--.

スポンサーサイト  

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--/--/-- --:-- [edit]

category: スポンサー広告

tb: --   cm: --

Fri.

In the moonlight・・・ 2  

 次の日・・・”金狼の牙”たちは狼の隠れ家で朝を迎えていた。

「ふぁ~あ・・・飯くれよ。スィータ」
「んー?そこの底深鍋にシチューが入ってるよ。勝手に取りな」

 大きく伸びをしたギルに応えたのは、緑色の帽子とマントに身を包んだ若者である。
 彼はバイトとして最近雇われた男だった。前職がなんだったのか知る者は親父さんくらいなのだが、「恐らく我々の同業者だったこともあるだろう」とはエディンの言である。
 眠気で半眼になったギルにしっかりシチュー皿を持たせたアレクは、「悪いな」と声をかけて自分の分もよそった。
 籠に山盛りになっていた固いパンを分け合い、温かいシチューと一緒に食べ始める。
 小さなスプーンに乗った人参とにらめっこしていたミナスが、ふと気づいて声を上げる。

「・・・そういえば親父さんは?」
「親父さんは旅行中。一週間ばかりアフタ温泉に行って来るだとさ」
「ふぅ~ん・・・あの有名なアフタ温泉にかあ・・・よくお金があったね」
「親父さん曰く、『春眠、胃痛を覚えず。すなわち、温泉が我を呼ぶ。』って・・・お前らがストレスをかけているからじゃないか?」
「へっ!あの親父がストレスかよ」

 エディンは木製のスプーンの端を齧りながら、ミナスとスィータの会話に割り込んだ。
 それに苦笑したスィータは、すっかり空になった底深鍋を洗い終えると、モップを取ろうとカウンターから出てきた。

「さてと・・・そろそろ掃除をするか・・・ん?」

 スィータの視線の先、玄関口のところに白い猫が佇んでいる。
 それを見つけたミナスが、「あ」と言って駆け寄った。

「ニャ・・・ニャ・・・ニャァ~・・・」

 やけに疲れたような姿に、ふんと鼻で笑った女がいた。

「なによ。駄猫じゃない」
「ふぅ~・・・再会できたわね」

 喧嘩を吹っかけられているのに気づけないほど疲労しているらしい。
 イリスをそっと抱き上げて席に戻ったミナスが、自分の分のシチューを分けてから「何の用事?」と尋ねると、依頼の話の続きと返事があった。

「ええっと・・・駄猫ちゃんの弟を探すっていう話だったわね?」
「だーねーこ、は余分ッ!」

 叫んでから、説明に時間がかかるからと、イリスはお馴染みとなってきた宙返りをした。
 目撃したスィータが、モップを取り落としてひっくり返ったような声を出す。

「ね・・・ね・・・猫がひっ・・・人にっ!?」
「猫族なんだとさ。こっちのお嬢さんは」

 エディンが苦笑する。スィータは上ずった声音のまま、「そうなのか?」と訊いていたが、不意に何かを思い出したようにゆっくりと口を開いた。

「そういやぁ・・・猫族って、奴隷として希少価値あるらしい」
「希少価値?」
「外野っ!余分なこと言わない!」

ScreenShot_20130107_025705546.png

 首をかしげたアウロラ相手にまだ話したそうなスィータへ、ぴしゃりとイリスの制止が飛ぶ。

「へ~い。・・・なんだったかなぁ・・・特別な力があるとか・・・」

 しかし、その呟きは小さすぎて誰の耳にも届いていなかった。
 ジーニは器用に玉ねぎだけ分けて食べているイリスにハンカチを渡して、だらしない姿勢で頬杖をついた。

「あのねぇ・・・わざわざ人に化けなくても、いい気がするんだけど・・・」
「猫の姿だと、人間の声の発音を長時間続けるのが難しいのよ」
「そんなものかしら・・・」
「まぁ・・・私はまだ魔力を持って2年ばかりだから・・・」

 夜以外は人化も長時間続けられないと言う。
 食べ終わって満足した様子のイリスに依頼の話の続きを促す。

「魔力復活がどうだこうだ・・・言ってなかった?」
「う。うん。それは、その時になったら話すね。・・・というか、猫族の秘密なので魔力復活の儀式については話せないけどね」
「へ~え・・・じゃあ、魔力復活についてはあたしたちは関係ないの?」
「関係ないと思うよ」

 喧嘩友達・・・とでも言うべきか。あれだけいがみ合った後なのに、けろっと忘れたかのようにイリスとジーニは会話を続ける。その様子に、昨夜さんざっぱら悩まされた面子も呆気に取られていた。
 同族で探さないのは、猫族の伝承に”一旦魔力を失った同族を追いかけてはいけない”というものがあり、イリスは誰にも内緒で弟を探すことにしたらしい。伝承にそうあるからには、猫族の掟に抵触するのでは・・・といった懸念の声もあったが、しどろもどろになったイリスの痛々しいやつれ方に、一人を除いては同情していたのである。
 ・・・そう、一人を除いて。

「報酬安そう。・・・スィータが言ったけど、猫族って奴隷として希少価値があるんでしょ?そっちの方が高く売れそうだなぁ」
「それって・・・値段によっては交渉に応じるって事かな・・・」
「さーぁねーぇ」
「・・・悪どい・・・分かったわよっ!3000sp!」
「ああ~アフタ温泉行きたいなぁ・・・」
「・・・4000sp・・・」

 イリスの声が段々小さくなるのにアウロラが慌てて、ジーニの袖を掴み止めるよう無言で訴える。
 それに根負けしたのか、その値段を元々狙っていたのか、掴まれていないほうの手でカウンターに立てかけていた杖を持つと、さっとジーニは立ち上がって言った。

「じゃ、行きましょっ!トーテム山へっ!」
「・・・・・・・・・鬼・・・」

 げに恐ろしきは交渉担当の魔術師・・・・・・こてん、とカウンターに額をぶつけたイリスがいっそ哀れであった。
 ・・・・・・数十分後、4000spに目のくらんだバイトのスィータが親父さんの秘蔵武器である魔剣を倉庫から持ち出し、冒険者たちの後を追おうとしたのだが、とある者から交渉されその武器を貸し出したという事実は、もはや山に向かっていた”金狼の牙”たちのあずかり知らぬことである。

2013/01/11 17:25 [edit]

category: In the moonlight・・・

tb: --   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

カレンダー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

辺境に足を運んだ方の人数

▲Page top

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。