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Sat.

爆弾仕掛けの番犬 4  

 ナプルが落とした鍵を使って最後の扉を開くと、そこにはすっかりイライラした様子のキャシーが立っていた。
 ルーシーの姿をその薄茶色の双眸で捉え、ほっとした様子で言う。

「ふふふ、来たわねルーシー」

ScreenShot_20130221_023157328.png

 ぶん、と人差し指を突きつける。

「三体全部の爆弾を解除するなんて、優秀な冒険者を雇ったのね。それでこそ、倒しがいがあるというものだわ・・・」
「キャシー、あなたその泥棒にそそのかされてるんじゃないの?いくらあなたが私の事を嫌いでも、こんな馬鹿な真似はしないと思ってたんだけど・・・」
「馬鹿な真似とは何よ!あなたの嫌がる様子を見るのが、私の日課のひとつなだけよ!」
「な、なんか気味悪いわ。それ以上近寄らないでね」

 鳥肌の立ったルーシーが、ささっとアウロラの法衣姿の後ろに隠れる。

「ち、ちがっ・・・変な意味じゃなくて!えーと・・・そ、そうだわ!ライバルを蹴落とそうとするのは当然の行動でしょ!」
「誰がライバルなのよ。私の真似したり、邪魔したり・・・ゴーレムの研究だって道楽でやってるだけのクセに」
「うっ・・・」
「否定しないのかよ」

 ギルはがっくり肩を落とした。
 キャシーが子犬のようにキャンキャン高い声で反論する。

「い、いいじゃない道楽でも!あなたのより優秀なゴーレムを作ったんだし!」
「開き直ったわね。それに私のゴーレムより優秀?ウッドゴーレムが?」
「そうよ!庶民でも買えるように生産性を高くそれでいて性能は低くなく!これこそ究極のゴーレムよ」
「でも、火には弱そうだけど?」
「うっ・・・!い、いいじゃないの!火事場で使わなければ済む話だわ!あなたのゴーレムなんて、重いわ暑苦しいわ――」

 途中からアレクは遠い目になっていた。早く≪狼の隠れ家≫に帰って、雪で冷やした葡萄酒を一杯熱い暖炉の前で楽しみたい。

「なんですって!そもそもゴーレムってのはねぇ・・・」
「いつまで続くんでしょうか・・・」

 ギルの予測と反して、その時間はけっこう長かった。
 焦らしすぎは身体に良くないんだな、と自省してももう遅い。

「こうなったら決着をつけるしかないようね!カモン、ウッディ!」
「馬鹿のひとつ覚えね!・・・さぁ、こっちもお願いするわ」
「はいはい・・・」

 ジーニはかなりいい加減に返事をした。15分少々くらいの議論であったが、軽く一時間は待たされた気がしているのはどうしてだろう。

「そしてナプルさんも頼みますわよ!前払い分は働いてくださいね!」
「はいよっと。大泥棒の意地を見せないとな」

 こうして始まった戦闘だったが、キャシーの劣勢は火を見るより明らかだった。
 戦い慣れていない令嬢の指揮では、しょせん冒険者たちの変幻自在臨機応変の戦術には対応し切れなかったのだ。
 おまけに前準備をしっかりした上で人質モドキもいないとなれば、

ScreenShot_20130221_024506359.png
ScreenShot_20130221_024625718.png

「きゃあっ!」
「つ、強い・・・」

となるだけであった。

「こ、この私が・・・負けるなんて」
「人の邪魔ばっかりしてるからこういうことになるのよ」
「さて・・・ルーシー、この二人をどうする?」

 ナプルですら縄抜けできないよう、きっちりロープで縛り上げたエディンが立ち上がって依頼主に問う。

「へっ、煮るなり焼くなり好きにしろってんだ!」
「に、煮るですって!?冗談じゃないわ!私はドーン家の令嬢なのよ!どうせならちゃんと裁判に・・・」

 すわ拷問かと額に冷や汗をかいたキャシーがそう主張を始めた。
 ルーシーが困った顔で言う。

「裁判にかけても、泥棒の方はともかくキャシーはね・・・最悪、罪に問われないかも」
「言い逃れされるのが落ちということですか?」
「・・・その泥棒に脅されて仕方なくやったって方向で裁判が進む可能性は高いわ」
「本当ですか」

ScreenShot_20130221_025259312.png

 やれやれと言った態でアウロラが嘆く。だが、いつもの調子を取り戻したような表情に戻ったルーシーが、不意にいいことを思いついたらしく右手の人差し指をびっと立たせて言った。

