Thu.

傍迷惑な盗賊団 3  

 いくつかの部屋を歩き回って(ついでに下っ端も片付けて)いたミナスは、今までとまったく様子の違う部屋へ迷い込んでしまった。
 チンピラたちが使っていたと思しき部屋は、乱雑に生活用具が置かれているだけだったのだが、ここはちゃんとした寝台やテーブルが並んでいる。
 そしてその中央に・・・。

「なんだ?用事があるならまずノックしてからと言ってるだろうが・・・!!」
「あ」
「てめえ、生きてやがったのか!?」

 盗賊団の副長がいた。どうやらここは彼の部屋らしい。
 彼は舌打ちすると長剣をかざして襲い掛かろうとしたが、それよりもスネグーロチカが副長に抱きつく方が早かった。

「ハァ・・・こんな子供にもやられるとはね・・・実力は部下とそう大差ないんじゃないの?」

 ため息をついたミナスは、彼が握っていた剣を取り上げた。気絶から回復しても、武器がなければ下手に立ち向かってこないだろう。
 机の上の本を取り上げてみる。

(・・・これは・・・剣術を習得するための練習が書いてある・・・まともに剣術を習おうとするなら、騎士団へ行けばよかったのに・・・)
(こっちは・・・・・・うわあ、細かい地図。きっと盗難用のルートや逃走用のルートを考えていたんだろうね)

 二冊を机に戻すと、ミナスはまだ行っていない通路の方へと歩き出した。
 やがて日の光が差し込むのが見えてくる。恐らく出口だろう・・・。
 チンピラが二人、唖然とした様子でミナスを見つめている。最初に武器を取り上げようとなだれ込んできたが、副長に促され下がった下っ端たちだ。

「――!!て、てめえ、生きてやがったのか!?」
(皆同じような台詞だな・・・そんなに強そうに見えないからかしら?)

 そりゃギルやアレクのように鍛えてるわけでも、エディンのように人より背が高いわけでもないけどと、ちょっと彼が落ち込んでいると。

「ふ、副長は一体!?・・・!てめえ、その剣は、副長の!?」
「・・・あぁ、名誉の戦利品か」
「く、くそ、こんな時に頭が来てくれたら・・・」

 チンピラの一人がそう台詞を口走った時である。

「迎えが少ねぇぞ!!野郎ども、一体どうした!?」
「お、お頭!!」
「へぇ・・・お兄さんがこの間抜けっぽい盗賊団のお頭か」
「あん?・・・誰だ、そいつは」

ScreenShot_20130212_001443488.png

 親父が言っていた通り、若い男だった。年だけなら、アウロラより少し上くらいというとこだろう。
 しかし、その茶色くすばしこい目の光は、最年長であるエディンと変わらぬ熟練さを示していた。
 ミナスが取り上げておいた副長の剣に気づき、怒りをあらわにした頭は、チンピラ二人を叱咤して武器を抜いた。

「て、てめぇ・・・許さねぇぞ!!行くぞ野郎ども!!」
「へ、へい!!お頭!!」
(・・・やれやれ、また戦闘か・・・)

 ミナスは≪森羅の杖≫を振り上げて叫んだ。

「出でよ、ナパイアス!!激流でこいつらを押し流して!」
『お安い御用さ』

 たちまち具現化したナパイアスの激流が、大の大人三人を凄まじい勢いで流していく。

ScreenShot_20130212_001820863.png

「グ・・・つ、強え・・・」
「駄目だ・・・敵わねぇ・・・」

 すぐリタイアしてしまった部下を見て、頭領が狼狽する。

「どうする?降参する?」
「するわけねぇだろ!!バカにすんな!」
「あ、そ」

 ミナスはむしろ面倒くさそうに答えた。彼はもう一度、ナパイアスに呼びかけて――そのまま戦闘は終了した。

「全く・・・傍迷惑な盗賊団だ」

 盗賊団のアジトが山腹にあったため、時間をかけてようよう宿まで帰還したミナスだったが、ひとつ重要な事を忘れていた。
 それは・・・。

「・・・ただいま~・・・」
「おい、ミナス!朝っぱらに出かけておいて夜に帰ってくるとは一体何事だ!!」
「勘弁してよ、親父さ~ん・・・朝に言ってた盗賊団に捕まって・・・」
「ハァ?」

 事情を話すが、中々信じてもらうまでに時間がかかった。

「・・・まぁいい・・・で?」
「え?」
「頼んだ食器類はどうした?」
「へ?食器・・・・・・あ!!」

ScreenShot_20130212_002351301.png

 ――この後、親父さんにたっぷりと説教されたのは言うまでもない。
 数日後、リューン騎士団の団員からあの傍迷惑な盗賊団を壊滅させた礼金(500sp)を受け取ったミナスだったが、この時はそんなこと知る由もなかった。

