2竜人族の邑

 見張りのリザードマンを倒すと、後から後から敵が溢れてきた。
 外にいる見張り役を眠らせるなり暗殺するなりしなかったのは、見通しの悪いよく茂る森の中、地の利は圧倒的にリザードマンにあったからである。
 下手に小細工をすれば、その間に隙をつかれてしまう可能性が高い。
 ならば力技で押し通る方がこっちの被害は少ないはず――と、酒精から解放されたジーニが指示したのは中央突破という策であった。

「・・・なるほど統率も取れているし、よく見るリザードマンよりも強いのがちらほら見られるな」

 【魔風襲来】の準備をしていたアレクが、じっと敵を図りながら呟いた。
 槍を携えたものや、人間では両腕で支えなければならないような大きい得物を2つぶら下げたものまで混ざっている。
 彼らリザードマン側の戦術は中々巧妙で、召喚獣の出現タイミングをずらされている現状に、精霊使いであるミナスが臍を噛んでいた。

「ああもう!出るならいっぺんに出てきてよ、面倒なんだから」

 純白のドレスを身にまとい、ダイヤと見紛うような氷の宝石がついた首飾りを手にした彼――いや、今は彼女か――をちらと横目で確認したエディンは、

「あちらさんも戦い慣れているってこったろう。油断はならねえぜ」
「・・・奥から出てきたの、ロード種のようですね」

 気息を整えたアウロラが仲間たちに注意を促した。
 リザードマンとは言え、ロード種ともなればかなり竜に近い存在である。
 少なくとも、≪狼の隠れ家≫にいる中堅冒険者たちでは、生半なことで太刀打ちするのは難しいであろう。
 しかし、それをものともせず嬉々として飛び込んでいく者がいた。

「あれ、俺がもーらい!」

 ・・・・・・・・・ギルである。

「どうしてあんなにうちのリーダーは好戦的なんだか・・・」
「めくらめっぽうに喧嘩を売ってるわけでもない。相手が好戦的だからそれに相応しい感情を返してるだけだ。・・・・・・多分?」

 エディンのぼやきにアレクがフォローともいえないフォローをする。
 ロード種からの、人間にはよく分からない激がどう飛んだものか、リザードマン側が士気を上げてこちらに襲い掛かってくる。
 それをギルとアレクが委細構わず切り込んで打ち払い、エディンは戦況を見ながら面倒そうな敵(実は回復役だった)に狙いを定めて討ち取った。

「これなら大丈夫・・・かしらね」
「油断はせんでくれよ。こっちも、妖魔たちがこれほど統率が取れてるとは思ってなかったからな」
「まあねー。だからちゃんと盾は構えてるわよ」

 ジーニが薔薇の模様が描かれた盾を誇示するように振った、その時であった。
 ”金狼の牙”の強さに慌てたリザードマンの一人が、自棄になって手にしていた槍を投げつけてきた。投げた当人ですら思いもせぬ速さで飛んでいったそれは、盾を構えていたジーニの肩を掠める。

「グガアアアァァ!」
「痛っ・・・!・・・もう!ちょっとは大人しくなさい。眠れ、空気よ眠りの雲と化せ!」

 振り上げた≪死霊術士の杖≫の髑髏から、誘眠性のガスが発射される。

3竜人族の邑

 気合のよく入ったジーニの魔法――それに包み込まれた妖魔達は、強制された眠りに打ち勝つことができずに次々と膝をついた。

「神精ヴァンよ、我が呼び声に応えて出でよ。汝が力をここに示し、愚かなるものを打ち倒さんことを・・・」

 アウロラの歌が戦場に響く。その神聖なる音によって召喚がなされた神精ファナス族の幼生は、牙をむき出しにして寝ている妖魔の喉笛をかききった。

「あと二匹、か」
「どっちがロード討ち取るか競争と行こうぜ、アレク」

 幼馴染コンビがそう言って飛び出す。
 ギルの力強い振りで繰り出される斧と、フェイント交じりのアレクの剣――しかし、どちらの斬撃も厚い鱗によって弾かれてしまった。
 これは長期戦になるだろうかと舌打ちしたエディンの後ろから、妙に強い魔力が膨れ上がる。
 一体何事かと視線を走らせると、ちょうど【雪花の装飾】の持続時間の切れたミナスが、≪森羅の杖≫を振り上げて新たな召喚を行なっていたところであった。

「渓流の魔精・ナパイアス!出てきてあの敵を押し流しちゃえ!」

 たちまち、≪森羅の杖≫を軸として澄み切った奔流が迸り、いとし子を守るかのようにミナスの体を包んだ。そこからジーニに飛ばされた槍の何倍もの威力で、水の槍が勢いよく噴出する。
 真っ直ぐにロード種を狙ったその魔法は、狙い過たず心臓を串刺しにする。