「だからそうねぇ・・・キャシーにはその身体で罪を償ってもらいましょうか」
「身体!?そ、そんな・・・・・・」

 愕然としたキャシーの表情を見て、ルーシーは釘を刺した。

「・・・ちょっと、変なこと考えてない?身体でって言うのは、半年間、私の助手をしろってこと。もちろん無償でね」
「は・・・?じょ、助手?そんなんでいいの?なんだ、怖がって損したわ」
「わかってないわね・・・スチームゴーレムの整備は全部あなたの仕事になるのよ。新作ゴーレムの実験体になるのもあなただし、壊れたゴーレムを直すのもあなたの仕事よ!」
「ま、マジで?私死んじゃうかも・・・」
「あなたが死んだらフレッシュゴーレム(肉人形)にでもしてあげようかしら・・・うふふ」
「た、助けて~!何でも言うこと聞くからフレッシュゴーレムだけはイヤァ!」

 ついさっきまでの雇い主の情けない姿を見ながら、ナプルは呟いた。

「・・・・・・ゴーレムを盗んだ時点でおさらばするんだったなぁ」

 その後、ウーノにかけられた音声伝達魔法をキャシーに解かせたり、ナプルを連行したりと後処理を終え、”金狼の牙”は宿に帰還した。
 そして銀貨1200枚の追加報酬(キャシー撃退の300枚含む)と、ゴーレムを全て取り戻した礼と言う事でスチームゴーレムの≪スチーノ≫を受け取った。

ScreenShot_20130221_030024046.png

 なんでもこの新しいゴーレム、敵に噛みついてその動きを止めてくれるらしい。
 簡単な整備の仕方をエディンとミナスが覚えると、ルーシーは「縁があったらまた会いましょ」と言って去っていった。
 その後のキャシーは、本当に半年間ルーシーによってこき使われたらしいが、それは冒険者たちの関与する事ではない。

※収入1500sp、≪スチーノ≫※

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■後書きまたは言い訳
43回目のお仕事は、ゾンビ怖いさんのシナリオで爆弾仕掛けの番犬です。groupAskシナリオ・機械仕掛けの番犬の続編を意識した作品で、まさかのルーシー三度目の登場。

ReadMeにはあまり詳しい設定とかは書かれていませんが、キャシーの家はきっと騎士団だの議会だのそういうところのお偉いさんに鼻薬を利かせてるんでしょうね。でもまあ、だからって暴走して責任取らずに過ごせるほど、人生は甘くなかった・・・ということで。
ナプル共々、個性あるキャラクターでした。どこかで再登場するかしら。(笑)
頂いたスチーノ君ですが、シナリオで合計6回まで稼動可能で呪縛が使えます。単独シナリオで呪縛を持っていないキャラクターがキーコード必要になった時とか、有効そうです。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

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2013/02/23 10:29 [edit]

category: 爆弾仕掛けの番犬

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Sat.

爆弾仕掛けの番犬 3  

「ちょいと待ちな!」
「誰ですか!?」

 部屋に入ろうとするなりかかってきた覚えのない声に、アウロラは誰何した。
 Sサイクロプスの大きな身体の背後から、ひょっこりと金髪の女性が姿を現す。
 その動きやすさと黒っぽさに重点を置かれた服装はひどく個性的で、地味な緑色のスカーフの先を、鼻の下で結んだ様はさながら・・・・・・。

「・・・泥棒?」

 アウロラが呟く。

ScreenShot_20130221_014212609.png

「ど、泥棒・・・。って、もしかして私のゴーレムを盗んだのはあなた・・・?」
「やっぱり同業者か。しかもモグリの」

 半ば以上察していたエディンは、顎に手をやりながらしきりに頷いていた。

「いいか、あたいは大泥棒ナプル!キャシーお嬢さんに雇われてお前のゴーレムを盗んだ張本人!わーははは、どうだ恐れいったか」
(なにこいつ・・・)

 ギルはジト目で大泥棒を自称した女を見つめた。

「今までお前らをつけていたが、中々やるじゃないか。犬もゴブリンも助けるとはな。ま、今までがどうあれ、お前らはこの部屋で確実に敗れることになるだろうがな!」

 勝ち誇ったようなナプルの言に冷水を浴びせるように、エディンが言う。

「そうかい。俺もモグリを見つけたからには、ルーシーお嬢さんとこが保護下じゃないとはいえ、義理があるから見逃しはできそうにねえんだわ。・・・覚悟しな」
「・・・・・・ひとつ、言わせてください」

