Wed.

奇塊 3  

 ”金狼の牙”たちはアウロラ・ジーニ・ミナスの補助魔法をかけ、召喚魔法で支援を呼んでから突っ込むことにした。
 ダスキンの言うには、ビボルダーの警戒しなければならない攻撃は、触手の先の目から放たれる睡眠光線と石化光線らしい。
 動かなくなったところをすかさず石化される、という最悪のコンボから脱出するには、何としても【血清の法】を習得しているアウロラに生きていて貰わねばならない。

「前の冒険で、銀の鍵の本を手に入れてて良かったですね」
「いいか、危ないと思ったらそれをかざすんだぞ!」
「俺達の命はお前に預けた!」
「・・・エディン、ギル。すごい怖いプレッシャー与えないでくださいよ・・・・・・」

 はあーっと深くため息を吐いたアウロラは、この世ならざるところから持ち帰った古い本の表紙を撫ぜた。
 鍵の掛かっているこの本は所有するだけで回避力が上がり、かざせば防御力と抵抗力まで上がる。

「よし、散会しろ!」

 ギルの合図で”金狼の牙”たちはそれぞれの間合いへと散会する。
 最初のほうの戦いで、早速魔法に少し弱いエディンが麻痺させられたものの・・・。

「【破邪の暴風】!!」

 神聖な力を宿し白く輝く斧が、小さな台風のようにビボルダーの身体へ傷を刻む。
 眠りにやられたジーニが膝を突いたものの、彼女の張っていた【風刃の纏い】が更にその傷を大きく広げる。
 その痛みに激昂したのか、ビボルダーから続けて二回も石化光線が放たれ、なんとエディンが完全石化・頼みの綱のアウロラまで麻痺してしまった。全滅の二文字がダスキンの脳裏にちらついた。
 ところが、ファハンの攻撃に紛れて投げたミナスの護身用ナイフが、一際大きなビボルダーの目に突き刺さる!
 
「グオオオオオ!!」

 怪物の断末魔が下水道にこだまする!ゆっくりと怪物の巨大な瞳が閉じて行く・・・。

ScreenShot_20130108_102108750.png

「・・・死にました?でも、なんだか気の毒ですね」
「気の毒なのはこっちだろ、ダスキン!ああ、アウロラとエディンが~!」
「ギル、落ち着いて。麻痺の緩和なら僕が出来るから・・・」

 ふたたび動き出した冒険者たちに、ダスキンが「この死体片付けるの手伝ってくださいよ!」と呼ばわった。

「あ、それと気を付けて下さいね。なんたってこいつの向こうには何万トンという汚水が溜まってるはずだからね。気をつけないと・・・」

 恐怖から解放されたダスキンの舌がまたしても高速回転を始めていたが、「ん?」と言って止まった。
 それと同時に、怪物の身体が風船のように破裂した。
 その向こうに見えるのは、天井まで満々と溜まった緑色に輝く汚水の壁・・・!!

「嘘ぉーっ!!な・・・なんつーふざけた生物っ!?」

 リーダーの叫びも、

「び、び、び、ビンゴぉぉぉっ!!」

 依頼者の叫びも、

(どばっしゃああああああ!)

 次の瞬間、崩れた水の壁の轟音に飲み込まれていった・・・。
 
「げへっ、げへっ・・・皆さ~ん、無事れすかぁ?」
「けほっ、けほっ・・・何とか・・・ね。けほっ・・・」

 ダスキンに応えたアレクが、流されながらがっちり抱えていたエディンの石像をそっと階段に置いた。
 ギルも麻痺しているアウロラを段に横たえている。
 【水淑女の守】をミナスが何度かアウロラにかけると、彼女は咳き込みながら起き上がった。
 呼吸を整え終わると、【血清の法】を使って仲間の石化を解除する。

「・・・・・・・・・っくはー!!!やべえ、今度は死んだと思った!」
「本当、危なかったですね・・・よく生きてたものです」
「ミナスのおかげよぉ。アレにトドメさしたのもこの子だもの」

 ”金狼の牙”たちは揃って汚れた水でくしゃくしゃになったミナスの頭を撫でて誉めた。
 汚水が止まっていた原因も分かり排除したが、最後にちゃんと確認だけしようと、疲れきったダスキンを慰めつつビボルダーを見つけた場所まで進んだ。
 ・・・水路の先は金属製の格子戸になっている。向こうから勢いよく汚水が流れてきている・・・。

