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魔女の館 4  

 毒の刃をもつ骸骨戦士や今までに出てきた魔法生物たちと、魔女が次々に手下を召喚したために熾烈を極めた戦いであった。

「うろちょろうろちょろ、手下出しておいて自分は高みの見物かっ」
「うふふ。私の作品、お気に召しますかしら?」

 歯噛みをするギルの顔を楽しみながら、魔女アニエスは麗しく微笑んだ。
 す、と斧を水平に構えたギルの横から、アレクが飛び出して凄まじい勢いの突きをゴーレムに放つ。
 竜の牙をも砕くその一撃に、流石の鋼鉄の巨人も体勢を崩した。
 すかさず、飛び込んだエディンがアレクと同じ箇所へレイピアを突き刺すも、あまりの固さに顔をしかめた。

魔女の館11

「・・・俺向きの相手じゃねえな。そっちの姐さんなら大歓迎なんだが」
「くっだらないこと言ってないで!神の携えし槍よ、我が敵を貫け!」

 ジーニのかざした手から青く輝く魔力の槍が出現し、魔女の胸を射抜こうとする。
 その思ったよりも大きな勢いに目を細めつつ、アニエスは魔力を高めてその貫通を防いだ。

「思ったよりも乱暴なお客様ね・・・。いいわよゴーレム、思い切りやってしまいなさい!」

 ゴーレムが放った重い一撃は、エディンの身体を辛うじて掠めた。

「あっぶねえ!」
「あらあら、残念・・・」

 からかうような口調の魔女に対して、二人の声と攻撃が揃って飛ぶ。

「光よ!あの魔女にぶつかれ!」
「竜巻よ、いけええええ!」

 アウロラの【光のつぶて】と、ギルの【暴風の轟刃】である。
 宙に浮かぶ目玉型魔法生物の時には上手く出せなかった技だが、今度はギルも隙を窺って放つことに成功したらしい。たちまち、魔女の身体を闘気の刃が引き裂いた。

「ち・・・・・・!」

 彼女は呪文を素早く唱えて【闇の紋章】をギルに撃つも、彼の身体が完全魔法防御の結界に包まれていることに気づき、目をむいた。

「なんですって・・・!?」

 この【闇の紋章】が人体に刻み込まれれば、我を失い混乱した末、身につけた秘技や魔法を繰り出す気力を失う――という恐ろしい結果になったはずなのだが、それを防がれてしまってはどうしようもない。
 動揺して魔法に掛かりやすくなったところを見計らい、ジーニが再び【神槍の一撃】を魔女へと放つ。

「神の携えし槍よ、魔女を穿て!」

 青い輝きは吸い込まれるようにアニエスの華奢な身体へ突き刺さった。

「なんで・・・・・・この私が・・・・・・?」

魔女の館12

 それと共に鋼のゴーレムは石と化し、残っていた霞人形もミナスの雪精スネグーロチカやギルの≪護光の戦斧≫によって破壊される。

「違う・・・・・・こんなのはおかしい・・・・・・。私は何も間違っていない・・・・・・」

 口から血の泡を溢れさせ咳き込みつつ、アニエスは最期の言葉を紡いでいた。

「私は、魔法の大いなる可能性を模索したかっただけなのに・・・・・・」
「たとえそうだったとしても、公のルールに反すれば裁きを受ける」

魔女の館13

 静かにアレクは言い、彼女の近くに立った。

「・・・・・・これで終わりだ」

 苦しむ魔女の喉を≪黙示録の剣≫で貫くと、あっけなく彼女は事切れる。
 ・・・・・・こうして、黒魔導師アニエスは討伐され、長年進展のなかった1つの難事件が解決された。
 その後、残っていた魔法人形も賢者の搭の討伐隊によって駆除され、館は跡形もなく解体された。
 彼女は賢者の搭でも最高峰の実力者でありながら、どこで道を踏み外してしまったのだろうか――ジーニはそれを考え、人知れずため息をついた。
 そんな仲間に、最年少のメンバーが跳ねるような足取りで近づき、声をかける。