 モグリの盗みを盗賊ギルド構成員の前で告白しあまつさえ自慢する、という愚行に気づかずにいるナプルに、アウロラはエディンを目線で制しながら申し出てみた。

「あなたに用はないんです。キャシーさんを出してください」

ScreenShot_20130221_015130187.png

「そりゃ確かにあたいは、何の脈絡もなく登場したけどな・・・それにしたって言い様があるだろ!こっちだって立場ってものが――」
『あ~あ~・・・ごほん!ナプルさん、もうその辺で・・・』
「は、キャシーお嬢様。申し訳ありません・・・」
『ルーシー、よくここまで来たわね!でも、ここがあなたの墓場よ!このナプルは凄腕の盗賊でね・・・今度ばかりはそう簡単に爆弾を解除させないわ!』

 つい、とエディンが人差し指でブロックサインを描いた。一番先に打つべきはあのナプルであると。
 キャシーの言動からすると、恐らく解除をあの大泥棒とやらが妨害する手はずになっているのであろう。
 なら”金狼の牙”たちは、まずあの女性を無力化すればいいのだ。
 『さぁ、行きなさい!』と勢いよく叫んだキャシーの台詞を遮るように、彼らは一斉に走り出していた。

「そうら!どうだい、このナプル様に敵うもんかい!」

 アレクとエディンが思ったより大振りで攻撃してくるのを余裕で回避しながら、彼女は得意げに叫んでいた。
 しかし、その二人の攻撃は囮。本命は――――。

「はい、おあいにく様。こっちよ!」
「ちっ…!」

 ジーニが二人の作ってくれた隙を捉えて、【閂の薬瓶】をナプルに投げつける。
 見事にその薬瓶の液体に込められた魔法が発動する直前、ナプルは「こんなとこで捕まってたまるか!」と怒鳴り、キャシーの手筈らしい何かの巻物を使い一瞬でそこから姿を消した。

「ちぇっ、逃がしたか・・・」
「かまわねえよ、邪魔なのはいなくなったからな。ミナス、いけ!」
「うん、エディン!」

 解除ツールを抱えたミナスが、Sサイクロプスの吐き出す蒸気にむせながらも、無事その爆弾がむき出しになった背面に辿り着いて、爆弾を解除する。

「よし!外した!」
「やった!」

 残りの稼動しているウッドゴーレムたちも、経験を積んだ冒険者たちの連携の前にあえなく砕かれていった。

『くっ・・・ここまでやるとは・・・!正直、甘く見てたのは認めるわ。中央の部屋へいらっしゃい、私が相手してあげる!』

 事の推移を見守っていたらしいキャシーが悔しげに呻く。
 その台詞が終わるや否や、ルーシーは真剣な顔をして”金狼の牙”たちを見渡した。

「どうもありがとう。正直、この子を取り戻せるとは思わなかったわ」

 プロの(自称かもしれないが)妨害をかいくぐった上で、目的のゴーレムはまったくの無傷。
 ルーシーが感嘆するはずである。

「・・・待て、あの泥棒が何か落としていったみたいだ」

 エディンは部屋を出て行こうとする仲間を呼び止めると、床から鍵を拾い上げた。

「・・・メモついてるんだが。えー、『中央扉の鍵よ。これを使って早くここまで来なさい。コテンパンに叩きのめしてあげるわ』だと」
「なんか・・・このキャシーって人、ルーシーに構って欲しいようにも見えるんだけど・・・」

 エディンが読み上げたメモの内容に、ジーニが若干引きながら指摘をすると、ルーシーも鳥肌が立ったように身を震わせて囁いた。

「・・・・・・気持ち悪いこと言わないで」

 慰めるようにアレクが言う。

「・・・ま。まあ、ゴーレムたちは無事だったし。あの回復の魔法陣の部屋まで戻るか?」
「あの、ウッドゴーレムオンリーの部屋にあったやつですね。そうしましょうか」

 傷はすぐ癒えたのだが、”金狼の牙”たちはそれまで休まずに来たこともあり、部屋の中で交替で仮眠をとってゆっくり体力を回復した。

「外、もう夜が明けちゃってるよね。お夕飯までに≪狼の隠れ家≫へ着くかな?」
「運が悪いと過ぎちゃってるかもなあ。でもキャシーってヤツにそう時間はかからないと思うぜ」
「なんで?」

 きょとんとした表情でミナスはギルを見つめた。

「今までの言動見てりゃ分かる。あの女、今すごい焦らされてるだろうから、ルーシーが会いに来れば一も二もなく自己主張して構ってもらおうと頑張るさ」

 この仮眠タイムで散々に焦らされているから、登場にもったいぶったりはしないだろうし、あれこれ手筈を整えている理性もそろそろ擦り切れてきてるだろうからそう手こずることはない――というリーダーの予測を、ミナスは感心して聞き入った。

「それが心理的かけひきってやつ?」
「多分そう。でも、あんまり真似はすんなよ?」

 まるで、弟に自分の仕掛けた至高の悪戯を種明かしするような、ひどく子供めいた表情でギルが笑った。

2013/02/23 10:12 [edit]

category: 爆弾仕掛けの番犬

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Sat.

