Tue.

洞窟にてその1  

 この仕事の貼り紙を出してきた村に向かう途中、精霊と妖精の棲む森で魔神を退治することになったが、旗を掲げる爪は無事に目的地へ到着した。
 村の人々が暗い顔をしているのを見て、もしかしたら大量の犠牲者が出てしまったのかと危惧した一行だったが、不幸中の幸いと言うべきかそんな事はなく、

「最初に噛まれた1人以外、近隣の住人や旅人に被害はありません。これから他の者が襲われる前に、皆さんに退治してほしいのです」

と村長から告げられた。
 暗い顔をしていたのは、夜が訪れるたびに今度こそ犠牲者が出るのでは、と恐れてろくに眠れないからという理由だったらしい。
 それを聞いたシシリーは、真剣な顔をして呟いた。

「吸血鬼がどこで眠っているのか、分かるといいのだけど……」

洞窟にて

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2016/09/27 11:41 [edit]

category: 洞窟にて

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Fri.

精霊の森に棲む魔性その4  

 テーゼンが”そこ”に踏み込んだ瞬間、翼の先に粘つく怖気が引っかかったような気がした。
 ぴりりと奔る緊張に、わずかに白い美貌が歪む。

「……サブナク本人じゃねえようだが……こりゃ、手強いなんてもんじゃねえな」

 捩じれて腐り果てた姿を晒す木々ばかりの、異様な場所である。
 大地は汚泥と腐葉に塗れ、空気は濁っていた。
 これまで何度か異次元の怪物等と対決したことはあるが、仮にも妖精と精霊が守る清浄な森を、見るも不快な空間に変えてしまうのは例がない。
 後ろに控えている仲間たちに前進を指示し、彼がまた歩き始めると――ほどなく、一際目につく楢の大樹が現れた。

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2016/09/23 12:36 [edit]

category: 精霊の森に棲む魔性

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Fri.

精霊の森に棲む魔性その3  

 ずいぶんと精霊の気配が散らばっている、と教えてくれたのはフォウのスピカである。
 旗を掲げる爪は長との話し合いで勧められた精霊への協力の取次ぎのため、黒々とした枝や幹が視界を遮る不思議な雰囲気の森へと足を踏み入れていた。
 ここは妖精たちがいたゾーンと違い、見るからに油断のできない、尋常ではない気配が漂っている。
 ところどころに、炎を使ったらしい焦げ跡や、薙ぎ倒された様子の木々が見られる。

「私と同じ光の眷属はいないようですね。火や風はいたんですが」
「……なんでか、鏡もあったけどね」

 アンジェがスピカに応じる後ろで、”鏡”という言葉に反応したロンドとテーゼンがビクリと肩を震わせ、それを見たテアが笑いを押し殺そうと躍起になっている。
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2016/09/23 12:30 [edit]

category: 精霊の森に棲む魔性

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Fri.

精霊の森に棲む魔性その2  

「ここが精霊の森、のう……」

 テアはしげしげと辺りの様子を見渡した。
 旗を掲げる爪を誘拐してきた――相手側の同意なく強引に連れ去ったのだから、見た目はどうあれ誘拐で間違いないだろう――妖精が招いた”本当の森”は、空恐ろしくなるほど緑の濃い、光をたっぷりとたたえた場所であった。
 空間転移の魔法によって呼ばれてきたロンド以外の人員も、多少のいざこざはあったものの、妖精の語る”この森の古~~い樹へ憑いた変な魔物”とやらに興味を持ち、もし報酬が出るのであれば対決しても構わないと納得済みである。
 ただ、その妖精が案内した精霊と妖精の長、の周りが問題であり……。
 体長2メートルほどの、ふさふさとした尻尾を持った狼っぽい生き物の周囲を、濃いピンクの羽根を背に負った他の妖精たちが飛びまわり、

「この森に介入しないで!森を荒らさないで!」
「ニンゲンは乱暴!早く出て行って!」

と、冒険者たちへ罵声を浴びせてくるのである。
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2016/09/23 12:28 [edit]

category: 精霊の森に棲む魔性

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Fri.

