ウニ退治後の夏の休日その1

 初夏に差し掛かったリューンの街。
 薄着に切り替わる市民が増え、上天気が続くことに乗じて、ちょっとしたお出かけに出ようという声も、ちらほら聞こえてくる。
 外出するだけで心が浮き立つような春とは違い、より人々がアクティブな気分に変わる時季なのかもしれない。
 そんな中、賢者の搭からの依頼が発端で、リビングメイルの新入りが加わった≪狼の隠れ家≫の酒場は、案外と閑散としていた。
ウニ退治

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赤い花は三度咲くその6

 室内にいたのは、男とキメラが1人と一匹。
 そしてウィルバーにとっても、他の者たちに取っても既知である動く鎧。
 男はキメラを膝に抱き、その頭をあやすように撫でていた。

「ようこそ、冒険者諸君。大広間での実験、まことに実入りのあるものだった。感謝するよ」
「うちの魔術師殿をずいぶんといたぶってくれたわ。覚悟はできているわよね」

 しゃり、と≪Beginning≫を鞘から引き抜く音がする。

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赤い花は三度咲くその5

「……っはぁ!ざまあみろ!」

 ロンドが快哉を叫ぶ。
 コランダムが続けて彼らにぶつけてきた合成獣は、ウィルバーが≪魔力の腕輪≫を通じて動きを封じられるというアクシデントに見舞われながらも、天井にあった巨大なペンデュラムに繋がる鎖をアンジェが外して回ることで、罠に嵌めて退治することが出来た。
 もしかしたら、ロンドが弄ったあのレバーも関係していたのかもしれないとは、テアが後日になって述懐するところである。
 だが、今の彼らはとにかく勝利したことを喜んでいた。

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赤い花は三度咲くその4

「……ギベオン村の者か?」
「いつもの物を持ってきました」

 雨の降りしきる音が小さく聞こえる中、ウィルバーにナイトと名乗っていたリビングメイルは、フードを被った若者たちと相対していた。
 この砦には、定期的に村から食料が運び込まれている。
 ナイト自身には必要ないが、主が属している人間にとっては摂取が不可欠なものである。
 この取り決めを決めたのは魔術師・コランダムと村の権力者であり、彼らの間にどのような会話が交わされたのはナイトの知るところではない。
 ただ、この取り決めに従った運搬と対価の受け渡しが、滞りなくなされること――それを管理するのが、ナイトの役割であった。

「倉庫に入れたら、用意してあるものを持って去れ」
「ありがとうございます」

 命令を受けたフードの人物は、首を縮めるようにして荷物に手をかけた。

「……?待て、そこのお前」
「……!なんでしょう?」
「ただの村人にしては…………いや。良い。行け」

 ナイトが踵を返してその場から去ると、フードの人物は仲間に行こうと声をかけた。

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赤い花は三度咲くその3

 ウィルバーは鋭い観察眼を自分のいる室内に走らせた。
 窓には交差する鉄格子が張られており、その向こうには既に日の落ちた森が広がっている。
 そのせいか、ベッド脇には魔法による明かりがついたランプが置かれていた。
 視線を横にずらすと、灰色の石造りの壁は隙間風を完全に防いでくれているものの、冷え冷えとした印象を囚われ人に与えた。

「よっ、と……」

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赤い花は三度咲くその2

「はぁ、はぁ……っ!なんだ、これ……!」

 ロンドは戦いの激しさではなく、異様な産まれ方をした敵の様子に肩で息をつく。
 女性の腹部から出てきた朱の塊は、冒険者たちに襲い掛かったものの返り討ちになり、ただの肉塊として彼らの足元に横たわっていた。
 女性の体はもはやピクリとも動かず、柘榴のように破裂した子宮を寝台の上に晒している。
 シシリーは既に彼女の息がないことを確かめ、悼むように十字を切った後、そっと恐怖と痛みに見開いたままの目を閉じた。

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赤い花は三度咲くその1

 ある日の昼下がりのことだった。
 閑古鳥が鳴いている――とは言っても、別に寂れたとかそういう話ではなく、ただ単にランチを取るには遅い時間帯だと言うのがその理由である――≪狼の隠れ家≫には、ちょっとした緊張状態にあった。
 原因は、以前潜ったシュツガルドの遺跡で起きた件である。

