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不思議な博物店 3  

ScreenShot_20130212_103653671.png

「・・・鍵がかかってない・・・けど、鍵がかかっている・・・?」
「この部屋だな」

 アレクは低く呟く。
 その後ろでは、アウロラやジーニ、ミナスがそれぞれ小声で補助呪文と召喚を行っていた。

「・・・魔法で施錠されてる」

 自分ではどうしようもない、とエディンはまた肩をすくめた。

「これでよし、と・・・準備はできましたよ」
「そんじゃま、行くとするかね」

 エディンが聞き耳した感じでは、この扉の向こうに人がいることは間違いない。
 2階で回収した魔法の鍵を使って、エディンは施錠を外した。

 ――――中は相当広い部屋だった。ダンスホールほどとは言わずとも、大きな図書室くらいはある。
 しかし家具は一切が取り払われ、がらんとした寂寥な感じのする部屋だった。

「・・・奥に誰か・・・」

 目を眇めたエディンが呟き、

「・・・あ、あなたは!!」

ScreenShot_20130212_104244281.png

 司祭が叫ぶ。
 そこにいたのは聖北教会の白い司祭服を着込んでいる、痩せて削げた頬が気になる中年の男だった。
 だらりと下げた手には、蛇が2匹巻きついた意匠の変わった杖を携えている。

「ガルージア様!!」
「・・・司祭ではありませんか。あなたも亡者退治ですか?お互い、仕事が大変ですね」
「・・・大変?レイスが持ってた鍵の部屋にあなたがいた。しかも、その鍵この部屋用の物」

 眉をしかめてミナスが言った。
 ガルージアと呼ばれた男から嫌な気が発せられているのが、ミナスには分かる。
 精霊の力を知覚する時のように、ピリピリと尖った耳の先にむずがゆい感触があった。

「魔法で包まれて施錠されていたこの部屋の・・・コレは一体どういうこと?」
「・・・レイスが?おぉ、なんと罪深い。このような場所に・・・」

 いかにも聖職者らしく慎ましく答えようとするガルージアの言葉尻を奪うように、アレクが一歩前に出て口を開いた。
 精霊使いであるミナスが嫌な気を感じたように、彼の懐の中の雪精トールもまた危険を感じ取り、アレクに警告を発していたからだ。

「惚けるのもいい加減にしてくれないか?あんたが亡霊を呼び出したって所だろう?」

 何かに気づいたように、依頼者の司祭が顎に手をやり言い添える。幸い、彼は強引だが察しのよい人間だった。

「・・・そうですね、あなたは1週間前から居なくなっていた。・・・亡霊が出始めた1週間前から。どういう事です?」
「・・・偶然ですよ、偶然。私はいち早くこの場所を見つけ、1週間亡者退治を行っていたのです」
「ならば、何故このような場所にいたのですか?」
「偶然ですと言ったはずです」

 なかなか埒の明かない聖職者同士の会話に苛立ちを感じ、アレクはつい口を出した。

「だったら、この場所から遠く離れようと関係はないって事だな?どうせ冒険者が多いんだから、亡霊退治には困らないぜ」

 こっちは亡霊退治の仕事って契約で来てるし、と後ろでギルが同意する。
 とうとう誤魔化しきれないと悟ったか、ゆらりとガルージアがこちらに向き直った。

「・・・仕方がありませんね・・・」

 そして杖を持ち直す。

「この場所を離れるにはまだ早いんですよ。この世の無情なる世界の人民を滅ぼすには、ね」
「・・・!!ガルージア様・・・」
「あ~ら・・・狂信者って奴かしら?」
「さぁ、天に召しなさい。あなた方の行動には、天もお怒りになっております」
「チ・・・やるしかないようだな!!」

ScreenShot_20130212_105554796.png

 その声を合図に、”金狼の牙”たちは散開して距離を取った。
 相手は依頼主である司祭よりも僧職にある期間の長い敵らしいし、警戒すべきはその体躯と得物から言っても魔法だろうと思われた。
 ≪エア・ウォーカー≫で防御体勢を取るミナスの影の中から、ゆらりと雪娘と野人が立ち上がる。
 ジーニは全てを見通すという≪真実の水晶球≫を構え、アウロラは詠唱に集中するため≪氷心の指輪≫に魔力を込めた。
 戦士二人の動きをサポートする為、飛び出したエディンがレイピアを相手に突き刺そうと突進する。
 その動きを察知していたものか、ガルージアは杖を振り上げて叫んだ。

