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Sun.

主なき人形 6  

「まさか、あんな風に思ってたなんて・・・」

 ふう、とため息をついたのはアウロラだった。
 今、彼らはすでにリューンへの帰途についていた。
 結果として、確かに魔術師イアンを殺したのは村長である青年だった。 
 しかし、彼の言い分は、エディンの推理とは主張を異にしていたのである。

「・・・イアンさんを殺したのは確かに私です!しかし、それは金のためとか、そういう事ではないんです!」

と、青年は叫んだのだ。

「イアンさんがこの村にやってきたのは、父が他界してから間もなくの事でした」
「私は生前の父に孝行する事ができず、悔いていました。それで、イアンさんに父を投影して看病したのです」
「掘削作業は楽になり、私達はとても感謝しました。しかし、私はそのゴーレムに危険な香りを感じていました。それは炭鉱から人の手を除き、鉱夫の仕事を奪っていたのです」

 そして青年は、イアンに与えられた首飾りがゴーレム制御のアーティファクトで、首飾りを使えば誰でもゴーレムを動かせることに戦慄したのだという。
 ゴーレムは、鉱山の労働者の仕事を奪う潜在的な危険を持つ悪魔の道具だ、と青年は主張した。
 ルーシーはあまりのことに唇を震わせながら、父の学友の命を奪った男に詰め寄ったのだ。

「あなたは・・・、そのために実の父のように慕う人を手にかけたと言うの?狂ってるとしか思えない!」

 しかし、静かに青年は答えたのである。

「狂っている?・・・そうかもしれません。私にとっては村への愛も、イアンさんへの愛も本物だ!その狭間で私はこのような行為に至ったのです。狂っていると言うならそう言えばいいでしょう」

と・・・・・・。
 エディンが都市の治安隊に引き渡すと宣言した時も、青年は落ち着いていた。
 自分のしたことが殺人であったことを理解しながらも、ゴーレムは悪魔の道具だという主張を変えるつもりがなかったからだろう。

「・・・ゴーレムは人間社会に必要のない物なのかしら」

 ルーシーは沈痛な面持ちで言った。

「彼の言葉を気にしているのか?」

と、エディンが振り返る。

「まあ・・・ね。私が社会の役に立つと思う物が悪魔の道具って言われて、それは効くでしょう?」
「そうだな。彼の言うことは一理ある。いや、多くの真実を言い当てているかもしれない」

ScreenShot_20121210_175120296.png

 エディンは考えつつ言う。

「だが、二面性というのはどんな事にだってある。一方では有用であり、一方では危険でもある」
「物事の真理という奴だな」
「ああ。バランスを逸脱すれば、社会が淘汰するさ。俺達は、自分の信念に従って道を邁進すればいい」

 エディンとアレクが肩を並べて言葉を重ねる。
 そして、普段つまらなそうに引き結ぶ唇を微笑の形に直し、仲間を見渡してからエディンは言った。

「中には共に道を歩んでくれる者もいる。・・・そうだろう?」
「・・・いいこと言うじゃない」

 ルーシーは瞳に希望をちらつかせて微笑んだ。

※収入600sp+400sp、ゴーレムのコア※

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■後書きまたは言い訳
16回目のお仕事は、クエストさんの主なき人形です。
以前に記載した機械仕掛けの番犬の、有志様による続編のひとつとなります。
シナリオ内では、ルーシーの名前を明確に出さず「少女」と表現されていますが、このシナリオをやるには、クーポン「機械仕掛けの番犬-依頼解決」を所有してなければなりません。
実は村長の青年が死亡するルートもあるのですが、このパーティなら脅威を除いてから真相究明だろうと思い、このような感じになりました。

物語の冒頭にある集落は、カムイさん作の世捨ての集落のことです。こちらの店シナリオもオススメ。
そこに絡んで、ジーニとミナスが感じ悪くなっていますが、普段ならジーニが多少の悪口は流すので、二人は特に仲たがいしているわけではありません。
今まで呪文の研究をしているわけではなく鑑定人としての役割が大きかったので、塔の戒律を破る相手にはどうしても当たりがきつくなるのです。
また、道化師さん作の職業選択で、ジーニにセージ技能をとっています。これで物品鑑定や解読が可能になりましたので、ちょっと鑑定人らしくなったでしょうか?

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。


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2012/12/30 13:31 [edit]

category: 主なき人形

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Sun.

主なき人形 5  

 事前に補助魔法を唱え、【野人召喚】で地の精ファハンを呼び出しておいた一行は、再びオデッサ炭鉱にアタックしていた。

「お客さんの登場だな」

 エディンの合図で”金狼の牙”たちは得物を握り、素早く戦闘態勢を整えた。
 次々と繰り出される攻撃の後、アレクの放った【召雷弾】でゴーレムに止めを刺す。

ScreenShot_20121210_171344375.png

 しかし、コアが光り始め、ゴーレムの体が見る見る内に元通りに修復されていく・・・。

「やっぱりコアを捕らなきゃ終わらない、か」

 エディンは仲間から一歩離れ、彼らの間断ない攻撃でゴーレムに隙ができるのを窺った。
 途中、アレクがゴーレムの大きな拳に吹き飛ばされたものの、ギルの【暴風の轟刃】によろけたゴーレムの後ろ側に回ったエディンが、

「・・・取った!」

と叫んで、コアをゴーレムから引き抜いた。

ScreenShot_20121210_171959937.png

 ゴーレムはその動きを停止した。これで依頼は達成したと言っていいだろう。

「で、エディン?どうするのよ、村長のことは」
「このコアを見せて依頼料を払い終わったら、上手く切り出してみる」

 ジーニの質問にエディンはぼそりと答える。

 つまり、エディンの推理はこうだ。
 村長である青年は、魔術師イアンからゴーレム制御用のアーティファクトの効果を教えてもらい、ゴーレムの独占を考えた。
 そこでイアンを殺し、ゴーレム関連の書籍を処分して、稼動可能なゴーレムを隠す。
 後は一体を炭鉱で暴れさせ――冒険者にそれを破壊させる。
 鉱夫にはゴーレムがその際にすべて破壊されたと説明し、残りを自分の物とする・・・。
 その後は、イアンの日記にもでてきた業者に、高値で売り払うつもりなのではないか。

 日記にあった事と、エディンが村長に見せてもらった首飾りのことを合わせて考えると、その推理は妥当なように思われた。
 ”金狼の牙”たちは、ルーシーが人質にとられないようアレクとアウロラに護衛役を任じ、酒場へと重い足取りで入っていった・・・・・・。

2012/12/30 13:09 [edit]

category: 主なき人形

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Sun.

主なき人形 4  

 一度、オデッサ炭鉱に入った一行だったが、ゴーレムに仕込まれているコアが光り出し、ルーシーが叫んだことで退却を余儀なくされた。

「間違いない、自己再生型のゴーレムだわ!掘削用の割には随分と質の高いコアを使ってるわね!」
「・・・困ったな。あれを倒すにはどうすればいいんだ?」

 エディンのぼやきに、ルーシーが答える。

「そうね、やっぱりコアをゴーレムから奪取するしか方法はないわ」
「・・・奪取、か。気楽に言ってくれるぜ」

ScreenShot_20121210_163228328.png

 悪態をついたギルだったが、他に方法もない。
 ゴーレムの一撃を受けたジーニが気絶していることもあり、一行は酒場に戻ることにした。
 ジーニの回復をアウロラとミナスに任せ、ゴーレムからコアを奪取するイメージトレーニングをしていたエディンだったが、村長兼酒場の主人である青年が身につけている首飾りに興味を抱いた。

「・・・ん、綺麗な首飾りだな」
「・・・これですか?これは私の父の形見でして、肌身離さず持っているのです」
「親を敬うこと篤し、だな。どこかの誰かに見習ってほしいところだ」

 からかうようなギルの言に、ルーシーが不機嫌そうに「聞こえてるわよ」と彼の肩をつついた。
 やがて意識を取り戻したジーニが、ゴーレム起動と停止のコマンドワードが、イアンの庵にあるのではないか、と言い出した。

「ありえない話ではない。先の≪蒼石の指輪≫もそうだが、魔法の品は合言葉が決まっていることが多い。ゴーレムも例外ではなかったはずだ」

 アレクが、元冒険者である父母に教わった知識でジーニを援護する。
 結局、それならイアンの家に寄ってから炭鉱に行こう、ということになった。

 青年に教わった場所に建つその小屋は、みすぼらしくはないものの小さなものだった。
 しかし、窓の傍に花瓶が据えてある等、誰かによって管理されているのが窺えた。 
 死後も惜しまれる人格者だったのだろう、魔術師にしては珍しいケースである。
 興奮した様子を隠しきれないルーシーが、

「きっとゴーレムに関するものすごい蔵書があるんだわ」

と、本棚に並ぶ書物の背に書かれた文字を追っている。
 ふと、その顔が困惑した態になった。

「おかしいわ。ちょっと眺めただけだけど、ゴーレム関連の書籍がまったく見当たらないなんて」
「・・・確かにそれは妙ね」

 同じように本棚の書物を調べていたジーニが言う。この小屋を詳しく調査する必要があるかもしれないと、彼女は鋭い目線を辺りに這わせた。

「・・・ここだけ床の色が濃い。元は何かがあったと考えるべきでしょうね」
「・・・とすれば、本棚。ゴーレム関連の書籍が入っていたものかしら」
「・・・恐らくは」

 ジーニとルーシーは顔を見合わせ、膝のほこりを払った。
 その時、エディンがふと気になった寝台の隙間に手を突っ込んだ。

「何してるんだよ、エディン」
「ここに何か挟まってる・・・ほら、日記じゃないか?」

 そして古びた皮の表紙の本を取り出し、その中を改める。

「・・・この本の文面、古代文字のようだな。解読できればいいが」
「やってみましょう。貸してちょうだい」

 エディンから本を受け取ると、ジーニは慣れた手つきでページをめくり、その複雑に絡み合った綴りを細い指先で追っていった。

「『ここには日記の類を記す。わざわざ古代語で書くのは、読まれると恥ずかしいと感じる私の浅はかな感情によるものだ。』・・・村にやってきた経緯が書いてあるわ」
「あのゴーレムについて、何か書き残してないか?」
「ちょっと待ってね、もう少し進んでみる」

 旅の途中で負傷し、オデッサ村の前で気を失ったという魔術師イアンの述懐を斜め読みしたジーニは、次第に彼が村長である例の青年に、家族のような情を感じていた事を読み解いていった。
 世擦れた魔術師に、この村の人々は純朴な好意を向けたものらしい。
 その恩に報いるため、あの掘削用ゴーレムを開発したのだという。

「えーと。『今は私の魔力で動かしているが、制御用のアーティファクトをあの青年に渡した。いずれ種明かしをしよう。青年は喜んでくれるだろうか?』・・・・・・ってあれ?」
「アーティファクト?知らずに持ってるのか、あの村長」

 ジーニの読解に、エディンは首を捻った。そしてその後、続けられたジーニの朗読に、黒いたれ目に緊張をみなぎらせることになる。

「『アーティファクトには青い宝石を使った首飾りをあつらえた。あれはいずれ、この村の繁栄の象徴となるだろう。』だって。後日、ゴーレムを買い取りしたいって堀削業者がいたらしいけど、一蹴してるようね。ずいぶんとあの青年に肩入れしてること」
「青い宝石・・・首飾り・・・」

 エディンの脳裏に、かの青年とその首飾りが浮かび上がる。ジーニが続けて読んでくれた業者のくだりに、とある推理が固まりかけたが、それをこのまま突きつけても恐らく認めはしないだろう。
 隙を突く必要がある。
 エディンは、「炭鉱に行こう」と短く言うに留めた。

2012/12/30 13:03 [edit]

category: 主なき人形

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Sun.

主なき人形 3  

 青年が招いた彼の自宅の中は驚いた事に酒場のカウンターだった。
 冒険者が青年を見やると、悪戯っぽく微笑を浮かべている。

「言い忘れてましたが、私はこの村の酒場を営んでおりまして。勿論お代は結構ですよ」
「・・・それで、依頼の内容は?」

 出された茶を傾けて一息ついたミナスが切り出した。

ScreenShot_20121210_161035593.png

 ルーシーは呆れた表情になった。

「・・・まさか、私の依頼の最中に村の依頼を受けるつもり?」
「蔵書を見せてもらうなら数日はかかるんじゃない?その間暇を持て余すのもどうかと思ったのよ」

 けろりとした様子でジーニが説明し、ルーシーはますます呆れ顔になったが納得したようだ。
 しかし、青年が話し始めたその依頼の内容というのは、イアンとも関わりの深い案件だった。

 魔術師イアンは、なんとこの村で掘削用ゴーレムの開発に生前、成功していたのだという。
 ゴーレムは古代文明時、警備用に製作されたもの。それゆえ、現代の技術もその分野に特化しているそうで、魔術師イアンがゴーレムに掘削を行わせる事ができたのは画期的な研究の成果だと言っていたらしい。
 「ところが」と、青年は顔をゆがめて続けた。

「イアンさんが亡くなられた事でそれらのゴーレムは動きを停止してしまいました」
「炭鉱の村にとっては死活問題だな」
「・・・それだけならよいのですが、ゴーレムの内の一体が炭坑内で暴走し始めたのです。これには困り果てました」

 アレクの相槌に少し間が空いたものの、青年は頷いて言った。

「そこで、村民の総意で冒険者の方々を雇い、ゴーレムを破壊してもらおうとそういう次第になったのです」

 ジーニが、現実的な彼女らしく腕を組んで応じる。

ScreenShot_20121210_162243687.png

「・・・事情はわかったけど。依頼を受けるか受けないかは村長と話してからにするわ」
「言い忘れていましたが、私はこの村の村長も努めておりまして。親の七光りではありますが」
「これはしてやられたな」

 ギルは快活に笑った。
 報酬は600spが精一杯だと言う。条件としては相場より安い気がするが、この鉱山以外何も無い小村で暇を持て余すよりはましだろうと、”金狼の牙”たちは依頼を受けることにした。
 休息はこの酒場を自由に使って構わないという。
 炭坑の場所やイアンの家を教えて貰った一行は、早速出かけることにした。

2012/12/30 13:00 [edit]

category: 主なき人形

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Sun.

