Thu.

satan 13  

44satan

 ギルの一撃で見事中央突破を成功させた冒険者たちは、号令一下、大広間へと突入を果たした。

「ヴ・・・・・・・・・」

 その視線の先には、ザンダンカルの魔王が佇んでいる。
 すぐに冒険者に気づいたようだ。両脇には体を低くし、前傾に構えた魔物が2体残っている。
 魔王の前に、赤い玉が出現した。
 先ほど教会を吹き飛ばした玉と、全く同じ形状をしている。

「ク・・・・・・ジーニ、これは・・・!」

 エディンが焦った声を出した。冒険者の後方には、倒しきらなかった魔物の大群が詰め寄せてきている。
 突っ込んで魔法を打たせるなと指示しようとしたギルを制し、ジーニは打たせろと叫んだ。

45satan

「皆、四方に散って!固まるな!1人でも多く直撃を避けて!!」
「! そういうことか!」

 彼女の意図に気づいたアレクが、いち早くトールを逃がしつつ大広間の端のほうへと体を投げ出す。
 戸惑ったようなラングの体を、委細構わずギルが体当たりで吹き飛ばした。
 魔王がゆっくりと手を上げていく。

「散れぇーーーっ!!」

 他の仲間たちも、ジーニのその叫びが終わらぬ内に四方八方へと体を投げ出していった。

「ヴオオォーーーーーーーー!!」

 ・・・・・・魔王の呪文による爆炎が辺り一帯を包む。
 凄まじい量の熱と煙がようやく晴れた時、”金狼の牙”で立ち上がれたのはアレク・エディン・ミナスの3名だけだった。
 アレクが声をかけると、ギルによってちょうど上手い具合に死角となる場所へ吹き飛ばされていたラングも、そこから這い出してくる。

46satan

「ク・・・・・・大丈夫か、ラング・・・・・・」
「は・・・・・・・・・はい、何とか・・・・・・・・・」

 魔王が放った赤い玉は、広間の入り口付近を直撃した。その近くにいたジーニたちが巻き込まれ倒れている。
 だがそれ以上に、多くの魔物が爆発に巻き込まれており、無数の体の破片が飛び散っていた。
 天井から大小問わず多くの瓦礫が崩れ落ち、その下敷きになっている魔物もいる。

「なるほど・・・・・・な。王は魔物を気にせず魔法を放つ。四方に散った俺たちの方が被害が少ない・・・・・・か」
「そして、生き残った者が・・・・・・王を討つ・・・・・・と・・・・・・」

 アレクの感心した呟きに、エディンが応じて双剣を抜き放つ。

「・・・・・・ったく、随分な賭けだな・・・・・・」

 呆れたように頭を振ると、エディンは敵の戦力を観察した。王以外に魔物は2体、後方で正常に動ける魔物は、せいぜい数体程度といったところだろう。
 王自身も正常に立つ事が出来ていない。すっかり杖代わりと化した剣は左右に大きくぶれており、直立する事すら辛そうに見える。

「行くぞ、ラング!」

 ここが好機と、アレクは気合の篭った声で呼ばわった。

「は、はい!」
「雑魚は僕に任せて、皆は王に集中して!」

 ミナスはそう言い放つと、≪森羅の杖≫に魔力を集中し始めた。
 主の意を受けて、スネグーロチカが冷気を振り撒きながら魔物へと取り付く。更にはミナスの足元から奔流が迸り、ナパイアスが敵を押し流していく。
 エディンは立ちはだかろうとする魔物を精妙なステップで振り切り、王のローブを魔力による杭で奥の壁にはりつけた。

「今だ、アレク!」
「おう!」

 動けずにいる魔王へ、アレクが続けざまに何度も斬撃を放つ。

「こいつで・・・・・・どうだ!」
「ヴ・・・・・・・・・ヴヴヴヴォーーー!!」

 渾身の力が篭った戦士の一撃が、魔王の頭を砕いた。
 杖代わりにしていた剣が前方に転がる。

47satan

「!」

 エディンは≪クリスベイル≫を落として素早く魔王の剣を拾い上げ、目前の胸に突き刺した。

「終わりだ」

 王の全身の力が抜けていくのが分かる。

「オォォォォ・・・・・・」

 悲しげな咆哮を上げると、魔物も活動を停止し始めた。王の方を向き、力なくただ立っている。
 ラングが信じられないものを見た、といった態で「やった・・・・・・」と呟いている。
 次の瞬間、建物全体が揺れ始めた。
 アレクが慌てて辺りを見回す。

「何だ!?」
「あー・・・こりゃ、さっきの大魔法で建物が逝っちまったんじゃねえ?崩れるぞ」
「早く脱出した方が良さそうだな」

 エディンの言葉を受け、天井に隠れていたトールがようやく下りてきたのを懐に収めたアレクは、ギルの体を背負い始めた。
 倒れている仲間たちは大小の傷はあるものの、しっかり息をしており、充分な休養と回復魔法を施せば大丈夫な様子である。
 顎でジーニを担当するようラングに合図をして、エディンはミナスにギルの斧とジーニの杖を持たせた。
 自分はアウロラの体を担ぎ上げ、やれやれと息をつく。

