Sun.

解放祭パランティア 3  

 広場に戻ると、妙な黒髪の男から何故少年を逃がしたのかと尋ねられたりしたが、それに適当に答えた”金狼の牙”たちは、続けて足を書物区の方へ向けた。

 今度はギルが先頭に立って、皆を案内する。
 肩車を終了させられたミナスは、アウロラとアレクに両側から手を繋いでもらい、たちまち機嫌を直していた。
 そうやって見て回っていると、人ごみの中から武具区で会った若者の戦士が現われた。

「お、よお!はは、どうやら俺たちは気が合うらしいな」

 男は嬉しそうに近づいてくる。
 元々陽気な性格なのか、もうこちらに打ち解けているようだった。
 アウロラとジーニが前に出ていたので、自然、この二人が彼に話しかける。

「どうです?調子は」
「駄目さ。全く良いナイフがない。実戦で使えなきゃ喜んで貰えないだろうしなあ・・・」
「誰にプレゼントするの?」
「へ、へへ!そ、それは内緒だ!」
「これは、好きな女の子だな・・・」

 からかうようなジーニの声音に、たちまち男の顔が真っ赤に染まった。

「ば・・・馬鹿!へ、変な想像するなよ!?俺はただ、仲間に喜んで貰おうと思って・・・」

 ひとしきり彼をからかい終わると、男は気を取り直してまたナイフ探しを始めたので、冒険者たちも呪文書に戻った。

「こっちのは、風を障壁にする魔法ね。珍しいのがあるわねえ」
「・・・・・・この呪文は、ちょっと役に立たなそうだな」
「ていうか、多分発動しないわよ」

 ”金狼の牙”たちは、ジーニやエディンが鑑定できるから良いものの、一般の客にはやはり魔術書はよく分からない品のようで、

「うわ、凄い難しい本!凄いかっこいい飾りも付いてる。いいなあ・・・。だれか、このにわとりと交換してくれないかな~」

等と言うとんでもない声も聞こえてくる。

ScreenShot_20121231_002354671.png

「まあまあ掘り出し物の呪文だったわねー」

 ジーニの喜ぶ声を聞きながら、一行はそのまま真っ直ぐ道具区まで向かった。

「あ、残念、髪飾りはないのね。でも、こっちの薬はいいものだわ」
「なんか変な十字架あるんだけど・・・・・・俺、気に入ったから買っていい?」
「お、おい。ジーニ、ギル!お前ら、俺の鑑定前に何勝手に金出してんの!?」
「あーら、あたしだって一応塔の鑑定人だったのよ?あんた忘れてない?」

 ジーニの手が本物に間違いないらしい魔法薬や金鉱石を選び出し、定価の半分以下でゲットする。
 ・・・・・・実はその横で、ギルがあからさまにガラス製らしい赤い石などをこっそり購入しているのだが。

「あら。素敵ですね」

 アウロラの視線が、素人目にもなかなかのものと分かるネックレスに集中する。
 話し好きの女店主が言うには、「身につけるだけで魅力的になれる首飾り」との事である。

「欲しいの?そうね、意外と掘り出し物だと思うわよ。買っちゃいなさいな」
「いいんですか?じゃあ・・・・・・」
(実は、多分それ魔法の品だけどね)

 それが店主に知れたら値を吊り上げられるし、アウロラが知ったら多めに代金を払おうとするだろう。
 ジーニはあえて鑑定結果を黙っていた。
 そんな一行に、見覚えのある人影が近づき呼び止める。
 またもや例の若い戦士だった。

「ははは!よっぽど俺たちは同じ趣味をしているらしいな!」
「こうまで偶然が続くと、ちょっとした笑い話だな」
「ははは、全くだ!ところでどうだった、今日は?」
「知りたいなら20sp・・・」
「金を取るのかよ!」

 ジーニの情報料請求に、男は思わず突っ込んだ。
 ひとしきり笑い声をあげると、一行は待合室に戻った。
 すると、そこは情報屋の言うとおり、物々交換を待っていたらしい人間でごった返している。

「おい、君達!その赤い宝石をわしの鉱石と取り替えてくれんかね?」
「もし・・・よろしいですか?その【曙光の法】と私の≪真実の水晶球≫を交換して頂きたいのですが・・・」

