In the mirrorその5

 そこは――どう形容すればよい場所なのだろう?
 シシリーにとっては、暗い背徳の教会のように感じられた。
 テーゼンにとって、そこは魔力で編みこんだ出来損ないの蜘蛛の巣のようであった。
 テアはそこを巨大な化け物の胎内のように思った。
 ウィルバーは、己の術である【凍て付く月】の魔力構造を目で捉えられるようにしたら、ちょうどこんな感じになると思った。
 他の仲間達が様々な感想を持つ中で、アンジェのどんぐり眼が見つめる先に鏡がある。

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In the mirrorその4

 青く透明な薄片が、縦横無尽にパーティを取り巻いている。
 不審そうにそれを見やった老婆が口を開く。

「鏡、いや、これは……氷片かの?」
「見たところ、部屋が2つと……ステンドグラスですか。調べられるところから、手をつけましょうか」

 彼らの前には、似たようなドアと煤けたように暗いステンドグラスで作られた窓がある。

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In the mirrorその3

「おっと……」

 老いているために他の者よりも動作が遅く、最後に鏡へ飛び込んだテアの視界に入ったのは、なんとも異様な景色だった。

(目に痛いのう、この年でこんなものを見るのは)

 彼女が心中でそう愚痴るのも仕方がないだろう。
 粉々に砕いたガラスの破片を無理矢理くっつけて並べたような光景が、冒険者たちを覆うように広がっていたのである。
 シシリーのベルトポーチに大人しく待機しているランプさんやスピカが出てきたら、たちまち増幅された瞬光に視神経を焼かれてしまうだろう。
 そんな空想がちらりと老婆の頭を過ぎった。

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In the mirrorその2

 ≪狼の隠れ家≫における亭主の朝はかなり早い。
 元より怠慢とは無縁の御仁ではあるのだが、リジーと呼ばれている給仕娘や、冒険者と所帯を持った臨時ウェイトレスの助けを得ながら、常連の多いこの宿所属の冒険者たちへ依頼の相談や食事の提供、時には宿の中で起きた面倒ごとは伝手を使って後処理するなど、通り一遍の宿の経営では追いつかないようなことまで精力的に行なっている。
 最近では納屋にコカトリスを飼っており、その世話もしている。
 本日も、かつて若い頃にひよこと間違えて購入したモンスターに、ご近所さんにばれないよう餌やりを済ませて、やっと人間側の準備を始めた。

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In the mirrorその1

 菫の花も盛りを過ぎ、芍薬やエニシダの蕾が膨らみつつある、ある日のことだった。
 ロンドは相変わらずの鎖帷子姿だったものの、今日は珍しくスコップも持たず、ベルトに挟んだ曲刀だけをお供に、リューンの石畳を踏みしめるように歩いていた。
 その強面とも言えるご面相にはいくらか柔らかな表情が刻まれており、鼻歌でも出てきそうな気楽な様子で目的地への道を進んでいる。
 ロンドには最近、気に入っている露店がある。

鏡

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