「・・・・・・ありゃ。とられちゃった」

 困ったように頭を掻くギルを置いて、アレクが落ちていたリザードマンの槍を拾い上げた。

「死体を持ち歩くのも嫌だし、これを証拠に持ち帰るとしよう。・・・何だか妙に軽いな」

 アレクがよく観察すると、その槍は攻撃を受け流しやすいようなつくりになっていた。
 どんな材質で作ってあるのか非常に丈夫そうで、投擲にも向いたその形は、おそらく実戦で磨かれてきたものなのだろうと思われる。
 それを手にしたアレクを先頭に、次々と”金狼の牙”はリューンへと引き上げていった。

※3000sp+800sp、≪竜人族の槍≫※
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■後書きまたは言い訳

59回目のお仕事は、SADさんのバトルオリンピアトーナメントと、レカンさんの竜人族の邑でした。どちらも戦闘もので、まずバトルオリンピアが2003年にアップされた作品です。SADさんの他シナリオと言えば、「科学魔法研究所」とか「666の獣」辺りが有名でしょうか。独特の観点からいつも毛色の違うシナリオをお作りになられています。
一方、竜人族の邑は2012年の作品で、ギルド投稿された中では「封印の剣」辺りが知られているかと思いますが、それ以外にも魅力的な一人旅シナリオ等どんどんアップなさっている意欲的な作者さんのシナリオです。

・・・それで、何ゆえ今回は2つを合体させたのかと言うと・・・。
私如きの筆力では、どうにもバトルオリンピアを一カテゴリ分として書ききることができなかったのです。
こちらのシナリオ、勝ち進んでいく上で後輩たちとの会話があったり、前に準優勝したチームと優勝したチームの間において、チームメイトを過失により殺害にいたってしまったというしこりがあったりと、非常に魅力的な挿話があるのですが・・・どういうわけか、生かしきることができません。
すでにシナリオクリアをしているので、書かないわけにもいかず。
困っていた私の出した結論としては・・・「そうだ、もう一つ魅力的で短い戦闘シナリオくっつけて、1カテゴリ分まで書いてしまおう」でした。
それでシナリオフォルダを漁っていると、そういえばレカンさんのシナリオはまだプレイしたことがなかったことに気づき、9レベルで挑めてかつ世界観的にバトルオリンピアから繋げられるものを探すと・・・ありましたありました、竜人族の邑が!
竜人族の邑にとってはまさにとばっちりと言えなくもない経緯だったりしますが、両作品の作者様やファンの皆様には多めに見ていただけるとありがたいです・・・すいません・・・。

次回はちょっと毛色の違うシナリオを選んでみようと思います。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/04/24 08:14 [edit]

category: バトルオリンピア+竜人族の邑

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「あ~。それにしても3000spか・・・」

 特大のベーコンエッグを平らげたギルは、カウンターについていた肘を行儀が悪いと親父さんに払われながらもそう言った。
 何の事かと言われると、”金狼の牙”は新しく導入した魔法や技術の試運転に、ヴァルハラ闘技場まで出かけてバトルオリンピアトーナメントというイベントに出場してきたのである。 

1オリンピア

 コロシアムでの戦いは初めての経験であった(何しろかの武闘都市ですら技術の習得だけだった)が、【暗殺の一撃】に代表されるような急所をつくような技は禁止、死人が出ないようにという考慮のなされたルールの中での戦いであったから、ミナスも連れていったのだ。
 ・・・・・・まあ、もっともそれほど考慮されていても、死人が出てしまう時は出てしまうが。
 優勝賞金3000spという話に目を輝かせたのは、もちろんジーニであった。
 
「参加しましょう!あたしたち、こう見えても腕っ節には自信あるし」
「・・・腕っ節に自信があるのは確かだけど。ジーニがそうやって目を輝かせると怖いのは、何でなんだろうな・・・」

 それは金に釣られたジーニが関わると、大概がろくな目に合わないからであろう。ギルは頭が良いわけではないが、勘はたまに呆れるほど冴える男であった。
 ”金狼の牙”の後輩である”黄色い牙”も参加するということで、南方のイーストランドという国まで一緒に出かけて行ったのが1ヶ月ほど前の話。
 準優勝で1500sp、三位で1000sp、ベスト8でも800spと中々良心的な賞金体系であったのだが・・・。
 受付でパーティ名での登録はちょっと恥ずかしい、となり、適当に”リューン組”などと名づけた彼らの快進撃は、恐ろしいほど順調に進んでいた。
 一回戦では闘技場外で絡んできた柄の悪い連中を片付け。