「長居は無用だな」

 アレクが淡々と言った。

「街で新たにさらわれた子供もいるかもしれない。注意して行こう」
「大丈夫、生命の気配があれば僕に分かるから!任せて!」

 小さなエルフが自分の胸を叩いたが、彼らが調査しながら帰る途中の道に新たな子供の姿はなかった。
 轟音と共に、徐々に瓦礫が降り注いでいく。
 王の上にも瓦礫は落ち、その体は少しずつ埋まっていった。
 やがて、ひときわ大きな瓦礫が落下し、王の姿は完全に見えなくなった・・・・・・。

 教会の地下から崩落音が鳴り響き、やがて静まり返ると、誰にとも無くアレクは独白した。

「終わった・・・・・・・・・な・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ああ」

 エディンが頷く後ろで、すっかり汚れてしまった顔を拭いもせず、ラングは問いかけた。

「本当に・・・・・・本当に終わったんですか?アレクシスさん・・・・・・」
「ああ」

 ゆっくりとラングがしゃがみ込む。張り詰めていたものが一気に切れたようで、抱えていた荷物をミナスがそっと下に置き、彼の背中を撫でた。
 ヴァニラは言っていた。王は封印こそできても、死ぬ事は無いのだと。
 またもし、王を蘇らせるヴァニラのような人間が出現したら・・・・・・。

「僕は・・・・・・多くの人たちの役に立ちたい。そう思って冒険者になりました」

 ラングがゆっくりと呟く。
 騎士の守護の無い田舎の地方では、まだまだ多くの者達が妖魔に苦しめられている。ラングは、そんな弱者たちを助けたいとずっと思っていた。
 しかし、このザンダンカルにおいては・・・・・・人が人を殺した。

「生きるために人を襲う。そんな人は、今まで何度も見てきました・・・・・・」

 だが、今回は違っている。自分の欲望のためだけに人を犠牲にした者がいる。
 アレクはゆっくりと胸のうちを吐露した。

「・・・・・・・・・ラング。冒険者としての経験・・・・・・それをお前に教える事は出来る」

 ただし、と彼は付け加える。

「冒険者としての目的、それをお前に授ける事は出来ない。それはお前が自分で答えを見つけるものだからだ」
「・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・」

 ラングは思った。これからどんな困難な事が待ち構えていようと、今日と言う日を決して忘れまいと。ラングは、この後にアレクにこう聞いたのだ。

48satan

「道に迷ったら・・・・・・・・・付いていってもいいですか?」
「・・・・・・それも、お前が決める事だ」

 否定もせず、肯定もせず、アレクはただ静かにひたと血色に見える双眸を、後輩に向けていた。

※収入2500sp※
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■後書きまたは言い訳

57回目のお仕事は、leaderさんのシナリオでsatanです。
いやはや、長いのなんのって・・・っ!今まで一番長いのはDr.タカミネ様作の「最後の最後に笑う者」46KBだったのですが、今回のリプレイ原稿見たらぶっちぎりの72KB。
手ごたえのある、さすが高レベルらしい依頼と敵とキャラクターたちの立ち回り具合だったのですが、圧倒的に体力取られました。その分だけ見ごたえのあるリプレイになったんだといいのですが・・・。

途中でちょこちょこと今までに受けた依頼のことが出てきておりますが、本編では特に出てきておりません。ただ、魔王の正体について、魔法使いがあれはリッチーに近いものだ、と看破する前から「この画像はカナン様に似てるよなあ・・・。」と思ってはいたんですが。(笑)
盗賊役だったり、後輩の世話役だったり、リーダーだったり、参謀だったりを選ぶ事が出来るシナリオで、”金狼の牙”の場合はこれしかないなーという感じで、すぐ決定できました。
なるべく台詞は本編のままを書くようにしてるのですが、ほぼ直す必要がなかったです。
一応大きく違うところとしては、ザンダンカルの宿亭主から情報収集する様子はかなりアレンジをさせてもらっています。アウロラがきな臭いと言ってますが、あの段階でそこまで疑っていないんですよね。ただ、彼女なら少し疑わしく感じるんじゃないかなと思い、そこは改変させてもらいました。

今回、ジーニが元貴族脅したり、後輩からかったり、治安局の人叱ったりしているのはシナリオのとおりそのままなんですが、この人ものすごく生き生きしてるなあ・・・と、作者が思ってしまいました。(笑)

次回はもうちょっと短いシナリオにしよう・・・。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/04/11 18:31 [edit]

category: satan

tb: --   cm: 3

Thu.

satan 12  

 教会の表側では、すでに治安局員と暴徒が少数で小競り合いを行なっているが、崩れ落ちずに残った瓦礫が遮り、表と裏の様子はお互いに分からない。

「魔物は・・・・・・いないようですね」

 きょろきょろと辺りを見回すラングに、アレクはここに残れと指示をした。
 自分も当然行くものだと思っていたラングは、気色ばんで否を唱えたが、魔物が何匹帰ってくるかをバイゼルに知らせる役目が必要なのだと彼は説明した。