爆弾仕掛けの番犬 2  

 爆弾の解除をし終わり、一緒に昼食を取りながら”金狼の牙”はルーシーに質問を飛ばした。
 キャシーというのはルーシーの家の近くにあるドーン家の一人娘で、昔から何かとルーシーに突っかかってきた相手らしい。どういうわけかルーシーの真似をしてゴーレムの研究もしていると言う。
 きっと今回も無意味に自分に対抗しようとしてこんな事件を起こしたのだ、とルーシーは主張した。

「そりゃま・・・ライバルと競い合うのはいいことだろうけどさ・・・」
「・・・・・・手段が悪すぎる。街中に爆弾を抱えたゴーレムを無分別に放つとは、治安隊に見つかれば即逮捕だぞ」

 難しい顔で話し合っている幼馴染コンビを見て、ルーシーが言う。

「なにしろ、ドーン家は資産家でリューンの行政にも口出しできるすんごい身分なのよ」
「ははーん、もみ消し前提で動いてるわけか」
「だから、一人娘で溺愛されてるキャシーはやりたい放題なわけ。そんなわけで治安局に通報しても無駄だと思う」
「父親の圧力を使うか」

 深いため息を吐いたアレクを見やって、ルーシーもつられるようにため息をつく。

「・・・全く、いい迷惑だわ」

 カウンターに広げられた地図を見て、ミナスが隣を振り仰いだ。

「ねえねえ、ルーシー。さっき言ってた東の遺跡ってどんなとこ?」
「公式の調査はもう終わってる、ただの小さな遺跡よ。お宝なんかはないと思うわ」
「えー!!ないのかあ・・・」

 ひどく落胆した様子のミナスを見て、付け加える。

「でも、キャシーがいるから罠はあるかもしれないわね」
「仕掛けてるに決まってるじゃない。ああいう性格悪い女ならね、トラップに知恵を絞ってるはずよ」
「・・・・・・同族嫌悪ですか?」
「違う!あんなのと一緒にしないでよ!」
「まあまあ、お前さんたちちょっと待ってろって。リーダー、聞くべき事は聞いたと思うがね。どうするんだい?」

 ウーノを救った報酬・銀貨300枚をルーシーから受け取りながら、エディンが訊ねた。

「受けるに決まってるだろ。俺らのパーティ名の恩人に迷惑かけられたんだぜ?」
「あぁ、もう半分は関わってるようなものだしな」

 エディンは肩をすくめた。ギルは決して情だけで動く男でもないのだが、時折妙に律儀な時もある。
 そして背中から転がり落ちてきた解除ツールを見つめて、眉根を寄せる。

「俺が持つべきなんだろうがねえ。素人の道具は変に使いづらくて困る」
「でも、エディが使わないなら誰が使うのよ?」

 もっともな意見が飛び出し、エディンが顎に手をやって考え込んでいると、ミナスが元気よく手を挙げた。

「僕!僕がやるよ」
「・・・そういやお前さん、盗賊団壊滅した時に宝箱開けたんだよな」
「うん、ちゃんとお土産持って帰ってきたでしょ?それに、僕の精霊たちは上手く攻撃を誘導できないことも多いし、解除終わるまではきっと召喚はできないと思うんだよね」
「・・・・・・確かにな。俺もすぐ解除の体勢に入れるとは限らんし。なあ、どうだいリーダー?やらせてみちゃ」
「うーん。でもミナス、これは失敗したら依頼が果たせないだけじゃない、ルーシーの心に大きな傷を作る事になる。その責任は取れるのか?」
「分かってる。大丈夫、僕だって冒険者だよ。無理はしないから」

 暫しギルはうつむいて考え込んでいたが、やがて顔を上げると解除ツールをエディンの手からミナスの小さな手へと渡してやった。
 そして皿の片付けにきていたエセルに呼びかける。