「ジーニ?ギルが呼んでるよ、そろそろ行こうって」
「はいはい。今行きますよーっと」

 そう、それでも”金狼の牙”たちは依頼を遂行した。それで十分だろう。 
 ジーニは振り返ることなくその場を歩き去った。

※収入1400sp※
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■後書きまたは言い訳

55回目のお仕事は、たてやんさんのシナリオで魔女の館です。
作者様の意図は「魔法合戦」ということで、某庵謹製のキーコードを持っていないとクリア出来なかったり、ラスボスが遠距離攻撃でないとダメージを受けてくれなかったりという色んなギミックが盛り込まれています。
もしキーコードがない!という人でも安心安全設計、露店で売ってるアイテムでどうにかなるようにはなってるのですが・・・。私はこのシナリオを久々にやったのですが、【魔法の鍵】のキーコードが必要な事をすっかり忘れていたので、途中で【眠りの雲】と【閂の薬瓶】を取替えて、アイテムで精神力全快しました。・・・いいんです、どうせアウロラの【氷姫の歌】も【絶対の防壁】と取り替えておかなきゃならなかったし・・・。(涙)

今回、かなりカードの引きが悪くて2回ほど全滅してしまいましたが、魔女アニエスのいやらしい魔法の使い方はとても好みです。精神力を空っぽにさせる魔法、毒刃つきの召喚獣を呼び出す魔法、混乱と毒を埋め込む魔法・・・これでもか!という感じで設定されている黒魔法に、「ジーニに持たせてやりたい・・・」と思ったのは秘密です。
短時間のシナリオではありましたが、リドル(謎かけ)・戦闘ともに、じっくり楽しませてもらいました。

次回はシナリオリプレイの更新か、50質問の続きをやってしまうか・・・。現在考え中です。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

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2013/03/25 20:33 [edit]

category: 魔女の館

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Mon.

魔女の館 3  

「これでいいと思うんだけど・・・」

 鍵の掛かっていた扉の先、土のような黄土色の玉に触れたジーニはそっと感覚を研ぎ澄ませた。
 ヒュイィィィ・・・・・・という何か魔法的な反応を示す音が部屋に響き、

「な、なんだ?」

魔女の館7

とギルが辺りを見回した。

「さしずめ【魔法の鍵】を大掛かりにしたもの、といったところかしら」

 ジーニはこれで先に進める筈だと言う。

「いよいよ、魔女とご対面ということか・・・」
「さっき、魔力が集中していた箇所に戻りましょ。あそこに変化があるでしょうから」

 急いで一同が最初のT字路に戻ると、彼女の予見したとおり、今まで無かったはずの扉がそこに現れていた。

魔女の館8

「こんな所に扉が・・・」
「今まで遮蔽魔術で扉が隠されていたようね。それがあの仕掛けを解いたから現れたのよ」

 ミナスが呟くのへ、ジーニが解説を行った。

「罠はないし鍵もかかっていない・・・。この先すぐに何か潜んでるな」
「では補助魔法をここでかけていきましょう。ミナス、いいですか?」
「うん!」

 アウロラとミナスがそれぞれ支援のための魔法をかける。
 その間に、アレクが≪天翼の短剣≫で擬似的な魔法の翼を生やした。

「・・・あ、そうだ。相手、魔法使いなんだよな?」
「リーダー、話聞いてただろ。何を今更」
「いやいやいや、それが大事なんだって!俺の鎧!」
「あ」

 そう、ギルの鎧は完全魔法防御の結界を作る鎧なのである。
 味方からの回復魔法も意味がなくなってしまう諸刃の剣ではあるが、雪精トールの癒しはその状態でも通用することは判明しているので、ギルは仲間たちの同意を得て≪冷界の魔鎧≫の能力を解放した。