「重要な情報だ。それに今度こそお前が足手まといになる」

 分かってるだろうと言われると、それ以上返す言葉は新米たる彼には残っていない。確かに、最初の後退の時でさえ彼はチームの足を引っ張っていたのである。
 渋々頷いたラングは、それでもアレクに縋るように言った。

「で、でも必ず戻ってきてください!!約束して下さい!!」
「当たり前だ」

 彼らは教会の地下へと進んだ。
 隠し階段の辺りまでたどり着くと、再びエディンは辺りを素早く伺ったが、誰もいないと結果を告げる。
 そしてエディンは、アレクを助手に階段のある部屋のガラクタをバリケード代わりに積み上げた。これで挟撃を防ぐつもりなのだ。

「もう少し灯を近づけてくれ」
「こうか?」
「ああ、悪ぃな・・・・・・ん?」

 作業の途中、灯りで照らされている範囲の端に見覚えのある影が映り、エディンは手を止める。

「ラング!?」

 何をやっていると言い咎めるアレクに構わず、ラングは自分が見たものを報告した。

「ま、魔物です!!魔物がいっぱい戻ってきました!!」
「それでどうしてこちらに来るんだ、お前は!?」
「い、いっぱいいたので・・・・・・知らせないとと思って・・・」

 珍しく動揺して後輩を叱り飛ばすアレクの背中を叩いて落ち着かせると、ギルは「何体だ?」と問うた。

「10体です!すぐそこまで来てます!」
「・・・・・・このバリケードは10体でも持つの?」

 ジーニが胡乱げな目になってガラクタの山を見つめる。エディンは小さく唸った。

「ここで応戦すれば少しは持つが・・・・・・」
「それじゃ意味が――」

 意味がないだろう、とジーニが言いかけた時。
 腹に響くような咆哮を上げて、魔物が教会地下へと侵入してきた。即座にこちらに気づいたらしい。
 アレクは持っていたフォーチュン=ベル製のランタンをラングに押し付けると、すらりと愛剣を抜き放った。

「奥に引くか!?」
「駄目だ!10体ではこのバリケードは持たない!挟み撃ちにあう!!」

 リーダーの言葉にエディンが返す。

42satan

「クソッ!!ここでやるしかないかっ!!」

 ギルはさっさと斧を構えた。最初は一匹しか近づいて来れなかったものの、ゾクゾクと魔物が地下に降りてくる。
 すでに地下は埋め尽くされてしまった。
 多すぎると舌打ちしたジーニは、ラングに向かって叫んだ。

「ラング!!そこのバリケードに火と油を投げ込んで!!」

43satan

「えぇ!?ちっ、地下ですよっ!?本気ですか!?」
「いいからやんなさい!アンタ、あたしに逆らうの!?」
「は、はいっ!!」

 金属製の手甲に包まれた腕が弧を描き、ランタン用の油と、火種を移したガラクタの木片がバリケードに投げ込まれる。
 油は若干それたが、それでも勢いよく火が燃え始めた。

「よしっ!!行くわよっ!!」

 ジーニがバリケードを杖で薙ぎ倒すと、魔物と冒険者の間に燃えさかるバリケードが崩れ落ち、炎の障壁が出来る。
 退け、という合図によって彼らは階段を駆け下り、子供の遺体を発見した小部屋まで移動した。
 まだ体力の少ないラングは、全力疾走により吐き気を催している。
 えづく後輩の背中を撫でつつ、アレクが涼しい顔で訊ねた。

「どれくらい持つ?」
「分からないわ・・・・・・。30分以上は燃えると思うけど、炎の勢いが弱まれば突っ込んでくるかもしれない」
「・・・・・・なら、躊躇してる暇はねえな」

 エディンは一行の先頭に立った。

「先に進むぞ。・・・ラング、行けるか?」
「は、はい」

 健気にもラングはすっくと立ち上がった。
 支援魔法をかけられるだけかけ、王の待つであろう広間へと向かう。
 ・・・・・・ふと、先を歩んでいたエディンの足が止まった。

(皆、止まれ。・・・・・・・・・居やがるぜ)

 大広間の前で、2体の魔物がうろついている。こちらにはまだ気づいていない。
 一行は奇襲を選択した。

(・・・・・・行くぞ!!)

 ・・・・・・準備満タンで挑んだ彼らが、2体の魔物に負けるはずも無い。あっという間に2つの巨体が地を這った。
 その死体を見つめながら、アレクが長く息を吐く。

「ヴオオオォォォ・・・・・・ン!!!」
「!!」

 後方より魔物の咆哮が聞こえる。もうあのバリケードを突破したものらしい。彼らは前方へと足を向けた。
 ところが、前にも無傷の魔物たちが集まり始めたではないか!!