主なき人形 2  


 炭鉱の村オデッサに到着した一行は、辺りをゆっくりと見渡した。
 オデッサ炭鉱はさして有名でもない、小規模な鉱山である。
 そのため、炭鉱が発見された後に村が成立しても、町には発展しなかった。
 村民は大半が鉱夫とその妻、子供達であると言って差支えない。
 流れ者の寄り集まった村、それがこの炭鉱の村オデッサだった。

 軋みをあげる水車や茅葺き屋根の家々を眺めていたルーシーが、ぽつりと言った。

「・・・イアンさんはこの村の小屋にこもって研究をしているらしいわ」

 魔術師イアン。
 ルーシーの父と違い、古典的とも言える石のゴーレムを研究しているコンストラクターだという話だ。

「・・・まずは村の人にイアンさんの家の場所を聞いてみるとするか」

ScreenShot_20121210_155153828.png

 リーダーらしく意見を言ったギルに仲間たちは頷き、辺りに村人がいないか探し始めた。
 すると、村民らしい青年が薪割りに精を出していたのが見える。

「・・・失礼」
「・・・はい、何でしょう?」

 ギルは、なるべく彼を脅かさないよう武器を隠しつつ、青年の後ろから控え目に声をかけた。
 その茶髪に緑の目と衣装が印象的な青年は、整った顔を困惑の色に染めていたが、やがて納得したように口を開いた。

「ああ、もしや依頼を受けてくださる・・・」
「・・・依頼?」

 青年の言葉を聞いて、アレクは怪訝そうな顔をする。
 少し顔を見合わせた後、思い切ったようにルーシーが、

「私達はイアンさんという魔術師に会いにきたのだけど」

と、自分達の目的を告げた。

「・・・イアンさんに?これは失礼、依頼の張り紙を先日出したものですから、その方々とばかり・・・」

 イアンに会いにきた用件を聞かれ、ルーシーが詳細を説明すると、青年は残念そうに眉をひそめ、目的の人物が亡くなっていることを一行に教えた。
 思わぬ凶報に、素っ頓狂な声を上げるルーシーを見つめ、アレクは自分の頭を撫でた。

「・・・まいったな。どうする、帰るのか?」
「ちょ、ちょっと待って。イアンさんの蔵書の一部をいただけるかもしれないわ」
「たくましいですね。先に墓参りでもするのが学友の娘の務めでしょう?」

 聖職者らしく、礼儀と年功序列にうるさいアウロラがそう言って少女を軽く睨む。

「うっ・・・」

 ルーシーはそのまま沈黙し、青年にちらちらと視線を送る。

「お墓参りですか。よければご案内しますが、お疲れではありませんか?」
「んー。僕、もう歩きつかれちゃった」
「・・・・・・ま、確かにちょっとした強行軍だったしな」
「先に私の家で茶でも召し上がってください」

 ぷっくりと頬を膨らませるミナスに、エディンが同意するように口を添える。
 その様子を微笑ましげに眺めた青年が、休憩を取るよう薦めてくれた。
 続けてそっと笑って言う。

「お時間があるなら先の依頼の話でも・・・」
「・・・ああ、なるほど」

 アレクが青年の如才なさに感心した。

2012/12/30 12:57 [edit]

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Sun.

主なき人形 1  

「それにしても、寂しそうなお姉さんだったよね」
「ああ、あの世捨ての集落か。変わった紋様を体に描いてたな」

 ミナスとギルが、先日通りかかった集落で知己となった女性の話をしている。
 元々、賢者の塔で新たな魔法を開発していたが、塔の戒律にそぐわなかったようで追い出されたと言っていた。

「ああいうのはね、たまーにいるのよ。駄目だって分ってても、禁じられたモノに手を出す種類の魔術師ね」

 その女性から二度目の訪問時に貰った、≪蒼石の指輪≫というマジックアイテムをじっくりと鑑定しながら、ジーニが二人の会話に口を挟んだ。

「気にするまではいいけど、あんまり入れ込むんじゃないわよ、ミナス。塔の戒律が全てとは言わないけど、理由があって追われたんだから」
「ん・・・・・・ジーニは、結構冷たいね」
「言ってくれるじゃないの」

 口ほど気にした様子も無く、ジーニはふふん、と鼻を鳴らした。

「自分で制御できない力なんて、追い求めるもんじゃないのよ。ろくな結果にならないからね」
「そりゃあ・・・・・・そうかもしれないけど」
「そういえば、これから会いに行く依頼人も、新しい魔法の力に四苦八苦してる一人だわね。ギル、そろそろ出かけましょ?」
「ああ、元気だといいな。ルーシー」

 ジーニのその言葉をきっかけに、”金狼の牙”たちは装備を整えて出かけていった。

 冒険者達は以前に一度、とある少女から依頼を受けている。
 新種のゴーレムの戦闘データを得るモルモットとしての仕事だった。
 彼女の父は高名なゴーレムの研究者で、魔法力と蒸気機関によって動くスチームゴーレムを開発していた。
 少女はそのゴーレムを実用化すべく独自の研究を続けているのだ。
 ・・・もっとも、父親の方では彼女の研究を快く思っていない。
 ゴーレム研究の危険性と、女性は子供を産み育てればよいという性別分業主義によるそうだ。

 今回、冒険者達は父親に反発した娘の研修旅行とやらに付き合うハメになった。
 無論、これも依頼であるからには名誉にかけて完遂しなければならない。
 目的地は炭鉱の村オデッサである。
 その村には、少女の父と共にゴーレム学を修めた魔術師が今も研究を続けているらしい。

「・・・父親には内緒か?」

 ギルは楽しげに少女の様子を窺った。

ScreenShot_20121210_154027578.png

「当然、そういう事ね。私が暇を取れば、少しは私のありがたみがわかるってものでしょう?」
「依頼人が亡くなった時は何と報告すればよいでしょう。お父上に合わす顔がないではありませんか・・・」

 憂鬱そうな顔をしているアウロラは、最後までこの依頼を受けるのを躊躇っていた。
 性差別のルーシーの父親に対して同意見ではないものの、娘が父親を説得せずに、勝手に出てきたことを気にしているのである。

「ふ、不吉な事を言わないで」

 ルーシーは慣れない長距離を歩くことで染まった頬をふくらませて、冒険者を睨みつけた。

2012/12/30 12:55 [edit]

category: 主なき人形

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Wed.

血塗られた村 5  

 ”金狼の牙”たちが、出口に差し掛かったその時・・・。 
 待ち構えていたゾンビ達が襲い掛かってきた!!

「ワイトまでいます!気をつけて!」

 ≪氷心の指輪≫を使い、詠唱に集中するアウロラの注意が飛んだ。
 ワイトはゾンビやスケルトンより上級のアンデッドで、人の生気を吸い取る特殊能力がある。
 それを耳にして、あらかじめ地の精霊・ファハンを呼んでいたミナスは、さらに彼の眷属を召喚した。
 ギルと精霊が傷つけたワイトを、アレクの新しい技である【召雷弾】が止めを刺す。
 ジーニは、これ以上仲間が傷つかないようにと、【魔法の障壁】を唱えた。
 多少の傷は入ったものの、重傷に陥る者もなく、無事彼らはゾンビ達を退けることができた。
 ギルが額の汗を拭い、仲間たちに声を掛ける。

「ふう・・・。さあ、早く行こう」

 洞窟を出るとまばゆい太陽光線が冒険者達の目に飛び込んできた。
 すぐそこには無人の村が見える。
 アウロラは痛ましげに村を見やったが、気を取り直して言った。

「とりあえず聖西教会に行って、事情を報告しましょう」

 そうして、一行が村を抜け出した時。

「こいつらです!私が先程ご報告した怪しい連中というのは。おのれ抜け出したか!」

 ローブを身にまとった老人に、慇懃無礼の見本のような声が応えた。

「ガルミッシュに呼ばれてこんな所に来てみれば、貴方がたでしたか・・・・・・」
「お前は・・・ボルラス!?生きていたのか!?」

 ギルがその姿に驚きの声を上げる。

ScreenShot_20121205_223911078.png

 なぜなら、ボルラスを【暴風の轟刃】で倒したのは彼だったからだ。
 見覚えのある風貌の死霊術士は、なんともいえないオーラを漂わせている。
 その時、ジーニの持つ杖が微妙に震えた。

「何だというの・・・・・・?この男に反応している・・・?」
「おそらく、自分にアンデッド化する魔法をかけていたのでしょう」

 ジーニの疑問を払拭するかのように、ラインが言う。聖戦士として戦ってきた中に、そういう禁呪の類があるのを知ったのだという。

「なるほどね・・・。この杖は、死霊術の禁呪に反応したんだわ」

 対峙するボルラスは、己の周りにいるアンデッドを見渡して言う。

「ふむ、戦力が整っていない」
「ボルラス様、しかしまだこいつらを逃すわけには・・・・・・」

 ローブの老人が言い募るのを、ボルラスが手をかざして遮り、冒険者達の方の一点に視線を固定した。

「・・・・・・ん?フリッツか・・・・・・クックック・・・・・・よし」

 ボルラスは何事か呪文を唱え始めた。
 するとフリッツの顔が見る見る、死人のそれになって行く!!

「なっ!?フリッツ!!」

 ボルラスと同じオーラを漂わせたフリッツが敵陣に加わるのを見て、ラインが驚愕の声を上げる。

「・・・・・・・・・・・・・・」

 フリッツは何も応えない。
 エディンが、銀の細剣を抜きながら舌打ちした。

「フリッツにアンデッド化する呪文をかけていたのか!!」
「それでは頼みましたよ。クックック・・・・・・」
「畜生、待てボルラス!!」

 ギルの叫びもむなしくボルラスが【帰還の法】を唱えて去っていき、残された老人は新たな戦力をもって冒険者達に向き直った。

「死ぬがよい!」

 まだ先の戦いの負傷が癒えないまま入った戦闘は、初っ端からアレクが重傷、ミナスも重傷一歩手前までに追い込まれた。
 しかし、すかさず【光のつぶて】をフリッツゾンビに打ち終わったアウロラが、今度は【癒身の法】をアレクに唱える。

「よしいけ、ファハン!」

 エディンがフェイントを掛けたためにできた隙を逃さず、ミナスの声に応じたファハンがガルミッシュを倒す。
 そのミナスの傷は、ラインが【癒身の法】を唱えて癒した。

「すいません、皆さん・・・・・・フリッツの奴を、よろしくお願いします」
「・・・・・・ああ」

 血を吐くようなラインの願いに、エディンがワイトの爪を細剣で防ぎながら頷く。
 そして、髑髏のついた杖を振り上げ【火炎の壁】を唱えたジーニは、気の強い眼でフリッツだったゾンビを見やった。

「悪いわね、フリッツ。短い間だったけどさよなら」
「ぐはっ!!」

ScreenShot_20121205_225950875.png

 炎は、死体を焼き払った・・・・・・・・・。

「フリッツ・・・・・・・・・」

 ラインの呟きを、風がさらっていった。

 一行は聖西教会に行き事情を説明。
 近いうちにゾンビの巣窟と化したアラン村に軍勢を派遣する事が決定したらしい・・・・・・。

 一行は協力を約束すると帰路についた・・・・・・。

「そうですか・・・・・・フリッツが・・・・・・」

 教会で待ち焦がれていたレンフ司祭は、冒険者達の報告に驚き、そして聖戦士たちの最期に嘆息した。

「しかしよくやってくれました。これは報酬です」

 800spの報酬を得た”金狼の牙”たちは、ラインに別れを告げた。

「それではアラン村の件、準備が整い次第狼の隠れ家の方にお知らせいたします。その時はまた宜しくお願いします」
「では私達はこれで失礼させて頂きます」

 ジーニの挨拶を皮切りに、一行は宿へ帰っていった。

※収入800sp※

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■後書きまたは言い訳
15回目のお仕事は、マットさん&ジン太さんの血塗られた村(密売組織第二話)です。
こちらは、一話と違ってマットさんは概略を担当なさり、ジン太さんが製作されたそうです。
同輩のフリッツが敵に回り、ライン君には酷く気の毒なことになってしまいました。
ボルラス許すまじ!ですね。”金狼の牙”達としても、決してこのままにはできないでしょう。

ジーニの使う≪死霊術士の杖≫は、このシナリオと関係ないのですが、死霊術の禁呪やら生きてる人間のアンデッド化やら、非常に面白い要素がてんこ盛りだった為、杖が反応したということにしてみました。
今のところ、彼女に死霊術を習わせる予定はないのですが、ひょっとしたらシナリオ次第で・・・?

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
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2012/12/12 21:25 [edit]

category: 血塗られた村

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Wed.