「さぁ、彼らと同じく天へ召されて、私の助けとなるのです!!」
「な・・・!?亡霊を召喚した!?」

 しかし、急に足を止めるわけにもいかず、鬼火や亡霊の漂う中を突き進んだエディンのレイピアは、そのままガルージアの肩口を抉った。
 悲鳴を上げて後ろへ下がろうとする男の体を、スネグーロチカが抱きしめ、ファハンが石つぶてを持って硬直させる。

「こいつら・・・・・・!こんな熟練者を連れてくるとは!!」
「ほうら、余所見してる場合じゃなくってよ、お坊様!」
「こっちからもいくぜ!」

 忌々しそうに叫ぶガルージアの体に風が二つぶつかる。
 ジーニの旋風の護りと、ギルの【暴風の轟刃】による竜巻だ。
 重傷に陥りよろけたところへ、狙い済ましたアレクの【炎の鞘】が、胴を横一文字に凪いだ。

ScreenShot_20130212_110126109.png

「グ・・・く、そ・・・」
「・・・残念だろうが、お前の負けだ」
「お疲れ、アレク!ほら、おっさん教会で裁かれて来いよ」

 倒れこんだガルージアに近づこうと、一歩ギルが進んだその時。

「わっ!?カードが、何処かへ!!」

 先程自分が起こした竜巻よりも強い突風が、ギルを思い切りかき回し、ポケットに収めていたカードを巻き上げていく。
 巻き上げられたカードは風に舞い、いつの間にか開いていた窓から出て行こうとしている。
 慌てて右往左往する幼馴染をよそに、アレクが飛び上がった。

「早く取らないと・・・そりゃ!!」

 しかし、指先をカードが掠めるだけで取れはしない。
 アレクを真似てギルも飛び上がるが、その手に収まっていたのは一枚だけだった。
 気絶したと思っていたガルージアが、残念がっている戦士たちを睨みつけ、呻き声を上げる。

「ク・・・私が・・・」
「おっさん・・・今、意識不明にした筈・・・」

 ギルがいち早く気づき斧を構える。

「ク・・・まだ・・・私は・・・ガ・・・!?」

 ガルージアの杖からなにやら不思議な光線が発せられる。
 そして・・・ガルージアの体へと光線が落ち、ガルージアは・・・消滅した・・・。

 クリスマスの夜。

ScreenShot_20130212_111230250.png

「・・・皆さん、有難うございました。あなた方のおかげでこうして平和なクリスマスを迎える事ができました」
「まあ、レイスまで出てくるとは思わなかったけどさ」

 悪戯っぽく微笑んだギルの横で、エディンが「報酬!ほら貰い忘れてる!」と囁いた。

「おっと忘れてた。すいません、報酬ください・・・」
「これが報酬の1000spです。本当に有難うございます」

 司祭は予め用意していた皮袋をギルに手渡した。金貨の澄んだ音が鳴る。
 ――あの時落ちた光線は、跡形もなくガルージアを抹消してしまった。・・・あの場には、単なる消し炭と化した、ガルージアしかその場に残っていなかった。

「あの人も罪深い事をしました・・・あの光線は、神の奇跡という物でしょう。・・・神は、あのガルージア様に罰をお与え下さったのです」
「ふーん・・・そんなもんか」
「しかし、彼もまた魂を浄化され、この世へと舞い戻ってくるでしょう。その日の為に、私たちは神へのお祈りを欠かさないのです」

 まだ仕事が残っている、と言って依頼人の司祭は教会へ帰っていった。
 ギルが首を捻りつつ呟く。

「・・・神の奇跡、か・・・。うーん・・・」
「多分、違うわね」

 すぱっと否定したのは司祭が自分の見解を述べている間中、黙り込んでいたジーニであった。

「違うって?」
「気づかなかった、ギルバート?あのガルージアってのが持ってた杖。凄い魔力篭ってたわよ」

 恐らくは禁呪の類に属するマジックアイテムだろう、と彼女は言った。

「ほーんと、使いこなせないくせに自爆するお馬鹿さんの多いこと。神様もいちいち天罰与えてられないわよ、きっと」
「ジーニ?」

 ぎくりとジーニは体を震わせた。彼女の背後で微笑んでいるアウロラの目は・・・・・・決して笑っていない。
 たちまちブリザードの気分を味わったジーニが慌てて謝り、その場は事なきを得た。