※収入500sp≪龍鱗鎧≫≪無銘の剣≫≪琥珀≫≪傷薬≫×5※

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■後書きまたは言い訳
39回目のお仕事は、オサールでござ~るさんのシナリオで傍迷惑な盗賊団です。さくっと楽しめる短編シナリオですが、文章量的にも時間的にも非常にやりやすかったです。ありがたや~。
このシナリオを選んだ理由としては・・・仲間が過保護で(ファレンの後遺症ですが)なかなかミナス一人で依頼を引き受けそうになかったことが挙げられます。そこで悩んでいたらこちらのオープニング。
親父さんから(脅されて)お使い頼まれたなら、依頼じゃないんだし行くよなあ、と。
なのに盗賊団に誘拐されてしまうのですから、よくよく彼は運がなかったのでしょう。(笑)
前回の宣言どおり、こちらの作品は月下美人とはクロスオーバーしておりませんが、この方がミナスの性格からするとスムーズだったので、親父さんのお使いに行く理由として使わせていただきました。

次回は、やっとフルメンバーによる冒険となります。装備もそこそこ揃ってきたので、お楽しみに。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/02/14 00:19 [edit]

category: 傍迷惑な盗賊団

tb: --   cm: 2

Thu.

傍迷惑な盗賊団 2  

「――んだ」
「――ま――――で――」
(・・・・・・・・・う・・・・・・・・・?)

 知らない耳障りな声が、何かを話している・・・・・・。
 重い頭を無理やり持ち上げて、ミナスは周りを見渡した。

「ここ・・・・・・は・・・・・・?」
(確か眠りの雲で眠らされて・・・)

 その時、隣にいるらしい男の怒鳴り声を聞いて、ミナスはびくりと体を震わせた。

「だから言っただろ!!命令をしっかりと聞けってよ!!」
「すいませんでした副長!!てっきり・・・」
「言い訳はいらねぇ!!頭も俺も耳にタコが出来るほど話したはずだ!!例の貴族の子供を連れてくるはずのを、何処の馬の骨かわからねぇ奴を連れてくるとはどういう了見だ!?」

ScreenShot_20130211_232735274.png

 おまけにありゃエルフじゃねぇか!!という声まで聞こえる。

(盗賊団・・・?・・・・・・なるほど、人間違いでさらわれたのか・・・・・・)

 はて、とミナスは思った。

(例の貴族の子供・・・もしかして、親父さんの言ってた、噂の盗賊団?)

 その間も怒鳴り声は続いており、下っ端らしい男が必死に謝っている様子がここまで伝わってくる。

「・・・・・・まぁいい、ここで説教したって始まらねえしな。・・・で、そいつは今どうしてる?」
「へい、軟禁用の場所に置いておきました」
「そうか。・・・武器は奪ったんだろうな?」

 ミナスは今、武器らしい武器というものは使っていない。
 駆け出しのときであれば、アウロラから借りていた護身用ナイフを使っていたのだが、今は≪森羅の杖≫という詠唱を助けるアイテムしかない。
 慌てて自分の手元を確認すると、≪森羅の杖≫も、そして防具である≪エア・ウォーカー≫も取られていなかった。
 下っ端らしい男が口篭ったのに、すかさず最初の声が早く奪いに行けと怒鳴りつける。

(!!まずい、こっちに来る!!)
『恐れるんじゃないよ、ミナス。いいからやっちまいな。悪者なんだろう?』

 ナパイアスはすっかり戦闘するつもりでいるらしい。

「それはまあ・・・そうなんだけども・・・」

 隠れるところもないし仕方ない、とミナスはナパイアスとスネグーロチカを召喚した。
 雪の娘の出現でふわりと雪の結晶が飛び散ったと同時に、無粋な足音がなだれ込んでくる。

「・・・・・・チッ・・・・・・もう起きていやがったか・・・」

 一番後ろにいる男は他の奴らと違い、何か威厳を感じる。
 恐らく、彼が先程副長と呼ばれた男だろう。

「・・・君たちが、僕を貴族の子供と間違えてこんなとんでもない場所につれてきてくれた人たちだね?」
「ハン、話が聞こえてたなら話は早えな。俺らは盗賊団でな、このアジトの場所を知られるわけにはいかねぇ。・・・死んでもらうぜ?」
「どうぞ?やれるもんならね」
「ふん、口が減らねぇな。・・・おい、お前ら。この失態を挽回するチャンスだぜ?」