血塗られた村 4  

 どこからか声がする・・・・・・。

「おい、おい、大丈夫か、起きろ!!」

 目が覚めると、ツンとした匂いが鼻をついた。
 冒険者達はようやく正気を取り戻し、辺りを見まわすと鉄格子に囲まれている。
 ラインが、眠りに落ちた際に打ったらしい頭を抱えつつ言う。

「どうやら捕まったようですね。ここはどこでしょうか・・・・・・?」

 するとすかさず、

「ライン?ラインじゃないか!?」

という声がした。
 声のした方を向くと、壁際に力強い風体をした男が座り込んでいる。
 見慣れない男に一瞬警戒の態勢をとった”金狼の牙”たちだったが、ラインが親しげに男へ寄り、その肩を叩いたことで体から力を抜いた。

「フリッツ!無事だったか。他の皆はどうした!?」
「ほとんどの奴がやられた。ゾンビーにされちまったんだ・・・・・・。ま、俺も順番待ちなんだけどな」
「えっ!?ゾンビー!?ヴァンパイヤにやられたんじゃなかったのか?」

 ラインの同輩らしきフリッツの台詞に、ミナスが小さく叫びを上げる。
 フリッツは静かに頭を振った。

「ヴァンパイヤ討伐は成功したんだ。その帰り道の事だった、突然数十体のゾンビに囲まれた、アレはあの村の住人だった・・・・・・」
「そんな事が・・・・・・」

と言ったきり、ラインは絶句している。
 ラインに代わってアレクが問う。

「あんたがずっとここにいたのなら、敵について何か分かったことはないか?」
「どうやらゾンビパウダーの密売組織が絡んでいるらしいな・・・・・・聖戦士団のほとんどは、幹部と思われる凄腕の魔術師にやられちまったんだ」
「ゾンビパウダーの密売組織か!」

 アレクが鋭い舌打ちを放つ。
 どうやら衝撃から立ち直ったらしいラインが、ようようと口を開いた。

「で、ほとんどがやられたと言っていたが、何人かは脱出できたのか?」
「ゾンビーどもに襲われた時、何人かの聖戦士は逃げる事ができたようだったからな・・・・・・」
「ふむ、何人かは無事か・・・・・・」

 ラインとフリッツのその会話に、エディンは首を捻った。逃げた聖戦士たちが無事であるならば、どうして1ヶ月以上もの間、何の音沙汰もなかったのだろうか?
 同じ事をラインも思い当たったようで、素直にそのことを口に出した。

「しかし、無事に聖西教会まで逃げ切れたとして、なぜ聖北教会に知らせが来なかったんだろう?」
「・・・教会内の体裁や派閥が壁になって知らせが遅れたとしか思えないな・・・・・・」
「ああ・・・・・・体裁か・・・・・・」

 納得したがやりきれない様子で、アウロラが嘆息した。

ScreenShot_20121205_220615312.png

 確かに、ヴァンパイヤ討伐に成功したはずの教会の精鋭たちが、何者とも知れない魔術師にしてやられたとは、教会の聖戦士に対する信頼性が無くなるだろうと隠す気持ちは分かるのだが・・・・・・。

「素早く対応を取っていれば助かった奴らも大勢いただろうに!」

 フリッツは怒りの拳を石壁に打ちつけた。
 仮にも討伐隊に選ばれるだけの腕前があるのだ。それだけの実力者が、為すすべも無く牢に閉じ込められ、仲間がゾンビにさせられるのを見てきたとなれば、彼の教会に対する怒りも無理も無いだろう。

「クソ!これだから聖職者って奴は!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

 ラインは赤くなったフリッツの拳を握り締め、黙って彼の怒りと嘆きを押さえ込むかのように震えている。

(聖職者の怠慢か・・・・・・)

 それで失われた同胞たちの生命のために、ただひたすらラインは祈った。

「話は分った。よし、とにかくここから逃げ出そう」

 全ての話を黙って聞いていたギルが、開口一番、きっぱりと言った。

「よっし、さすがリーダー。決断してくれる時はしてくれるねえ」
「石壁を破壊するとかは止めてよね。建物の造りをずっと見てたけど、それやったらこっちが下敷きになるわよ」

 たちまち、エディンが牢を調査し始め、今まで黙って辺りを眺めていたジーニが釘を刺す。

「脱出できるんなら、さっさと脱出したい所だが・・・」

 ギルの一言で急に生き生きとし始めた”金狼の牙”たちを、フリッツは驚いたように見やった。
 エディンがじっくり調べたところ、鉄格子には古めの南京錠がかかっているが何とかはずせそうだ。

「でも見張りがいるよね・・・・・・。まずアレを何とかしないと・・・・・・」

 牢の外の見張りは、ある程度の経験を持っているのだろう。駆け出しの冒険者にとっては、脅威となるかもしれないが、装備を取り上げられたとはいえ、彼らの敵ではない。本来なら。

「・・・・・・まず、不意を打つことですね。油断させなければ」

 アウロラの冷静な一言に、フリッツが頷く。

「よし、俺が仮病を使おう」

 真に迫ったフリッツの仮病にすっかりだまされた見張りは、うかうかと扉を開けてしまう。
 隙を突いて見張りを倒した一行は、装備を取り戻して牢の外に出た。
 フリッツによると、ここは村外れにある洞穴らしい。
 行き先を近いほうの聖西教会に定めて、一行は移動を開始した。

2012/12/12 21:04 [edit]

category: 血塗られた村

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Wed.

血塗られた村 3  

 行程は1週間ほど続いた。

「ここが問題の村だと思うのですが・・・・・・」

 村の入り口に入った瞬間、一向はその異常さに気がついた。
 ここには生きている人間の生気が無い・・・・・・。
 案の定、村を歩き回っても子供達の声などは聞こえてくる事も無く、透き通るような青空がかえってその不気味さを強調していた・・・・・・。
 ミナスが尖った耳の先をぴくりと動かす。

「精霊たちの声が聞こえない・・・・・・」
「なんなの・・・。これ・・・・・・・・・」

 寒気を感じたように身を震わせたジーニの怯えを打ち砕くように、ラインが声を上げる。

「こんな馬鹿な!このアラン村には30人ほどの人々が、生活していたはず!」
「・・・・・・何かのトラブルがあって、身を隠しているのかもしれない。まずは、村人を探そう」

 ギルが言うと、全員が頷く。
 そして小1時間ほど、人を求めて歩き回った一行だったが人影はまるでない。
 青い目に焦燥をにじませてラインが言う。

「う~ん、いったいどうなっているんだ・・・・・・。一度聖西教会の方へ行って話を聞いてみましょうか?」
「そうだよね、これじゃあ状況が掴めないものな・・・・・・」

 ミナスが呟く。他の仲間もあえて何も言わなかったが、ラインの意見に賛成らしく、教会の場所を彼に尋ねる。
 一行はここからしばらく離れた、聖西教会に向うことにした。

 辺りはいつのまにか暗くなり一行は交替で見張りを決め、キャンプをはることにした。
 見張りは、自衛もでき気配に鋭いアレクが勤めることになった。

「・・・・・・・・・・・・」

 しばらくして。
 仲間たちが健やかな寝息を立てる中、アレクは端麗な顔を焚き火の明かりに晒しながら、鋭い視線で辺りをうかがった。
 耳をすますと、カサカサと草むらが不自然にゆれる音がする。

「・・・・・・・・・?」

ScreenShot_20121205_210639937.png

 訝しげにアレクが剣の柄を握った瞬間、4体のゾンビがそこから飛び出してきた!

「くっ!!」

 とっさに抜き放った剣で1体を退治したものの、アレクの隙を狙い他のゾンビたちが仲間に襲い掛かる。

「起きろ!敵だ!」

 ギルとエディンがその声に跳ね起き、反応し損ねたアウロラとミナスをそれぞれ庇う。
 ジーニはどうにかゾンビの攻撃を杖で受け止めたが、防ぎきれずに腕を傷つけられた。

「痛いじゃないの!」
「すまない、ジーニ。声を掛けるのが遅かった・・・」
「まあいいさ、ゾンビならそんなに時間もかからないだろ。おい、アウロラ起きろよ、お前の専門だぞ」
「うー・・・んん・・・・・・??」

ScreenShot_20121205_210702296.png

 ギルがアウロラを揺り起こすが、中々目を覚まさない。
 ため息をついたギルが、斧を構えて向き直った。

「仕方ねえなあ」

 ゾンビとの戦いは、ギルの予測どおり程なく終わりを告げた。
 アレクが首をかしげる。

「なんだったんだ?」

 その横でエディンが、しきりと頭を振っている。

「なんだ・・・・・・?眠気が・・・」
「しまったっ。【眠りの雲】だ・・・・・・わ・・・・・・」

 死霊術士の杖を握り締め呪文に抵抗しようとしたジーニだったが、あまりの魔力の強さに抗えず、杖にもたれかかる様に眠ってしまう。
 他の冒険者たちも深い眠りに落ちていった・・・・・・。
 がさり、とゾンビが飛び出たのと反対側の茂みから、藍色のローブに身を包んだ老人が現われる。

「なんだこいつらは?・・・・・・戦力になるかもしれんし、ボルラス様に判断を仰がねばな・・・・・・」

 そして振り返り命じる。

「おい、お前等はこいつらを牢に入れておけ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 うつろな目を瞬かせることも無く、生きた死体は老人の命に頷いた。

2012/12/12 21:00 [edit]

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Wed.

血塗られた村 2  

 聖北教会に到着すると、今回はあっさりレンフ司祭のところに通された。
 司祭は、何名かの青い顔にびっくりしながらも声を掛ける。

「いやどうも・・・・・・。突然呼び出したりしまして、失礼をいたしました」
「いえ、そんな事は気にしていませんから。そんな事よりも、我々を呼んだ理由をお聞かせ願えますか?」

ScreenShot_20121205_203940953.png

 いつもであればリーダーであるギルか、交渉役のエディンあたりが話を切り出すのだろうが、教会であることと二日酔いの影響がないことから、アウロラがまず口火を切った。
 レンフ司祭は軽く頷くと、少し戸惑ったような様子で仕事の話を始めた。

「以前我々の聖戦士団が、聖西教会の依頼で、ヴァンパイヤに襲撃された村の調査に行った事は、お話した事と思うのですが・・・・・・」
「確かゾンビパウダーの密売組織を殲滅する依頼を受けた時に、そんなこと言ってましたよね?」

ScreenShot_20121205_204126968.png

 何とか吐き気の呪縛から抜け出たらしいジーニが、記憶を探って応じる。
 相槌を打ったレンフ司祭が、小さなため息をついて続ける。

「・・・・・・実は遠征から1ヶ月以上たつのですが・・・・・・。いまだに帰ってこないのです」
「ええっ!?」
「それは妙ですね・・・・・・。聖西教会といえば、往復2週間といった所なのに、連絡もつかないのですか?」
「はい、まったく・・・・・・」

 アレクが驚きの声を上げた他の仲間を制して気になることを訊くと、レンフ司祭が肯定した。
 ”金狼の牙”たちが、アケビ村の海精霊を助けてから結構な日にちがたっている。
 ゾンビパウダー密売組織の殲滅はそれよりも前だったから、確かに、レンフ司祭の戸惑い顔も腑に落ちる話だった。

「そこで貴方がたに調べに行って貰いたいのですが・・・・・・。もちろんそれなりの報酬は支払いさせていただきます」
「もちろん引きうけますよ」

 一も二もなく請け負ったギルに、エディンは苦笑しながらも同意した。
 聖北教会からの依頼ならば払い渋りはないだろうし、報酬が相場よりも少しいいことは、前回の依頼で確認済みだ。

「そうですね、それは捨て置けませんね。やりましょう」
「おお、そうですか!では今回もラインを付けますので、道案内をさせてやってください」
「う・・・・・・」

 聖戦士ラインがいい人物であるのは間違いないが、それと同行するのはまた別の話だった。
 前回の依頼でも、彼の行動に少々困らされたのは記憶に新しい。が、依頼人の意向を無視するわけにもいかないので、エディンは愛想笑いで応えた。

「ではさっそく明日にでも出発します。それでは・・・・・・」

 ”金狼の牙”一行がその場を去ると、レンフ司祭は顎に生えた髭を擦りつつ独語した。

「神のしもべたる我々が、信仰する心を持たない冒険者達に望みを託す・・・・・・。神はどう見ておられることかな・・・」

2012/12/12 20:57 [edit]

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Wed.