「・・・さて、帰るとしますか!」

 ギルが元気よく一同を促した。
 なんといっても、今日はクリスマス。運が良ければまだご馳走が残っているかもしれない。
 ケーキがいい!とわめくミナスを、アレクが抱き上げ走り出す。
 その後ろからエディンとギルも駆け出し、出遅れた女性陣が慌てて後を追った。

 ――――だから彼らは知らない。
 ――――リューンの片隅でとある老人が営む店に、『あの杖』が帰っていったことを。

「・・・ん?」

 枯れ木のような老人の腕が、ひょいっと蛇が二匹巻きついた意匠の杖を拾い上げた。

「おやおや・・・この杖はあの方にお売りしたはずじゃがのぉ・・・使いこなす事はやはり無理じゃったか・・・」

 灰色の豊かな髭を震わせて、老人は慨嘆した。

「言った筈じゃがのぉ・・・『自分の強さによっぽどの自信がある方でなければいけません』と。・・・心に弱さがあれば、無意味じゃというのに・・・」

※収入1000sp、≪カード≫※

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■後書きまたは言い訳
40回目のお仕事は、オサールでござ~るさんのシナリオで不思議な博物店です。2回続けて同じ作者さんの作品をやらせていただきました。この不思議な博物店と名前のついたシナリオはもうひとつあって、そっちは3-5レベル対象なのですが、ガルージアさんと違って上手く道具を使ったお客さんのお話となっています。

このシナリオによって手に入れた≪カード≫ですが、今までジーニが持っていた≪真実の水晶球≫と同じ暴露効果があります。その上、こちらは絶対成功となっているので、装備を整えたすぐ後ではありますが持ち替えました。・・・もっとも、≪真実の水晶球≫なら抵抗力10%up効果があるんですけどね。≪ロマンスの盾≫でも抵抗力が上がるものですから・・・。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

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2013/02/15 19:50 [edit]

category: 不思議な博物店

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不思議な博物店 2  

 仕事振りを監督するためか依頼人の司祭も同行する中、冒険者たちは問題の屋敷を歩き回っていた。
 確かに亡霊たちがうようよしており、ゴーストや鬼火であるウィスプたちが屋敷内を我が物顔で彷徨っている。

 ギルが妙に感心したように口を開く。

「こりゃすごい。お化けばっかりだな」
「さーて、2階建ての屋敷なら、大事なモンとかキーになるものは上の階にあるのが常道だな・・・」
「あ、エディン。階段あったよー」

 元気よくミナスが指示する方に進み、一行は2階へと上がった。
 亡霊たちの動きに注意しながら、途中あった部屋へと立ち寄ってみる。

「鍵も罠もかかってねえよ」
「ここには魔物はいないようだね」

ScreenShot_20130212_101050828.png

 ミナスがきょろきょろと見渡して断言する後ろから、ジーニが中の卓上を指して注意を促す。

「・・・ん?あそこにカードが・・・」
「・・・これは・・・ワンド(杖)のカードのようですね」

 中に入ってカードを取ってきたエディンの手元を覗き込み、司祭がそう言った。

「1セットそろってますね・・・何にするんです?プレゼントとかならもっていってもよろしいですが・・・」
「あら、そうね。親父さんへのプレゼントくらいにはなるわね。明日のクリスマスの」

 美しい絵の描かれた破損のないカードというのは、それだけでコレクターの間の希少価値が上がる。
 ジーニが鑑定したところ呪いの類はないようだし、親父さんへのちょっとしたお洒落なプレゼントとしては極めて上等だと思われた。

「銀貨1500枚ってとこかしら。中々いいんじゃないの?」
「ふーん。こんな薄いのがねえ」

 ギルが頭を掻いて鑑定結果に唸った。
 その肩をアウロラが叩いて、先を促す。

「まだお仕事中ですよ、ほら。行きますよ?」
「はいよ・・・・・・って、またウィスプかよ!?」
「・・・・・・妙に多いな。集まる何かの原因が、この屋敷にあるということだろうか・・・?」