「この格子戸の向こうが苦情のあった区画に続いているんです。それにしても・・・酷い荒れようだなぁ」
「・・・ん?ここは?」

 エディンは格子戸近くの壁が崩れて大きな穴が空いているのを発見した。
 声によって穴に気づいたダスキンも、その穴の近くまで寄って中腰になる。

「うわぁ~、こりゃ酷い。地震か何かで崩れたのかな・・・ん?穴の向こう、なんかあるぞ?」
「どれどれ?お、結構広・・・い・・・?」
「これは・・・旧文明期の遺跡だ!」

ScreenShot_20130108_104534546.png

 穴の向こうは下水道のとは少し違う石材でできた小部屋だった。
 灰色の石櫃が部屋の真ん中に設置されている。喉の奥で唸り声をあげたエディンが指を這わせて調べると・・・。

「罠が仕掛けられている。不用意に開けると罠が発動する仕掛けだ」
「外せそうか?」
「ここまで来て、やらないってのはないだろ。ちょっと待て・・・」

 エディンの繊細な指先が蓋の継ぎ目の辺りをさまよっていたが、カチリと小さな音がした。

「よし、開いた!」

 石櫃の中に入っていたのは一冊の本だ。他には何も無い・・・。
 本を渡されたダスキンは、中身を確認して歓声とも喚声ともつかぬ声を上げた。

「まさか、これ・・・いや、間違いない!これ、この下水道の地図だ!」

 最下層まで図面が載っているその本を解読すれば、念願の魔法装置の在処も分かるかも・・・と、ダスキンの興奮は最高潮に達した。

「こ、この本は私が清掃局の所員として管理させて頂きます」

 下水道の図面は惜しいが、今回の探索で色んなマジックアイテムを手に入れているし、ダスキンの本を捲る時の目の色ははっきりいってやばかった。冒険者達は大人しく帰ることにした。
 数十分後。
 宿に戻った”金狼の牙”たちは汚水まみれのため親父さんに入店を禁止され、バケツに汲んだ水である程度清めるまで、店の前に突っ立っていたという・・・・・・。

※収入1200sp、≪鋼鉄の箱≫≪魔法の護符≫≪癒しの錫杖≫≪光弾の書≫×3入手※

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■後書きまたは言い訳
23回目のお仕事は、GroupAskさんの公式シナリオ・奇塊でした。公式シナリオの中でもかなりコミカルで、気分を明るくしたい時にやりたいシナリオなのですが・・・一撃必殺(睡眠と石化のコンボ)があるので、ビボルダー相手の戦闘はどきどきです。(笑)。また、Askシナリオ最強のアイテムを手に入れるチャンスでもあります。これがないとこの後がね・・・・・・。
魔力の護符は、適正がエディンに合わず売ってしまいました。どうもエディン、大胆さに欠けるようでして。狡猾で好戦的だから、罠外しと戦闘で頼りになるんだけどなー。(笑)

そうそう、このシナリオではビボルダー撃退後にそのまま帰ってクリアも可能です。しかし、そこで勇気を出して戦いの現場に戻れば今回のリプレイみたいに地図発見できますので・・・もしご存じない方がいらっしゃいましたら、ぜひお試しください。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/01/16 09:11 [edit]

category: 奇塊

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Wed.

奇塊 2  

 いざ!と仕事に取り掛かった冒険者たちは・・・・・・。

「待って、何かいます・・・!」
「・・・蛇だっ!ほらそこ、水の中・・・」
「【召雷弾】!」
「【野人召喚】!」

「きゃあ、鼠!」
「【花散里】!」

 出てくる厄介なモンスターをあっという間に駆逐していく。
 その上、今日は誰かがものすごいラッキーなのか、汚水をざくざく歩いている途中で色んな宝物にぶつかったのだ。
 ≪光弾の書≫≪魔法の護符≫≪癒しの錫杖≫・・・・・・その種類の豊富さは最初こそ依頼人をして、「どっかの間抜けな学者さんが間違ってトイレに落としたんじゃないかなぁ?」だの、「君たち無茶苦茶ついてるなぁ。何かこつがあるのかい?」等としごく暢気に笑っていたのだが、さすがに呪文書が二つに錫杖までとなると、

「・・・いくら何でもおかしくないか!?ここは魔術師学連の宝物庫じゃないんだぞっ!?」

と叫び始めた。

「まったくですね・・・・・・ちゃんと使えそうなものばかり」
「それとも、学連の校長がとち来るって宝物庫の中身を全部トイレに放り込んだとでも言うのか!?」

ScreenShot_20130108_093112890.png

「もしそうなら、今から校長の頭を杖でぶっ叩いてくる必要があるわよ。ほら、それより先に行くわよ」

 やがて彼らは、なにやらぶよんぶよんとした黒い物体の目の前に出た。

「・・・?なんだ、ありゃ・・・?」

 ものすごく不審そうなダスキンの疑問に答える声は、ない。
 巨大な黒いそれは、まるで四角い箱にぎゅうぎゅうに押し込められたボールのようだ。完全にこの先の水路を塞いでいる・・・。