血塗られた村 1  

 今は太陽も真上に昇る時刻。
 昨晩の大騒ぎが尾を引いたのか、二日酔いに悩まされた顔をしたパーティが、いつもの酒場で遅い朝食を取っていた。

「ん~・・・・・・駄目だわ、まだ頭痛い・・・・・・」
「あんなたくさん飲むからです。ほら、ジーニ。お水をどうぞ」
「ジーニ、大丈夫・・・?」

 髑髏のついた杖を抱き込むようにして、ジーニがカウンターに突っ伏して嘆くのを、挟み込むようにしてアウロラとミナスが世話を焼いている。
 隣の席では、青い顔をしたギルとアレクが頭を抱えて、しきりと呻いていた。
 エディンは、まだ寝床から起き上がる様子はない。一番酷い飲み方をしていたせいだろう。
 そうして宿の中が後悔のブルースに包まれ始めた頃、ドアが軋みをあげて開いた。

「おや、こんな時間にお客かな?」
「こんな時間に客ですか!?」

 困った連中を見下ろしていた宿の親父さんとアウロラが、顔を上げて入り口を見やる。
 つられて他の冒険者達がそちらに目をやると、見覚えのある男が神経質そうな笑みを浮かべている。

「やあ、お元気そうで・・・・・・」

 そこには、かつてゾンビパウダー密売組織の殲滅に協力してくれた、聖戦士ラインが立っていた。
 頭を抱えていた手をどうにか上げて、ギルが挨拶する。

「ああ、お久しぶりですね・・・・・・。え~とラインさんですよね。どうしたんですかこんな時間に?」
「はい、実はまた頼み事を引きうけてもらいたいのです。教会の方までご足労をお願いできますか?」
「また頼み事?」

 ぱちくり、とミナスが大きな目を瞬かせてから、二日酔いの面子を心配そうに見た。
 ミナスはまだ酒盛りに混ざるには幼く、アウロラはアルコールを飲む前に他の仲間の世話を始めたので、この二人だけはアルコールの摂取が行き過ぎた報いを受けていない。

「みんな仕事に行けるかな・・・・・・?」
「なんとかなるだろう・・・・・・」
「エディン。起きてきていいの?」

 ミナスが地の底を這うような声に驚き、階段のほうを振り返ると、寝床を無二の友にしていたエディンが降りてきたところだった。
 おそらく、ラインの話し声に気づいて自主的にやって来たのだろう。
 ミナスの差し出すコップの水を飲み干すと、急にしゃきっとした様子になって言った。

「私達の協力を欲するって事は、何か問題でも起きたんですか?」

ScreenShot_20121205_202831640.png

 ラインに問うと、聖戦士は真剣な顔で頷く。

「まあそう言う事です・・・・・・。詳しい事は教会の方でお話しますんで」
「リーダー、どうする」

 エディンは、頭痛の酷さに声を発することが困難なギルに訊いた。
 ギルの手が頭から離れ、サムズアップする。

「ああ、はい。引き受けるんだな。わかりました。では教会に行きましょう」

 ギルの代わりにエディンが答えると、ラインはほっとした様子になった。

2012/12/12 20:54 [edit]

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Mon.

階下に潜むモノ 5  

 アウロラやジーニ、ミナスが、手馴れた様子で補助魔法を唱えるのを横目で見つつ、ギルは途中で拾った、奇妙な目の紋様が入ったタワーシールドを構え直した。
 鑑定をしたジーニによると、これは≪邪眼の盾≫というもので、魔法回避率が高くなるらしい。
 斧と併用するのは・・・としり込みするリーダーに、ジーニは強気に言い放った。

「何言ってんの、アレクなんて慣れない魔法と精霊受け入れて、体内の魔力がしっちゃかめっちゃかなのよ?盾持つくらい、なんてことないでしょ」
「でも、なんで俺?後衛でもいいんじゃ・・・・・・」
「これね。邪眼の効果跳ね返す時、所有者が気絶してちゃダメなの。だから丈夫なアンタが持ちなさい」
「大丈夫ですよ、ギル。怪我したらすぐ癒しますからね」
『私もついていますよ』

 精霊含む女性陣に言われ、渋々ギルは盾を預かることとなったのである。
 そして、シェリの案内であちこちから水の流れ出している地下を駆け抜け、一行はとある大きな穴倉へと辿り着いた。

「ここ?」
「大きな破壊の跡・・・ここから地下水脈へと繋がっているわけだ」

ScreenShot_20121115_165027375.png

 ギルの台詞が終わると同時に、眼前に広がる水面が波立ち、大きく揺らめく。

「どうやら、この破壊の張本人が現れたようだな!」
「グオオオオオオ!!」

 雄叫びを上げつつ、巨大な海蛇が水からその首を持ち上げた。
 同時に、なんと一行の背後から、先ほども見た小型のバジリスクがやってくる。

「げ、挟み撃ち!?魔物の癖にやるじゃないの!」
「そんなこと言ってる場合か!俺が守るから、ジーニとミナスはこっちに来い!」

 エディンが怒鳴り、二人は慌ててその背中へと隠れる。
 ギルとアレクは大海蛇に向かって武器を構えた。

「よし、いくぜ!」
「おお!!!」

 勢いよく飛び出した一行は、エディンの重い一撃と召喚されていたスネグーロチカにより、背後からの強襲の憂いをまず取り除いた。
 ギルが気迫をこめた縄の操縦術で海蛇の移動を一時的に止め、アレクが追撃をかける。

「よっし、ここまで計算どおり!」
「計算なんか・・・・・・してたのかよッ!」

 恐慌状態に陥った海蛇を見て、アレクがにやりと笑みを浮かべる。
 だが、大海蛇の横に漂っていた眠りの雲の成分が、ミナスの小さな体を包む。
 ミナスは音もなく倒れ伏し、ギルが慌てた。

「うわわ、ミナス!?」
『大丈夫、あの子は眠っただけ・・・・・・。私が起こしましょう』
「頼む」

 体内にいるシェリと交信したアレクが走る。
 大海蛇は縄の拘束を引きちぎり、傷を再生させるが、追い討ちをかけるように、ジーニが再生した傷の上から【魔法の矢】を突き刺した。

ScreenShot_20121115_165457390.png

 さらなる憎々しげな咆哮。
 それに気をとられたアウロラが隙を見せてしまい、かなりの傷を負ったものの、

「っ!!これで終わり、だああ!」

ミナスが野人・ファハンの石つぶてに紛れ、小さなナイフを投げつけると、それは狙い過たず、大海蛇の口の中へと吸い込まれた。

「ギャアアアアアウウウウオオオオ・・・・・・」

 長大な体でのた打ち回り、しばらく大海蛇は咆哮をあげていたが・・・・・・やがて、最後の一声の響きが済むと同時に、水の中へと沈んでいった。
 それを見届けたらしいシェリが、アレクの体から離れてまた実体化する。

『皆さん・・・ありがとうございました。これでこの神殿も、元の姿に戻ります』
「別れの時間だな・・・・・・」

 そう呟いたアレクに、シェリは愛しげな目線を向けた。

『ひと時とは言え、主となった方よ。私はここで結界を張りなおさなければなりません・・・再び破られる事のないよう・・・強固な結界を』
「ああ。短い時間だったが、世話になった」
「シェリ、元気でね!」

 それぞれに別れを告げるアレクとミナスの後ろから、ひょっこり手を上げてジーニが言った。

「あのー、ね?お礼は?」
『そう・・・お礼の事ですが・・・上の階層の私が石像にされていた場所を調べてみてください。きっと皆さんのお役に立てる物と思います』

 また、途中の扉の部屋には、珊瑚でできた指輪もあると言う。
 収入に満足げに頷いたジーニが、弾んだ足取りで帰ろうとするのを、アウロラとエディンが慌てて止めながら追いかける。
 ミナスの手を引っ張って、ギルもその後に続いた。
 彼らを「やれやれ」と言って追ったアレクが、階段に足を乗せたところで、もう一度だけシェリに視線を向けたが結局何も言わず、確固とした上り方でその場を去っていった。

 状態異常を治すマジックアイテムや指輪を回収した一行は、その足でさっそく村長の家へと向かった。
 事情をつぶさに説明すると、

「魔物達を追い払ってくださったか!これでまた漁に出る事ができる・・・」

と、村長は安堵した。

ScreenShot_20121115_170706781.png

 報酬の500spを受け取ると、アケビ村に留まることもなく冒険者達は宿へと帰還した・・・。
 神殿は元の姿を取り戻し、村には再び活気が戻ってきた。
 彼らの活躍はこの小さな村で、永らく記憶に留められる事になるだろう。

※収入500sp、≪精霊杯≫≪神殿の鍵≫≪邪眼の盾≫≪珊瑚の指輪≫≪願いのアンク≫【召雷弾】入手※

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■後書きまたは言い訳
14回目のお仕事は、寝る前サクッとカードワースフォルダより、ABCさんの階下に潜むモノです。
大海蛇を退治するシナリオなのですが、短い中に戦闘ありお宝あり美女(?)ありの、いろいろ詰め込まれたお話です。
サクッとできるのに、下手な行動を取るとたちまち厳しい戦闘が待ち構えているので、とてもやりがいのあるお仕事だと思います。

作者のABCさんにはその意図はなかったと思うのですが、うちではシェリを【海妓召喚】の海精シレーネの亜種として扱っています。
ご存知の方も多いかと思いますが、これはMartさんの碧海の都アレトゥーザにて教わることのできる技能で、同じ海の精霊同士ということを鑑みて、何らかの関係があった方が面白いと思い、ミナスにそのように説明させました。
それに絡めて、ミナスのお母さんについても出してみました。想い出では美化されていますが、シレーネのほかにウムガルナやナパイアスも使う豪快なお母さんです(笑)。

また、精霊を連れ歩くことができるので、チラッとアレクの家庭環境についても出してみました。
本文中にもありますが、彼は精霊剣士と魔法使いの間に生まれた子で、父そっくりの美男子なのですが、それゆえにコンプレックスを抱いています。精霊に父ほど親和性がないことも一因ですね。
私としては、アレクをこれから魔法剣士に育てようと思っているのですが・・・さて、どうなることやら。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2012/12/10 20:25 [edit]

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Mon.

階下に潜むモノ 4  

 ミナスの精霊力の感知を頼りに一行が行った先には、小型のバジリスクがいたのだが、それを倒すことで手に入れた杯で、精霊の封印を解き呼び起こすことができた。
 力を取り戻し、石像から本物の精霊へと姿を変えた海精は、小さな手に精霊杯を掲げ持つミナスとその仲間に微笑みかけ、清らかな声で言った。

『あなた方が私をもとの姿に戻してくれたのですね・・・ありがとう、私は精霊のシェリと申します・・・』
「僕はミナスっていうんだ。元に戻れて良かったね、シェリ!」
「さっそくだが・・・・・・聞きたい事がある」

 興奮しているミナスを押さえ、エディンが一歩前に進み出る。

「この神殿、どうして魔物が住み着いてしまったんだ?」
『はい、それは・・・。この神殿の結界が破られてしまったからです。そのため魔物達が侵入し、私も石に変えられてしまいました』

ScreenShot_20121115_161358953.png

「結界が破られたあ?」

 すっとんきょうな声をあげたのはジーニである。
 彼女は長く魔術の勉強をした者として、こういった特別な造りをした遺跡に施された結界が、簡単に解けるような代物ではない事を知っていた。

「いったい、なんだってそんなことになったのよ?」
『結界が破れた原因は・・・地下水脈より巨大な魔物が現れ、神殿の地下が大きく破壊された事にあります』
「あちゃ~・・・・・・物理的損壊か。そりゃ、結界が破れるはずだわ・・・」
「巨大な魔物・・・」

 エディンの興味は、結界よりもむしろ敵の正体であった。
 しかし、シェリは明確にそれに答えようとせず、凪いだ湖のような佇まいでさらなる言葉を発した。

『結界を張り直さなければ、この神殿はずっと魔物の住処のままです。皆さん・・・どうか私に力を貸してください。もちろんお礼は致します』
「そのつもりで来たのさ」

 得意げに鼻をうごめかせるギルに、海精シェリは喜色をあらわにして言った。

『本当ですか・・・ありがとう!』
「その地下の魔物とやらをやっつければいいんだろ?」
『ええ。地下へ行く為に雷属性の魔術が必要です。あなた方の誰かに、その魔術を授けましょう』

 精霊魔法かと思ったが、聞けば、この遺跡を作り出した古代人達が置いていった呪文書なのだと言う。
 一行の目がジーニをまっすぐ捉えたが、彼女は残念そうに首を横に振った。

「悪いけど、今回ばかりは私以外を選んでちょうだい。これ以上身体に魔術を修めると、魔法バランスが崩れちゃうわ」
「しかし・・・・・」
「俺がやる」
「アレク?」
「海精シェリよ。それは、欠片でも素養があれば唱えられるものか?」
『はい、ごく初歩の魔術ですから・・・』
「ではその雷属性の呪文を俺に宿してくれ」

 突然何を言い出すのかと心配そうに眺める仲間達に、アレクは小さく笑いかける。

「大丈夫だ。俺の母は魔術師だった。だから俺も魔法剣を扱えるんだ」

 ギルは「そうだったな」と言った。アレクの父が優秀な精霊剣士なら、アレクの母は偉大な魔術師だった。
 幼くして類のない聡明さで賢者の塔に入り、早くから魔法を意のままに操ったという彼女の逸話は多い。
 海精は端麗な指をアレクの白い額にあて、【召雷弾】を彼の体に宿した。

ScreenShot_20121115_162732906.png

『この魔術を、北の部屋の壁の装飾に向けて使用すれば、地下への道が開きます』
「おお、あのプレートがあったところか」
「なるほど、そういう仕掛けだったのですね」
『あなた方の幸運を祈って・・・』

 さらに、海精シェリはアレクの剣に口付けると、霞のようにその姿を変えて彼の中へと入っていく。

『一時的な契約ですが・・・・・・これで、私もあなた方に同行し、その傷を癒すことができます』
「にわか精霊剣士、というわけか」

 わずかに苦い影を含みながら、アレクがその端正な顔を歪めると、元気付けるようにギルが背中を叩いた。

「お前はお前、父親は父親だろ?頼りにしてるからな、アレク!」
「・・・・・・ああ、そうだな。任せておけ」

 アレクは、いつもこうやってギルが憂いを退けてくれることを思い出していた。

2012/12/10 19:52 [edit]

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Mon.

階下に潜むモノ 3  

 そうして進んだ一行の前に、上半身が馬で下半身が魚の形をしたモンスターが現れた!