「・・・・・・これでよしっ。どこからでもこい!」
「・・・じゃ、開けるぜ」

 距離的には館の中央あたりだろうか。
 冒険者達が扉をくぐると、目の前には広大な空間が広がっていた。
 その広大な部屋を見渡すと、一人の黒髪の女性がたたずんでいることに気がつく。
 整った顔立ち、華奢な身体、優雅な立ち居振る舞いとは裏腹に恐ろしく人間離れしたオーラが感じられる女性であった。

「・・・・・・いたな」

 彼女は、武装した突然の来訪者の呟きに臆する事もなく声をかけてきた。

魔女の館9

「あら、お客様かしら。一般の方は入れないようにしてあったはずだけど・・・・・・」
「あいにくと、俺らは一般からは遠いらしくてね」

 ギルの返答に、女性は酷薄そうな唇を歪ませて嘲笑した。

「まぁいいわ。パーティへようこそ。私は貴方たちを歓迎するわ」

 そして優雅に胸をそらし、甘い蕩けるような声音で話した。

「私はこの館の主アニエス。よろしければ皆さんのお名前も教えてくださるかしら」
「その手は食わねぇよ、姐さん。悪ぃがな」

 エディンが鼻で笑って一蹴する。彼はちゃんと、事前に館に入る前の注意事項を覚えていた。
 いわく――もし魔女に名前を聞かれても絶対に教えてはダメだ。魔女に名前を知られたら恐ろしい目に遭う――と。

「あら、匿名希望ですこと?まぁ構いませんが――って、あら?もうやる気満々なわけ?」
「御託は結構です」
「うふふ、せっかちさんなのね。それじゃあ早速始めましょうか」

 魔女はほうきに乗ると天井近くまで軽やかに舞い上がった。
 そしてほっそりとした腕を振るう。

「まずは、このコでお相手するわ」

 床から、何やら途轍もなく重いものを引きずるような音がする。
 前衛たちが身構えたその瞬間、彼らの前に身の丈10m以上あろうかという鋼のゴーレムが姿を現した。

「さァ、パーティを始めましょう!ここ100年ばかり、お客さんがめっきり減って少々退屈していたのよ」

 魔女は言う。だから退屈させないように、遊び相手を次々に出してあげようと。

「結構よ、間に合ってるわ!」

 ジーニはそう言うと、≪エメラダ≫を掲げて鋼鉄のゴーレムの足を止めた。
 途端にアニエスの顔が歪む。

「生意気な!地獄に燃え盛る業火よ!」

 魔女のたおやかな指先から、ミナスの魔法の倍はあろうかという巨大な火の塊が迸る。
 ギル以外の”金狼の牙”たちは、たちまち軽い火傷を負った。

「っつう・・・・・・。アウロラの防護様様だな。やばかったぜ、これは」
「早めに片をつけるに越したことはないな」

 エディンのぼやきに、アレクが頷いて言った。

「まずはあの魔女をどうにかしないとな・・・」

2013/03/25 20:32 [edit]

category: 魔女の館

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Mon.

魔女の館 2  

 灰色の石で造られた館は禍々しい妖気を放っており、人を寄せ付けない異様な雰囲気が漂っている。
 勘の良い者ならば、この先に危険な相手が潜んでいることは容易に理解できるであろう。
 アレクがその入口を眉をしかめて睨みつける。
 独特の歩調から盗賊の動きに変わったエディンが、まずドアを調べた。

「鍵は開いてるぜ。すぐ入れる・・・罠はねえよ」
「行こう」

 エディンとギルを戦闘に、アレク・ジーニ・ミナス・アウロラの順で開いた扉を通り抜けていく。
 館は広く、外観よりはいささか淡い色合いの灰色の石による柱が整然と立ち並んでいた。
 入って少し進むと、すぐT字路に行き当たる。