精霊の森に棲む魔性その1  

 ある地方で暗躍し始めた、吸血鬼と思われる魔物の討伐。
 旗を掲げる爪が今回引き受けた依頼書には、そう書かれていた。
 リューンから野宿を含み片道4日の行程に、さすがのテアも「あまり長い道のりは、そろそろ腰が適わんのう」と愚痴めいたものを漏らしたが、死に損ない――俗にアンデッドと呼ばれる怪物たち――の中でも特に知名度の高い相手に、生半な冒険者を派遣することはできない、という宿の亭主の言葉に反発する面子はいない。
 ただ、吸血鬼と一口に言っても、その能力はピンからキリまであるのだが……村人の証言にある蝙蝠などの生き物へ変身する能力を持っている辺り、少なくとも下級の吸血鬼ではなさそうである。

「油断は禁物ね。教会でも、吸血鬼は年を経るごとに強い能力を持つと聞いているわ」
「危ない相手なのですね……。皆さん、気をつけて下さいね」

 蝶のような羽根を羽ばたかせた妖精のムルが、ひらりとアンジェの頭上を飛ぶ。

精霊の森

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2016/09/23 12:26 [edit]

category: 精霊の森に棲む魔性

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 リューン北東、ラウンゲル山中――。
 シシリーに罠を仕掛けた故買屋からの仕事で、テーゼンの姿はそこにあった。
 故買屋と太いパイプで繋がっているというある商人が、強い冒険者を求めていたために、故買屋側が多額の紹介料を商人から貰って、この一件を彼に押し付けてきたのである。
 聖北の神に仕えるシシリーの手前もあり「汚い仕事じゃない」と言っておいたが、実際、内容は山賊退治なのだから、一応冒険者の範囲内の仕事だと主張できるだろう。

(少なくとも、ギルドの脱走者の始末や、お偉いさんの暗殺よりは事実を話しやすいな)

 ただ、さすがに妖精のムルはロンドに預けてきている。
 この仕事は自分でやり遂げたい――そういう意思の表れだった。
山賊駆除
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2016/09/15 11:51 [edit]

category: 永遠そして朝まだき後の山賊駆除

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 シシリーは、”親”というものを持たない子どもだった。
 ロンドのように幼い頃親から連れて来られたわけでも、アンジェのように旅の途中だった親から院長へ預けられたわけでもなく、ただぽつんと孤児院の門前に、いつの間にか捨てられた子どもであった。
 だから、”親”がどういうものなのか思い出すこともなければ、他者から親の話を聞くこともなかったのである。
 自分のルーツを持たない彼女が、家族を孤児院の仲間たちへ、そして今はパーティを組んでいる冒険者たちへ見出したのも無理はなかった。
 本人は気付いていないのだが、愛情や恋情によって他者と家族になる関係を、後から理屈をつけながら忌避している一因はここにある。
 もし自分で家族を新たに作ってしまったら――血の繋がりのない、今まで家族”同然”だった孤児院の仲間たちと、離れてしまうのではないかという懸念である。
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2016/09/15 11:48 [edit]

category: 永遠そして朝まだき後の山賊駆除

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 月は悠然と空にかかっている。
 常宿の部屋から忽然とロンドが姿を消した事件から、3日ほど経ったある日の夜だった。
 早寝早起きの習慣がついているシシリーにしては珍しく、夜が更ける時刻になっても目が冴えているために自室に戻ることをせず、未だ1階の酒場に留まっている。
 給仕娘のリジーはとうに寝床に入っており、あてどなくエールの杯を傾ける彼女の相手は宿の亭主が勤めていたが、彼も他の客を放っておくわけにはいかず、カウンターから離れる見慣れたハゲ頭を見つめながら揚げじゃがを摘んだ。
 ちびりちびりと木製のジョッキからエールを舐める。
 ふと窓の外から入り込む月光に気付き、とろりとした蜂蜜色の姿に見入った。

永遠そして
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2016/09/15 11:45 [edit]

category: 永遠そして朝まだき後の山賊駆除

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Wed.

Through the holeその4  

 嫌な夢から醒めたロンドは、自分が今いる牢屋の暗がりに、人のものとも獣のものともつかぬ大量の骨がみっしりと詰められていることや、乾涸びた人間の死体が折り重なっていることに気付いていた。
 だが、内臓が綺麗に持ち去られ、皮が丁寧に剥ぎ取られ、骨が余すことなく刳り貫かれていたそれらによっては、彼は恐怖を引き起こされることがなかった。
 つまり、と彼はひとりごちる。
 どうもロンドにとって怖いのは、

(置いていかれることなんだろうな…)

ということが分かった。
 もう必要ない、と。
 そう仲間たちから判断されることが恐ろしいのである。
 だからこそパーティの重戦士として誰よりも前に立ち、敵の攻撃を引き受けて暴れ回っていた。
 命を賭けて己の役目を全うすることで、自分の存在価値を示してきたのである。
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2016/09/07 11:45 [edit]

category: Through the hole

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Wed.