「あ、ケルピーだ!」

 ミナスが慌てて後ろに下がる。

「けるぴー?」

 たどたどしい口調のギルに、ミナスが早口で説明した。

「こいつも海の精霊の一種なんだけど、水で相手の顔を包み込むんだ。たまに、水際で遊ぶ人を溺れさせたりもする。僕、苦手・・・・・・」
「ははあ。さては、お前もこいつに溺れさせられた口だな?」
「おい、そんなのんきに構えてる場合じゃないぞ、ギル!!」

ScreenShot_20121115_151548984.png

 アレクが水の槍と化したケルピーの尻尾を切り落とし、叫んだ。
 危うく難を逃れたギルが、素早く回り込んで攻撃に移る。

「そうはさせるか・・・よっ!」

 【薙ぎ倒し】をされたケルピーは、その数を一匹に減少させた。
 すかさず、【雪精召喚】に成功していたミナスが、生き残りの敵に襲い掛かるよう命令する。

「スネグーロチカ、お願い・・・!」

 ――戦闘はあっという間に終わった。
 ケルピーが中々レベルの高い敵であることをミナスから教わった一行は、ではもしかしたらボスが近いのではないか、と言って辺りの探索を始めた。

「んっと・・・あれ・・・?」

 すると、ミナスの精霊感知に引っかかるものがある。
 小さな体が導かれるようにして進むのを見て、慌てて仲間たちが走り出す。

「ミナス、どうしちゃったのよ!?」
「おい、勝手に行くな」

 周りに一切構わず、ミナスが清浄な濃い水の力を追っていくと、美しい海精を象った石像が中央に置かれている部屋へと辿り着いた。

「ここだ・・・・・・ここに精霊がいるよ、みんな!」
「え?」

 秀麗な顔を興奮で赤らめたミナスの言に、驚いたようにアレクが辺りを見回す。
 父は優秀な精霊剣士であったが、アレクにはその才能がほとんどないのでよく分からなかった。

「ねえ、君、海の精霊でしょ?お願い、僕の呼び声に応えて!」

 しかし、美しいその像は沈黙を保ったままだ。

「どうしちゃったんだろう・・・・・・精霊の力は、確かにここにあるのに」
「・・・・・・ひょっとしてさあ、彼女、封じられてるんじゃない?」
「封印、ですか?」
「うん。ほら、神殿なんかもそうだけど、こういう『何かに祈るための遺跡』って、その土地固有の気脈とか周りの環境なんかと上手く合致すると、たまーに強い力を得ることがあるのよ」
「そういえば・・・・・・水路を流れる水はとても清浄ですね。海精に力を与えるために、こういった遺跡の造り方をしていると考えることもできます」
「この神殿も、そういう特別な場所なんじゃない?でも、精霊を遺跡に現れた魔物が封印して・・・・・・」
「精霊力が働かなくなり、海が荒れだした」

 ジーニやアウロラの推測の最後を受けて、アレクがぽつりと呟いた。
 我が意を得たり、といった様子でミナスが頷く。

「きっとそうだよ!この子、早く助けてあげよう」
「しかし、助けると言ってもな・・・・・・」

 難しい顔をしたアレクに、ミナスが言い募る。

「大丈夫。この海精に共鳴した力の塊が、微かだけど感じ取れる。それをここに持ってくれば、その封印も解けるよ、きっと!」
「近いのか?」
「うん、ここからそう遠くないよ」
「分かった。ミナス、案内してくれ」

 ギルが信頼をこめた目でミナスを見つめ、幼いエルフは真剣な顔で頷いた。

2012/12/10 19:48 [edit]

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Mon.

階下に潜むモノ 2  

 ごつごつした岩や針葉樹に覆われた中を進むと、白い像を祀った遺跡の入り口が現れた。
 崩れかけた入り口をくぐった一行を迎えたのは、妙に無機質で真っ白な石に覆われた部屋だった。
 入って左手に木製の扉、右に細い通路が続いており、上を仰ぐとそこにも通路が覗いている。

「気をつけて、みんな。・・・水の精霊の力が、妙にざわめいてる。やっぱり、精霊達を阻害する奴がいるみたいだよ」
「ミナスがそういうなら確かだろう。用心していくぞ」
「ああ。まずは俺に探らせてくれ、リーダー」

 手近な扉を調べたエディンは、硬い表情で静かに下がり仲間に言った。

「・・・怪しい・・・・・・ここから先は気をつけて進んだ方が良い・・・」
「よし、アウロラ、ジーニ」

 海精と交信するまで、ミナスに無駄な体力を使わせないようにしよう、というのが一行の方針であった。
 なので、ギルの小さな呟きに応えた仲間は二名。【祝福】と【魔力の障壁】をかけ、一気に扉の先へと進む。
 突然、背後の扉が閉まった音がした。

「何!?」

 驚きの声をあげるギルの視界を塞ぐように、泥のゴーレムの出来損ないに見える敵が3体出現する。

「嫌な予感はこれか・・・・・・」

 武器を抜き放ってエディンが舌打ちし、手近な敵に襲い掛かった。
 敵が複数と見て、アレクとギルも【飛礫の斧】と【薙ぎ払い】を準備する。
 攻撃力自体は大したことないものの、その敵は縦横に戦場を駆け回る戦士達の防御力を下げる特殊能力を持っていた。
 ジーニが眉を潜める。

ScreenShot_20121115_145626203.png

「なんなの、こいつら?せっかく私が唱えた呪文を、なんだと思ってるのよ!」
「落ち着け、ジーニ!俺とギルだけで近接戦闘を仕掛ければ良い話だ、遠距離攻撃は頼む」
「もう、簡単に言ってくれるわね、アレクったら」

 ぶつくさ文句は言いながらも、ジーニは【火炎の壁】の詠唱に入る。
 結局はその呪文がトドメとなり、モンスターは小さな宝箱を落としていった。

「お、なんだろうな?」

 エディンがざっと調べると、鍵も罠もなかったのでそのまま蓋を開ける。
 中には、白い石で出来た鍵が納まっていた。

「これ、外にあった石像と同じ材質じゃないでしょうか?」
「じゃあこれ、神殿内のどこかを開ける鍵じゃないの?」

 女性2名が交わす会話に、アレクが無言で頷いた。

「かもしれん。とにかく、一休みしたら探索を続行しよう」

 移動を続けると、やがて三叉路に行き当たった。
 先ほどのと似たような扉がひとつ、細い通路が2つ。

「扉は・・・・・・さっきみたいにモンスターがいるかもしれないわね」
「んじゃ、通路を進むか?」
「うーん・・・・・・」

 唸り声を上げてからエディンが聞き耳をすると、どうも左の通路には敵がいそうな物音がしている。
 扉の向こうはよく聞き取れないということだったので、一行が選んだのは、水音がするという右の通路であった。
 通路の向こうでは、白い壁のかなり上方に穴が開いており、そこから清浄な水が水路に流れ込んでいることが分かった。

「おい、ギル。あの穴の横を見ろ」
「うん?」

 幼馴染に促され、ギルも彼の視線を追ってみると、水が出てくる穴の横に、古代文明のものらしいプレートのようなものがはめ込まれている。

「ここからじゃよく分からないな・・・・・・」
「ギル、そういえば一番最初の部屋で、上に通路があったでしょう?どこからか、2階に上がることができるんだと思いますよ。そうしたら、あれも調べられるんじゃないかしら」

 アウロラの台詞に、エディンが首を傾げる。

「だが、あんなに水が流れ落ちてたら調べるのも一苦労だぞ?腰にロープを巻けば、何とかいけるかもしれないが、危険は免れない」
「もっと先に、何かあるのかもしれないな。よし、もう少し進んでみよう」

2012/12/10 19:46 [edit]

category: 階下に潜むモノ

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Mon.

階下に潜むモノ 1  

 リューン北東の小さな漁村、アケビ村。
 この村は、精霊の恵みによる近海での漁で、人々の暮らしが支えられているらしい。
 そんな折、精霊が住むといわれる村外れの神殿に、魔物の群れが住み着いた。

 ――今、”金狼の牙”たちの目の前に座る、白髪を綺麗に後ろへ撫で付けた村長が出した依頼書には、そう書かれていたのだった。

「おぉ・・・!あなた方が狼の隠れ家の・・・」
「はい。詳しいお話を聞かせてもらえますか」

 重い荷物を下ろしたアレクがそう言うと、村長はおもむろに語り始めた。

「アケビ村は、近海の漁により生計を立ててきた村です。それがこのごろは、その海が荒れ、とても漁に出られるような状況ではありません」
「そこまでは依頼書のとおりだな」
「はい。嵐の原因はおそらく・・・海精の神殿にあると思うのです」
「海精・・・」

 ぽつりとミナスが呟いたのを見て、ギルが言った。

「知ってるのか、ミナス?」
「うん。多分、海の精霊シレーネの仲間だと思う」

 ええと、とミナスは少し困ったような顔をして説明を始めた。
 ミナスは元々、水や氷の精霊と親和性が高いエルフの一族に連なる者だ。
 ”金狼の牙”に加わる前から、微小とはいえ水精・ウンディーネの力を借りることが出来ていた事からも、その才能の一端は知れるだろう。
 そんなミナスの母親が習得していた呪文のひとつに【海妓召喚】というものがあり、敵を沈黙や恐慌などに陥れ、味方を鼓舞する海の精霊を召喚することが出来たという。
 極めて術者の心の動きに敏感なため、戦闘時以外は姿を見せることは稀だというが・・・。

「『彼女達と交信しようと思ったら、強い意志と素直な心が肝心ね』って、お母さん言ってた。その神殿にいる精霊が、土地の守り神として長く定着していたら、少し能力なんかは変わっているかもしれないけど、話しは通じると思うよ」
「よし、ちょっと依頼に光明が見えてきたな!」

 嬉しそうに言うリーダーに頷いて、ミナスが村長に話の続きを促した。

「で、その神殿って・・・」
「はい。海に恵みをもたらしてくれる精霊を祭った神殿なのですが・・・その神殿に最近になって、恐ろしい魔物達が住み着いたのです。村の者達はこの魔物が、海の荒れの原因と言っております」
「そういうことはあり得るのか?」
「うん。もし、魔物達が神殿を瘴気で冒していたりしたら、精霊の力が届かない事もあると思うよ」
「本当に魔物達が原因であれば、神殿から追い払えばオーケーってことね」

 ギルにも分りやすくジーニが解説すると、彼は体勢を改めて村長に言った。

「そうか・・・よし、じゃあ俺達でも何とかなるだろう。依頼引き受けるから、とりあえず神殿の場所を教えてくれるか、村長?」

ScreenShot_20121115_143152046.png

「おぉ!頼まれてくれますか。ありがたい・・・。神殿は村を出て西に進んだ場所にあります」

 目印となるものの具体的な説明を受けた一行は、さっそく海精の住む遺跡へと向かった。

2012/12/10 19:42 [edit]

category: 階下に潜むモノ

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Sun.

密売組織 5  

「聖戦士ライン、密売の証拠を手に入れただいま帰還いたしました」

 敬礼して報告をするラインを、満足そうにレンフ司祭が迎えた。

「うむ、良くやってくれたなラインよ。お前は下がって休みなさい」
「は!ライン下がらせていただきます」

 ラインが樫の扉をくぐって向こうに退室し、”金狼の牙”たちに向き直った司祭は言った。

「冒険者の方々もご苦労様でした。おかげでリューンのゾンビパウダー密売組織を壊滅させる事ができました」
「いえいえ、まあ仕事ですから」
「それで・・・言いづらいことですが、報酬の方は・・・」

 呆れるほど現実的なエディンとジーニが言うと、わずかに苦笑したレンフ司祭は、机の端に置いていた皮袋を取り上げて彼らに渡した。

「1000spです。お受け取り下さい」

 皮袋の重さを間違い無さそうだと無自覚で確かめたエディンは、ぺこりと頭を下げた。

「それでは我々はこれで失礼します。何かありましたらいつでも呼んで下さい」
(本当は、そういう大事は無いにこしたことないんですが・・・)
(社交辞令だろ?)

 エディンの向こうで、アウロラとギルが小声の会話を交わし、ミナスがそれを興味深そうに見上げている。
 エルフの幼心に「しゃこうじれい」という妙な文句を教え込んだことに、彼らはまだ気づいていない。
 程なく、他の者達も司祭への挨拶を無難に済ませ、宿への帰路についた。

ScreenShot_20121115_133248578.png

 疲れきった”金狼の牙”一行は、帰るなり宿のベッドへと倒れこんでいたが、その頃・・・・・・。

「・・・・・・クックック・・・・・・・・・」

 多少くぐもってはいたものの、”金狼の牙”たちに聞き覚えのある含み笑いが、とある闇の中に漏れた。

ScreenShot_20121115_133825843.png

 やがて段々と大きくなったそれは哄笑となり、辺りに響く。

「我が肉体を滅ぼすのみで、全てが終わったわけでは無かろうに・・・。しかし、あの野蛮人どもには復讐せねばなるまいな・・・・・・」

 謎めいた言葉を残し、ボルラスはその姿を闇から消した。
 冒険者達の知らぬ所で物語は進んでいく・・・・・・。

※収入1000sp、火晶石、魔法薬、Pリング入手※

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■後書きまたは言い訳
13回目のお仕事は、マットさんのシナリオで密売組織(第一話)です。
かっこが示すとおり、このシナリオ続き物となっております。・・・なんか段々続いてるシナリオが増えてるけど、ちゃんと消化できるのでしょうか・・・現時点で4つくらいあるんですが(笑)。

死霊術を扱う敵役といえば、Askさんの公式ならばマハガス(墓守の苦悩)あたりでしょうが、冒険者が倒したと油断しきったところで復活するボルラスも、中々魅力的な敵なのではないでしょうか?
聖戦士ライン君は・・・・・・書けば書くほど、どういうわけか私の中で直情的などじっこさんになってしまい・・・マットさんに謝らないとならないですね。もし本人様がご不快になられましたら、このお話下げることにします。
でも、こういうある意味「困ったちゃん」のNPCのほうが、愛嬌があって私は好きなんですけど(笑)。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2012/12/02 12:55 [edit]

category: 密売組織

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Sun.

