Mon.

Under the stoneその3  

 ほぐほぐと髭を動かした後に、穴の奥へするりと入っていった茶色の毛玉は、しばらく中で小さな手足を動かしてあちこち駆け回っていたようだが、ちゃんと籠からの解放者――水晶の仕掛けを解いて南京錠の鍵を入手した、ロンドの元へ帰ってきた。
 ハムスターが丸められた紙切れを咥えている。

「おう、ちびすけ。ご苦労だったな」

 湿って乾いてを繰り返したためにすっかりごわついてしまった紙を、ロンドが受け取り、彼の出来得る範囲内で丁寧に広げようと悪戦苦闘する間、ハムスターは短い前足をくるくる顔に擦り付けて洗っていた。
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2018/03/19 13:42 [edit]

category: Under the stone

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Mon.

Under the stoneその2  

 牢屋から出てきたロンドは、懐に入れた奇妙な石を服の上から撫ぜた。
 滑らかな台座の上に放置されていた真っ赤な石は、どういう仕掛けなのか中心部に昏い光が明滅しており、その一定のリズムが自分の心音とシンクロしているようだった。
 確かに台座に刻まれた文字には、

”この石はお前の心臓””努々手離すことなかれ”

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2018/03/19 13:38 [edit]

category: Under the stone

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Mon.

Under the stoneその1  

 水の……音が響く。
 揺れ、渦を巻き、漣を起こし、流れゆく水の音。
 ロンドは夢現な頭の中で、聴覚からの情報から海を連想していた。
 家族同然の娘の眼は、温かな春の海と同じ色をしており、生き生きとした光がそこで躍るのを見るのが好きである。

(冒険者になって、色んな理不尽なことや腹立たしいこと、悲しいことがあったけど……でも、あいつの目はまだ死んでない。俺たちはまだ、冒険を続けられる。)

 ぴちゃり、と滴の跳ねた音が耳に届く。

(しずく……滴……?)

 あれ、と彼は訝しんだ。

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2018/03/19 13:36 [edit]

category: Under the stone

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Wed.

見知らぬ仲間その5  

 迷宮と化した、いくつかの小部屋に分かれた地下室――。
 無意味な行き止まりや、力任せに崩されたと思しき壁――。
 それらを目にする前から、ここに住まう”獣”の異質さや危険性は感じていたはずだったのだ。
 だが、推測はただ推測でしかない。

「何だってんだ、この咆哮とプレッシャーは……!」

 こちらへと一心不乱に向かってくる”獣”の気配に、ロンドの皮膚が粟立っていた。
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2018/03/07 19:12 [edit]

category: 見知らぬ仲間

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Wed.

見知らぬ仲間その4  

 旗を掲げる爪が辿り着いた部屋で見たのは、散らかった薬草、樽、干からびている食べ物と――既に白骨化し、風化しかけた人間の死体。
 そしてその奥にある、不気味な魔方陣だった。
 明らかに生活感のあるその光景に、6人は一瞬面食らったが、

「……調査してみますか」

というウィルバーの至極冷静な一言に、全員が同意した。
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2018/03/07 18:49 [edit]

category: 見知らぬ仲間

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Wed.

見知らぬ仲間その3  

 入り口で見る限り、遺跡の床や壁に使われている石材は、元は明るい砂色だったのだろう。
 それが今や、奥に行くにつれ、年月の経過や近くにある湖による湿気などの要因により、くすんだ灰色や苔の緑色が大半になっている。
 おまけに、立ち入る者のいない建築物の多くがそうであるように、埃が積もっており、進むのに支障はないものの、生き物の粘膜を小さく不快に刺激する。
 用心に用心を重ねて調査をしているアンジェだが、罠や敵の気配の少なさに眉を顰めた。
 魔法使い2人の言によれば、ここには今までにない強大な敵が――それも、シシリーの死のカウントダウンに関係のある奴がいるはずなのに、一向にその片鱗すら見えない。
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2018/03/07 18:47 [edit]

category: 見知らぬ仲間

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Wed.

見知らぬ仲間その2  

 細い道は、うっそうとした森の中へ続いている。道といっても獣道だ。
 シシリーやミカの腰くらいまで元気に伸びる葉もあれば、羊歯のようにあまり太陽の光を浴びずとも生きていかれる植物も、一行の足首あたりに茂っている。
 頭上の木々の葉が作り出す陰影により、ひんやりした心地良さが肌に感じられた。
 足元にはぬかるみもなく、パーティはひたすら霧がないと推測した北へ向かい、移動している。

「罠も敵の気配、共になし。進んで来ていいよ」
「うむ」

 先頭を歩いているアンジェの台詞に、ナイトが肯定の相槌を打つ。
 彼の黒い鎧の表面を、葉から落ちた雫が音もなく伝った。 

「昨日からおかしいな、とは思ってたんだけどさ。何にもいないよね。大妖魔の森みたい」

 顔に掛かる草を手で押し返したアンジェが、そっと息を吐きながら呟く。
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2018/03/07 18:44 [edit]

category: 見知らぬ仲間

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Wed.

見知らぬ仲間その1  

 アンジェは、普段なら小悪魔めいた可愛らしい笑みを閃かせる唇を、緊張のあまり一文字に引き結び、強い意志を込めて目前の魔術師を見上げた。
 彼女の前に立っているのは、孤児院時代からの知人でもあり、ここ2年近くの冒険者生活において替え難い仲間となったウィルバーだ。

「待ち伏せとはいい趣味ではありませんが……どうしました?アンジェ」
「おっちゃん……少し、話があるんだ」

 2人が佇んでいるのは、手入れの行き届いた由緒ある館の、ゲストルームに続く階段の傍である。
 そう――旗を掲げる爪の面々が今いるのは、リューンの老舗の冒険者の店である≪狼の隠れ家≫ではない。
 リューンから馬を使って5、6時間ほど北西に行ったところにあるアドマール領、その地を治める領主の館だった。

ScreenShot_20180307_113740916.png
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2018/03/07 18:41 [edit]

category: 見知らぬ仲間

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