「くっ・・・・・・後ろにも・・・・・・」

 ギルは後方を確認して呻いた。前方には10体程度、後方には見える範囲でも5体はいる。完全な挟み撃ちだ。

「愚痴っても仕方ないが・・・・・・ジーニ?」
「分かってるわよ。今考えてる」

 リーダーからの要請前に、ジーニの頭はフル回転していた。

「・・・・・・奥の広間に突入しましょ。真ん中の奴だけ倒して一気に行くのよ」
「突入してどうすんだよ。勝算はあるのか?」
「なきゃ言うわけ無いでしょ。あたしに賭けなさい」
「うわあ。すごい不安」

 傍らでそれを聞いていたミナスは、口ではそう言いながら顔が笑っていた。
 ギルもそれに勇気付けられて笑う。

「・・・・・・行くぞ!仕掛けられる前に仕掛ける!」

2013/04/11 18:27 [edit]

category: satan

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Thu.

satan 11  

 骸骨が【炎の玉】の何十倍もの威力をした焔を教会に放って建物のほとんどを吹き飛ばし、魔物たちが街へと飛び去った後、ジーニは騎士団の要請をミーナに切り出した。

38satan

 もはやあの数では、いち冒険者たちの手には負えるものではない。即急に、人海戦術で対抗すべきであった。
 そのため治安局に戻り、バイゼルの手助けを借りようとしたが、返事ははかばかしいものではなかった。
 治安局にも魔物の目撃証言が届けられており、教会が放火された事実も伝わってはいたものの、”金狼の牙”たちが承知しているほど大きな状況だと思っていないのだ。
 今も、正確な報告を受けたはずの彼の目は点になっている。

「バイゼル。まずは、落ち着いて聞いて。多くの魔物が街に放たれた。魔王の食料になるのか、魔物の召喚に使うのか知らないけど、このままでは多くの人間が犠牲になる」
「数も多く、とても私たちだけでは対応できません。治安局員もですが、騎士団の出動をすぐに要請すべきです」

 ジーニとアウロラが代わる代わる言うのに、彼は力なく首を横に振るばかりだ。

「お、俺に・・・・・・そんな権限は・・・・・・・・・議長じゃないと・・・・・・・・・」

39satan

「なら、さっさと議長に話を通しなさい!今対応できなければ、たくさんの人間が死ぬのよ。アンタが街の人間を守るんじゃないの!?」

 ジーニは毅然として言い放った。

「・・・・・・だな。すまん・・・・・・・・・よし!!」

 バイゼルは顔に朱の色を取り戻し、議長に騎士団出動の要望を出すと言って動き出した。

 ――しかし、議長は魔物の目撃証言が一件だけで、他は全てリューンから来た冒険者の話でしかない事を理由に、騎士団出動に難色を示す――暴動を抑え込むより、一匹しか目撃されていない魔物の方が脅威なのか?
 貴族が多い騎士団に抵抗を持つ議長には、うかうかと返事の出来ないことであった。
 それからどれほど時間が経ったのか、議長が権限を行使し騎士団出動をさせるまでにこぎつけたバイゼルの顔は、疲労によって彩られていた。
 これからの対策を話し始めた一同の中で、ふとエディンがいち早く何かの違和感に気づいて顔をあげた。

「皆、気をつけろ。何かが近づいてきてる」
「何っ!?魔物かっ!?」
「分からない。何かが部屋の外まできている」

 気色ばんだギルを落ち着かせるようエディンは言い、そっとマントの内側で≪スワローナイフ≫の柄を握り締めた。
 アレクがさり気なく立ち位置を変え、バイゼルやラングを庇う場所に立つ。アウロラもそれに気づき、すっとミーナの前に立った。
 そして、それが部屋に入ってきた。

「ヴァニラっ!?」
「おおっと、これはこれは皆さん臨戦態勢で」
「いい度胸だな。わざわざ捕まりに来てくれるとは・・・・・・」

 ギルがそう言うと、ヴァニラはわざとらしく両手を挙げて応える。

「いやいや捕まる気は毛頭ない。君らと会話しに来ただけだ」
「会話?」

 訝しく思ったアレクが嫌悪感を込めたまま声を発すると、ヴァニラは口の端を微かに上げて情報を持ってきたのだと告げた。

「とりあえず、まずは私の話を聞いたらどうだ?魔王の事を知りたいだろう」

 ジーニは臍を噛んだ。情報がほしいのは確かだが、ヴァニラの企みがまったくと言っていいほど見えない。
 その時、静かに佇んでいたはずのアウロラが、ヴァニラの目を真っ直ぐねめつけながら口を開いた。

「分かりました。喋りたいことがあるならどうぞ」
「アウロラ・・・!」
「そうこなくては」

 ミナスが非難の声をあげるも、それをそっと押し留めたアウロラの姿ににやりと笑い、ヴァニラは情報とやらを一同に披露してみせた。
 教会の地下に出現した骸骨、あれこそがザンダンカルの魔王であり、羽の生えた化け物は彼の召喚した魔物である事。
 彼自身が地下で執り行っていたのは、結局あの魔王の復活の手助けであった事。
 全てはカウフマンの指示ではなく、ヴァニラが魔王の眠る教会を押さえるために上手く唆し、街に不穏な噂をばら撒く一方で生贄となる子供たちをさらった事。
 