「どうやら、これが下水の逆流の元凶みたいだけど・・・なんなんだ、これ?」
「どれ」

 怖いもの知らずというか、杖の先で思い切りジーニが叩いてみた。

「・・・結構、弾力があるわね」

 ミナスは小首をかしげた。――これに生命力の精霊が働いている様子が感じ取れない・・・ということは、これはゴミの塊のようなものなのか?
 他の面子に急かされて、とりあえずアレクが≪黙示録の剣≫で思い切り斬りつけてみると・・・。

「グオオオオオン!」
「な、なんじゃこりゃあっ!!」

 ダスキンの叫びが響き渡る。黒い球体に触手、触手の先に目を生やしたそれ。
 正体はわからないながらもこれは危険な存在だと悟った冒険者達は一目散に駆け出した!

「撤退!俺とアレクが殿をやる、いけーっ!」

 エディンを先頭に依頼人の手を引いたアウロラ、ジーニとミナスが続き、アレクとギルが最後に走る。
 T字路の辺りまで逃げ込むと、

「はぁ、はぁ・・・ここまで、来れば、大丈夫・・・」

とダスキンが息も切れ切れに言った。

「ぜぇ、ぜぇ・・・いったい何なんだ、あれは!?」

ScreenShot_20130108_095324609.png

 同じく息を切らせているギルが、誰にともなく疑問を呈する。ところが、これにははたして依頼人から答えがあった。

「・・・ビボルダーですよ、多分・・・」
「ビヤホールだぁ?」
「ビボルダーっ!以前、本で読んだ事があります。魔法生物・・・生物兵器ですよ」

 この依頼人、驚くべきことにアウロラに手を引かれながら、きちんと正体を見極めていたらしい。
 魔法生物の一部には正常な生命の精霊力は働かない。ミナスの【精霊感知】にも引っかかるはずはなかった。

「でも、変ですね・・・ビボルダーは古代遺跡の番人として使用されたって話だけど・・・」
「何をとち狂って下水道なんかを守ってんの、あの魔法生物・・・」

 ジーニが杖に縋るようにして呻いた。
 その呻きに追従するように、ビボルダーの暴れる音が聞こえてくる。

「お~お、騒いでる、騒いでる・・・それにしても・・・なぜ追っかけてこないんだ?」

 エディンが言うと、眼鏡の位置をやっとのことで直したダスキンが指を一本立てて応じた。

「もしかして・・・身体がつっかえて動けないんじゃ・・・?」
「・・・間抜けすぎる」←全員

2013/01/16 08:59 [edit]

category: 奇塊

tb: --   cm: 0

Wed.

奇塊 1  

 エディンが手に取った依頼書には、こうあった。

”リューンの国営施設で事件が発生。本役所では、これを解決してくれる生存術に長けた冒険者を募集しています。我こそはと思う方は下記の所までご連絡ください。”

 最後はリューン清掃局調査班、ダスキン・モップと綴られている。

「親父さん、この貼り紙・・・」

と呼びかけた時。

ScreenShot_20130108_085234718.png

「ビンゴ!はいはい!それ僕ですっ!」
「はぁ?」

 カウンターに座っていた若い男が突然、話に割り込んできた。ひょろりとした身体つきの見るからに頼りない青年だ・・・。

「いやぁ、今日はついてるなぁ。貼り紙出した途端に大当たりだ」
「ちょっと待て、どなたさん?」
「あ、ごめん、自己紹介が遅れたね。僕はダスキン・モップ、リューンの清掃局の者です」
「なるほど、この依頼書を出した本人か」

 エディンと青年が話しているのを見つけた仲間たちが、手にパンや杯を持ったまま近づいてくる。
 それに目を留めた依頼者の青年は、ここぞとばかりにまた舌を回転させ始めた。

