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 締め切っていない雨戸から差し込む陽光のおかげで、薄暗がりになった部屋の隅に1人。
 人影の周りには、閉め切っているために掃除が行き届かず舞う埃が、ちらちらと光っている。
 ほっそりとした若木のような印象の体は、すっかり生気が抜けた幽鬼のようで、さすがにぎょっとした顔でそちらを見やったミカだったが、律動的な足取りで近づいてそっと屈み込んだ。

「シシリーさん」

 金髪の少女からの応えはない。

「あなたは、ここで仲間を見捨てるんですか?」

 細い手が、長剣を手放して数日経つ両手を握る。
 かつてこの手は力強くミカの手を握り返し、この少女は自分を叱咤しながら、タイムリミットの迫る列車の中をともに走り抜けた。
 その日に比べると、なんと頼りなくやせ細ってしまったことか――ミカは、ともすれば浮かびそうになる涙を必死に抑えた。
 触れると、ぴくりと少女の頬が動いたような気がした。
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2016/11/02 12:35 [edit]

category: 小話

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「……出てくる気配はありませんか?」
「ない、みたい」

 階段をとぼとぼ下りてきたアンジェは、いささか曖昧な表現で頭髪の薄い魔術師に応えた。
 彼女の腕には胡桃材で作られたお盆が抱えられており、そこにはまったく手をつけられた様子のない、具沢山のスープやパンなどが乗っていた。
 冷え切った食事を運んでいるホビット自身も、あまり顔色が優れているとは言えない。
 それでも、職業意識と現実主義の二つの観点から彼女が必要最低限のご飯を食べていることは、一緒に食事を取っているために知っている。

(この子よりも、問題は屋根裏の主ですね……)

 長らくパーティを組んだ仲間であるテアが、シシリー自身の見せてしまった隙によって吸血鬼に噛まれそうになったのを庇ってくれたこと。
 それによって人間から吸血鬼に変異したテアが、パーティを離脱する意志を明らかにしたこと。
 恐らくはシシリーと男女の淡い情を交わし合ったのであろうテーゼンが、老婆に巻き込まれる形で冒険者を辞め、黄泉路の案内人としての役割を果たそうと別れを告げたこと。
 どれ一つを取ってみても、あの生真面目な聖北教徒の「私のせいで……」という自責の念を大いに刺激してしまうのには充分だったろう。
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2016/11/02 12:08 [edit]

category: 小話

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 霧に覆われた商業都市レンドルにおける事件を解決し、リューンへと戻ってきた旗を掲げる爪を出迎えたのは、≪狼の隠れ家≫の亭主でも給仕のリジーでもなく、後輩冒険者に当たるミカ・ノーストリリアとナイトであった。
 ミカは赤毛に覆われた顔を喜色で満面にし、まるで主人の帰りを待っていた子犬のような純朴さを声に込めて、

「おかえりなさい!」

と呼びかけた。
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2016/07/01 11:50 [edit]

category: 小話

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Thu.

旗を掲げる爪~ある悪魔の夢  

 ここはどこだろう。
 テーゼンはゆるりと視線を動かした。
 どことなく、見覚えがある。
 独特の建築様式に、真っ白な大理石を用いて造られた天使の像。
 信者たちのために一定の間隔を置いて置かれた、座り心地の悪そうな木の椅子。
 そして、祈りのための祭壇と、聖北の使徒が崇める十字のシンボル。
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2016/06/09 11:59 [edit]

category: 小話

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 それは春風がリューンの市街を吹き抜ける、気持ちのいい午後のことだった。

「ばあ様は何を書いてるのさ?」

 他の仲間達が宿を留守にしている中、テーゼンはひょいとテアの書き綴っている楽譜を覗き込んだ。
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2016/04/15 13:58 [edit]

category: 小話

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