「どっちにいったもんかねぇ。気になる跡とかは別にねえんだが」
「右手の法則でも使うか。・・・・・・魔法による永久回廊とかでなければいいが」

 アレクの言葉に、ジーニはじっと辺りを見まわし魔力を集中した。
 その厳しい顔つきに、思わずギルが声をかける。

「・・・・・・」
「どうした、ジーニ?」
「しっ。・・・ちょっと【魔力感知】を使ってみるわ」

 そう言うと、彼女は≪蒼石の指輪≫をベルトポーチから取り出し、合言葉を唱えた。
 ジーニの紫に染まった視界の中で、ある一点にオーラが集中している事が分かる。

魔女の館4

「4箇所からここへ魔力が流れ込んでいるわ。ここに仕掛けの元があるのだろうか・・・・・・?」
「・・・それは、4箇所にある仕掛けを解くことで、その元とやらが解除されるということでしょうか?」
「多分ね。面白い、解いてやろうじゃないの」

 ジーニは軽く腕まくりをした。
 その横でずっと奥のほうを睨むようにしていたミナスが、エディンのマントを引っ張る。

「どうした?」
「・・・・・・生き物の気配とは違うんだけど。何か嫌な予感がするんだ。戦闘の用意をした方がいいかもしれない」

 ミナスの精霊術師としての知覚は、かなり鋭敏である。もしそれに館の何かが反応しているのだとしたら、確かに前準備をした方がベターであろう。
 エディンはアウロラに目配せした。ミナスもそれに気づき、【蛙の迷彩】の呪文を唱え始める。

「神よ、我が仲間たちに十全なる援護と、防護のお力を与えたまえ・・・」
「周りに溶け込む蛙の皮膚よ、我らが結界となって覆え!」

 魔法による支援を纏った一行は、アレクの提案通りに右回りに館を捜索することにした。
 途中、また枝分かれした通路に入り込む。
 すると、霞の人型をした「何か」が天井から染み出してきた。通路奥からは、魔法人形らしい空ろな目のゴーレムが襲い掛からんとしている。

「やれやれ。ミナスの勘は大当たりだな」
「暢気に言っている場合ではないですよ、アレク」
「実体の無いモンスターに普通の攻撃は無意味よ。気をつけて!」

 ジーニのアドバイスに短く首肯すると、アレクは魔法人形の一つに駆け寄っていつの間にか焔に包まれた刀身を振り下ろした。【炎の鞘】の技である。
 霞人形はそれにやや怯む様子を見せたが、気を取り直しでもしたのか、杖を構えて詠唱に集中し始めたミナスに指を突き出す。
 途端に、ぞわりと小さなエルフの身体が振るえ、額から脂汗を滲ませ始めた。

「・・・やばい、今の呪文は【病魔の呪詛】だわ!アウロラ、あの子お願い!」
「分かりました!」
「まったく・・・人形の癖に生意気なのよ!」

 ジーニがかざした≪エメラダ≫に気を取られ、魔法人形のうち3体の動きが止まる。
 その隙に、ギルが渾身の力を込めた一撃を繰り出した。たちまち、1体が崩れる。

「僕の・・・・・・ことは、心配、しないでっ」

 ミナスは気丈にも、身体の奥底から満ち始めた呪詛の悪寒に耐えつつ、イフリートを呼び出した。

「お前の息吹をここに!業火の精霊よ!」

 小さな手の平から信じがたいほどの炎が渦巻き、たちまち敵全体を覆った。
 ・・・・・・呪文が終わった後、残っていたのは魔法人形一体のみである。

魔女の館5

 人形は指先から炎の弾丸を打ち出し、エディンの左腿に少し火傷を与えたものの抵抗はそこまで、後はエディンが最小の動きで突き出したレイピアによって破壊されたのであった。
 戦闘を終えた一同はミナスの呪詛を治すと、通路の突き当たりにあった部屋の前まで移動してきた。