Through the holeその3  

 辺りには無数のねずみの死骸が転がっている。
 幾つかは下水の流れに乗って、上下に揺られながら遠ざかっていったようだ。
 ぴとん、ぴとんと雫の垂れる音が響く。
 鋼糸についたねずみの血を丁寧に襤褸切れで拭き取り、腕輪に武器を収めるとアンジェは言った。

「まったくさぁ……兄ちゃんを連れて行くに事欠いて、下水はないよね」
「だよな。暗いところは今までも出入りしてたが…臭いがな」

 テーゼンの嗅覚には、この冷たく湿気た迷宮に独特の臭気が届いている。
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2016/09/07 11:42 [edit]

category: Through the hole

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Wed.

Through the holeその2  

 リューンでも老舗に分類される、いつもの≪狼の隠れ家≫のカウンター。
 呪いを受けたから姿が変わらないだの、実は不老不死の手段を手に入れたのだの、色々と噂されている宿の亭主は、珍しくカウンター前に集ったあるパーティへ視線を向けた。

「……で、本当にどこにもいないわけだな?」
「……うん。ほんとーに、いないわけ。兄ちゃんが」

 アンジェを筆頭に、旗を掲げる爪の面々は疲れた様子でカウンターにもたれかかった。
 子どもをからかうような口調――いや、アンジェは正真正銘の子どもだが――で、宿の亭主が肩をそびやかしながら尋ねる。
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2016/09/07 11:40 [edit]

category: Through the hole

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Wed.

Through the holeその1  

 重々しい音が響いた。
 固い木材と――金属に覆われた重量が叩きつけられる、音。
 ロンドは今しがた痛めた肩を武骨な手で覆いながら、目の前のドアを睨み付けた。
 彼が現在いるのは、いつもと同じ宿――リューン市内でも老舗に分類されている≪狼の隠れ家≫の一室、テーゼンやウィルバーと一緒に使っている三人部屋なのだが。

「畜生……何だって開かないんだ?」

 ドアに鍵は掛かっていない。
 日の出と共に起きて身支度を整え、簡素な鍵を開けてからノブを捻ったのだから、施錠されていないのは当たり前だというのに、開く扉が今回に限って開かなかった。

地下水道
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2016/09/07 11:39 [edit]

category: Through the hole

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 こんにちは、Leeffesです。
 記事のタイトルだけを取り上げると結構物騒なんですが、今回アップしたのは他シナリオで出てくる食材を、エリアのキーコード反応でご飯にしようという……以前にもプライベートシナリオの「若草の街トランデル」で似たようなことをやりましたが、最近になって鮭を獲ったり卵を探したりするシナリオをプレイしてたものですから、リアルにまな板に載せたくなる様なアイテムが増えて、カッとなったらこんなシナリオになってました。
 普通に買うことも可能ですが、食材を持っていれば安くなるというシステムになってます。

 もう、おとなしくご飯と飲み物アイテムオンリー。
 ある意味では「枯れ葉通りの食料品店」とか、100KBに出した「パフェ屋ハッピーサマー」に似ていますが、MP3を使っているのでちょっとだけファイル容量が大きいです。気にされる方には申し訳ございません。
 ちなみに私、この中だったら南瓜ポタージュと干し肉ピザ食べたい。
 そんな感じ(どんなだよ)で、またテストプレイヤー様がおられましたら、どうぞお付き合いよろしくお願いします。

 新米コックの腕試し

2016年10月4日をもって、Ver1.00として完成版といたします。
テストプレイにご協力いただきました皆様、ご自分のシナリオフォルダにダウンロードしてくださった皆様。
「荷物袋の食材でご飯作っちゃいたい…」という作者の勝手な欲望駄々漏れのシナリオですが、遊んで下さってありがとうございました!
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2016/09/05 11:59 [edit]

category: シナリオ

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