「私のそもそもの目的は、王の禁呪。これを手に入れることだった」

40satan

「・・・・・・ろくでもない目的ね」
「君にとってはそうかね? 人間界に本来存在するはずの無い、魔界の王が使う禁呪・・・・・・」

 あるものは山を吹き飛ばし、あるものは川を干上がらせる。
 魔法を使う人間であれば、その魅力に焦がれるものだと濁った熱をもって語るヴァニラの顔を睨み、ジーニは唾を吐き捨てた。
 木箱に封印された魔王の胸に突き刺さる剣を抜き取り、血を数滴垂らすことで蘇らせると、ヴァニラは魔王と契約を結んだ。
 封印が解けたばかりの魔王は、その本来の力からするとあまりに脆弱。従って自らを守る守護者を必要としており、契約を結んだ見返りに禁呪を与えるのである。
 王が完全復活を遂げた暁には、契約時に賜った指輪で禁呪を制御する事が可能となる。ヴァニラは歓喜した。
 ところが、”金狼の牙”たちやラングの邪魔が入った・・・・・・。

「私は王を見捨ててしまった・・・・・・王の完全復活の前に・・・・・・」

 後に残ったのは制御不能の禁呪だけだと零したヴァニラはこちらを睨んだ。その殺気が増していく。
 フン、とアレクが鼻を鳴らした。

「それで俺達に復讐か?」
「そんな事をしてどうなる。すでに終わった事だ」

 その言葉と共に、確かにヴァニラの殺気は消えていく。

「王は、契約を破棄した者を許しはしない。私をどこまでも追いかけ探し出し・・・指輪を取り上げると共に私を殺すだろう」
「・・・・・・・・・いい気味だな」
「だから、私は君たちに託す事にしたのだよ。王の封印をな」
「それは都合が良すぎるというものだろう。第一、あんな化け物をどう相手しろと?」

 アレクがそう言うと、ヴァニラは魔王が不完全な身体で強力な魔法行使をしたことを指摘した。間違いなく、かなりの反動を喰らっているはずだと。
 そして今であれば、魔物の大半も王の側から離れている。
 ヴァニラを救うつもりなど冒険者たちにはさらさらないし、彼が魔王によって殺されるのは因果応報というものである。ただし、それもザンダンカルという街の事がなければだ。
 早く魔物たちを駆逐しなければ、罪なき市民たちがヴァニラの起こした事態の巻き添えを食うのである。そしてその犠牲者の数が多ければ多いほど、魔王は今よりももっと力を増していく・・・。

「・・・・・・・・・話は分かってもらえたかな?では失礼する。いつか君らの英雄譚を聞かせて貰うことにしよう」
「・・・・・・ま、待てっ!!」

 ラングが追いすがるも、ヴァニラは音もなく消えた。

「聞きたかったらキーレにでも行きなさいよ。そして巨人にでもやられちゃえ」

 そう小さく吐き捨てた仲間を、ミナスがつぶらな濃藍色の瞳で見上げる。

「ね、ジーニ。ヴァニラが言ってる事って本当かな?」
「どこまで本当かはわからないわ。ただ、恐らくは・・・否定する材料の方が少ないからね。王を倒すのが今しかないのも、本当でしょう・・・・・・」

 強力な魔法を使ってはいたが、王の動きは明らかに鈍かった。そして、大半の魔物が飛び去っている。
 そこまでジーニが分析をした時、不意にギルがバイゼルを呼ばわった。

「なっ、なんだ?」
「・・・・・・・・・俺たちが突入する」

41satan

 狼狽するバイゼルにギルは静かに言った。

「騎士団を待っていたら、手遅れになる。今のヴァニラの話を聞いてたろ?」
「も、もちろん聞いていたが、お前らがそこまでする必要は無い!」
「ここまで関わった以上、もう後には退けない。・・・・・・そんなとこか、ギル?」

 アレクが微笑んで幼馴染の顔を見やると、ギルは悪戯っぽくにやりと笑った。
 この都市を救う方法は一つ。今すぐ教会地下に入り、魔物が戻る前に王を倒す事である。
 ジーニは歯切れのいい声で指示をした。

「バイゼルとミーナは騎士団の要請に向かって。ラングはあたしたちと共に来るのよ。万が一ってこともあるからね。こっちが全滅したら騎士団が最後の砦よ」

 一緒に来たそうな顔をしているバイゼルにそう言って微笑むと、ジーニは「アンタの地位を利用しなさい」と告げた。

2013/04/11 18:23 [edit]

category: satan

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Thu.

