不在の遺跡調査その3

 魔法的な仕掛けの解除により、新たに出現した通路を発見した旗を掲げる爪は、またあった宝箱の中身(ちなみにちらっとアンジェが解除したところ宝石だった)に別れを告げて奥へと進んでいた。

不在の遺跡調査5

「惜しい話じゃの。これだけ苦労しておるのだから、あれぐらいの役得はあっても良さそうなものなんじゃがのう」
「おっしゃることはごもっともなんですが、うちのリーダーじゃ黙って中身を失敬する、なんて真似はどうあってもできませんからねえ」

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不在の遺跡調査その2

「ほいっと」

 ロンドが最後のゾンビをスコップで横殴りにすると、腐肉の垂れ下がった不死者は壁に叩きつけられたまま動かなくなった。
 シシリーが刃についた汚物を拭い、剣を収めて目の前の扉を見つめる。

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不在の遺跡調査その1

 後味の悪いヨンドネ村の魔術師退治の後、しばらくはのんびりと宿で過ごしていた旗を掲げる爪だったが、そろそろ防具を買い揃える資金のことも考えて、依頼を受けようか…という話をしていた。
 そんな時にウィルバーが持ってきたのが、この貼り紙であった。

不在の遺跡調査

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プレゼントは私その2

 翌日、本番である洞窟の道で――。

「く…くちゃい!お、お鼻がへこんじゃうぐらいくちゃい、くちゃいよ!」
「鼻ペチャは元からだろ。…だが、俺も臭い。キツイ」

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プレゼントは私その1

「急ぎの依頼なんだ。今いる奴で任せられるのは、お前くらいしか浮かばなくてな」

 宿の亭主がロンドにそう切り出したのは、旗を掲げる爪が鉱山に巣食ったオークやオーガたちを退治してから5日後のことであった。
 最近は宿の掲示板に貼られる仕事の数も多く、ほとんどの所属冒険者が出払っている。
 ロンドの仲間達も、新しい技術の習得や、知り合いからの要請などで不在になることが多い。

プレゼントと私

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死神と幼き者その1

 時刻は朝早いとは言えないが、まだ正午までに数時間ほど余裕のあるくらい。
 いつもなら仕事にあぶれた冒険者たちが、宿の亭主の作った食事をかき込みつつたむろしている≪狼の隠れ家≫だが、最近は宿の掲示板に貼られる仕事の数も多く、ほとんどの所属冒険者が出払っていた。
 ぽつり、ぽつりとしか客の居ない中で、この宿の経営者がどっかりと腰を下ろしているのは、人形のように整った顔をした、黒い翼の青年の向かいである。

死神と幼き者

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魔術師その3

 また十数分ほどは同じような景色ばかりの回廊だったが、急に前の方が開けたと思うと、灰色の均等な大きさの石が、まるでレンガ造りのように並んだ壁に、一際大きな樫材らしきドアがある。
 素早く音も立てずに扉へ近寄ったアンジェは、ホビット特有の器用さと身の軽さで調べ始めた。

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魔術師その2

 テーゼンに連れられやってきた場所には、みずぼらしい小さな小屋がひとつあるのみだった。
 アンジェが腕を組んで仲間に問いかける。

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魔術師その1

『わたくしどもの村に嫌がらせをする大変意地の悪い魔術師を、どうか懲らしめてやってください』

 旗を掲げる爪が一週間ほど前に≪狼の隠れ家≫で見つけた依頼書には、そう書かれていた。

魔術師

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えんまの領域その2

「この気配の数…間違いなく、大勢の妖魔がいるよ。この先は絶対危険だね」
「匂いもきついしな」

 アンジェとテーゼンが、それぞれ仲間に報告する。

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えんまの領域その1

 まだ少しぎこちない雰囲気が漂ってはいたが、それはやっと旗を掲げる爪として活動できるようになった彼らにとっての再出発だった。
 鉱山に住み着いた怪物の討伐依頼……手ごろな報酬と、自分たちのチームワークの再確認について、一番最適な依頼と思われるものをウィルバーが探し出してきた。