3オリンピア

 二回戦では違う宿の冒険者たちを負かし。
 三回戦の奇怪な外見のチーム相手も、四回戦での騎士団との対戦も、”金狼の牙”は危なげなく勝ち進んでいった。

「邪魔をするんじゃない、おとといいらっしゃい!」
「輝いてる、ジーニが恐ろしく輝いてる」
「生き生きしとりますなぁ、ジーニはん」
「・・・・・・ミナス。これは見習っちゃいけませんよ。いいですね?」
「はあい」

 嬉々として風の召喚魔法を唱え相手を蹴散らすパーティの頭脳を、アレク&トールやアウロラ、ミナスは遠巻きに見守っていたりする。
 準々決勝では”黄色い牙”(実は去年ベスト4だったらしい)との対戦であったが、チームの回復役とアタッカーを見抜いた眼力までは賞賛されるものの、やはり彼ら”金狼の牙”の敵ではなかった。

5オリンピア

「だってなあ・・・あいつ、アレクのこと回復役だと思ってたもんな」
「・・・・・・俺じゃなくてトールがやってくれてたんだけどな」
「アタッカーがエディンと言うのも、まあ・・・・・・分からなくはないんですが」
「俺ァそんなに撃墜数稼いでたかねぇ。ま、敵に攻撃を当てる回数は一番多かったかもしれねえが、な」

 準決勝と決勝で当たったチームには何やら因縁があったそうなのだが、それもガン無視して彼らは優勝まで突き進んでいった・・・。

6オリンピア

「うーんと。僕ちゃんとお姫様を呼べることも分かったし、そろそろ冒険のお仕事、したい、なあ・・・」
「あー・・・そうだな」

 優勝賞金などでのんびりと今まで過ごしていた”金狼の牙”だったが、≪水銀華茶≫片手の最年少メンバーから異論が上がったのは、ある晴れた日の午前のことであった。
 のんびりと相槌を打ったギルを見て、「それなら・・・」と、アウロラやエディンが壁に貼り付けられている依頼書の数々をチェックし始めた。
 手ごろで割の良い依頼は、朝早くに起きてきた他の冒険者たちがチェック済みのためになくなっている。

「あまり長いこと留守にする冒険よりは、ぱっと終わる方がいいかね・・・・・・」
「そうですね。1000spに満たないお仕事でも、なるべく近場から選んでみましょう」
「僕もお手伝いするよ」

 人間の言語に対する読解を学んでしばらく経つミナスが、アウロラの横から羊皮紙の束に手をかけた。
 その瞬間、彼の袖に当たった羊皮紙が3枚ほど床に散る。

「あ、あああ。ごめんなさい・・・」
「かまいませんよ、拾えばいいのですから」
「そうそう・・・・・・ん?」

 エディンの手が止まる。

「どうした、エディン」
「リューン自警団から依頼が出てるぜ」

 アレクの呼びかけにそう応えると、エディンは一番遠くまで落ちた羊皮紙をぴらりと皆に見えるようかざした。その依頼書の右隅には、確かにリューン自警団との書き込みがある。
 ギルが席を立って覗き込む。

「なになに?えー、南西にあるレノの村がリザードマンの一族により滅ぼされた・・・」
「放置しておけば近隣の村にも進出する可能性が高いので急いで対処して欲しい、ですか」
「リザードマンだろ?俺らで受けて後輩に恨まれないかね?」

 ギルとアウロラが目を合わせて首を傾げるのに、エディンは「ここ見ろよ」と長く器用な指で一点を示した。そこには、「偵察した冒険者によると非常に統率された動きをとるらしく手強い」という文が書かれている。

「報酬は800sp。緊急依頼のハンコも押してあるし、この時間で誰も引き受けないなら、やっちまった方が親父さんも助かるんじゃねえ?」

 エディンはカウンターの向こうで皿を洗う親父さんを振り返った。
 当の本人も、苦笑しながら頷いている。

「そっか。じゃあちょっと行って片付けて来るか」
「それなら僕、ジーニのこと起こしてくるね!」

 パタパタと軽い足音を立てて走り出したミナスを見送りつつ、ギルはアレクに訊ねた。

「・・・何、あいつまだ起きてなかったの?」
「昨夜は結構深酒だったらしい」
「何で?」
「新しく開発した薬瓶のレシピで、何人かに惚れられて追っかけまわされたんたどさ」

 アレクはそう言って肩をすくめた。

2013/04/24 08:12 [edit]

category: バトルオリンピア+竜人族の邑

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