satan 10  


 ギルが斧の刃を喉先に突きつけると、ヴァニラは呻き声をあげた。

「・・・・・・・・なん・・・・・・と・・・・・・・」

 カウフマンが裏切って情報を漏らしたことを指輪と共にヴァニラに放つと、彼は金で”金狼の牙”たちを買おうと申し出たが、鼻先で笑い飛ばしたジーニに一蹴された。
 当然、二人の部下を使って彼は口封じをしようと戦いを挑んできたのだが、あっという間に叩き伏せられたのである。

34satan

「逃げ場は無い。死にたくなければ、その手に持っている物を今すぐ捨てろ」
「これは恐れ入った・・・・・・これほどの・・・・・・腕前とは・・・・・・」
「ミーナは、連れ去った治安局員はどこだ?」
「もはやここまでか・・・・・・。半分しか・・・・・・達成できんとは・・・」
「質問に答えろ、訳わからねえ事ばかり言ってんじゃねえ!!」

 ギルは斧を握る手に力を込めたが、ヴァニラの様子が変わることはなかった。
 「まあいい」と呟いた彼に何を感じたのか、慌ててジーニがヴァニラの腕を掴もうとする。

「遅い」

 桜色に塗られた爪つきの手は、あっけなく空を切った。何かのアイテムに封じていたらしい転移呪文の仕業である。

「そうよ、これがあったのよ・・・油断してたわ・・・・・・」

 すでにヴァニラの気配は微塵も辺りから感じない。気持ちを切り替えた”金狼の牙”たちは、まずはミーナを探す事にした。
 更に奥へと続く通路をラングが見つけ、一行がそこを通り抜けると、地下とは思えないほどの大きな広間に出た。
 一人の少女が倒れている――ミーナのようだ。
 ラングがすぐにミーナの元に駆け寄り、抱きかかえる。

「ミーナ!!大丈夫か!!」
「ン・・・・・・ヴーン・・・・・・・・・」

35satan

 先ほどとは違い、暖かい感触が伝わってきた。生きているようだ、とラングは安堵した。

「ン・・・・・・ラン・・・・・・グ?」
「ミーナ・・・・・・よかった。本当によかった・・・・・・・・・」
「ここ・・・・・・は・・・・・・?私、確かカウフ・・・・・・痛ッ・・・・・・」

 ミーナは腕を抱えてうずくまった。

「怪我人でっか?わての出番でっしゃろか?」

 アレクの暗い色の外套から雪精トールが飛び上がり、宿主の肩に乗る。

「どれ・・・・・・うちの精霊に見せてみろ」
「あ・・・・・・・・・は、はい」

 ミーナは生まれて初めて目にする精霊に興味津々となりながらも、ヴァニラとの交戦の際に受けた傷を、トールが氷の魔力で癒すのに任せた。幸い、軽傷のようである。

「大丈夫ですわ。浅い傷でんな」
「・・・・・・よかった」

 ほっとした様子のラングの肩をギルが叩き、まだ事態を把握できていないミーナにジーニが気をしっかり持つよういい含めて事情を説明する。
 治安局員という仲間を失った事に対してさすがにショックを受けているものの、彼女の一言一言をミーナは冷静に聞いた。
 ぽつり、とミーナは呟いた。

「ヴァニラは・・・・・・もう?」
「そうね・・・・・・。すぐにこの街を後にするでしょう」
「・・・・・・カウフマンは?」
「ヴァニラは逃がしたけど、他の2人は捕まえてあるわ。そいつら次第だけど、上手く取引を持ち出せば、証言は取れるでしょう」

 カウフマンの企みが公となれば、街での暴動も収まり奴は失脚する。それで魔王騒動も終わりだと、ジーニは肩をぐるぐる回して言った。

「アレクシスさん・・・・・・」
「どうした?」

 ラングはアレクに向き直った。

「魔王って・・・・・・魔王って一体何なんでしょう?」
「・・・・・・」
「結局は人が・・・・・・一番残酷でした・・・・・・。魔王って・・・・・・いえ・・・・・・人って・・・」

 上手く言い表せないらしい様子のラングに、アレクは静かに訊ねる。

「・・・・・・・・・人に・・・・・・失望したか?」
「えっ」
「リューンに帰る時にでも、ゆっくり考えるといい。話が纏まった時、いくらでも聞いてやるよ」
「・・・・・・は、はい!」

 それより早く暴動を鎮めて無駄な血を流すのを止めないと、と一同が立ち上がった時だった。バタン、と何処かのドアが開く音が響いた。
 広間の奥に、先ほどまでは無かった扉が有り、その前に何かが立っている。こちらを見ているようだ。

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・なっ!?」

 エディンが小さく声をあげた。
 その何かは薄汚れたローブを羽織っており、顔とローブが擦り切れた身体の一部分しか見えない。しかし、明らかに人間のものとは異なる。
 手にはやや古びた剣を持ち、杖代わりにしている様に見える。

「・・・・・・アレク、俺ああいうの前に一回見たことある」
「偶然だな、ギル。俺も今思い出してた」

 幼馴染たちはミーナとラングを背後に庇いながら囁いた。
 暗闇を塗りこめたように感じる圧倒的な魔力と、心胆を震わせる迫力。生者には感じる事の無い禍々しい負の気配。
 全て、一度とある化け物の前で感じた事であった・・・・・・・・・そう、あのカナナン村に封じられていたソドムの狂王から!!