「魔法の鍵が掛かっている。魔法を解除しないと開かない」
「はいはい、あたしの出番ってわけね」

 ジーニは進み出ると、≪閂の薬瓶≫をベルトポーチから取り出し、目の前の扉へと振り撒いた。

「・・・よし、これでいいわよ」
「お疲れさん。じゃあ開けるぞ」

 そうして入室した”金狼の牙”たちを出迎えたのは・・・。

「宝玉?なのかな?」
「みたいですね・・・」

 渦巻く風のような緑色の玉であった。

魔女の館6

 ジーニがポケットから、青年より貰ったメモを取り出す。

「・・・なあるほど。こいつが『風』ね。ちょっと皆、下がってて」
「・・・何をするんだ?」
「つまりね。この玉は、あたしたちが再三口に出している『仕掛け』って奴だと思うのよ」

 ジーニはアレクの質問に、人差し指を一本立てて答えた。

「風には魔の力を。・・・つまり、この玉に魔法を何でもいいからかけてみろってことよ」

 そう言うと、彼女はおもむろに【魔法の矢】の呪文を唱え始めた。

「万能なるマナよ・・・。魔の矢となりて敵を穿て!」

 彼女の言うとおりの仕掛けは確かにあったらしい。妙に響く音を残して、玉の輝きが失せた。

「やっぱりね・・・。さ、他にもこういう『仕掛け』があるはずよ。さくさく行きましょう」
「その代わり、きっと他にも敵が出てくると思いますけどね・・・」

 アウロラがため息をつく。
 そしてその懸念は当たり、”金狼の牙”たちは次々と現れる敵たちに戦いを挑まれていた。

「空飛ぶ目玉とか卑怯くせえ!」
「ギルも一応、遠距離攻撃はもってるでしょう?」
「【暴風の轟刃】を撃つ前に、アレクに【召雷弾】撃たれたから機嫌わりぃーんだろ」
「おまけに、≪天翼の短剣≫で飛んでいったから、接近戦まで取られてたもんね・・・」

 ギルの憤慨に、アウロラとエディン、ジーニが突っ込んだ。
 すでに『仕掛け』は三つまでを解除しており、後は地の玉だけとなっている。彼らはむしろのんびりとした足取りで、最後の部屋に向かった。

2013/03/25 20:31 [edit]

category: 魔女の館

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魔女の館 1  

 かつて禁を犯した魔法使いがいた。
 彼女の名は、黒魔導師アニエス。人智の及ばぬ才覚を秘めた黒髪の美女であった。
 彼女は200年以上の時を経た今も人の命を糧に生き続けているという。 
 自警団と教会と賢者の塔は、もう幾度となく魔女の捕縛を試みたがことごとく返り討ちにあった。
 魔女討伐の依頼が出されたが誰の手にも負えず、未解決のまま放置された。
 そんないわくつきの依頼が、長い年月を経てはるか西方たるリューンにまで流れてきたという訳だ。
 そして今、誰もが諦めかけた魔女の討伐に挑む者達がいる――。

魔女の館1

「俺としては、他に大した依頼もないからとりあえずこれ宛がっておけっていう、親父さんの思惑かと思ってたがねぇ」
「そんな厳しい関係だったっけ、俺らと親父さん」
「あの、エディンもギルも、これが難儀な依頼だってことは分かってますよね?」

 ちょっと、いやかなり、緊張感に欠ける会話ではあったが。
 彼らこそ、≪狼の隠れ家≫というボロ宿を根城とする冒険者たちである。
 依頼内容は、黒魔導師アニエスの討伐。

「報酬は1400spかー。生死は問わないって条件で助かったわね」
「生きたまま捕まえる方が、教会とか賢者の塔も困るんじゃないのかな?」
「・・・・・・ミナスの言うとおりかもしれんな」

 アレクはそう言うと、館からそう遠くない位置にあるこの街の様子を見渡した。
 見たところ、そう退廃しているような感じも見受けられず、露店には一応店が並んでいるし、宿も通常通り営業されている。
 ただ、どこか住民たちの表情は暗く、それが長年に渡って魔女に苦しめられてきた街である事を物語っていた。