「明日の夕飯時までには帰るよ。親父さんにもよろしく伝えておいてくれ」

 親父さんは現在、冒険者の店の寄り合いに出ていた。
 娘さんが彼の代わりに厨房に入り、エセルが一人で給仕をこなしていたのである。
 そのため、≪狼の隠れ家≫の正式な依頼ではないので聞かされた親父さんはいい顔をしないだろうが、仲介料は恐らくドーン家から搾り取れるだろう・・・そういうギルの算段であった。

「分かりました、気をつけてくださいね」
「シエテ!今日やった朗読、あたしが帰ってくるまでに復習しておくのよ。ご飯はちゃんと食べる事、いいわね!」
「行ってくるね、帰って来たら僕と一緒に遊ぼう!」
「うん、分かった・・・。みんないってらっしゃい」

 エセルがお盆を胸に抱きしめながらにこやかに見送ってくれ、シエテもパンを片手に彼らに手を振る。”金狼の牙”たちは挨拶をしながら店を出て行った。
 そして、半日と少し。
 旅慣れていないルーシーを気遣っていたために少々遅くなりはしたが、”金狼の牙”たちは無事遺跡に到着した。
 ウーノの面倒を見ながら息を切らせていたルーシーは、とある洞窟のような入口の手前を指差す。

「ここが地図に書かれた場所よ。あそこが入口ね」

 見張りなどはいないようだったので、中に入ろうと足を進めると。
 入口の奥から、何を嗅ぎつけてきたのかスチームドッグと全く未知のゴーレムが駆けつけてきた。

「・・・!ルーシー、こいつらは?」
「後ろの犬型のは、私が改良したSドッグ改だけど・・・手前の三体は分からないわ。キャシーのゴーレムかもしれない」

 エディンごめんね、と言ってルーシーは後退した。

『そのとおり!これが私の傑作・・・ウッドゴーレム01型、通称ウッディちゃんよ!』

 声高に宣言したキャシーの音声伝達魔法に、ルーシーは呆れた声で返した。

「ウッドゴーレムって・・・木じゃない。そんな弱そうなゴーレムで勝ち誇るなんて・・・頭ダイジョブ?」

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『くっ・・・このゴーレムの素晴らしさがあなたには分からないの?この木目、芳しい香り・・・そして何より重要なのは・・・!』

 キャシーはことさら声を潜め、それが素晴らしい新発見であるかのように言い放った。

『あなたのスチームゴーレムみたく、暑苦しい蒸気を噴出しないのよ!』
「はいはい・・・じゃあ、サクッっと倒しちゃって」
「・・・あ、あぁうん」

 依頼主の常にない冷厳な声に呑まれていたジーニが、慌てて頭を縦に振った。
 しかし、ミナスは油断なくSドッグ改を見つめていた。その蒸気を吹き上げる身体には、キャシーが言った爆弾がついているに違いないのだ。

「ミナス、頼むわ。俺はウッドゴーレムがお前さんに行かないよう、動きを止めておく」
「うん、僕頑張るね!」

 エディンは中央のゴーレムを、アレクとアウロラが左翼のゴーレムを、ギルとジーニが右翼のゴーレムを狙ってフォーメーションを変えた。

「爆弾が解除されたら、私がすぐにあの子を止めるから!」
「分かった!」

 ミナスは小さい体の敏捷性を生かして、ウッドゴーレムがもたもたと腕を振り上げる中を潜り抜け、見事にSドッグ改の前に躍り出る。
 実際に対してみると、アレクが一度躓き、ゴーレムに軽く殴られたのだけがこちら側の被害で、後は無事に終わった。ウッドゴーレムを仲間たちが2ラウンドほどで屠ると、ミナスは解除に集中する事ができてあっという間に爆弾を外す。

ScreenShot_20130221_010317390.png

 安全と見たルーシーが、Sドッグ改に走り寄った。

「やった!今のうちにここをこうして・・・」

 ルーシーの器用な手先が回路の一部を弄っている。

「うん・・・これでよし、と!」
『ふ、ふん!そのくらいはできて当然よね!じゃあ遺跡の奥で待ってるわよ!』
「・・・ツンデレ?」

 ギルは首を傾げた。
 動力を外されたゴーレムは、ルーシーの手でそっと入口近くの茂みに隠される。

「キャシーが変な小細工をしてないとも限らないからね。あとでちゃんと調べるまでは安心できないでしょ」
「なるほど・・・」
「リーダー、調査は終わったぜ。入口に仕掛けはないと思う」
「うっし、じゃあ先へ進むか!」

 ルーシーと”金狼の牙”は隊列を組んで遺跡へと入っていった。
 途中で先程入口にいたウッドゴーレムに出会ったり、仕掛けられたトラップを解除したりしながら、彼らはゆっくりと進んでいった。