密売組織 4  

 魔術師――ボルラスという名前らしい――の召喚に応え、ワイトやゾンビ、スケルトンたちが2体ずつ部屋にと流れ込んできていた。
 これは結構な強敵と判断した”金狼の牙”たちは、雑魚の一掃をギルに任せ、アレクがボルラスに、エディンがワイトへと向かう作戦に出た。
 ジーニやアウロラたちは、呪文に集中するためそれぞれの魔法の媒体を掲げて集中する。

「おおおおおおおお!」

 ギルが勢いをつけて斧を振り回し、たちまちスケルトンや精霊によって傷ついていたゾンビを粉砕した。
 邪魔な壁がいなくなり、アレクとエディンが得物を振り上げる。
 しかし、辛うじて破壊を免れたゾンビの一体が、半ば胴体を千切られながらも、杖を手に詠唱を開始したジーニに襲い掛かった。

「つぅ・・・・・・!」
「ジーニ!」

 心配したアウロラが、詠唱の終わっていた【癒身の法】の呪文対象をジーニに定めた。
 さらに、黄色い禍々しいオーラに包まれたワイトが、鋭い爪でエディンの脚に怪我を負わせた。

「中々やるな・・・!」
「よくも、エディンさんを!神の刃を喰らえ!」

 ラインの猛々しい剣が振り下ろされるも、ワイトに避けられ床を穿つ始末だった。
 中々緊迫した戦闘に決着をつけたのはギルで、彼は【薙ぎ倒し】後に【暴風の轟刃】の体勢に入り力を溜めていたのだが、ボルラスへのアレクの攻撃が外れた瞬間、精度の高い竜巻を繰り出した。
 闘気が胸を一文字にぶち割り、ボルラスの緑のローブを血色に染め上げた。

「グフゥ・・・・・・・・・。しょ、少々貴方たちを甘く見ていたようですね・・・」
「敗因は、あんたが調子に乗りすぎたことだ」
「一度攻撃かわしたくらいで、隙を見せるからさ」

 並んで佇むギルとアレクを睨みつけ、さらに口の端から血の泡を零しながら、ボルラスは呪いの言葉を続けた。

「し、しかし、このボルラス・・・こんな所で死ぬ訳には・・・い・・・・・・・・」

ScreenShot_20121115_125308640.png

 ぐらり、と細い体が揺らぐ。

「か・・・・・・・・・な・・・」

 そこまでが限界で、彼は音も無くその場に倒れた。ボルラスが倒れるとアンデッド達は崩れ落ちた。

「どうやらアジトの殲滅に成功したようですね・・・・・・」
「だな」
「さて、後はゾンビパウダー密売の証拠となるような物を探さなければ・・・・・・・・・」

 この書斎のような部屋には入ってきたのと別の扉があったので、ざっと部屋を見渡して目ぼしい物がないと判断した一行は、そこから奥の部屋へと移動した。
 ボルラスの私室だったらしく、清潔なベッドと本棚が備え付けられている。
 本棚の傍らには想像したとおり木製の宝箱があり、部屋に張った罠がないと分ったエディンは、さっそくその前にひざまづいた。
 宝箱は2つあったのだが、そのどちらも罠は無く鍵が掛かっている。

「よっし。ちょっと待ってろよ、みんな」

 しばらく小型ルーペで鍵穴の形状を調べていたエディンは、合鍵の束を取り出してヤスリで先を削り始めた。

「こいつはな、わりと一般的な鍵のひとつだ。この束の鍵をこうして・・・・・・こうすれば・・・!」

 思うように変形したらしい鍵を使いエディンが開錠すると、ボルラスの物らしい装備品や装飾品がいくつか入っていた。
 それを見て、ラインが太い眉を上げた。

「むう・・・・・・・・これらの中には密売の証拠になりそうな物もありますね・・・・・・・・・」
「ああ。これとこれ・・・かな?」

 ラインはエディンと一緒に木製の宝箱に入っていた物を調べ始めた。
 そしていくつかの品をより分けると、納得したように頷く。

「これらの品は証拠品として、私が管理します」
「じゃ、こっちからこっちは、うちの取り分としてもらっていくぜ」

 エディンの手には、緑色の石が嵌まった指輪やリューンで見慣れた魔法薬などがあった。
 もうひとつの宝箱には、大量の書類と粉の入った袋がいくつか入っていたので、ラインにそのまま引き渡す。

「書類は暗号で書かれた顧客リストと計画書か・・・・・・」
「こっちの袋は・・・・・・」
「ええ、ゾンビパウダーに間違いないでしょう」
「これで一件落着ですね。それじゃ帰りましょう」

 控え目だが嬉しそうな微笑みを浮かべて、アウロラが言う。
 他の面子も同意し、一行は聖北教会へと帰還した。

2012/12/02 12:47 [edit]

category: 密売組織

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Sun.

密売組織 3  

 アジトについてさっそく、物陰に隠れながら入り口に立っていた見張りをジーニ会心の【眠りの雲】で黙らせた”金狼の牙”たちは、体力の少ないものを真ん中に隊列を組み、奥へと移動していった。

「・・・なんだか、紅き鷹旅団を退治したこと思い出すね」
「ああ。今回も隠密性ということでは同じだから、注意しねえとな」

 こっそりと話しかけてきたミナスに肯定のうなづきを返し、エディンは慎重に斥候としての役割を果たす。
 聞き耳をしよう、とエディンが一番最初に見えた扉の前に耳をつけようとすると、興奮した様子のラインが一歩前に踏み出し、肩当てにぶつかった反動で扉が開いてしまった。元々、ちゃんと閉めていなかったらしい。
 扉の向こうでは、何人かの盗賊風の男達が、唖然とした顔でたたずんでいる。
 彼らは一瞬とまどった様子だったが、素早く短剣を抜き、冒険者達に襲いかかってきた!

「くっ・・・・・・!」

ScreenShot_20121115_122251750.png

 舌打ちしながら武器を構えた”金狼の牙”一行だったが、6人いた敵も、しょせん彼らの敵ではなかった。
 あっという間に制圧し、最後の1人がミナスの【雪精召喚】で倒れると、ギルが困ったような顔で呟く。

「今の剣戟の音、外にもれたかな?」
「魔術師には我々の侵入がばれたものとみて間違いないでしょう・・・」
「・・・・・・今、この扉開いたの、誰の責任?」

 しれっと応答したラインを睨みつけ、ジーニが仁王立ちになって言った。
 額の端に汗を垂らしつつ、ラインが「し、しかし」と抗弁する。

「盗賊は片付けました。これでこのアジトに存在する人間は魔術師だけだと思いますよ」
「ふ~ん・・・だといいけどねえ」
「ね、エディン」

 エディンを小さな声で呼んだのはミナスだった。部屋の隅を指差している。

「なんだ?」
「あそこに木箱あるよ。もしかしたら、アジトの中の鍵とか入ってるんじゃないかな」
「雑魚の持ち物に、そんなに期待できねえと思うが・・・」

と首を傾げながらも、エディンの指先は木箱を丹念に調べていった。
 鍵が掛かっているが罠はないと判断し、千枚通しのような道具で鍵穴をこじ開ける。
 中に入っていたのは、ミナスの推測どおりアジト内のどこかの鍵と、いくらかの銀貨だった。

「お!儲けたな。ミナス、よく見つけた」

 小さな喜びの声をあげるエディンの後ろから覗き込んだラインが、残念そうに首を横に振った。

「これらは密売の証拠になるような物では無さそうですね。貴方がたの裁量に任せます」

 手に入れた200spはアレクが、鍵はエディンが管理することにする。
 さらに奥に進むと、似たような扉が2つあった。
 またエディンが調べると、ひとつは分らないものの、もうひとつは鍵が掛かっていることが明らかで、彼は先ほどポケットに突っ込んだ鍵を取り出し、しばらく鍵と鍵穴を見比べてから、おもむろにそれをはめ込んだ。
 澄んだ音を立てて鍵が開く。
 そこは整頓された書斎のような部屋だった。
 机の向こうには、鋭い目つきをした魔術師風の男がこちらをにらみつけている。

「くっくっく・・・・・・・・・。まさかこの屋敷がこうも簡単に見付かるとは思っていませんでしたよ・・・・・・。少々教会という組織を、甘く見ていたようですね」
「貴様がこのあたりのゾンビパウダー密売組織のボスだな!どうやら魔法使いらしいが、聖戦士の力を見せてやる!」
「おい、ライン!?」

 無軌道に突っ込もうとした若者の肩を、危うくギルが掴んで引き戻す。
 緑色のローブに身を包んだその魔術師は嘲笑した。

ScreenShot_20121115_124015109.png

「おやおや勇ましい事で・・・・・・。ぞろぞろと人数を引き連れて人の屋敷に土足で上がりこむとは、いや、これを野蛮人と呼ぶのですねェ」

 アレクが、ラインを押さえるのに一所懸命なギルに代わって言った。

「抵抗するようなら、実力行使を行なうのみだが・・・・・・どうするんだ?」
「くっくっく・・・・・・。実力行使ときましたか・・・・・・。では、私は貴方達を送る事にしましょうか」

 妙な含み笑いは癖らしい。
 それが気に入らなくて眉を寄せるジーニを愉快そうに眺めてから膝に置いていたワンドをかざし、魔術師は高らかに宣言した。

「送る?」
「そうです、送って差し上げますよ、あの世にね!来なさい、我がしもべ達よ!」


2012/12/02 12:45 [edit]

category: 密売組織

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Sun.

密売組織 2  

 聖北教徒であるアウロラの先導で教会に訪れた一行は、レンフ司祭と向き合っていた。

ScreenShot_20121115_114715000.png

 ≪狼の隠れ家≫で貼紙を見たことをエディンとジーニが説明すると、レンフ司祭は、年月によって刻まれた深い皺に憂愁の色を落としながら、口外禁止の念押しをしつつ、依頼について語り始めた。
 レンフ司祭によると、現在西方諸国ではゾンビパウダーの密売組織が暗躍している、という。
 聖職者とすればこれは非常に頭の痛い問題であり、全力をあげてこの密売組織を壊滅させるべく活動している。
 ゾンビパウダーについて知識の無い仲間には、ジーニとアウロラが、清められる前の死体にふりかけることでゾンビを作り出す、いわばネクロマンシーの秘術に欠かせない薬であることを説明した。

「その結果、密売組織のアジトの1つを発見したのですが・・・・・・。残念ながら現在の我々には、そのアジトを攻撃するだけの戦力がありません」
「ははあ、なるほどね。それで私達に依頼を・・・・・・」
「はい・・・・・・・・・。せめて聖戦士団が残っていたなら我々だけで処理できたのですが・・・」

 宗教関係に特に疎いミナスが、小声でアウロラに尋ねる。

(ねえねえ、聖戦士団て何?)
(なんと言いましょうか・・・。聖北教会に所属している、アンデッド専門の調査機関です。必要に迫られれば、掃討もいたします。主に地方からの依頼で動いているはずです。)

「彼らは今、聖西教会からの要請で、ヴァンパイアに襲われた村の調査・討伐に向かってまして・・・・・・」

 溜め息をついたレンフ司祭に、密売組織のアジトの場所や戦力について質問すると、ある程度の答えが返ってきた。
 場所はリューンから北に少し行った所にあり、魔術師や盗賊風の者たち数人の確認報告があったという。
 アレクが顎に手をやりながら呟く。

「魔術師か・・・・・・・・・そいつがアジトのボスとみて間違い無いだろうな」
「ところで、その魔術師の素性は調べたんですか?」

 賢者の塔に所属していた魔術師なら、最終的な実力くらいは分かるかもしれないと、エディンが身を乗り出して聞いたが、司祭は首を振って否定した。自分達にはその伝手がないと言っているが、どうもその辺の調査は思いつかなかったものらしい。
 アジトの場所を教えて欲しい、と言われたレンフ司祭は、

「場所についてはアジトの調査をしておりました聖戦士を同行させましょう」

と言って、手を叩きながら「ライン、ラインはおるか?」と樫で作られた扉の向こうに呼びかけた。
 ほどなく、青い髪のがっしりとした体格の男性が、白い鎧姿で入室してくる。

「は!ライン参上いたしました」
「うむ、話しは分っておるな」

 レイフ司祭が確認すると、ラインと呼ばれた若者は緊張の面持ちで頷く。

「この者が道案内をします。多少の武術と神聖魔術の心得はありますので、邪魔にはならないと思います」

 これは案内後も同行させろということだろうかと、”金狼の牙”たちは戸惑ったような視線を交し合った。
 多少の武術や魔術というものは、かえって「生兵法は怪我の元」という事態を引き起こすこともある。
 うかつに、諸手を上げて歓迎できる物ではないのだが、どうにも断れない雰囲気だ。
 やむを得ず、一行はラインを仲間に加えてアジトへ向かうことにした。
 なんでも、ラインは聖西教会の出征に加われなかったことを悔しく思っていたらしい。
 今回の冒険者への同行を、心の底から喜んではりきっていた。

 報酬についてジーニが確認すると、仕事が終了次第、貼紙にあったように1000spを支払うそうで、アジトにある物については、密売の証拠以外は裁量を一任してくれるという。
 さっそく目的の場所に向かおうと、あどけない仕草で別れの挨拶をするミナスに、司祭が慈愛の微笑みを浮かべながら、

「頼みましたぞ・・・・・・・・・」

と言った。

2012/12/02 12:43 [edit]

category: 密売組織

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Sun.

