腐者の洞窟 4
すると、そこにはまだ残っていたらしいゾンビが5体いた。
ため息をついて、ギルが剣を抜く。
「まだいたのかよ。魔法使いたち、援護は任せたぜ!」
「唱え終わるまで、あんたたち攻撃は避けなさいよ」
「が、がんばるよ・・・!」
「お任せください!」
ルーンマスターが詠唱に入るのを横目に、最後の掃討が始まった。
【魔法の矢】の詠唱の途中でジーニが怪我を負うものの、【水淑女の守】がそれを癒す。
攻撃で詠唱を邪魔されたが、それでも放たれた【魔法の矢】で、ボロボロに崩れかけたゾンビにエディンが飛び掛り、首と足首を傷つけた。
その向こうで、アウロラの新しい法術【光のつぶて】もゾンビを打つ。
たちまち起こった戦いは、あっという間に終わりを告げた。
ゾンビの群れは何かを守るような形で、この部屋にいた。
てっきりエディンはこの部屋に何かあるのかと思ったが・・・。
「ふう・・・何もない、か」
しかし辺りを見回しても何もない。
一見すると何かありそうな気配はするが・・・?
首を傾げる仲間に、ギルが言った。
「探し方の問題じゃねえの?ジーニ、さっき使ったオーブで何か分からないか?」
「んー・・・あ、そうだわ。生命のオーラじゃなく、魔力だとしたら・・・!」
荷物袋から出したのは、オレンジ色の”魔彩のオーブ”。
掲げてコマンドワードを唱えるジーニに、ギルが声を上げた。
「あ、それか!」
「多分ね・・・・・・・・・・・・あっ、魔力でできた壁がある!」
部屋の何かを隠すように存在する魔力の壁は、見かけだけで通れるようだ。
一行はジーニに手を引かれながら、目では視認できないあちら側へとすり抜けていく。
そこには、奥のほうにオーブを納めていたのと同じ大きさの宝箱があった。
「魔法の鍵がかかってる。罠はない・・・」
調べていたエディンは、ポケットの中の硬い感触を思い出した。
あの鍵束は、これを開け閉めするためのものだったのではないだろうか?
魔力の使いすぎで黒ずんだ鍵束をポケットから出すと、エディンは躊躇なくそれを宝箱へと差し込んだ。

「よし、開いた」
砕け散る鍵には目もくれず箱を開ける。
すると、中から出てきたのは一本の杖だった。
しかも、よく賢者の塔にいる魔法使いが使うような、青い宝玉のついた杖ではない。
宝玉のつくべき部分には、灰色の小さな髑髏が鎮座しており、見るからに禍々しい印象を受ける。
嫌な顔でそれを持って立ち上がった盗賊へ、ジーニが繊手を差し出して杖を取り上げた。
「これは死霊術士の杖ね。ネクロマンサーが魔法を使用する時、この髑髏に魔力が集中して詠唱を助けてくれるのよ」
「呪われたりとか・・・」
ミナスが恐々と覗き込むのに、ジーニは微笑んで言った。
「魔力を操るだけの知力と、髑髏の負のエネルギーを制御する狡猾さがあれば、呪われたりなんてしないわよ。少なくとも、私なら平気ね。リーダー、これもらってもいい?」
「えー?そんな杖でいいのかというか、大丈夫なのか?」
「こけおどしにはちょうどいいじゃない。詠唱の助けになるなら、髑髏も宝玉も、私にとっては同じことよ」
杖で自分の肩をたたきながら、ジーニが笑った。
ネクロマンサー、と聞いて渋い顔をしていたアウロラも、ため息をついて応じる。
「まあ、私も氷心の指輪を購入させてもらいましたし・・・ジーニが杖の力で、悪の魔法使いの道を歩むわけでもないのなら、目を瞑ります」
「しないわよ、そんなこと。めんどくさい」
一同の懸念を、めんどくさいの6文字で叩き切ったジーニは、意気揚々と帰りを促す。
冒険者たちは、それぞれの笑みを浮かべながら、宿への帰路へとついて報酬を受け取った。
数日後。
あの洞窟で助けた男性が、狼の隠れ家にやってきた。
宿の親父さんに呼ばれて、階下へと降りてきた冒険者たちは、その姿にあっと声を出す。
男性は照れくさそうにお辞儀をして、自己紹介した。
「私は、ウィザニールという町で商人を営む、カンテラという者です。あのときのお礼です。どうぞこれをお受け取りください」
と言って、ハーブポーションと300spをギルに渡してくれた。
ハーブポーションは、傷薬に解毒作用をもつハーブをブレンドした、珍しい品である。
カンテラ氏は、元々商談でリューンに足を運んだらしく、礼が終わると慌しく立ち上がった。
「それでは私はこれで・・・もし機会があればウィザニールで会いましょう」
そう言って宿から出て行く姿を、冒険者たちは手を振って見送った。
※収入600sp+300sp、生命の瞳、魔彩のオーブ、ハーブポーション、死霊術士の杖入手※
--------------------------------------------------------
■後書きまたは言い訳
4回目のお仕事は、iuoさんの腐者の洞窟というゾンビ退治シナリオです。
形としては非常にシンプルな洞窟探検(とモンスター退治)なのですが、その中に魔力感知や生命感知など、キーコードを持ってないと手も足も出ないギミックが盛り込まれており、短編だとは感じさせないよく考えられたシナリオだと思います。
最後の杖取得も、腐者の洞窟らしいいいデザインだなあと。
このシナリオ前に、一気にスキルをそろえ、とりあえず火や氷、実体のないものにも対応できるようになってきました。
当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。
ため息をついて、ギルが剣を抜く。
「まだいたのかよ。魔法使いたち、援護は任せたぜ!」
「唱え終わるまで、あんたたち攻撃は避けなさいよ」
「が、がんばるよ・・・!」
「お任せください!」
ルーンマスターが詠唱に入るのを横目に、最後の掃討が始まった。
【魔法の矢】の詠唱の途中でジーニが怪我を負うものの、【水淑女の守】がそれを癒す。
攻撃で詠唱を邪魔されたが、それでも放たれた【魔法の矢】で、ボロボロに崩れかけたゾンビにエディンが飛び掛り、首と足首を傷つけた。
その向こうで、アウロラの新しい法術【光のつぶて】もゾンビを打つ。
たちまち起こった戦いは、あっという間に終わりを告げた。
ゾンビの群れは何かを守るような形で、この部屋にいた。
てっきりエディンはこの部屋に何かあるのかと思ったが・・・。
「ふう・・・何もない、か」
しかし辺りを見回しても何もない。
一見すると何かありそうな気配はするが・・・?