「・・・ん、床にスイッチがある。ここをこうして・・・よし、解除できた」
「さすがは本職。やっぱ違うわね」
「いや、これ仕掛けてるのも本職だぜ?」
「え?」
「どうも気になるな。盗難の件といい・・・盗賊が、少なくともそれと同等の腕前のヤツが加担してる気がする」

 西北の部屋の扉の前で、取っ手に塗られた毒をふき取りつつ、エディンが首を傾げた。
 資産家の魔術を使う令嬢が考えるにしては、妙に即効性のある効果的な罠が多い。
 つまりそれは、盗賊としての視点を持つ者が手を貸しているということである。
 ドアを開けると、そこにはやはり以前に”金狼の牙”が見た覚えのあるゴーレムが、ウッドゴーレム五匹に取り囲まれて立っていた。

ScreenShot_20130221_011540859.png

「あ、私のスチームゴブリン改!・・・どうせ見てるんでしょ?キャシー、答えなさい!」
『あぁら、バレてた?で、何かご用かしら?』
「何か、じゃないわよ!何でこんなことしたの!?私に恨みでもあるわけ?」
『別にぃ・・・あなたの困った顔が見たいだけよ』
「ちょ・・・なにそれキモイ・・・」

 まさかの返答に、ルーシーはちょっと顔を青くしながらドン引いた。

『コホン・・・さぁ、次はゴブリンちゃんの爆弾を解除してね。はい、戦闘開始!』

 しかし、これもさほど時間がかからない(3ラウンド)うちに、エディンの手によって解除をされてしまう。

「うん・・・これでよし、と!これでこの子は取り戻せたわ!」

 ルーシーの報告ににやりと笑った戦士二人は、それぞれ自重していた技を思い切り放つことにした。

「【風切り】!」
「【薙ぎ払い】だぜ、おりゃああああ!」

 対多数相手の技が、それぞれ魔法陣の描かれた部屋の中を吹き荒れる。
 それらが過ぎ去った後でボロボロになった最後の一体を破壊したのは、解除をし終わって死角にいたエディンの【暗殺の一撃】だった。

「やー、終わった終わった。ルーシー、怪我ないか?」
「ええ、ギル。みんなにはお礼を言わないとね。どうもありがとう」
「どういたしまして。まだサイクロプスがいるけどな」
「・・・ん?何かのスイッチがある」

 壁の一部が気になって調べていたエディンが、罠じゃなさそうだと言ってそのスイッチを押してみる・・・・・・が、何も起こらない。
 ルーシーが小首を傾げて言った。

「こういうのって、大体の場合どこかの扉の鍵が開いたとか、そういうパターンよね・・・」
「ああ。ボス部屋に連動してるってこたぁねえと思うがな」

 そしてまた遺跡の通路を移動する。
 底意地の悪いことに、ウッドゴーレムだけしかいない無意味な部屋などもあったが、そういう時は遠慮なく広範囲に渡る攻撃を行い、”金狼の牙”はフラストレーションを解消していった。

「思い切りナパイアスに暴れてもらえてすっきりしたー!」
「良かったな」
「アレクもかっこよかったよ、【召雷弾】!あれ、バチバチーってするのすごいねえ」
「詠唱が比較的短い呪文だからな、遠距離攻撃ができるし使いやすい」

 ミナスとアレクが和やかに話しながら通路を行く様子を、キャシーは臍を噛みながら閉じこもった部屋で見つめていた。

「なんなの、あいつら・・・!でも次はそう簡単にいかないわよ。そこにいるのはあの子の最高傑作、Sサイクロプス改なんだから!それにあいつも・・・」

2013/02/23 10:08 [edit]

category: 爆弾仕掛けの番犬

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Sat.

爆弾仕掛けの番犬 1  

 それは、かのランプトン卿からの依頼を見事果たした”金狼の牙”の噂が、そろそろ下火になってきた頃の事だった。

「・・・というわけで、盗まれたゴーレムを取り戻して欲しいのよ」
「ギルドの保護がないとはいえ、ディトニクス家に入ってゴーレムを盗むたあ、剛毅な話だなァ・・・。親父さんと話はついてるのかい?」
「今、父さんはいないんだけど・・・ゴーレムたちが盗まれたことが知られたらまた喧嘩になっちゃうわ」

ScreenShot_20130220_231544203.png

 いつもなら生き生きとした表情を欠かさないはずの娘の顔は、すっかり曇っている。
 いつものカウンター席でやや早めの昼食を食べに来ていたエディンはそれを哀れに思い、ウェイトレスの一人であるエセルを呼び止める。