「な、何ですか、あれは!?ち、近づいてきますよ!?」

 正体は分からないながらもおぞましい存在である事を感覚で察したのか、泣きそうな声でミーナが叫ぶのに、ギルが小さく叱咤した。

「落ち着け、ミーナ、ラング!取り乱すな!」
「そ、そんな事言われても!あのスケルトンは何なんですか!?」

 ラングの顔も引きつっている。スケルトンではなく、恐らくリッチの類だろうとジーニは推察した。
 ギルがそっと後輩に声をかける。

「いいから落ち着け。隙を見てここから一度引くぞ」
「え?」

 きょとんとした顔になったラングに向かって、ジーニが言う。

「状況が全く把握出来ていない。危険すぎるわ。一戦を交えるのは無謀、そして無意味よ」

 正直、あの狂王と同じくらいの実力であれば、戦闘はきついとしか言いようが無い。あの時は古代文明期の兵器を利用したが、今それはないのだから。
 ジーニの囁きに対し、人形のようにラングは頷いた。

「あ、は、はい」

 そして、その判断が正しい事がすぐに分かった。
 骸骨の後ろに、突如3体の魔物が現れた。どす黒い紫色の肌をしており、背中には大きな翼が生えている。体長も2mは優に超えているだろう。
 ギルがジーニに訊ねる。

「・・・・・・逃げ切れるか?」
「途中の階段まで行ければ、後は逃げ切れるわ。あの階段は狭いからね、小さなこっちが有利よ」

 今のこの距離が、冒険者たちのアドバンテージである。その使い方を間違えれば、彼らの人生はあっけなく幕切れとなる事だろう。
 じりじりと広間の入口近くまで後退し、身動きの無い相手を不審がりながらこのまま逃げ切れるかと思われたが・・・・・・その瞬間。

「ヴオオオオオオオオオオ!!!」

 大きな咆哮と共に・・・・・なんと、魔物が奥からゾクゾクと湧いてきた。その数、50体以上。

37satan

「走れーーーッ!!」

 ギルの叫びと共に、命を賭けた鬼ごっこが開始された!

2013/04/11 18:18 [edit]

category: satan

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Thu.

satan 9  

 鬱蒼とした木々の中。
 軍の要人というからどれだけ手強いかと思っていたが、所詮は金で地位を買った人物と言うべきか、気絶から復帰したカウフマンが本物の殺気をもって問いを放ってきた冒険者たちを手こずらせたのは、最初の三分だけであった。
 ミーナの残したダガーを片手に、ジーニが笑いを含んで言う。

「カウフマン。自分をよく見てみて」
「!?」

 顔、腹を中心に、ドロドロとした薄黒い液体で濡れている。気絶中に、ラングが皮袋から彼に振り撒いた油であった。

「一度、火をつけたが最後。どうしようも出来ないわ。もう一度だけ聞く。ヴァニラと子供達はどこ?」
「や、やめてくれっ!!ほ、本当だ!!本当に知らん!!」
「・・・・・・じゃあ、別な質問をしましょう。イエスかノーで答えて。ヴァニラは、ザンダンカルの人間なの?」

 ジーニは、黒ローブの男のようにカウフマンが呪法を仕込まれていた時の用心のため、余計な事を喋らせないようなやり方に変えて質問を続けた。
 ヴァニラはここの人間では無いという。であれば、治安局でも探し出せないような拠点を彼が自分で持ち得たとは考えにくい。
 空き家か何かを与えたのか、という質問に対してカウフマンは否と答えた。

「何でもいいわ。ある一定の大きさを持った場所よ。そう、子供を何人も置いておける・・・・・・」
「ノ、ノーだ」
「奴と話した内容を全て思い出すのよ。・・・・・・思い出して!!」

 ダガーを持つ手に力が篭ったのを見て、脂汗まみれになった元貴族は悲鳴を上げた。

「ヒィ!!し、知らん!!あ・・・・・・広い場所・・・・・・・・・?」

 そしてカウフマンは、ヴァニラに教会を確保してほしいという要望を思い出したのである。
 魔王捜索で候補となった教会。捜索など形だけだったため、地下は人が立ち入らないようになっているだけで、後は何も知らないという。
 地下への入口をテキパキと聞き出したジーニは、続けて殺人事件と子供の誘拐についての目的についても聞き出したが、それはやはり彼らの推測どおりであった。
 呆れたように首を振った後、ギルはやや首を傾けて意見を聞いた。

「・・・・・・で、どうする?確証は無いが、教会に行くか?」
「そうね。でもその前に・・・・・・・・・」

31satan

 ジーニは再びダガーをカウフマンの首に近づけ、そっと脅した。

「よく聞きなさいよ、カウフマン。アンタは自力で治安局から逃げ出してきた。そして、このまま帰る。わかったかしら?」
「わっ、わかった!!」
「正直、アンタが権力を得ようが得まいがどうでもいいわ。ただし、間違っても今回の件で騒いだら・・・・・その時は殺すわ」

