祭りの後にその1

 その日、旗を掲げる爪は先日のハロウィンではしゃぎすぎたのか、少し寝過ごしてしまった。
 慌てて起きてみれば、思ったとおり宿の亭主はやや不機嫌になっていた。
 ふわ、と欠伸を隠し切れないままアンジェが挨拶する。

「ん~……おはよう、親父さん……」
「今頃起きてきたのか。ハロウィンも終わったんだ。そろそろ祭り気分もぬいておけよ」

 そんな言葉を冒険者たちにかけ、亭主は昨日の余りもので作った食事を卓へ並べていった。
 南瓜で作ったケーキ、色とりどりのアイシングクッキー。
 温め直しのレモネードと、スパイス入りのホットアップルジュース。
 甘いものばかりかと思えば、スペアリブをタレに漬け込んで焼いたものや、蒸した野菜に塩とチーズをかけたものも出てきた。
 肉といえば宴会で残らないはずなのだが、翌朝のためにと亭主が別にしておいてくれたらしい。
 それらを全て平らげると、

「食べた皿は頂きますね」

と言って、給仕の娘さんが手際よく片付けていく。
 なんとこの娘さん、実はフェンサーとして通用するほどに細剣の扱いに手慣れている……らしい。
 そのせいなのか、食器を盆に乗せて下がっていく動きが、非常にきびきびしている。
 彼女はいったん厨房に引っ込んだかと思うと、再びこちらへやってきた。

「あ、そうそう。これ、デザート代わりにどうぞ」

祭りの後に1

と差し出してくる。

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安らかに眠れその3

 クドラ教徒であり、死霊術師でもあるその男は、とても生きている人間の顔色をしていないように見えた。
 吸血鬼だと言われても納得してしまいそうな血色のない顔の中、ぎろりと剥いた目が冒険者や隊員たちを捉えている。
 薄い唇が笑いの形に歪んだ。
 粘性の笑いだ。

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安らかに眠れその2

 一人で廊下を巡回していた男を倒し、別働隊の突入を確認すると、一行は先にある地下通路を目指して走っていた。
 その通路は事前に見ておいた見取り図で確認したものであり、シスターなどは信用のできるものなのか疑問を呈していたが。

「何事だッ!!」
「……どうやら間違いないようですね」

安らかに眠れ2

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安らかに眠れその1

 ひょこ、と墨で染めたかのような黒い茂みから、端整な横顔が覗く。
 黒い髪と黒い瞳が、色白の肌と見事なまでのコントラストを月光の下で作っている。

「……よし。誰もいないな。出てきてくれ」

 テーゼンの合図によって、仲間達と今回の依頼主が隠れていた場所から現れた。
 板金鎧にフルフェイスのヘルメットまで被った、ごつい装備の相手は治安隊の隊員である。
 彼は壮年の男性の声で言った。

「……ひとまず、作戦はバレていないようだな」
「……神よ。我々をお守り下さい」

 治安隊隊員の横で十字を切り祈りを捧げたのは、聖北教会のシスターである。
 お仕着せの修道女の服に金髪と淡い茶色の瞳はよく映えたが、隊員の方はそれを見て舌打ちしただけだった。

「信心深いのはいいが、祈るのは後にして貰いたい。もしはぐれたら、守れないぞ」

 彼女は反発することもなく、首を竦めて謝った。
 作戦決行までは、まだ時間的な余裕がある。
 今の内に準備できることはしておくべきだ、とシシリーが一同に指示した。

 ――今回の依頼は、ごく単純なものである。

安らかに眠れ

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