「エセル、わりぃんだがこっちのお嬢さんにもサンドイッチ頼むわ。今日は中身なんだっけ?」
「焼いたハムとチーズです!自家製ピクルスもたっぷり挟みますよ。付け合せはハムのグレービーソースかけた粉ふきいもです」
「・・・お前さん、本当にじゃがいも好きだよな。じゃあそれ二人分」

と、サンドイッチを娘の分まで追加注文した。
 そして彼女に――ルーシェラン=ディトニクスに向き直る。

「何で喧嘩になるんだ?」
「お前のスチームゴーレムは館の警備もできないのか、番犬が盗まれてどうする!・・・ってね」

 妙に色気のある声が割って入り、ルーシーに同意をした。

「あらら、そりゃあの人ならそう言うでしょうよ」
「ジーニ。お前さん、もう降りてきたのか」
「ええ、ミナスとシエテの勉強見終わったからね。庭にいる子達もみんな、こっちにくるわよ・・・ほら」

 窓から素振りの練習を見守っていたジーニの台詞が合図だったかのように、ぞろぞろと宿の裏口からギル・アレク・アウロラの三人が入ってくる。
 勉強道具を片付けたミナスもシエテと連れ立って降りてきたが、階段から仲間の姿を見つけて嬉しそうに寄ってきた。
 そしてカウンター席についているかつての依頼人の姿を見て、目を丸くする。

「ルーシー!?久々だね、何かあったの?」
「大有りよ、ミナス。実は私の可愛いウーノや他のスチームゴーレムが、盗まれたのよ・・・」
「盗まれたあ!?」

 異口同音にエディン以外の面子が大声を上げると、ルーシーは慌てて彼らの口を塞ごうとわたわた意味もなく動いた。
 そして口を塞ごうとするのが無意味である事を悟ると、

「だから、あなた達でこっそり取り戻して欲しいの」

としょぼくれた様子で付け加えた。
 これは”金狼の牙”への依頼だなと判断したシエテは、そっと邪魔をしないよう違うテーブル席につく。

「ね、あのスチームサイクロプスを撃破したあなた達だからこそ、お願いしてるのよ」
「うーん・・・」

 ギルは腕組みをして唸り、しばし考えた。
 ・・・ルーシーと会うのはこれが初めてではない。
 以前、スチームゴーレムの実験に付き合わされたことがあった。
 その際、ルーシーとその父ファランとの確執が明らかになったわけだが・・・それはまだ解消されていないようだ。

「ね、お願い!報酬はちゃんと払うから。ゴーレムを全部取り戻したら・・・そうね、銀貨1200枚払うわ!」
「1200か・・・」

 なかなかの金額であるし、今の彼らのパーティ名”金狼の牙”の元になってくれたゴーレムのことでもある。できるだけの協力はしてやりたいところなのだが・・・。
 だがギルは、『全部取り戻したら』という言葉が引っ掛かった。

「で、ゴーレムは何体盗まれたんだ?」
「あ、まだ言ってなかったわね。盗まれたのは全部で四体よ」

 そういってルーシーは、スカートのポケットから取り出したメモをギルに手渡した。

「盗まれたゴーレムの詳細と、一体ごとの報酬についてはこのメモを見てちょうだい」
「りょーかい。ジーニ、見ておいて」
「・・・あんたねえ、少しは自分で確認しなさいよ・・・」

 あきれ返った顔になりながらも、一応メモはジーニが目を通す事になった。

「んー。ウーノが銀貨300枚、違うスチームドッグが150枚、スチームゴブリンが250枚・・・。え!?ちょっと、スチームサイクロプスまで盗まれてるの!?」

 スチームサイクロプスは、ルーシーが行った実験でかなり手こずらされたゴーレムである。
 全体攻撃と硬い装甲を持ち、かなりタフな傾向のあるゴーレムの中でも、なかなかの強者だったと記憶している。
 アウロラがミナスと仲良くそば粉のパンケーキやレーズン入りプディングを分けながら言った。

「・・・まあ、なんてことでしょう。アレを盗むなんて、よほどに腕のいい人なんでしょうね」
「ちなみにそれはいくらなの、ジーニ?」
「銀貨500枚!・・・・・・これだけ盗むなんて容易なことじゃないわね」
「さて、何か質問はある?」

