Sun.

東の妖獣 2  

「これが問題の屏風か」
「本当に怪物が出るのかしら?」

 商売上の興味から屏風を見つめるエディンの横で、ジーニが少女のように口を尖らせて言う。
 アレクはジーニ以外のメンバーを2交代制にして、屏風を見張ることを提案した。
 そうして数時間後・・・・・・。

「・・・・・・・・・?」

 「それ」に初めに気づいたのはギルだった。
 彼は、魔法関連に関してはまったく素養のない人間なのだが、傭兵のような戦いの勘とも言うべきものを持っている。
 見張りをしていた豪奢な屏風から、緑色に濁った煙が四隅から湧き出たかと思うと、たちまちそれは中央に集まりだして黒く形をとり始めた。その姿は、まさしく妖獣と呼ぶにふさわしい。

「みんな、起きろ!」

 でかい声で仲間を起こしつつ、ギルは武器の柄を短く持って構えた。
 室内での戦闘ということで、あまり長い間合いでは戦うことが出来ないので、腰を低く落としていつでも相手の懐に飛び込める用意をしている。

 アウロラ・ジーニが呪文集中の詠唱にかかり、他の4人が現れた怪物へと武器を持って向き直る。
 特にエディンは、怪物をまず足止めしようと【磔刑の剣】を繰り出す構えだ。
 詠唱のために魔力を集中していた状態のジーニが、声をあげた。

「こいつまだ完全に実体化してないみたいよ!」
「完全に実体化したら厄介です。今のうちに倒しますよ!」

 アウロラの激に、他の仲間が頷いた。
 戦闘が始まると実体化は完全ではないものの、怪物に物理的攻撃は有効らしく、エディンが腰のダガーを使って突き刺した技も、怪物の太い足を床に見事縫いとめていた。

ScreenShot_20120920_212045718.png

 しかし。

「こ、こいつ、無理やり足を引っこ抜きやがった!」
「傷が少し塞がってる。再生能力!?」

 正体不明の妖獣の動きに、エディンとアウロラが動揺する。
 恐ろしいことに、妖獣は自分の行動力と抵抗力を高めることができるらしく、呪文も唱えずパワーアップしたその様子に、パーティの一部が浮き足立った。

「ひるむな!これで終わりだ!」

 あくまで冷静さを保って攻撃のチャンスをうかがっていたアレクの、渾身の力を込めた一撃が、妖獣の首を叩き潰した。

ScreenShot_20120920_212101562.png

 黒い姿を、どうと大きな音を立てて沈めた怪物の姿に、しばらく一同は構えを解かないまま注意していたが、やがて完全に沈黙したことが分かるとほっと息をつく。

「どうやら終わったようですね」
「みたいだね」

 アウロラの言葉にミナスが頷く。
 その後、一同が妖獣と戦ってる間に熟睡していた依頼人から、約束の報酬を得た。
 その技能【投銭の一閃】は、誰も適性のないことが分かり売り払うことにしたが、初歩的な技能書であることもあり、大した金にならなかったため、アレクは身銭を切って仲間達にエールを奢る羽目になったのだった・・・。

※収入400sp+800sp(東の妖獣+要港都市ベルサレッジ)、【投銭の一閃】入手※

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■後書きまたは言い訳
8回目のお仕事は、Wizさんのシナリオ・東の妖獣です。
非常に短いシナリオで、リプレイの下書きも今までで一番ファイル容量が小さいという・・・しかし、シンプルな内容だけに、戦ってスカッとしたい方には最適のものだと思います。
もし、【投銭の一閃】に誰か適正を持ってたら使おうと思っていたのですが、みんな普通以下にしかなりませんでした。残念。

一箇所、スクリーンショットを起動させるタイミングを間違えて変な風になってますが、心優しい読者の方は、アレクのトドメは見なかったことにしてください(酷)。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。


2012/11/11 23:52 [edit]

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Sun.

東の妖獣 1  

「冒険者募集・・・奇妙な怪物?」
「ふーん、怪物退治か。銀貨400枚はちょっと安くね?」

 壁の張り紙をはがして読み始めたアレクの手元を、ギルが覗き込んでいる。

「相場より安いが、他にお礼でもらえるものがあるだろ」
「そういやそうだな。東方で仕入れた技能書、か・・・」
「サトウ・イチロウか・・・東の名前だな」
「おや、あんたたちその張り紙に興味があるのかい?」

 童心に返ったかのように賑やかな二人に、宿の親父さんが声を掛けた。

「そいつは東方から来た商人からの依頼でね。何でも家に化け物が出るらしいんだ」
「商人からの依頼が多いな、ここのところ」

 苦笑して張り紙をカウンターへ差し出したアレクとギルに、親父さんは温めていたコーンスープを差し出した。
 階段を軽やかに下りてくる音がして、エディンが階下に顔を出す。

