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Sun.

銀の鍵 1  

 イリスという猫族と戦ってから、すでに2ヶ月が経過していた。
 事件直後は、沈みきって誰が声をかけてもろくに返事もできなかったジーニだったが、1週間ほどで少しずつもとの調子を取り戻し、リューンから遠く離れた要港都市ベルサレッジまで慰安に出かけ、ついでに依頼をこなすこともできていた。
 季節はもうすっかり冬・・・今”金狼の牙”一行は狼の隠れ家に戻りゆっくりと寛いでいるところで、ギルが行儀悪くテーブルへ足を乗せながら、前に受けた依頼のことを話していた。

「それにしても、驚いたよなあ。あのダークエルフが、ミナスの故郷を襲った奴の一味だったなんて」
「ああ。確か依頼では人間をさらっていたという話だったな。人身売買組織に関わりがあるのだろうが・・・」

 アレクが気遣わしげにミナスを見やるが、少年の顔は案外と明るかった。

「でも、おかげでお母さんが無事に逃げ延びたって事は聞けたからね。生きていれば、どこかで会えるから」
「そうだな。お前が有名になれば、向こうから会いに来るかもしれん」

 ミナスの意見に微笑んで同意すると、アレクは「そういえば」とエディンのほうを振り返った。

「そろそろ、良い依頼は来ていないのか?」
「これなんかどうだ?手紙の配達だ。銀貨1000と相場より高いのが気になるがな」

ScreenShot_20130108_044537859.png

「ああ、その依頼な。詳しく話してはもらえなかったがなんだか訳ありらしいぞ」
「訳ありねぇ・・・」

 ふうん、とミナスはエディンの持つ羊皮紙に目を落とした。そこからは詳細を伺うことは出来ない。
 娘さんはため息をつきながら掃除道具を出してきたところだったが、ちょうど頭を上げたエディンと目が合った。

(嫌な予感・・・)
「・・・エディンさん、薄給でこき使われる若い娘を哀れと思って手伝ってくれませんか?」
「さて、仕事仕事・・・」
「けちっ」

 馴染みのやり取りに、どっと他の仲間から笑い声が上がる。
 目の端に浮かんだ涙を拭いつつ、ギルが依頼人について親父さんに質問した。

「ベルチさんとかいう人が依頼していったんだ。どこぞの屋敷の奥女中、女中頭といった感じの人だ」
「ふーん。上流階級の依頼かな?」
「あの類の人みずから冒険者雇うために出向いてくるくらいだ。そりゃあ訳のひとつもあるだろうさ」

 親父さんはカウンターに座るアウロラにハーブティーを出しながら、「犯罪がらみって雰囲気ではなさそうだったがな」と付け加えた。

「依頼書以外のことは、なんかねえの?」
「詳しくは知らん。直接、家に来てくれだとさ・・・で、この依頼受けるのか?」
「訳ありの手紙配達ねえ。受けてみるか、屋敷はそう遠くないようだし」
「そうか。ちょっと待ってろ。紹介状を用意するから」

 親父さんは紹介状を手渡しながら、

「依頼人の家にいったらその紹介状を家人に見せるんだぞ」

と念を押した。
 一行はばたばたと装備を確認し、一番最後に店を出たアウロラが見送ってくれた娘さんに挨拶する。

「では行ってまいりますね」
「あ、ちょっと待ってください!こないだ倉庫を整理したら、こんなのが出てきたんですよ」
「・・・火口箱と荒縄?えっと、うちわも?」
「どうぞ持ってってください」
(ゴミ・・・ではありませんよね。先ほどエディンが断ったこと、恨んでいるのでしょうか・・・)

 アウロラは引きつり笑いをしながらも、それらを「ありがとう」と言って受け取ったのだった・・・。

「寒いな。体が冷え切ったぜ」
「私もです。依頼人の家で暖かいものをいただけるとありがたいですね」
「そんな気の利く依頼人だったら、文句ないな」

ScreenShot_20130108_050253343.png

 ギルとアウロラの会話に、くすりと笑ったアレクが口を挟んだ。
 まったく、そんな友好的な依頼人ばかりだったら冒険の苦労も半減するのだけど・・・・・・。
 ギルは依頼書にあった住所を思い出して口にした。

「イリリア邸内、マライア=ベルチ。住所はリューン市外の裕福層がすんでいるとこだよな。訳ありって、どんな訳だろ」
「さあ?行ってみればわかるでしょう」

 ――イリリア邸。
 広大なくせに活気というものが全く見られない屋敷の様子に、「廃墟じゃないよね?」とミナスが訊く。

「違うようだな。見ろよ」

 エディンが顎で指し示したのは、下男らしきやや肥満気味の男だった。彼に取り次いでもらおうと、ギルが慌てて荷物袋から紹介状を引っ張り出す。
 こちらを胡乱げな目つきで眺めながらも、紹介状を受け取った男は、

「・・・・・・ちょっと待ってろ」

と屋敷の奥へ引っ込んでいった。
 寒風吹く曇り空の下。待つことしばし。

「ベルチさんが呼んでる。ついてこい」

 下男が戻ってきてそう言うと、さっさと先頭に立って歩き出す。
 無愛想きわまる物言いに少しむっとしながらも、”金狼の牙”たちは彼のあとについていった。
 庭園はすっかり荒れ果てているだろうと思っていたが、意に反して冬なのに花も咲いている。

(・・・ん?)

 アレクの視線が、ふと庭園の片隅にある少女の像に留まる。
 青みを帯びた大理石で作られたらしい像は、長い髪と愛らしい微笑を浮かべた美しいものだった。
 像の台座には『亡きヴァイオラへ捧ぐ』と刻まれている。

(故人を悼むもののようだな・・・)
「何やってるんだ。早く来い」

 足がすっかり止まってしまっているアレクへ、下男が声をかけた。

「・・・今行く」

 短く応答したアレクは仲間と共に下男に連れられ、イリリア邸の客間へと案内された。

2013/01/13 03:43 [edit]

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