 それまでずっと黙って経緯を聞いていたアレクが口を開いた。

「盗んだやつの心当たりとか、盗まれた当時の状況とか、色々知りたいんだが」
「なるほど。まず、何から話そうかな・・・」

と、その時だった・・・・・・。急に犬の吠える声がする。

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「・・・犬?」
「・・・ウーノ?その鳴き方はウーノでしょ!?」

 ルーシーが叫んだ瞬間、宿に入ってきたのは一体のスチームゴーレムだった。
 しかもアレクたちにも見覚えがある。
 ウーノはルーシーが製作した犬型スチームゴーレムである。
 足が車輪状の通常のスチームドッグと違い、ウーノは普通の脚をつけているのが特徴だ。
 ルーシーはウーノを抱きかかえていたが、やがて不思議そうな表情で顔を上げた。

「でも変ね・・・なんでウーノが一人でこんな街の中にいたのかしら?」
「それは確かに・・・」

 ルーシーと”金狼の牙”たちは、そろって首をかしげる。
 しかし答えは出てこない。

『ふふふ・・・教えてあげましょうか?』
「え・・・ウーノ?・・・じゃないわよね、今の声は・・・」
『あなたのゴーレムを盗ませたのはこの私よ・・・。そして、あなたのウーノを操ってその宿に行かせたのも私・・・』
「・・・・・・一体、どういう仕組みだ?」

 アレクがウーノをかつてなく厳しい表情で見やりながら詰問する。

『今、私は近くにはいないけど、音声伝達魔法でウーノを通してそっちに声を送っているの』
「あ、あなた誰よ?何でこんなことしたの!?」

 ルーシーが気色ばんだ。

ScreenShot_20130220_235406171.png

『黙って聞きなさい。いい?このゴーレムには爆弾が・・・と言っても小さなモノだけど・・・仕掛けてあるわ。それを解除できたら、私の居場所を教えてあげる』
「ば、爆弾ですって!?」
『そう。小さいと言ってもこのゴーレムを壊すくらいの威力は十分にあるわよ。ミスしたら、あなたの大事なウーノちゃんはボロボロ、他のゴーレムも帰ってこない・・・お父様は何と言われるかしらね?』

 ウーノから発せられる謎の声に、ジーニは形のいい小指の爪で額を掻きながら唸った。
 今までの言動からすると、この声の持ち主はルーシー当人に私怨か何かを抱いており、ディトニクス家の家庭事情、及びルーシーがウーノをどれだけ大切に扱っているかを知っている・・・・・・ということになる。

「やり方が狡いわね」
 
 ジーニは声の持ち主の周到さに、ふんと鼻を鳴らした。

「あなた・・・あなたキャシーね!?よくもこんな、手の込んだ嫌がらせを!」
『うっふふふ。気づいてくれたのね。じゃあひとつサービスよ。爆弾解除用のツールをあげる。これを使って解除しなさい』

 ウーノの背中にくくりつけてあった箱が開き、中から解除ツールが転がり落ちた。

『さあ、ウーノに仕掛けた爆弾を見事に解除して見せて!』

 音声はそこで途切れた。音声伝達魔法を解いたらしい。

「調子乗ってんなー。本職相手に挑戦状たあ、いい度胸だぜ」

 ルーシーに追加したサンドイッチを食べるよう促して、エディンは鼻歌交じりに――しかしその実、注意深く――ウーノへと手を伸ばした。

「終わったぜ。こんなもんかい?」
「あぁ、良かった!良かったねウーノ!」
『うふふ、良かったわねぇルーシー』

 ウーノに抱きついていたルーシーが、あからさまに顔を顰める。

「げっ・・・まだ繋がってたんだ。あ、そうだわ!爆弾解除したんだから、居場所を教えなさいよ!」
『もちろんよ。ここまで来てもらわないと困るし、ちゃんと教えてあげるわよ』

 キャシーと呼ばれた声の持ち主は、すらすらとリューンから東へ半日ほどの位置にある遺跡を指定した。
 詳しい場所の地図も背中の箱から転がり出てくる。
 それを用心深い手つきで摘み上げて目を通したルーシーが、ぽつんと呟いた。

「ここは・・・もう調査が済んで誰も訪れなくなった遺跡ね」
『そうよ、誰にも邪魔されずあなたと決着がつけられるわ。そうそう、一応言っておくけど、さっきの爆弾は素人でも解除できるように簡単な造りにしておいたの』
「ああ、そうだろうよ。造りは簡単だった。・・・・・・だが、この犬を壊す威力ってえのも、本当だったぜ」

 一方的に喋りまくったキャシーは、遺跡で待つと言い残し音声伝達を解除した。

2013/02/23 10:01 [edit]

category: 爆弾仕掛けの番犬

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