密売組織 1  

「ふぁ~あぁ・・・・・・よく寝た。う~ん・・・・・・・・・」

 という呟きを漏らしたのは、珍しいことにアレクだった。
 ”金色の狼”の面々が、階下の食堂へと下りてくる。
 親父さんが窓から見える太陽の位置を確認すると、すでに時刻は昼近くになっていた。

「おいおい、お前等・・・・・・。いつもの事ながら、たまには朝から仕事しようって気にはならんのか」

 親父さんは毎度の事ながら顔をしかめている・・・。
 今起きてきたばかりの一団は、そんなことを気にする素振りも無く、壁の貼り紙を眺めている。
 ふと、エディンがその黒い双眸をひとつの貼り紙に向けた。

「おや、この貼紙は・・・・・・今日貼ったのかい親父さん?」
「ああ、それは今朝、教会から送られてきた依頼状だ。なんでも急な事らしくてな、できたら今日中に人材を送って欲しいとか言ってたなあ・・・」
「ふーん。死霊に詳しい人、かあ」
「まあ、死霊術士の杖なら持ってるけどね」

 ミナスとジーニがそれぞれ貼紙を読んで感想を漏らす。
 親父さんが、二人の様子を眺めながら口を挟んだ。

「まあ教会からの仕事だから信頼はできると思うが、いかんせん情報が少ないのが気に掛かるな・・・」
「ふ~ん」

 ギルが頬をぽりぽりと掻きながら言った。

「教会からここに依頼が来るなんて珍しいな・・・報酬もそこそこだし」
「お前等、今は仕事も無くて暇を持て余してんだろ?たまには業を落とすような仕事をやってみたらどうだ?」
「う~ん・・・・・・・・・どうしようか?」

と、ギルは振り返って仲間達に聞いた。
 確かに、以前のフィロンナの花を探す依頼から、もう10日以上も経っている。
 アレクが新しい技を武闘都市から習い覚えたせいもあり、そろそろ懐も寂しい頃だ。
 相談の結果、「暇な事だし、やってみるか」ということになった。
 エディンが言う。

ScreenShot_20121115_114509843.png

「報酬もそこそこあるし、まあ教会からの依頼なら法に触れるようなことをさせられる事も無いだろう・・・・・・やってみることにするよ」
「そうか・・・・・・じゃあ詳しい事は聖北教会のレンフ司祭に聞いてくれ、場所は分るな?」
「もちろんですよ」

 苦笑したアウロラが、からかうような親父さんの言葉に応えた。

「じゃあ行ってくる」

 親父さんと、ちょうど箒片手に店に戻ってきた娘さんに挨拶して、冒険者達は聖北教会に向かった。


2012/12/02 12:41 [edit]

category: 密売組織

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Sat.

遺跡に咲く花 4  

 素早くきわめて危険なガーディアンとの闘いは、はっきり言えばパーティが押されていた。
 なんとなれば、まず最初に妖しい蜂どもは、攻撃の要であるギルとスネグーロチカに守られていたミナスを麻痺させたのである。
 続けて、【火炎の壁】で一掃しようとしていたジーニまでもが蜂に刺され、一行の頭に危険信号が灯る。
 だが、幸い、この蜂の毒は持続力が弱いものだったようで、【血清の法】を施されたミナスを含め、すぐに全員が戦線に復帰した。

ScreenShot_20121112_180203546.png

 体勢を立て直した”金狼の牙”は、すぐさま反撃に移り、蜂を倒した。
 戦いが終わり全員がその場に腰を下ろしたが、エディンだけが、「この辺りから蜂が出たような・・・」と水槽の部屋を調べ直している。
 その合間にアウロラが【癒身の法】を唱えて、全員の体力を回復させた。

「隠し扉だ!!」

 エディンの興奮した囁きの後、また壁の一部がせりあがり、扉がもうひとつ出現する。
 その部屋の向こうは、あいにくと何もないのだったが、鍵を内側から自由に開閉できることができたので、しばらく一行は休憩を取ることにした。

 気を取り直して水槽の部屋からさらに先へと行くと、突き当たりの向こうで聞きなれない音が響いている。

「な、なんや?今の音は・・・」
「気をつけたほうがよさそうだ・・・もう一戦あるかもな。おい、リーダー」
「そうだな。リィナさんは、念のため扉の影に隠れててくれ。おい、みんな。さっき休憩したばっかりだから、大丈夫だよな?」

 全員が彼の意を汲んで頷き、また戦闘態勢を整えた。
 扉を潜ると、そこに待ち構えていたのは・・・。

「こ・・・こいつは・・・」
「きゃぁ!!」

 ジグとリィナの反応をあざ笑うかのように、その通路に横たわっていたのは赤い大百足だった。
 そのおぞましさに、アウロラが一歩下がる。

「うっ!!」
「なんやっちゅーねん!!!」

 聞きなれない音は、おそらく大百足が身をよじっていた音だったのだろう。
 まるで鎧を打ち鳴らしているような、硬い音があたりに響く。
 それが合図だったかのように、大百足が大きな口を開けて威嚇してきた。

「来るっ!!」

 ジーニがすかさず杖を構えて詠唱を始めた。
 百足の恐ろしさは、蜂と同じように毒があること。そして、何より大きさによるタフさである。
 全体攻撃である【薙ぎ倒し】と【火炎の壁】をしようとしているギルやジーニを横目に、エディンはひたすら、大百足の頭部が、長大な体から現れる隙を狙っていた。
 彼が行なおうとしているのは、紅き鷹旅団掃討戦の前に習い覚えた【暗殺の一撃】である。対人であれば、この技が決まれば生きていられる一般人はいない。だが・・・・・・。

(このアホの様にでかい虫に効果があるか・・・やるなら、狙うのは頭だ。他は、俺の細剣じゃさっぱり刺さらない。)

 大百足の尻尾が、【薙ぎ倒し】のように”金狼の牙”を襲う中、エディンの体は軽くその攻撃を飛び越え、百足の頭の上にあった。

「こいつを喰らえっ!」
「ギギギャアアアアアア!!」

 【暗殺の一撃】は、柔らかい大百足の頭に大ダメージを与えたものの、エディンが危惧したとおり致死にまでは至らなかった。

ScreenShot_20121112_181732531.png

 しかし、尻尾で叩きつけられた床から起き上がったギルが、お返しの【薙ぎ倒し】で敵の体力を奪っていく。
 フラフラになっている百足の弱点を、エディンの働きで理解したアレクは、ギルが斧を振り回した背後からタイミングよく飛び込み、一撃を加えた。

「やった・・・のか?」
「・・・みたいやな」

 長大な赤い体をそこに横たえ、大百足は息絶えていた。
 肩で息をするアレクの背中を、ポンとジグが叩いて労わった。
 大百足のいた部屋には上りの階段があり、その先は扉があった。
 開けると、なんとそこは石像のあった区画を乗り越えた先に続いていた。

「ここ・・・さっきの場所ですね・・・」
「繋がってたんだね!すごい仕組みだなあ」

 遺跡の大体のマッピングしていたミナスが、驚いたように声をあげる。
 目的の花は手に入れたのだから、もうここに用事はあるまい。一行は、出口に足を向けた。

 久々の外に息をつくジグの横で、リィナがエディンから受け取った花を胸に抱きながら、潤んだ目で一行を見渡した。

「みなさん・・・ほんとに・・・本当にありがとうございました」
「お姉さん、もう行っちゃうの?」
「ええ。今日はもう、このまま帰ります。早く弟の元気な顔が見たいもの」

 ミナスの寂しそうな顔に、残念そうに頷きつつも、リィナの顔は晴れ晴れと輝いていた。宿に着いたばかりの頃の、青褪めた様子とは一変している。
 村まで送ろうとした”金狼の牙”だったが、リィナが向かう場所を聞いたジグが、

「あっちの方に帰んのやな。ほな、俺が送ってったるわ」

と言い出した。

「送り狼になるなよー?」
「だ、誰がやねん!」

 ジグがギルにからかわれながらも、リィナが頷いたこともあり、一行はここで彼ら二人と別れることにした。
 少ないけど、と言って差し出してきたリィナの報酬を笑顔で受け取る。

ScreenShot_20121112_182851875.png

「それじゃ・・・皆さん・・・ありがとうございました。さようなら」
「弟さん・・・早くよくなるといいな」

 ”金狼の牙”は二人の背中が見えなくなるまで手を振って見送った。

「振り返らずに行っちまったな・・・」
「ああ。でも、弟が回復したら宿に礼に来る、と言ってたろう?」
「早くその日が来ればいいわね!」

 ひとつの依頼をこなして、放心したようなギルの肩をアレクが叩く。 
 その横を、鼻歌でも歌いそうな表情で、ジーニが駆け抜けて言った。

※収入500sp※

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■後書きまたは言い訳
12回目のお仕事は、GroupAskさんの公式シナリオ・遺跡に咲く花です。
初めてプレイした時は、少しリィナ達のキャラ絵に違和感がありましたが、それを忘れさせてくれるようなリドルとラスボスの攻略に、すっかり魅せられたものです。

健気なリィナと闊達なジグのコンビ(?)の会話は、同行者として楽しませてもらいましたが・・・ジグの関西弁って、どこで身に着けたんだろう・・・?

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。



2012/12/01 08:44 [edit]

category: 遺跡に咲く花

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Sat.

遺跡に咲く花 3  

 ジグがわざわざ鍵を自分でかけて、部屋に閉じこもって考え込んでいた石版の仕掛けは、あっという間にジーニが解いてみせた。

ScreenShot_20121112_171417437.png

 爆音とともに石像が壊れるのを、余裕の笑みを浮かべてジーニが見やり、仲間たちが尊敬の念を籠めて彼女を誉める。

「まあね。あたしにかかれば、どってことないのよ」

 だが、すぐ一行を落胆が迎えた。突き当りの部屋には何も見つからなかったのである。

「これで終わり?」

 虚脱したようなリィナの横をすっと通り過ぎ、ジグが「ちょい待ち」と言って、辺りを念入りに調査した。

「あるやないの~」

 ジグが見つけてみせたその穴は、人が一人通れるくらいの大きさで、光が届かないため、どれくらいの深さなのか、見当もつかない。

「これは・・・・・・・・」
「これは、結構深いかもなぁ」

 言葉を切って考え込んでしまったアレクの台詞を、ジグが補足して口に出した。
 こういう時に、空中浮揚などの呪文があれば下りれるかもしれないが、あいにくとジーニの覚えている呪文書のストックにそれはない。
 ロープみたいなものがあれば、というジグの呟きに、一番早く反応したのはアウロラだった。

「あの蔦・・・!」
「ん?ああ、鍵を見つけた部屋の蔦か!」
「あれならロープの代わりになるんじゃないですか?」
「結構丈夫だったしな。よし。いったん戻るぜ」

 アウロラの思い付きを得て、実際に蔦を払った経験のあるギルが言った。
 蔦の多い部屋に戻り、目的の物を必要分だけ手に入れた一行は、急く気持ちを抑えつつ扉に近寄る。
 すると、見覚えの無い蔦が扉にかかっているのを見て、邪魔そうにギルが斧で払おうとした。
 リィナが、蔦であるはずのそれが、ありえない動きでうねったのに気づいて、大声で叫んだ。

「そ、それ、蛇よ!!」

 蔦によく似た色合いの大蛇が三匹、遺跡の中でよほど腹を空かせているのか、牙をむき出しにして襲ってきた。
 常に無く慌てたアレクだったが、【飛礫の斧】の技で、崩れていた遺跡の一部を炸裂させ、つぶてで蛇を怯ませる。

ScreenShot_20121112_172602937.png

 その間に呪文を紡ぎ終わったジーニが、すかさず【眠りの雲】で大蛇たちを眠らせた。後は、多人数を頼りにしたタコ殴りである。
 あっという間に大蛇を退治し終わった一行は、手足の無いものを気持ち悪がるジグを慰めつつ、穴に蔦を垂らしに戻った。

 しかし、ほっとしたのもつかの間。
 「いいアイデア」と喜んだジグが、すぐさま顔色を変えた。
 それは他の面子にもすぐ分かった理由で・・・・・・なんと穴そのものが崩れて蔦が切れてしまい、捕まっていた全員が落ちてしまったのである。

「ぐへっ」
「いった~い。なんなのようっ!」

 リィナの弾力ある尻の下敷きにされたジグを、ミナスとアウロラで助け出し、一行は息をついた。

「みんなは・・・なんとか、無事のようだな」

 ギルが周りを見回して言う。落ちたのは災難だったが、骨折した者もおらず、誰一人としてはぐれなかったのだから、不幸中の幸いという奴だ。
 穴が崩れたのだから、上に戻ることはできない。
 結局、細い通路を進んで先の部屋へでることになった。
 エディンの調べたところ、罠も鍵もないと判断したドアを開ける。

「これは・・・」

 アウロラが、呆然として呟いた。
 赤いケーブルに繋がれた無数の水槽らしき物が、部屋のあちらこちらに佇んでいる。
 しかし、どの水槽も空だ。

「この部屋は何や・・・?」

 警戒信号に何か灯っているのか、今までに無く鋭い目で辺りを探るジグの言葉に、ミナスが言った。

「これは・・・水槽なのかなあ?」
「あっ!見てっ・・・・・・あの真ん中の水槽!」

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 リィナが指さす先に、たった一つだけ、紫の花のようなものがおさまった水槽がある。
 自分が聞いたフィロンラの花の特徴とそっくりだ、と主張するリィナに、ジーニが太鼓判を押した。

「文献で見たのと同じね。間違いないと思うわ」
「培養が難しいってのは、環境に弱いってことか・・・?あの水槽から、出しちまって問題ないのかよ?」
「エディンの心配ももっともだけど・・・あの馬鹿でかい水槽ごと持ってくのは、無理よ」
「もうひとつ、注意すべきだろ」

 ぼそりとアレクが言う。

「古代文明期の研究室だ・・・どんな仕掛けがあるか分からん。できる備えはした方がいいんじゃないか」

 彼の台詞に、ジーニとアウロラ、ミナスがそれぞれ補助魔法をかけることにした。ミナスに至っては、【雪精召喚】でスネグーロチカを呼び出している。
 できれば、この準備がさして意味の無い行動であればいいが・・・と思いながらも、エディンは覚悟を決めて水槽を割った。
 ふわりと紫色のフィロンナの花が、エディンの手元に落ちる。
 しばらく警戒したが、何の反応も無い。
 胸を撫で下ろしたアウロラがきびすを返し、他の仲間に呼びかけようとした、その瞬間。

「な、何っ!?」

 リィナが驚きの声をあげ、その小さなガーディアンたちを見やった。
 アウロラが彼女を庇いながら叫ぶ。

「気をつけて、蜂よ!」

2012/12/01 08:25 [edit]

category: 遺跡に咲く花

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Sat.