「もう、いい加減にしてよ!みんな無事だったんだからいいじゃない。ね?」

 旗を掲げる爪のリーダーであるシシリーは、両の手を胸に当てながら必死で2人に呼びかけた。
 2人とは――。

赤い花三度

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地下二階の役立たずその2

 アンジェ曰く「嫌な予感がする」ドアを開けて進む。
 すると、部屋の入って左側の壁にまたドアがあったので、そちらへと足を動かすと、

地下二階4

「憎いですねえ、全てが悲しいですねえ…」

という声とともに、扉の前に霧が集まった。
 やがてそれは、いささか太った死人の姿を作り出した。

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地下二階の役立たずその1

「シュツガルドの研究所から彼の成果を見つけてきて欲しい」

というのが、賢者の搭の準賢者と呼ばれているナブル・ラウーランからの依頼だった。
 シュツガルドは真理と因果律を研究していた魔術師であり現在は故人であるという。
 依頼人は彼の助手を短期間勤めており、遺品を受け継ぐ一応の権利はあるのだから、今回の依頼に関しては窃盗行為には当たらないと力説した。
 準賢者ナブルは、故人が因果律を解く何らかの成果を残しているだろうと考えている様子だ。

地下二階

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ねことぼうけんしゃとその2

 早朝の路地はまだ肌寒く、こんな時間に好んで風邪を引きそうな場所に出る、酔狂な者はいない。
 『年よりは早起き』という俗説を体現するように、日の出とともに起きる老婆は現在朝食を食べており、狗尾草――通称猫じゃらしを持って外に出ようとするアンジェを呼び止め、自分が使う肩掛けを貸してくれた。
 毛糸の肩掛けを朝の風に靡かせながら宿から真っ直ぐ路地にやって来た彼女は、また猫と邂逅している。
 アンジェと猫に残された距離は、彼女の歩幅でちょうど一歩分。
 この距離をつめるべく、猫じゃらしを両手に携え、ターゲットの前に腰を下ろす。

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ねことぼうけんしゃとその1

 日差しがまだ暖かい時刻―――≪狼の隠れ家≫のある通り。
 喧騒は多くはなかった。
 この辺りで騒動を起こそうとすれば、たちまち≪狼の隠れ家≫に所属する英雄クラスの冒険者たちが、鎮圧にやってくることをリューンのチンピラはよく弁えている。
 おまけに、少し前にはあの宿へ窃盗に入ろうとしたこそ泥たちが、石化して治安隊に引き渡されたという事実もあったことが大きいだろう。
 リズミカルに石畳の道を歩む足音だけがする。

猫

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とある一日後のあの日から20日後その3

「死霊術師との戦いって、これで何回目だっけ?」
「覚えているだけで3回目ですかね。アンジェ、そんな恨めしげな目で私を見るのはお止めなさい。親父さんと娘さんも、ご馳走は取っておけるだけ取っておくと約束してくれたじゃないですか」
「だってさ~。うちの宿の不始末じゃないのに、よりによって親父さんの誕生日の時に頼んでこなくたって…」

 アンジェがしきりに愚痴るのも無理はなかった。
 宿の亭主の誕生日パーティが盛り上がって、乾杯を繰り返していた時に転がり込んできたのは、リューン近郊に土地を持つ領主だったのである。
 彼は突如現れたという炎の悪魔を、他の冒険者の店で雇ったパーティに対処させていた。
 しかし数日後、今度は別荘に死霊術師が現れたということで、何度かその手の術者とやりあった経験があるという旗を掲げる爪を探し出し、依頼を持ち込んできたのである。

あの日から20日後

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とある一日後のあの日から20日後その2

「いらっしゃい……」

 暗く、細々と灯されている蝋燭が頼りなげに揺れている。
 ≪狼の隠れ家≫よりは新しいのだろうが、質素というか、雑貨屋の割に飾り気の無い店であった。
 窓の少ない室内のせいだろうか、どうにも陰鬱な印象を受ける店主だったが、入り口から入ってきた少女の姿を認めると、たちまち声が一オクターブ上がる。

「ってシシリーじゃん。どしたよ今日は?」
「ええ、実はね…」

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とある日の一日後のあの日から20日後その1

 青い空に薄い雲のたなびく、ある日の朝のことだった。
 熟練の冒険者パーティは、ほとんどが出払っている。
 旗を掲げる爪は、既にシシリーやテアなど早起きが習慣になっている者が1階のいつものテーブルについていたが、今しがた起きだした面子も、ゆっくりと階段を下りてくる所だった。
 先頭に立って大きな欠伸をしているのはテーゼンである。

ある日の一日

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当ブログは、Cardwirth関連に限りリンクフリーです。報告は不要ですが、もしご報告があれば相互リンクさせていただきたいと思っております。

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