 アレクが首を傾げつつ愛剣を振るう。
 その横で、じーっと廊下の奥を注視していたミナスが、「あ」と呟いた。

「どうした?」
「ギル。あそこ、行き止まりに暖炉がある」
「行き止まり・・・に暖炉?」

 ミナスの言う石造りの暖炉は、遺跡を見慣れている冒険者の視点からするとさして古いとも言えないが、手入れが悪いせいか詰まれた石にひびが入っている。
 せっかく綺麗な屋敷なのに・・・と、ギルが近づいていくと、「グオオオォオォォ!」という名状しがたい呻き声がどこからかあがった。

ScreenShot_20130212_102141375.png

「な、なんだ!?」

 慌てて辺りを見渡していると、天井の一点を司祭が指差して叫んだ。

「!!皆さん、レイスが!!」
「レイスですって!?」

 アウロラがハッとした表情でミナスを後ろに庇い、【信守の障壁】を唱える。
 庇われたミナスもアウロラの様子を見て、あわただしく【蛙の迷彩】の詠唱を開始した。
 レイスは力の強い上級のアンデッドで、その危険さは今まで戦ったウィプスやゴーストの比ではない。
 アレクの単独冒険でも邂逅したが、彼らの【死の接触】は一撃で相手の生命力を根こそぎ奪ってしまうのだ。

「こんな危険なのもいるなんて・・・」

 掃除と言うにはちょっと危険すぎない?とぼやきつつ、ジーニが風の障壁を自分の周りに張った。
 彼女の周りに吹く旋風の護りは、非実体も容赦なく薙ぎ払っていく。
 体勢を整え終わった前衛で波状攻撃を繰り返し、レイスは断末魔を残して消滅した・・・。
 ヒュン!とレイピアをしならせたあと鞘に収めたエディンは、目を眇めてレイスのいた暖炉の辺りを見つめた。

「・・・ん?下に何かあるぞ?」

 それは鉄製の妙に凝った形の鍵で、ジーニの鑑定した結果では魔法が込められているらしいというところまで分かった。

「この屋敷のものでしょうね。普通の鍵とは違う感じよ」
「・・・・・・ということは、これで開く部屋が重要なんじゃないか?」
「アレクの言うとおりかもしれねえ」

 エディンは腕組みして自分の意見を言った。

「さっき、アレクも言ってたろう。死霊の数が妙に多い・・・。おまけにレイスだ。こんなもんまで出るようじゃ『何か』か『誰か』が集めていると思った方が、筋が通るんじゃねえ?」
「・・・追加報酬はないのよね?」

 司祭はにっこりと笑って頷き、「ただし」と言い添えた。

「契約は銀貨1000枚で締結してありますからね。当然、完遂していただけますよね?」
「・・・はーいはい、分かったわよ」

 ひらひら、とジーニは手を蝶のように動かして応える。

「ま、そんな危険なもんがリューンの街中。しかも裏通りにほっとかれてる方が危ないや。掃除はすっかりやっちまおうぜ」
「ここはリーダーの言うとおりだな」
「そうと決まりましたら、この鍵に合う部屋を見つけるのが先決でしょうね」

 アウロラの言に、肩をすくめてエディンは言った。

「見つけてもすぐには開けないからな。準備してからにしてくれ」

2013/02/15 19:37 [edit]

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不思議な博物店 1  

「オイオイ。俺は新しい魔法を覚えるって話は聞いてるが、そっちのド派手な盾やら、ギルやアレクが習ってきた新しい技のことなんざ聞いてねえぞ」
「やあねー、エディ。細かいこと気にしたら禿げるわよ?誰かみたいに」
「・・・ま、ジーニが買い物したおかげで、商品券もらえたもんね。おかげで僕もこの指輪買ってもらえたし」
「ミナスだと、重い防具をつけるのはまだ無理でしょう?れかん魔法品物店で物色しておいた甲斐がありましたね」
「ミナスが壊滅させた盗賊団の持ってた鎧、いいなこれ。下手な鉄鎧より動きやすいし硬い」
「ドラゴン・スケイルメイルだもんなあ。アレクかっこいーぜ・・・・・・っと、この依頼書は・・・?」

