はいいねぇ。自由で気まま、うらやましい限りだ。お給金、どのくらい貰ってるの?」
「いいから早く仕事の話を聞かせてくれ」

 エディンはさほど短気ではないはずなのだが、ダスキンの長広舌にはさすがに辟易したらしく先を促した。

「おっと、そうだった。いやぁ、いつもこんな調子なんだ、僕って奴は」

 ははははは・・・と笑いを収めて、彼は再び口を開いた。

「実はちょっと汚い話なんだけどね。君たちに頼みたいのは下水道の大掃除なんだ」
「下水道の掃除ぃ~!?」

 素っ頓狂な声を上げたアレクのみならず、全員があからさまに顔をしかめる。

「そんなに嫌な顔されると困るんだけど・・・でも、汚い分、給金ははずもう。1200spでどうかな?」
「う!結構高いわね・・・」
「・・・僕の精霊魔法に、こないだちょっとお金かけちゃったよね・・・」←写術都市スカラで【黄金色の風】購入
「ま、あれはあれで必要経費だからいいんだがな」

 ギルはうーんと腕組みをした。あまり歓迎はしたくない依頼だが、1200枚の銀貨は魅力的である。
 しばらく話し合っていたものの、結局受けようという話になった。

「そうこなくちゃね。それじゃあ、早速行きましょうか」

 彼らはリューン市内へと歩き始めた。

「あぁ、そうそう・・・。仕事上、必要な話をしておこう」

 歩きながらでいいから聞いておいてくれと言われ、”金狼の牙”たちは耳を傾ける。
 青年の話はこうだ。

 リューンは西方諸国中、他に例を見ない下水施設の完備された街・・・街の地下には下水道が縦横無尽に走り、その複雑さと広さは迷宮と呼ぶに相応しい。
 あまりにも複雑すぎるので、未だに正確な地図もできていないくらいである。
 清掃局局員も年に何人か行方不明になるほどだという。

「だから、安全のために生存術に優れた冒険者を経費で雇うことが認められているんだ」
「そういえば・・・たまに下水道関連の依頼って見るかも」
「下水道のねずみ退治とか、こないだ他の宿の奴がやってたな」
「とまぁ、ここまでは常識なんだけどね、この下水道、実は待ちの創設以前からあったって事は知ってる?」
「街の創設以前から・・・?まさか・・・」

ScreenShot_20130108_090858937.png

 アウロラが何かに思い当たったらしい顔になる。ダスキンはそれを見てまた「ビンゴ!」と指を立てた。

「そうなんだ。リューンは旧文明の都市の遺跡を利用して建設された都市なんだ」
「確か司祭様から街の歴史について教わった時、そんな話がありましたね・・・」
「つまり、あの下水道は旧文明の施設をそのまま使用しているんだ。その奥深くでは未だに旧文明の装置が働いていると言われている・・・」
「私たちの足元に、ですか」

 アウロラは自分の足元を見た。そこは何の変哲も無い、いつもの石畳である。

「でも、その装置を見た者はいない。僕はその古代の英知を一目でいい、見てみたい。清掃局に勤めているのもそのためなんだ」

 ダスキンが拳を振り回して力説していると、彼の足が市内にところどころあるマンホールの一つに止まった。

「あ、この辺りだ・・・えっとJの8番、Jの8番・・・あったこれだ」

 彼はわざとらしい咳払いをすると、ついて来てくれとまず自分から地下に続く階段を降りていった。
 カンテラの灯りに石づくりの通路が照らし出される。
 階段を一番下まで降りると靴の裏に水の感触があった。よどんだ水が流れている・・・思ったほど臭くない。
 ひんやりとした空気が肌を撫でていく・・・。

「ところで、掃除道具は?」

 今になって気づいたミナスがダスキンに訊くが、彼は「あ」と声を上げた。

「肝心な事を話し忘れてた。掃除って言ってもタワシやモップで床掃除するわけじゃないんだ」
「あれ、そうなの?」
「実はこの北の区画で下水が逆流してるって苦情があってね。どうやら、この区画の何処かで、下水が詰まっているらしい」

 ダスキンは通路を流れる汚水を指差して言った。

「ほら、本来なら膝下まであるはずの汚水がチョロチョロとしか流れていない。この区画に原因があるのは間違いないね」
「ほほう、なるほど」
「で、君たちには下水を詰まらせている元凶の発見と除去を手伝ってもらいたいんだ」
「発見と除去ですか・・・・・・」
「俺たちがどうにかできる範囲であることを祈っておいてくれ、アウロラ」

 アレクやアウロラの言葉に頷くと依頼人はさらに言い募った。

「それともう一つ、下水道の中には鼠やら蛇やら、やっかいな連中が棲みついている事が多いからね。襲われた時にはよろしく頼むよ」
「なるほどね・・・そういう仕事なら専門分野だわ」
「それじゃ、そろそろ取り掛かりましょうか」

2013/01/16 08:55 [edit]

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