「いやぁ、それにしても冒険者って職業はいいねぇ。自由で気まま、うらやましい限りだ。お給金、どのくらい貰ってるの?」
「いいから早く仕事の話を聞かせてくれ」

 エディンはさほど短気ではないはずなのだが、ダスキンの長広舌にはさすがに辟易したらしく先を促した。

「おっと、そうだった。いやぁ、いつもこんな調子なんだ、僕って奴は」

 ははははは・・・と笑いを収めて、彼は再び口を開いた。

「実はちょっと汚い話なんだけどね。君たちに頼みたいのは下水道の大掃除なんだ」
「下水道の掃除ぃ~!?」

 素っ頓狂な声を上げたアレクのみならず、全員があからさまに顔をしかめる。

「そんなに嫌な顔されると困るんだけど・・・でも、汚い分、給金ははずもう。1200spでどうかな?」
「う!結構高いわね・・・」
「・・・僕の精霊魔法に、こないだちょっとお金かけちゃったよね・・・」←写術都市スカラで【黄金色の風】購入
「ま、あれはあれで必要経費だからいいんだがな」

 ギルはうーんと腕組みをした。あまり歓迎はしたくない依頼だが、1200枚の銀貨は魅力的である。
 しばらく話し合っていたものの、結局受けようという話になった。

「そうこなくちゃね。それじゃあ、早速行きましょうか」

 彼らはリューン市内へと歩き始めた。

「あぁ、そうそう・・・。仕事上、必要な話をしておこう」

 歩きながらでいいから聞いておいてくれと言われ、”金狼の牙”たちは耳を傾ける。
 青年の話はこうだ。

 リューンは西方諸国中、他に例を見ない下水施設の完備された街・・・街の地下には下水道が縦横無尽に走り、その複雑さと広さは迷宮と呼ぶに相応しい。
 あまりにも複雑すぎるので、未だに正確な地図もできていないくらいである。
 清掃局局員も年に何人か行方不明になるほどだという。

「だから、安全のために生存術に優れた冒険者を経費で雇うことが認められているんだ」
「そういえば・・・たまに下水道関連の依頼って見るかも」
「下水道のねずみ退治とか、こないだ他の宿の奴がやってたな」
「とまぁ、ここまでは常識なんだけどね、この下水道、実は待ちの創設以前からあったって事は知ってる?」
「街の創設以前から・・・?まさか・・・」

ScreenShot_20130108_090858937.png

 アウロラが何かに思い当たったらしい顔になる。ダスキンはそれを見てまた「ビンゴ!」と指を立てた。

「そうなんだ。リューンは旧文明の都市の遺跡を利用して建設された都市なんだ」
「確か司祭様から街の歴史について教わった時、そんな話がありましたね・・・」
「つまり、あの下水道は旧文明の施設をそのまま使用しているんだ。その奥深くでは未だに旧文明の装置が働いていると言われている・・・」
「私たちの足元に、ですか」

 アウロラは自分の足元を見た。そこは何の変哲も無い、いつもの石畳である。

「でも、その装置を見た者はいない。僕はその古代の英知を一目でいい、見てみたい。清掃局に勤めているのもそのためなんだ」

 ダスキンが拳を振り回して力説していると、彼の足が市内にところどころあるマンホールの一つに止まった。

「あ、この辺りだ・・・えっとJの8番、Jの8番・・・あったこれだ」

 彼はわざとらしい咳払いをすると、ついて来てくれとまず自分から地下に続く階段を降りていった。
 カンテラの灯りに石づくりの通路が照らし出される。
 階段を一番下まで降りると靴の裏に水の感触があった。よどんだ水が流れている・・・思ったほど臭くない。
 ひんやりとした空気が肌を撫でていく・・・。

「ところで、掃除道具は?」

 今になって気づいたミナスがダスキンに訊くが、彼は「あ」と声を上げた。

「肝心な事を話し忘れてた。掃除って言ってもタワシやモップで床掃除するわけじゃないんだ」
「あれ、そうなの?」
「実はこの北の区画で下水が逆流してるって苦情があってね。どうやら、この区画の何処かで、下水が詰まっているらしい」

 ダスキンは通路を流れる汚水を指差して言った。

「ほら、本来なら膝下まであるはずの汚水がチョロチョロとしか流れていない。この区画に原因があるのは間違いないね」
「ほほう、なるほど」
「で、君たちには下水を詰まらせている元凶の発見と除去を手伝ってもらいたいんだ」
「発見と除去ですか・・・・・・」
「俺たちがどうにかできる範囲であることを祈っておいてくれ、アウロラ」

 アレクやアウロラの言葉に頷くと依頼人はさらに言い募った。

「それともう一つ、下水道の中には鼠やら蛇やら、やっかいな連中が棲みついている事が多いからね。襲われた時にはよろしく頼むよ」
「なるほどね・・・そういう仕事なら専門分野だわ」
「それじゃ、そろそろ取り掛かりましょうか」

2013/01/16 08:55 [edit]

category: 奇塊

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