 エディンは盗賊だ。無論、音をまったく立てずに階段を下りることも出来るのだが、普段からそんなことをしていては、たちまち正体がばれてしまうので、必要のないところでは普通に足音を出すようにしているらしい。
 しかし、聞き耳の良さは相変わらずで、違和感なくカウンターに寄り集まっている3人の会話に飛び込んできた。

「だからそいつを退治してくれ、と」
「そういうことだ。依頼人の家はリューンの郊外にある。長くはかからんだろうし、話を聞くだけでも行ってみたらどうかね?」

 エディンが頷く。

「その技能書とやらも気になる。ああ、行ってみるぜ」
「よし、じゃあ依頼人の家までの地図を渡しておくぞ。詳しい話は向こうで聞いてくれ」

 コーンスープを飲み干したギルが、弾むような足取りで2階に向かい、残りの仲間に依頼のことを伝えに行く。
 報酬が安いと文句をたれながらも集まった冒険者たちは、そのまま依頼人宅へ向かった。

 地図の通りに進み依頼人宅へ訪れた冒険者たちは、要件を告げると客間に通され、しばらく待つように告げられた。
 これが東方の建築様式で建てられた家らしい。普段目にする家とはずいぶん違って見える。
 紙や木を使った引き戸、初めて見る壁の材質などを観察していると、この家の主人、すなわち依頼人がやってきた。

「待たせてしまって申し訳ない。私が依頼を出したイチロウです」

 東方から来たというイチロウは、変わった髪形と服装をしている。
 口を開くと、やや母音を強調するような発音が気になったものの、概ね意思疎通に問題のないこちらの言語が飛び出した。

「えー、私どもももう大変困っておりましてね」
「胸中お察しします」
「どうやらこの家に化け物が出るようなのですよ」

 からかってるのか真面目なのか、よく分からないギルの言葉には眉も上げず、依頼人は話し続けた。
 アレクが必要と思われる質問をしてみる。

ScreenShot_20120920_204638156.png

「その化け物ってどんな奴なんだ?」
「私は怪物には詳しくないのですが、鹿に似ていて13尺ほどの大きさで、顔は狼に似ていたそうです」
「あなたが目撃なさったわけではない・・・?」
「ええ」

 頷いた依頼人を見て、ふむとアレクが唸った。
 伝聞による怪物像というのは、えして情報不足だったりすることもあるので、注意が必要である。
 そんなことを知ってか知らずか、依頼人はまた口を開いた。

「何でも目撃した使用人が言うには、怪物はある屏風から飛び出した、とか言っておりました」

 屏風というのは、リューンの東方趣味の収集家の間でも流行っている、部屋を一時的に仕切るための衝立のようなものらしい。
 屏風の表面には大抵絵が描いてあるものだが、それが高名な画家の手によるものだと値段がたちまち跳ね上がるという依頼人の説明を聞きながら、ギルが首を捻った。

「それを捨てればいいんじゃ・・・」
「そんな勿体無いことがどうしてできましょうかっ!」
(あ、高い奴なんだな)
「あれは銀貨に換算すると4000枚もするんですよ!それを捨てるなんて勿体無い!」
(人死にが出てからじゃ、高いとも言ってられないと思うけどね・・・)

 後ろでこっそりとエディンとジーニが話し合っているのに気づかず、イチロウは屏風の貴重性を拳を振り上げて力説していた。

「と、とにかく屏風から現れた怪物を倒してくだされば報酬は払います」
「・・・・・・・・・」

 ギルは困ったように頭を掻いた。あまり、この手の商人が好きではないのだ。
 しかし、一度仕事を請け負ったからには、ここで下りるとは言えない。
 アレクはギルの代わりに質問をした。

「それで怪物はいつ出るんだ?」
「分かりません」
「・・・・・・・・・」

 ジーニが明らかに顔を歪めた。めんどくさい、の6文字が書かれているのが仲間には分かった。

「だから皆さんにはずっと屏風を見張ってもらうことになります」
「・・・・・・ちょっと、アレクシス?」
「・・・・・・分かった、俺が悪かった」

 冷え冷えとしたジーニの声に、アレクは敗北を悟った。
 ジーニには、化け物が出るまで休憩しててもらうのが一番良さそうだ。

「その化け物を退治してくれれば、銀貨400枚と東方より仕入れました技能書をお渡しいたします」
「・・・・・・・・・」

 黙り込んだエディンは、もうその技能書とやらがいい品であることを祈るばかりだった。

2012/11/11 23:36 [edit]

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