 副長とやらは、どうやら戦闘に参加するつもりはないらしい。
 下っ端が息巻いて失態を取り戻すと宣言するのを鼻で笑い、3人ほど置いて奥へと下がっていく。

「へへ、悪く思うなよ。恨むなら、人違いでさらわれた自分の運のなさを恨むんだな」
「人違いどころか、エルフを人と間違えてさらってるんだから無能すぎるよ。おじさんたち、悪いけどさっさと終わらせるからね」
「あ?なめるなよ、こいつ!!」

 チンピラたちは、木の葉のような両刃のナイフを取り出して襲い掛かってきた。
 しかし――。

『ほうら、激流にぶつかる気分はどうだい?』
『ちょっと、ミナスにそんな汚いモン近づけないでよ!!』

 渓流のじゃじゃ馬と冷気の乙女が、縦横無尽に駆け巡る。

「げ!!なんだこのガキ!」
「魔法だ!こいつ、魔法使ってやがる・・・うわああ!」

 結局、かすり傷ひとつ負う事もなくミナスは戦闘を終わらせた。
 チンピラたちの服を漁ると、鍵はなかったが傷薬が3つ手に入った。
 ウンディーネの力の一端を使う事は出来るが、消耗し切った時には便利だろう。しばらく悩んだ末、ミナスはそれを持っていく事にした。

『さっさとこんな辛気臭い洞窟、抜け出そうよ~』
「うん、そうだね」

 スネグーロチカの主張に頷くと、ミナスはてこてこと自分の入れられていた部屋から抜け出した。
 
「うーん・・・・・・広いなあ」

 道は3つに分かれている。とりあえず迷子にならないようにと、ミナスは真っ直ぐ突き進んだ。

(・・・ここは・・・宝物庫、か・・・)

 木製や鉄製の宝箱が並んでいる空間である。
 ミナスは冒険者をやるくらいだから、宝物と聞くとわくわくしてしまう。
 スネグーロチカが行こうと急き立ててるのも聞かず、ついつい鉄製の箱のひとつに近づいてしまった。

「えーと、確かエディンはこうやってたっけ・・・・・・」

 鍵が掛かっているそれには、ミナスが分かる範囲では罠はない。
 たまたま持っていた針金の一つを鍵穴に差し込んで、エディンがダンジョンでよくやるように動かしていると、かちりと外れた音がした。

「わあ、鎧だ。ギルとかアレクなら着れるかな?」

ScreenShot_20130211_235512441.png

 ・・・・・・ミナスは気づいていないのだが、彼が取り出したのは龍の鱗を使用した鎧である。
 龍の鱗は軽量でありながら魔法に対する抵抗力や防御力が高いことで有名である。
 この鎧も、古いとはいえ例にもれずそこそこの防御を誇っているのだ。まったく、鍵もかけようものである。

「こっちのも気になるな~」

 鍵の掛かっていない箱を開けると、そちらには琥珀の塊が入っていた。
 綺麗なそれをアウロラへの土産にしようと箱から取り出した瞬間、不吉な音がミナスのいる部屋に響く。

(・・・!?・・・地鳴り・・・?)
『ミナス、危ないわ!早く逃げましょ!』

 スネグーロチカの警告に従い急いで宝物庫から去ると、ぐしゃりと鈍い音を立てて入口が崩落してしまった。

(・・・!!危なかった・・・)

 冷や汗を拭い、ミナスはしばらくきょろきょろと誰か来るか警戒していたが、駆けつける様子はなかった。

「なーんだ。ちぇ」
『相手がバカで助かったわね~』

 のんびりした雪娘の台詞にくすりと笑うと、ミナスはまた歩き出した。

2013/02/14 00:02 [edit]

category: 傍迷惑な盗賊団

tb: --   cm: 0

Thu.

傍迷惑な盗賊団 1  

「・・・・・・・・・オハヨ・・・・・・・・・」
「・・・おぅ。珍しいな、ミナスがこんな時間に起きてるとは」

 月下美人を見終わったギルとアレクが部屋へ戻ったその日。
 ミナスが目を覚ましたのは、聖職者であるアウロラですらまだ寝床の中にいる、暗い早朝のことだった。
 ≪狼の隠れ家≫の親父さんは、既にパンの仕込みに入っている。
 粘つくパン種との格闘を終え、親父さんはまだ目をこするミナスのために手早く紅茶の準備をした。

