家宝の鎧 3
結論から言うと、ギルが家宝の鎧を傷つけることはなかった。
後ろで精霊を呼んでいたミナスが、「鎧を脱がせればいいんでしょ!?」と、ノミの入った瓶をオークロードへと投げつけたのである。当然、ガラス瓶はオークの鎧に当たって砕け散った。
同時に黒い小さな粒が四方八方に飛び散る。
突如、オークロードは悶え苦しみ始める・・・それはそうだろう、瓶には相当な数のノミがいたのだから。
体中をかきむしろうとするが、鎧が邪魔でできないと見るや、オークロードは即座に鎧を脱ぎ捨てた。
「ぶひぃ~♪」
「・・・うーん、これで攻撃はできるけど、素っ裸のオークとか俺いやだな」
「リーダー、そんなこと言ってる場合かよ」
オークたちは、弱い個体だと認識しているのか、女性たちばかり攻撃してくる。
だが、その痛みに耐えて詠唱を終えたジーニが、杖を大きく振り回して、指先から甘い匂いの【眠りの雲】を発射した。
たちまち眠り込んでしまったオーク達の隙を、見逃す彼らではない。
ギルやアレクの重い一撃の後で、素早く詠唱したジーニの【火炎の壁】が決め手となり、オークロードは情けない断末魔をあげて倒れた。
「ぶひひぃ~ん・・・」
「よし、やったぜジーニ!」
「新しい呪文は、好調らしいな」
「ふふふ・・・無理して呪文書を買った甲斐があったってものね」
酷い火傷を負わされた手下のオークたちも、これはやばいと我先に逃げ出していく。
後は追わなくてもいい、と依頼人から言われた冒険者達は、武器を収めて一息ついたのだった。
「うぅぅ、爺様の霊になんとお詫びしてよいやら・・・。よもや、形見の鎧を豚なんぞに着させてしまうとはっ!」
「いやぁ。それは不可抗力ってことで、ご先祖様も許してくれるんじゃない、かな・・・?」
ギルはたはは、と困ったように笑って言った。
何はともあれ、屋敷に巣くったオークはこれで全部片付いたようだ・・・。
宿への帰途に着いた一行だったが、リヒャルト卿のため息が止む事はなかった。
ドアを開けて入ってきた彼らを、宿の親父さんも温かく迎えてくれたのだが、
「はぁ・・・」
という依頼人のため息に、ぎょっとして冒険者達の方を向いた。
「おい、なんか酷く落ち込んでるようだが・・・しくじったのか?」
「いや、成功したんだけどね。実は・・・」
と、瓶を投げた功労者であるミナスが、笑いを堪えきれない様子で親父さんに説明した。
「ありゃま、オークが家宝の鎧を?そいつは気の毒になぁ・・・」
しばらく落ち込んでいたリヒャルト卿だったが、やがて何とか立ち上がると、皮袋を懐から出して、そっとカウンターに置いた。
銀貨のジャラジャラという音が響く。
「・・・諸君、ご苦労じゃったな。これが約束の報酬じゃ。それじゃ、吾輩は失礼させてもらうよ・・・はぁ」
オークロードのせいで薄汚れた家宝の鎧を、大事そうに抱えてリヒャルト卿は狼の隠れ家を出ていった。
「なんかお気の毒ですよね・・・」
「でも、俺達言われたとおり、鎧は傷つけなかったし。鎧だって、またちゃんと手入れしてやればいいんだからさ」
「そうだな、ギルの言うとおりだ。大体、家宝なんだから、リヒャルト卿が着るということもそうないだろう」
アウロラが、頬に手を当てながら言うのに、ギルとアレクが応じた。
一番端のカウンター席に座ったジーニが、持って帰ってきた【氷柱の槍】の呪文書を読み始め、ミナスが横からそれを覗き込む。
仲間のそんな様子を見たエディンが、やれやれという顔をして鼻を鳴らした。
「すべて世はこともなし、か?」
※収入800sp、【氷柱の槍】入手※
--------------------------------------------------------
■後書きまたは言い訳
5回目のお仕事は、GroupAskさんの公式シナリオ・家宝の鎧です。
これがどれだけ良シナリオか、というのは私が申し上げずとも、皆さまご存知でらっしゃると思います。コミカルなリヒャルト卿のファンの方も多いのではないでしょうか?