首を傾げる仲間に、ギルが言った。
「探し方の問題じゃねえの?ジーニ、さっき使ったオーブで何か分からないか?」
「んー・・・あ、そうだわ。生命のオーラじゃなく、魔力だとしたら・・・!」
荷物袋から出したのは、オレンジ色の”魔彩のオーブ”。
掲げてコマンドワードを唱えるジーニに、ギルが声を上げた。
「あ、それか!」
「多分ね・・・・・・・・・・・・あっ、魔力でできた壁がある!」
部屋の何かを隠すように存在する魔力の壁は、見かけだけで通れるようだ。
一行はジーニに手を引かれながら、目では視認できないあちら側へとすり抜けていく。
そこには、奥のほうにオーブを納めていたのと同じ大きさの宝箱があった。
「魔法の鍵がかかってる。罠はない・・・」
調べていたエディンは、ポケットの中の硬い感触を思い出した。
あの鍵束は、これを開け閉めするためのものだったのではないだろうか?
魔力の使いすぎで黒ずんだ鍵束をポケットから出すと、エディンは躊躇なくそれを宝箱へと差し込んだ。

「よし、開いた」
砕け散る鍵には目もくれず箱を開ける。
すると、中から出てきたのは一本の杖だった。
しかも、よく賢者の塔にいる魔法使いが使うような、青い宝玉のついた杖ではない。
宝玉のつくべき部分には、灰色の小さな髑髏が鎮座しており、見るからに禍々しい印象を受ける。
嫌な顔でそれを持って立ち上がった盗賊へ、ジーニが繊手を差し出して杖を取り上げた。
「これは死霊術士の杖ね。ネクロマンサーが魔法を使用する時、この髑髏に魔力が集中して詠唱を助けてくれるのよ」
「呪われたりとか・・・」
ミナスが恐々と覗き込むのに、ジーニは微笑んで言った。
「魔力を操るだけの知力と、髑髏の負のエネルギーを制御する狡猾さがあれば、呪われたりなんてしないわよ。少なくとも、私なら平気ね。リーダー、これもらってもいい?」
「えー?そんな杖でいいのかというか、大丈夫なのか?」
「こけおどしにはちょうどいいじゃない。詠唱の助けになるなら、髑髏も宝玉も、私にとっては同じことよ」
杖で自分の肩をたたきながら、ジーニが笑った。
ネクロマンサー、と聞いて渋い顔をしていたアウロラも、ため息をついて応じる。
「まあ、私も氷心の指輪を購入させてもらいましたし・・・ジーニが杖の力で、悪の魔法使いの道を歩むわけでもないのなら、目を瞑ります」
「しないわよ、そんなこと。めんどくさい」
一同の懸念を、めんどくさいの6文字で叩き切ったジーニは、意気揚々と帰りを促す。
冒険者たちは、それぞれの笑みを浮かべながら、宿への帰路へとついて報酬を受け取った。
数日後。
あの洞窟で助けた男性が、狼の隠れ家にやってきた。
宿の親父さんに呼ばれて、階下へと降りてきた冒険者たちは、その姿にあっと声を出す。
男性は照れくさそうにお辞儀をして、自己紹介した。
「私は、ウィザニールという町で商人を営む、カンテラという者です。あのときのお礼です。どうぞこれをお受け取りください」
と言って、ハーブポーションと300spをギルに渡してくれた。
ハーブポーションは、傷薬に解毒作用をもつハーブをブレンドした、珍しい品である。
カンテラ氏は、元々商談でリューンに足を運んだらしく、礼が終わると慌しく立ち上がった。
「それでは私はこれで・・・もし機会があればウィザニールで会いましょう」
そう言って宿から出て行く姿を、冒険者たちは手を振って見送った。
※収入600sp+300sp、生命の瞳、魔彩のオーブ、ハーブポーション、死霊術士の杖入手※
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■後書きまたは言い訳
4回目のお仕事は、iuoさんの腐者の洞窟というゾンビ退治シナリオです。
形としては非常にシンプルな洞窟探検(とモンスター退治)なのですが、その中に魔力感知や生命感知など、キーコードを持ってないと手も足も出ないギミックが盛り込まれており、短編だとは感じさせないよく考えられたシナリオだと思います。
最後の杖取得も、腐者の洞窟らしいいいデザインだなあと。
このシナリオ前に、一気にスキルをそろえ、とりあえず火や氷、実体のないものにも対応できるようになってきました。
当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。