えんま

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水底の棺その1

 悲しい出会いの結果、リューンから逃げた。
 どこへ行こうという当てもないまま辿り着いた小さな村は、ひっそりとした森の奥にあり、静かな時間がただ流れていた。
 何気なく散策に出ると、村のそばには湖があった。
水底の棺

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芋虫男と墓場の犬その3

 宿の中は朝食の時間で、シシリーは恐れていたのだが――アンジェとウィルバーは親父の使いで他の宿に出かけており、テアは何やら知り合いの元へと出かけているらしく、会わずに済んだ。
 宿の亭主の作るパンとスープはシンプルだが、飽きない味で本当に美味である。
 食べ終わる頃、宿の亭主が朝食の乗った胡桃材のお盆を持ってきた。
 昨日に引き続き、持って行けということであろう。

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芋虫男と墓場の犬その2

 翌朝、目が覚めると日が高く昇っていた。
 シシリーは一日が短くなったような気分になりながら、遅い昼食を摂った。
 すると、宿の亭主から使いを頼まれた。

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芋虫男と墓場の犬その1

 その日は朝から霧の濃い一日であった。
 教会の鐘が夕暮れを知らせる頃になっても、石畳はぐっしょりと湿っていた。
 背後にはリューンの聖北教会がそびえたっており、こちらを見下ろしている。
 シシリーは、革靴を履いて滑りやすい石畳にこびり付いたコケを避けながら歩いていた。

芋虫と犬

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抜き身のナイフその3

 道行く人たちに、なぜあいつは走っているんだと奇異の目を向けられながらも、彼は走った。
 石畳で整えられた道を、どたどたと足音を鳴らしながら駆ける。
 翼が生えている青年が自分の足で走っているのだから、それはもう目立っていた。
 さすがに疲れを覚え、テーゼンは徐々にスピードを落としてゆっくり歩き始めた。
 はぁ、はぁ、と荒く息を吐きながらも、歩みだけは止めず。
 人の流れに沿って通行人の速度に合わせる。
 この街に流れている川のごとく、人の波に浚われ消えていくつもりで進んでみた。

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抜き身のナイフその2

 独特の浮遊感、口を動かそうにも、うまく呂律が回らない。
 テーゼンは自分が夢を見ていることに気づいた。
 しかし、どうにも映像が鮮明にならない――夢というのは大体がそういうものかもしれないが。

(ふぅ……)

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抜き身のナイフその1

「……悪魔、か。化けモンって言われなかっただけ、マシなのかな」

抜き身のナイフ

 迷宮の魔神・アポクリファを倒した後に、自分の正体を知ったシシリーの彼の存在を拒む言葉から、テーゼンは旗を掲げる爪のパーティを離脱していた。
 ≪狼の隠れ家≫にも帰らず、交易都市リューンを出て中央行路から外れ、まったく知らない街を訪れている……訪れる、と行ってもいいのか。
 彼に当て所はなかった。

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時に大胆に、時に慎重に、その3

「とりあえず入り口に着いたね」
「ここで戻ってくるのを待ちましょう。…本当は奇襲をかけたいぐらいですが…」

 ちょっと肩を落とし気味のウィルバーだったが、乾いた地面を踏みしめる複数の足音が耳に届くと、アンジェと同じようにいつでも戦闘に入れるように、やや足を開いて杖を構えた。
 入り口の光が遮られ、初老ぐらいの男が現れる。