このシナリオに出てくるガラス瓶、私は最初意図が分からず、荷物袋の肥やしにしておりました・・・(笑)。
当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。
後ろで精霊を呼んでいたミナスが、「鎧を脱がせればいいんでしょ!?」と、ノミの入った瓶をオークロードへと投げつけたのである。当然、ガラス瓶はオークの鎧に当たって砕け散った。
同時に黒い小さな粒が四方八方に飛び散る。
突如、オークロードは悶え苦しみ始める・・・それはそうだろう、瓶には相当な数のノミがいたのだから。
体中をかきむしろうとするが、鎧が邪魔でできないと見るや、オークロードは即座に鎧を脱ぎ捨てた。
「ぶひぃ~♪」
「・・・うーん、これで攻撃はできるけど、素っ裸のオークとか俺いやだな」
「リーダー、そんなこと言ってる場合かよ」
オークたちは、弱い個体だと認識しているのか、女性たちばかり攻撃してくる。
だが、その痛みに耐えて詠唱を終えたジーニが、杖を大きく振り回して、指先から甘い匂いの【眠りの雲】を発射した。
たちまち眠り込んでしまったオーク達の隙を、見逃す彼らではない。
ギルやアレクの重い一撃の後で、素早く詠唱したジーニの【火炎の壁】が決め手となり、オークロードは情けない断末魔をあげて倒れた。
「ぶひひぃ~ん・・・」
「よし、やったぜジーニ!」
「新しい呪文は、好調らしいな」
「ふふふ・・・無理して呪文書を買った甲斐があったってものね」
酷い火傷を負わされた手下のオークたちも、これはやばいと我先に逃げ出していく。
後は追わなくてもいい、と依頼人から言われた冒険者達は、武器を収めて一息ついたのだった。
「うぅぅ、爺様の霊になんとお詫びしてよいやら・・・。よもや、形見の鎧を豚なんぞに着させてしまうとはっ!」
「いやぁ。それは不可抗力ってことで、ご先祖様も許してくれるんじゃない、かな・・・?」
ギルはたはは、と困ったように笑って言った。
何はともあれ、屋敷に巣くったオークはこれで全部片付いたようだ・・・。
宿への帰途に着いた一行だったが、リヒャルト卿のため息が止む事はなかった。
ドアを開けて入ってきた彼らを、宿の親父さんも温かく迎えてくれたのだが、
「はぁ・・・」
という依頼人のため息に、ぎょっとして冒険者達の方を向いた。
「おい、なんか酷く落ち込んでるようだが・・・しくじったのか?」
「いや、成功したんだけどね。実は・・・」
と、瓶を投げた功労者であるミナスが、笑いを堪えきれない様子で親父さんに説明した。
「ありゃま、オークが家宝の鎧を?そいつは気の毒になぁ・・・」
しばらく落ち込んでいたリヒャルト卿だったが、やがて何とか立ち上がると、皮袋を懐から出して、そっとカウンターに置いた。
銀貨のジャラジャラという音が響く。
「・・・諸君、ご苦労じゃったな。これが約束の報酬じゃ。それじゃ、吾輩は失礼させてもらうよ・・・はぁ」
オークロードのせいで薄汚れた家宝の鎧を、大事そうに抱えてリヒャルト卿は狼の隠れ家を出ていった。
「なんかお気の毒ですよね・・・」
「でも、俺達言われたとおり、鎧は傷つけなかったし。鎧だって、またちゃんと手入れしてやればいいんだからさ」
「そうだな、ギルの言うとおりだ。大体、家宝なんだから、リヒャルト卿が着るということもそうないだろう」
アウロラが、頬に手を当てながら言うのに、ギルとアレクが応じた。
一番端のカウンター席に座ったジーニが、持って帰ってきた【氷柱の槍】の呪文書を読み始め、ミナスが横からそれを覗き込む。
仲間のそんな様子を見たエディンが、やれやれという顔をして鼻を鳴らした。
「すべて世はこともなし、か?」
※収入800sp、【氷柱の槍】入手※
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■後書きまたは言い訳
5回目のお仕事は、GroupAskさんの公式シナリオ・家宝の鎧です。
これがどれだけ良シナリオか、というのは私が申し上げずとも、皆さまご存知でらっしゃると思います。コミカルなリヒャルト卿のファンの方も多いのではないでしょうか?
このシナリオに出てくるガラス瓶、私は最初意図が分からず、荷物袋の肥やしにしておりました・・・(笑)。
当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。