「何故か目が覚めちゃってね。なにか飲むものない?」
「そうか。まぁ、早起きはいいことだがな・・・ほらよ、紅茶だ」

ScreenShot_20130211_225647926.png

「え~、紅茶~?エール酒ないの、エール酒~」
「子供に酒なんか飲ませるわけにはいかん」
「別にいいじゃん、どうせいつかは飲むものだよ?」
「まったく、口が減らないな、お前は・・・・・・」

 ため息をついた親父さんは、ふと思いついたように言った。

「ソレを飲んだらお使いに行ってくれねぇか?」
「お使い?なんで?何処に?」
「昨日に来た酔っ払いが皿とコップを割りやがってな。その補充をしなきゃいかん」

 親父さんの口調からすると、その酔っ払いとは――ギルとアレクのことに違いなかった。
 がっくりとミナスが首を折る。

「・・・・・・ゴメンナサイ」
「うむ。リューンの雑貨屋に行ってきてくれ。代わりに紅茶は奢ってやるよ」

 親父さんはズボンのポケットから皿とコップの引換券を取り出し、ミナスへ渡した。

「ほら、コレが引換券だ。それじゃ、気をつけて来い。今話題の盗賊団が出没しているらしいからな」
「盗賊団?」
「あぁ。ものすごい若い者が頭になった盗賊団らしい。・・・まぁ、お前なら大丈夫だとは思うがな」

 並みの子供など及びもつかない度胸と魔力、そして今までの冒険による機転を持ったミナスである。親父さんも、念の為に言ったに過ぎなかった。

「そんなに凄い盗賊団なの?」
「ふむ・・・どうだろうなぁ・・・お前なら無事に帰ってこれるとは思うが・・・結構実力派な盗賊団らしいぞ」

 出来たばかりだから心配ないと思うが、気をつけるに越したことはない――親父さんらしい慎重な意見に、ミナスはこっくりと首を縦に振った。
 なんでも、街の噂によると、その盗賊団にはリューンのある貴族の子を誘拐する計画があるらしい。
 まだ朝が早すぎて寒いだろうから、と親父さんはミナスの細い首に娘さんが編んでくれたマフラーを巻いてくれた。

「それじゃ、交換しに行ってくるね!」

 ミナスは元気よく、朝靄漂うリューン市街へと飛び出した。

「・・・・・・・・・ん?」

 時間がはやいため、基本的には業者の者や、騎士団の人たちしか通る事はない。
 ・・・・・・・・・・・・はずだが・・・・・・・・・・・・。

ScreenShot_20130211_230931015.png

「う~ん、随分と人が多いなぁ。何かの店のセールか・・・重大事件が起こったのか・・・」

 そう、人が多いのである。・・・特に・・・雑貨屋周辺へ向かって。
 ミナスは首を傾げながら雑貨屋へ向かった。

「・・・・・・・・・!なるほどね、そういうことか・・・」

 ミナスの見ている先には雑貨屋の周りの商店街の看板があった。看板にはとても大きな文字でこう書いてある。

『在庫処分セール』

(こりゃ、雑貨屋まで歩いていくのは大変だなぁ。馬車で行くか・・・それとも、あまり行きたくないが路地裏のほうを歩いていくか・・・。)

 そこまで考えて、ミナスは早々に馬車のルートを破棄した。・・・引換券は持っているが、金がない。

「あまり気乗りしないが・・・路地裏を通って行くか」

 靄の中を泳ぐように、日の当たらない細い路地へ小さな人影が飛び込む。

「やっぱここは暗いなぁ・・・まぁ、下手なチンピラどもは敵じゃないけど」

 あまり人通りのない裏通りを手早く通り抜けて、雑貨屋へ向かった・・・・・・・・・・・・が。

「・・・・・・・・・?」

 がくり、と膝をつく。

「な、なんか・・・急に・・・眠く・・・」
『起きろ、起きるんだよ、ミナス!』

 影に潜んでついて来ている渓流の魔精・ナパイアスが、必死にミナスを叱咤している。

「ま、まだ起きて少ししか過ぎてないのに・・・」
『ここで寝るんじゃない!誰か悪意をもった奴が近くにいるよ!』

ScreenShot_20130211_231953918.png

「・・・!!こ、これは・・・もしかして・・・眠りの雲!?」

 ナパイアスの言葉と、冒険者としてのいくつかの経験でミナスは気づいた。
 この眠気は【眠りの雲】の呪文を浴びた状態である、と。

「ま・・・まず、い・・・」
(というか、またこのパターンかよ!)

 心中で自分に突っ込みを入れつつ、ミナスは意識を眠りの国へと引きずり込まれた。

2013/02/14 00:00 [edit]

category: 傍迷惑な盗賊団

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