遺跡に咲く花 2  

 リィナの案内で遺跡に足を踏み入れた冒険者達は、辺りの光景を見回した。
 入口の洞窟部分とは打って変わって、人工的な建物の内部のように感じられる。

「なんだか・・・ひんやりしてますよね」

ScreenShot_20121112_164012671.png

 リィナの怯えたような小さな呟きに、エディンが適当に相槌を打ちながら周りを調査した。
 古い遺跡にはよくあることだが、壁には植物の蔓が蔓延っている。
 日の光の入らない遺跡なのに・・・と訝しがるリィナを背後に庇うようにしながら、ジーニは、

(ここで植物を育ててたっていうのなら、その種子が残ってる影響なのかも。)

と考えていた。
 入って左手には通路が続き、右には扉がある。
 一応、敵のバックアタックを警戒して、エディンが扉をざっと調べてみたが、罠も鍵も無い。
 扉を開けて中を覗いてみると、また通路が続いた向こう側に扉がある様子だったので、一行は入口部分まで戻り、左手の通路が続く方へ進んでみることにした。
 すると、暗い通路を小さなランタンで這うように照らしていたエディンが、一箇所にうずくまり、柔らかな羽毛を撫でるような仕草をする。

ScreenShot_20121112_164423468.png

「隠し扉だ!!」

という言葉とともに、ギィイと何かの歯車が動いたような音がして、壁の一部がせりあがって扉を露にした。
 隠し扉を進んでいくと、折れた通路の突き当たりにまた扉がある。
 充分警戒しながら一行が進むと、そこは相当古いらしい石の棺が置いてある部屋だった。
 仕掛けが無いことを確かめて、一枚岩の蓋をエディンが開けると、中には、植物の種子のようなものが収められている。

「何かの種だったようだけど・・・もう朽ち果てているようね」
「ジーニ、これってフィロンラの花の種かな?」
「分からないわ、ギル。さすがの私も、花ならともかく、種子の形状までは詳しく知らないのよ。でも、朽ちているからには、今回の依頼には役に立たないでしょうね」
「ん。紙切れが挟まっているみたい」

 エディンとジーニの脇の間から顔を出したミナスが、棺の中にさっと手を突っ込んで取り出す。
 その紙切れには、

(・・・すべての種子が失敗に終わってしまった・・・)
(・・・残ったのはあの花だけだ・・・)
(・・・大切に培養せねば・・・)

等という書付が残っている。
 その解読を聞いて、リィナが顔に血の色を上らせて言った。

「あの花だけって・・・じゃ、じゃあ、この遺跡には花はもう無いってことでしょうか!?」
「落ち着いて、リィナ。培養が上手くいったのなら、30年前に見つかったのと別のフィロンラの花が、この遺跡のどこかに保管されているはずよ」
「諦めるのは早計だな。もう少し探索してみよう」

 アレクの提案にみんなが頷き、一行は探索を続行した。
 奥の蔦の多い部屋で金色に輝く鍵を見つけ、それに合う鍵のついた部屋を探し当てると、中には隅でぶつぶつと何か言っている男がいる。

「えっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・せやから・・・・・・・・・・・・・・・」
「あれ誰だろう?」
「多分、俺の同業者だろうな。モグリかそうでないかは分からんが」

 ミナスの疑問に、エディンが答える。ぶつぶつ言う男の装備は、エディンにはよく見慣れた遺跡専門の盗賊のものだった。

「まてよ・・・やっぱり・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・のわっ!!」

 一行が男が気づくのを待っていると、波打つ黒髪をしたその盗賊らしい彼は、大げさにのけぞって”金狼の牙”とそれに守られるリィナに気づいた。

「あ、あんたら・・・いつからそこにおったんや!」

 妙な訛りをした男の言葉に、困ったようにギルが眉を寄せた。

「えっと・・・・・・・・・・・・・・・」
「もしかして、あんたらもこの遺跡のお宝を・・・?」

 男が用心深く体勢を変えたのに、アレクとエディンが反応する。

「もし・・・そうなら・・・商売敵ってことやな・・・」
「あの・・・違うんです」

 一触即発のその雰囲気を察したのか、リィナがジーニの背後から出てきて、男に事情を説明した。

「多少胡散臭い気もするが・・・ま、ええやろ。信じたるわ。浪花節には弱いんや、俺は」
(今のお前ほど、胡散臭くはないがね・・・。)

 心中でエディンが呟くのも知らず、男が信じたついでに探索を手伝う、と言い出すのに、ミナスの目が丸くなった。
 男は、通り名を”疾風のジグ”という、らしい。エディンは長く盗賊ギルドに所属しているが、知らない名だった。詳しく聞いてみると、東の国からやってきた流れ者らしい。
 となると、あくまで男を信じるかどうかは、リィナや”金狼の牙”次第である。リィナは、手伝ってもらっていいのだろうか、という目でこちらを見てくる。
 ジーニは未知の人物を連れ歩く危険を嫌がったが、元々あまり物事を考えないギルや、人を見る目が確かなエディンからすると、大した脅威にはならないだろう、と判断され、同行を承知することになった。
 自分がいれば見つかったも同然、と胸を張るジグから、一行は彼が調べ終わったこと、こちらが調べたことを交換した。

 それによると、石像のある部屋の仕掛けを解かないと、遺跡のさらに奥の部屋には進めないらしい。
 8人連れになった彼らは、その仕掛けに挑むことにした。

2012/12/01 08:19 [edit]

category: 遺跡に咲く花

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Sat.

遺跡に咲く花 1  

「おぉ、おはよう。もう、昼過ぎだぞ。いくらなんでも寝過ぎじゃないのか?」

 しょぼしょぼした目を瞬かせて起きてきた”金狼の牙”一行に、宿の親父さんが声を掛ける。
 が・・・・・・。

「・・・・・・・・・」

 愛らしい顔を眠気に歪めたミナスは、まだ頭が前後にフラフラ揺れている。

ScreenShot_20121112_155929015.png

 後ろに立っていたギルが、慌ててミナスの体を支えた。
 ジーニが、ゆったりと伸びをしながら親父さんに言う。

「だって・・・・・・フォーチュン=ベルから帰ってきたばかりで、疲れがなんだか取れなくて」
「まぁいいさ。こないだの依頼でたんまり儲けたんだろう?たまにはゆっくりするのもいいだろうよ」

 親父さんの言う「こないだの依頼」とは、紅き鷹旅団というモグリの盗賊団を、盗賊ギルドに代わって壊滅させた事件である。
 盗賊団に加勢していた魔術師は逃したものの、手ごわいとあらかじめ忠告されていた首領を見事討ち果たし、中々の手際だったと依頼人からも誉められた。
 その時に手に入れたお宝を近くのフォーチュン=ベルで売却・練成し、やっと帰ってきたのが昨日の夜のことである。
 宿の親父さんが微かに笑みを口の端に上らせて、

「さて、朝飯を作ってやろう。いや、もう昼飯だな。テーブルで待ってな」

と促し、笑いながら店の奥の調理場に入ろうとしたとき、店の扉を開けて一人の女性が入ってきた。
 荒事にはおよそ不向きな、華奢な体型。コーラルピンクの唇が可憐な、若い女性だ。

「おや、いらっしゃい。お食事ですかい?それともお泊まりかな」

 親父さんは怪訝そうな表情を隠そうともせず、その女性に尋ねた。
 宿の親父さんが訝しがるのも無理はない。
 その女性の身なりからは、とても冒険者や旅人には見えない。

「あの・・・、こちらで冒険者の方を雇えるって聞いたんですけど・・・」
「あぁ、仕事の依頼だね。ちょっと、待ってなさい」

 親父さんは溜め息をついた様に見えた。
 無理も無い。こんな何処にでもいるような女性が冒険者なんぞに依頼に来るという事は、それは不幸な境遇にいるからに違いない。
 そして、親父さんは奥の棚から紙を持ってきた。

「それじゃぁ、この紙に依頼内容を書いてくれるかな。なるべく詳しく書いておくれよ」

 まるで初めて字を習う子供に言い聞かせるかのような、物柔らかい態度で親父さんは彼女に接している。
 その様子をこっそり眺めて、ギルとアレクが顔を寄せ合って相談した。

(おい、アレク。今日の宿って、俺たちくらいしか真っ当に動けそうなのはいないんじゃなかったか?)
(ああ。確かアイリーンのパーティは戦士が骨折、ミロンの奴は魔術師が里帰りしてるんだったな。)
(他の格上のパーティならいけるかもしれねぇが・・・)

 こそこそした二人を知ってはいるものの、あえて無視して親父さんは彼女に報酬を尋ねた。

「えぇ。えっと、500sp・・・」

(こりゃいかん。その報酬で雇えるまともな面子は、俺たち以外にないぞ。)
(・・・・・・引き受けるのか、ギル。)
(じゃないと、彼女が困るだろ。)

「ふむ。そして、次に・・・」
「ちょっと待って、親父さん」

 幼馴染同士の会話が耳にずっと入っていたのだろう。
 お人よしのアウロラが、絶妙のタイミングで声を掛けた。

「ん、どうした?お前さん達が引き受けてくれるとでもいうのか?」
「ええ。うちのパーティのリーダーも、そのつもりのようでしたから」
「そうか。よかったな、お嬢さん。こちらの冒険者の方が依頼を引き受けてくださるようだよ。見かけは弱そうだが、仕事の腕はわしが保証するよ」
「『見かけが弱い』なんて、大きなお世話だ!」

 親父さんの余計な一言に、ギルが大きな口をあけて反論したが、ギルにも親父さんが安堵していたのは分かっていた。
 他の面子が紹介できない以上、”金狼の牙”が受けなければ、この依頼がいつ冒険者の目に止まるか知れないだろう。
 リィナ、と名乗った依頼人からいろいろ話を聞く間、親父さんは後を任せたと言って調理場の方へ入っていった。
 リィナによると、彼女の弟が病気で倒れたのは2週間ほど前の事だった。
 弟は寝ていれば直ると言っていたのだが、2日、3日と経っても一向に病状は回復しない。
 そこで、リィナは村の医者に、弟の病状を診てもらう事にした。

『申し訳無いが、これはちょいとやっかいな病気じゃぞ』
『えぇ?・・・では、この子は・・・』
『待ちなさい。やっかいだとは言ったが、治らんとは言うとらんぞ』

「・・・・・・で、その病気を治すお薬に必要なのが・・・」
「ええ。フィロンラの花、というそうです。私も初めて聞いたんですが、非常に希少価値のある花とか・・・」
「フィロンラかあ。やっかいなのは確かね」
「知っているんですか?ジーニ」

 リィナが語った依頼の事情から出てきた花の名前は、ジーニの既知のものだったらしい。
 アウロラが尋ねると、ジーニは「大雑把にだけどね」と付け加えてから全員に説明した。
 フィロンナの花は、一説によると古代文明期の有名な魔道師が作り出したとも言われ、野生のものはほとんど残っていないという。
 リィナが頼った医者の話にも、ジーニの記憶にも、フィロンナの花がさる遺跡で見つかったのは30年も昔のことだという。

「そっか。僕らにその遺跡に一緒に行って、花を見つけて欲しいんだね」
「はい。この”狼の隠れ家”のご主人は、村の先生の古い友人だと言ってました。どうしても行くというのならば、ここで冒険者を雇いなさいって」

 特製の具タップリのスープと焼き立てのパンが、いい匂いと湯気を立てながら、親父さんの手によって調理場から運ばれてくる。
 リィナも、「その様子だと、今日はまだ何も食べていないんだろう?」と薦められ、パンをひとつ手に取った。
 冒険者達とリィナは、店の自慢料理である具たっぷりのスープにしばしの間、舌鼓を打った。
 空腹を満たした”金狼の牙”は、引き受けた依頼に対して、病気だというなら早いほうがいいだろうと手早く準備を済ませ、遺跡に案内役のリィナを伴って向かった。

2012/12/01 08:17 [edit]

category: 遺跡に咲く花

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