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時に大胆に、時に慎重に、その2

 血気に逸ったアンジェは、遠距離攻撃や暗殺で狙うこともなく、正面切ってウルフと戦ったが、口にした宣言どおり2分とかからず狼を沈めてみせた。
 最初の攻防で爪に引っ掛けられ軽傷を負ったが、それ以外に怪我をした様子はない。
 そんな短い戦闘のすぐ後に、洞窟から現れた賊と思われる目つきの悪い男が出てきたが、大木に(死骸と一緒に)隠れることでやり過ごした。
 自分たちの推測がとりあえず当たっていたため、洞窟の主とその一味を潰す、ということを目的に、見回りを警戒しつつ洞窟の中を探っていくことにする。
 ウィルバーは念のため、入る前に【理矢の法】を唱えておき、くるくると魔力の矢が自分の周囲を飛交う形にしておいた。

「…それにしても、敵の気配があまりしないですね。…主はここにいるのでしょうか?」
「あー、なるほどね。確かにピリッとした空気じゃないね。親父がいない≪狼の隠れ家≫みたいだ」
「…その表現が適切なのかはちょっと私には分かりませんが…」

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時に大胆に、時に慎重に、その1

 時刻はそろそろ正午にならんとしている。
 ≪狼の隠れ家≫の一階は賑やかだったが、とある一角はどことなく陰鬱な雰囲気に包まれていた。

大胆慎重

 テーブルについている人数は2人――なんともアンバランスな取り合わせである。
 一人はこげ茶色の髪と瞳をした、10歳前後の年の頃に見えるホビット族の娘。
 こう見えても一人前以上の盗賊として働くことが出来、必要とあれば人体の急所を的確に短剣で攻撃したり、腕輪に仕込んだ鋼糸で敵の動きを止めたり出来る。
 彼女は小さな指でコインを手品のように目まぐるしく弄びながら、傍らの連れが捲っている羊皮紙をたまに覗き見ている。
 やや薄くなりかけた頭部の気になる、30代半ばほどの平凡な顔立ちの男性は、黒い瞳を瞬かせながら仕事を探していた。
 やがて諦めたように手を止め、眉間を指で摘む。

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迷宮のアポクリファその6

 『虹の間』にあったプリズムの謎を解明し、その場にあったガラス瓶へプリズムの光を落としこんで絵の具と化すと、冒険者たちは今までスルーしてきた絵画のあった部屋へ移動し絵具を使おうとしていたのだが、その道中で襲われかなり消耗していた。

「まったく……あの天使みたいなの、なんだったんだろ?」
「変な生き物だっただよな。ひらひら俺の攻撃を避けやがって」
「落ち着いて、ロンド。……いよいよ、最後の絵の具よ」
「じゃああたしがやるよ。みんな、周り警戒しててね」

 シシリーに抱えられたアンジェは、赤色の絵具を檻の男に貰った筆に馴染ませ、彼の檻の下にあった褪せた絵画にそっと下ろす。

「………!?」

 たちまち絵が美しい赤に染まる。

アポクリファ11

 地平から昇る赤い輝きが空をいっそう美しく見せている、夜明けを描いた絵が復元され――同時に、遠くの方で何か巨大なものが動くような音がした。

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迷宮のアポクリファその5


 檻の中の男が崩れ去る際に託された絵筆――男は画家だったらしい――を懐にしまったシシリーは、彼が迷わず天へ迎え入れてもらえるよう祈った後、搭の探索の続きを仲間たちに促した。
 女司祭が魔神であるという情報も手に入った今、最低限の仕事はここで済ませたはずだ。
 搭を脱出する手段を、考えておかねばならない。

「脱出に関係ありそうなのは塔の部屋の絵――だけど…」
「あのプリズムも関係ありそうじゃのう」

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迷宮のアポクリファその4

 この搭の部屋をいくつか探索していて、わかったことがある。
 搭の主要らしい部屋には、すっかり色の褪せてしまった絵が飾られており、石版に刻まれている部屋の名前はその絵のタイトルから取っているらしいということだ。
 回廊は夜のしじまに守られているように静かで、細長く優美なアーチを描く窓から見えるのは、相変わらず外の世界に満ちているらしい霧であった。
 そんな薄暗い空間を切り裂くように、次の部屋はぼんやりとした光に満ちていた。
 辺りを見回すと、高い天井のてっぺんがガラス張りになっており、そこから空の光が柔らかく差し込んでいるらしい。