「どこから行くの、ギルバート?」
「そりゃ、相手の情報から・・・だろうな」

 ギルの台詞に他の者たちも頷いた。
 早速、アウロラやエディンが街の者たちにそっと声をかけていく。
 その結果分かったのは、次のようなものであった――。

「魔女は人の精気を吸い取って200年以上も若い身体を保っている」
「館には多くの魔法人形が徘徊している。彼らは特異な能力を持っており、普通の武器では苦戦するだろう」
「魔法の仕掛けが施されており、並みの者は奥へ進む事もできない」
「あんた達、魔女を退治してくれるのか・・・・・・?なら、気をつけた方がいい。もし魔女に名前を聞かれても絶対に教えてはダメだ。魔女に名前を知られたら恐ろしい目に遭う」
「魔女は黒魔術の達人だ。彼女は空を飛び、なおかつ遠距離から攻撃する手段を持っている」

 このような様々な情報を貰った後、街はずれにある大きな木の下で”金狼の牙”が休憩を取っていると、不意にこちらへ話しかけてくる人影があった。木の作る陰に遮られ、細かい顔の造作が見えない。

「あんた達、年は若いがかなりの手練だな?」
「おうよ。分かるかい?」

 エディンがにやりと笑う。人影はゆっくりと頷いた。

「やはりそうか。オーラが違うからな」

 一歩進み出てきた人影の顔が露になる。
 この街の住民の一人である男のものだった。
 深い皺は魔女の支配による重圧によるものか、さほどジーニから年上とも見られないはずの顔を老けさせている。

魔女の館2

「そうだ、これをやろう。あんた達なら魔女を倒せそうな気がするよ」

 男はアレクの拳ほどの大きさもある、紅色の石を差し出してきた。
 すっと手を出したミナスが受け取り、ジーニがまじまじとそれを鑑定した。

「≪紅き魔石≫じゃないの?魔法生物を引きつける力があるわね」
「ああ、その通りだ。よく知っていたな」
「へえ・・・こんな綺麗なのにね」

 ミナスは日に透かすようにして、その変わった石の輝きを楽しんだ。
 子供のあどけない仕草にしか見えなかった男は、目を細めてそれを見守った。

「それを持っていれば、館にいる魔法人形どもの注意を引きつけることができるだろう」
「随分と高そうなものだが・・・いいのかい?」

 ギルが躊躇する。男自身は決していい生活をしているように見えない。
 しかし、男は小さく苦笑するだけであった。

「前に魔女打倒を目指した奴が持ち込んだ物だ。そいつはもう諦めたがな」

 なんでも、館に施されていた魔法の仕掛けとやらがどうしても解けず、男に悪夢のような館の思い出の篭る≪紅き魔石≫を預け、逃げるようにこの街を去ったらしい。
 無理もない、と男はため息のように言った。

「その石が魔女を倒すのに役立ってくれれば嬉しい限りだ」
「・・・ああ、あんたの志は確かに貰ったよ」

 ギルはミナスから魔石を受け取ると、それをぎゅっと握り締める。

「こいつは俺が預かるよ。・・・ありがとう」

 そして≪紅き魔石≫を預けた男が去ると、もう一人若い青年がこちらに寄ってくるのが見えた。
 彼もまた、魔女による支配をよしとしない人物なのであろう。
 かつて魔女に挑もうとした者が館で見つけたというメモを、こちらに差し出してきた。
 その小さな羊皮紙には、古代文字による書付がある。
 ジーニがメモを覗きこんで、それを読み上げた。

魔女の館3

「火には破壊、水には癒し、地には接触、風には魔の力を」
「一体何の事かな?僕にはよくわかんないや」
「・・・館に施されてるっていう、仕掛けに関係してそうね。これはあたしが預かるわ」

 ジーニは首を傾げる仲間たちを余所に、そのメモをポケットに突っ込んだ。
 その後、”金狼の牙”たちは通りに面している露店を覗き込んでみた。
 様々な魔法の品が販売されているものの、≪解毒の秘薬≫や≪破魔の杖≫などを買う必要があるとは思えず、そのまま通り過ぎた。
 時刻はそろそろ夕方――逢魔が刻である。

2013/03/25 20:30 [edit]

category: 魔女の館

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