 ≪狼の隠れ家≫の親父さんは、久々に勢ぞろいした”金狼の牙”一行をちらりと見やって言った。

「・・・お前ら、その依頼が気になるのかい?」
「そりゃさ、親父さん。ここまでしかないとなれば、詳細が知りたいから」

 カナン王の持っていた鎧をサイズ直ししたギルが元気に答えるのに、親父さんは太い眉を八の字に下げて応えた。

「気になるだろうが、わしもその張り紙に書いてあるとおりしか教えてもらってないのだよ」
「えー。なんだそりゃ」

 張り紙にはこう書いてあった。

『聖北教会より依頼を頼ませていただきます。依頼内容は掃除です。報酬は1000sp程用意しております。詳しい事情は依頼をしていただく方にのみ・・・』

 ジーニが親父さんの方にふらりと近寄り、カウンターに肘をついて訊ねる。

「書いてあるとおりって・・・掃除ってことだけ?」
「あぁ。聖北教会の使いからのってのもな」

 ”金狼の牙”たちは、いやーな表情をして顔を見合わせた。リューンの下水道に潜ってビボルダーと一戦交えた時の記憶は、まだ割と新しい。
 今度はそんな事はないと思うが、と苦笑して親父さんは付け足した。

「・・・で、どうするんだ?聖北教会だから、報酬は間違いなく値切られる事はないと思うぞ」
「・・・・・・・・・行く」

 技能の講習代金やら、装備を整えた代金やら、清算すると今まで結構貯めこんだはずの懐が寂しい。
 人間、経済状況には勝てないのだ。

ScreenShot_20130212_015908785.png

「・・・・・・たかが掃除で1000sp・・・ねえ・・・」
「どう考えても怪しいなぁ・・・」

 剃り残した顎の髭を摘んだエディンと、杖の髑髏で肩を軽く叩いていたジーニが、呟いてそれぞれ目を合わせる。同意見らしい。
 暫し口をもごもごさせていたエディンが、

「まぁ、お役所だから報酬はちゃんと払ってくれるとは・・・思うがねぇ・・・」

と苦笑する。
 依頼人は司祭の一人で、アウロラと面識はなかった。
 非常に面長な印象が強い司祭は、最初新しい信者の申し込みと勘違いしていたが、エディンから事情を聞くとぱっと喜色を露にした。

「あぁ、『掃除の依頼』の件できたのですね?」
「はい、ところで、『掃除』って・・・何をどう掃除するんですか?」
「きたるべき12月25日・・・その日は一体何の日です?」
「12月・・・25日?」

 ぽつりと後ろで思い当たったアレクが呟く。

「クリスマス・・・か・・・」
「そうです。クリスマスと言うのは、聖なる夜。悪しき者どもに邪魔されてはいけないので、その前日には、教会牧師総勢で、町中の悪しき者どもを退治しています」
「そんなことやってるの!?」

 びっくりしたミナスは、慌ててアウロラを振り返る。果たして、僧侶である彼女はにっこり笑って肯定していた。
 司祭は動揺もせず話を続ける。

「ここ、聖北教会リューン支部はリューンを元に、洞窟などの山までの悪霊を毎年見つけて退治しています。・・・聖なる夜の邪魔をさせないための、念のための行動、ってこところです」
「へええ・・・」

 ところが、今年に限ってそうそうない異常地帯を発見したのだと言う。
 リューンの裏通り・・・こないだ、ミナスが人違いで誘拐された辺りに『リッシェンベルグの屋敷』という館がある。そこは元貴族の屋敷で、なにやら事業の失敗だとか、幽霊が出たからだとかで空き家となっていたはずだ。
 そこで多量の悪霊を発見したと報告が来ているらしい。

「ちょくちょく行っておけばよかったのですが、そのような情報を聞かなかったので、教会も放って置いたのですよ。・・・迂闊でした」

 司祭の言う『掃除』とは、その悪霊たちを追い払うことであった。
 ジーニが、やっと合点がいったとこっくり頷いている。
 冒険者たちの合意を得られた司祭は、さくさくと支度を済ませて屋敷へ行こうと彼らを誘った。

「え!?今すぐ!?」
「はい。・・・来た以上、途中放棄は許しません」

 有無を言わさぬ司祭の態度にややたじろぎながらも、”金狼の牙”たちは彼をつれて問題の屋敷へと向かった。


2013/02/15 19:33 [edit]

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