 仕上げにカウフマンから趣味の悪い指輪を貸すよう求め、渡されると同時に後頭部をナイフの柄で殴って気絶させた。

「殺さなくていいのか?」

 エディンがいつもの口調で言う。
 ジーニは、ダガーを持つ間ミナスが抱えていてくれた≪死霊術士の杖≫を持ち直すと、小さく肩をすくめた。

「あたしたちが真っ先に疑われるし、バイゼルも困るじゃない」
「この豚、喋らんかねぇ」
「自分も後ろ暗いところがあるんじゃ無理よ。せいぜいがとこ、殺し屋に暗殺依頼ってとこでしょ」

 それくらいなら何とでもなるだろう、と付け加えたジーニにエディンは苦笑した。かつて自分が”白い夢魔”というアサシンに、同じ事を言ったことがあったからである。
 ラングが激情のあまり気絶したカウフマンを殺しかかったが、そこはアレクが止めた。
 今更この愚かな元貴族を殺した所で、犠牲となった者たちは帰ってこない・・・・・・そして、自分達の今すべき事はミーナたちの救出である・・・。
 ラングと”金狼の牙”たちはその場にカウフマンを残し、教会の裏口へと向かった。すでに黄金色の夕日が、地平線へと向かい始めている。
 かけられていた鍵を事も無げにエディンが外し、一同は彼を先導にして中へと進む。
 見える範囲でも、部屋が数室あることが分かるが、特に扉などの敷居は無く、大まかに分かれているだけのようだ。

「・・・・・・それほど広いと言うわけでもないな」
「何かありそうか?」

 一室ずつ覗き込んで確認するエディンに、ギルが声をかける。

「・・・・・・・・・発見っと」

 エディンは埃の少なさに気づき、部屋の片隅に置かれていた箪笥を動かした。裏側に隠されていた階段が現れる。
 恐らくヴァニラたちは、この道を何度も繰り返し通っているのだろう。
 怯えと緊張から固くなったラングを真ん中に挟むようにして、一行は隠し階段を降りた。

「・・・・・・駄目だ、これ以上は暗すぎる。ラング、火だ」
「は、はいっ」

 アレクから促されたラングが手探りでランタンに火を灯す。
 体が震えているのか、先ほどからカチャカチャと金属を打ち合わせる音が、妙にギルの耳に障った。

「ラング、もう少しだけ静かに歩こうぜ。さっきから金属音が酷い」
「は、はい!す、すみません!」

32satan

(駄目だ・・・・・・普段の動きが出来ていない・・・・・・)

 しかし、自分が指摘をすればもっと緊張してしまうだろうと、アレクは黙っている事にした。いずれにしろ、ランタンまで灯してしまえば敵方にばれるのも時間の問題だからである。
 慎重かつ素早く階段を降り続けていくと、先には微かな灯火のともる場所があるようだ。奇襲できる可能性を残すために、ギルとジーニはラングに言ってランタンを消させた。
 小さな部屋の向こうに通路が見えており、光はその先から来ているようである。
 冒険者たちは支援魔法を小さく唱えて準備を済ませると、一気にその通路を駆け抜けようとした。
 ギルが言う。

「・・・・・・行くぞ」
「・・・・・・ん?」

 先に一歩を踏み出していたエディンが、足先に違和感を感じて下に視線をやる。

「・・・・・・どうした?」
「・・・・・・皆、動くな」

 アレクの疑問に強張った声でエディンが答えた。視線がしばらく辺りの床を這い回り・・・・・・ラングの鉄に包まれた足先に止まる。

「ラング・・・・・・お前さんの足元・・・・・・」
「・・・・・・え?」

 ラングの足元に小さな子供が横たわっている。
 急いでラングは子供の身体を抱き上げるも、その身体は冷たい感触しか返してこなかった。

「死ん・・・・・・・・・でる・・・・・・グ・・・・・・何で・・・・・・何でこんな・・・・・・」
「・・・・・・殺されたのは、さらわれてからすぐのようですね」

 アウロラの手が虚ろと化した子供の目を覆い、その瞼を閉じさせた。

「主よ、哀れな子供の魂を導きたまえ・・・・・・」

 次第に暗闇にも慣れ辺りが見えてくると、彼らのいる小部屋には今まで行方知れずとなっていた子供たちの遺体が、価値の無いガラクタのように放り出されている事が分かった。

「ミーナはいないようだな・・・・・・」

 流石と言うべきか、エディンは冷静にその遺体の中に同行してきた少女の姿が無い事を見抜いた。
 それが耳に入っていたのかいないのか――カチャカチャ、と金属鎧の震える音がした。

33satan

「ク・・・・・・・・・クソォーーーーーッ!!」

 ラングは叫ぶなり奥の通路へと駆け出した。ギルが真っ先に動き出す。

「追うぞ!」

2013/04/11 18:15 [edit]

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