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迷宮のアポクリファその3

 シシリーは昨夜、ほとんど眠らずに屋根裏部屋に残されたままの”経典”の翻訳メモを、自分なりにまとめて写しを作ってみていた。
 翻訳の作業というのは魚人語でやってみたことがあったものの、本来は専門外であり、焦燥感や募る不安によって苦痛にも感じられたが、仲間たちの集うテーブルに翻訳メモを広げた時には、常とはまったく別の種類の達成感を味わった。

「……ん?姉ちゃん、これは?」
「みんなに、相談したいことがあるの」

 リーダー役を務めている少女は、昨日までの出来事をつぶさに話した。

「じゃ、これが経典の一部ってこと?」
「確かに、何か危険な感じがするな」

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迷宮のアポクリファその2

 翌日もまた雨だった。
 午後から降り続いた雨が止まず、シシリーはこの分だとまた仕事をせず宿に足止めになるだろうか、と考えていた。
 彼女の目の前には、それぞれ朝食を摂ったり窓の外の天気を伺ったりしている。
 だが、その中にはまたもやウィルバーの姿はなかった。

「今日も、これという仕事はないのう……」
「あれからいい依頼は結局なしなのね」
「うむ。そうなのじゃ…」
「そういえば、きのうおっちゃんは仕事を探しに行ったの?」
「いえ、違うわ。たぶん――」

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迷宮のアポクリファその1

「暗いな」

とぼそりと囁いたのは誰であったか。
 冒険者たちは闇に身を伏せていた。
 一行のリーダー役を務めているシシリーが、小声で懸念を口にする。

「相手にエルフや吸血鬼…夜目の効く連中がいたらやっかいなことになるわ」
「どうでしょうか。治安隊の話では――」

 落ち着いた声音で応じたのは、≪万象の司≫を握り締めたウィルバーである。

アポクリファ


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赤い一夜その2

 装備やアイテムの確認をし終わった旗を掲げる爪は、リューン治安隊の詰め所へ向かった。
 パーティが割り振られた見張り所は、小さな無人の家だった。
 ドアや窓もしっかりと閉じ、暖炉はいつでも使える状態で残ってはいるが、現在火は使えない。
 煙で見張りに気づかれる恐れがあるからである。
 耳に届いた微かな水滴の音に、テーゼンは眉をひそめた。

「……雨か」

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赤い一夜その1

「お前さん方、さっきからその貼り紙に興味があるみたいじゃないか」
「そりゃね。こんなわけありの書き方をされてちゃ、無関心でいる方が難しいよ」

 軽く肩を竦めてみせたアンジェは、視線をもう一度元に戻した。
 宿の羊皮紙に書かれている文章は、次のようなものである。 

赤い一夜

『詳細は貼りだせないが、腕の立つ冒険者に引き受けて欲しい仕事がある。
 仕事はひと晩で終わるもので、報酬は銀貨一千枚を予定している。
 我々は早急に戦力を欲している。
 我こそはと思うものは、是非手を貸して欲しい。』

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とある外交官からの依頼その2

 中は装飾という単語をそぎ落としているようで、きわめて殺風景な佇まいである。
 まるで空き家のようであった。
 突如、数の少ない物陰から柄の悪そうな男たちが現れ、一行を取り囲んだ。
 明らかに右手にナイフを仕込んで握っていると分かる小男が、不快な笑みを浮かべて言う。

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プロフィール

Leeffes

Author:Leeffes
こちらは拙いリプレイ書きのブログです。
当ブログは、Cardwirth関連に限りリンクフリーです。報告は不要ですが、もしご報告があれば相互リンクさせていただきたいと思っております。

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