等など、色んな人間に声をかけられる。
 その中で、ふと青いローブを着た老人に恭しく頭を下げられ、ギルはどぎまぎした。
 老人は、妙な形の十字架を見ながらこちらに近づいてくる。

「これはこれは・・・。こんなところで同志の方に会うとは思いませんでしたな」
「ど、同志?」

 何の事か分からずに返事出来ずにいると、その老人は薄く笑った。

「君達、それは君達が持っていても何の役にも立たないものです。然るべき所に返してくれるならこの魔法のナイフと交換しましょう」

 老人の取り出したナイフは、紫色に光る、見とれてしまいそうな品だ。
 魔法の品らしい事は、見てすぐ取れる。

「どうです?その十字架とナイフを交換してくれませんか?」

 一応、自分が買ったものだからと未練を見せるギルに、「ねえねえ」とミナスが話しかけた。

「あのナイフあげたら、戦士さん、プレゼントのこと解決するんじゃない?」
「あ、そっか!よし、じゃあ交換しようぜおっさん!」
「お、おっさん・・・・・・」

 呆れたような顔になったが、老人は咳払いしてまた顔を引き締める。

「危ないところでしたね。これを使っていれば酷い目に・・・遭って・・・・・・」

 老人が最後に忠告しようとすると、ギルとミナスは本当の兄弟のように連れ立って、知り合いになったばかりの赤髪の戦士のところへ走り去った後だった。

「・・・・・・ふん!」

 老人は呪文を唱えると、素早く人ごみから消えていった。
 老人から受け取ったナイフは、マンドラゴラという鎮静剤に変わり、次には空中浮遊できるマジックアイテムと交換になった。

「順調順調!いやー、物々交換って楽しいなあ!」
「これ、すっごくいい奴じゃない?ね、僕つけてみていいかな?」
「おう!どれ、俺が嵌めてやる」

 フェニックスの装飾がされた美しい腕輪は、ミナスのまだ未発達な手首にもすんなりと合うように縮み、鎮静剤を求めた男性の言うとおり、コマンドワードで飛行ができた。

「うわー!見て見て、アウロラ!」
「え、ええ!?ミナスどうしたんですか、それ!」
「・・・・・・ありゃあ、エア・ウォーカーじゃないの。まさかホントにあるとはねえ」
「ジーニは知って・・・?」
「あれは所有するだけで回避力が上がる、ありがたーい防具よ。もう一つのコマンドワード唱えれば、防御力も大幅に上がってくれるスグレモノ」
「すごい、良いものなんですねえ・・・・・・」

 これはこれ以上交換しないほうが良い、と意見が落ち着いた。
 何しろ、飛行の呪文は比較的上級の呪文なのだが、これなら好きなだけ魔法の翼が出せるのだ。
 結果に満足した一行は、他に何かいい物々交換の相手はいないかとうろうろした。
 その後は、≪真実の水晶球≫という暴露効果のマジックアイテムや、ギルの役に立たないガラス製の石を金鉱石と交換したにとどまったが、かなり満足して狼の隠れ家への帰路についた。

「おかえりなさい!ねえ、髪飾りは買ってきてくれた?」
「それが・・・・・・」

ScreenShot_20121230_235224906.png

 帰って来るなり娘さんにそう聞かれ、アウロラは言いよどんだ。

「・・・売ってなくて・・・」
「そっか・・・ならしょうがないわね。今度自分で買いに行こっと」

 娘さんの期待を裏切るのが後ろめたかったジーニが、ほっと安堵の息をつく。

「な、なんだ・・・。案ずるより産むが易し・・・は!」

 ふと見ると娘は隣でシャドーボクシングをしている。
 それを見た冒険者たちは、みな一様に青ざめたのであった・・・。

※【風刃の纏い】≪ミューズの涙≫≪真実の水晶球≫≪黙示録の剣≫≪魔法薬≫≪金鉱石≫≪白銀の麗刀≫≪エア・ウォーカー≫入手※

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■後書きまたは言い訳
19回目のお仕事は、ニルヴァーナさんの解放祭パランティア・・・別名バザーでお宝ざっくざく回です。
ニルヴァーナは、幸運の都フォーチュン=ベルなどの店シナリオでお馴染みのDjinnさんと、現在は凍結(再開待ってます!)されてますが『風を纏う者』リプレイ作者のY2つさんが組まれたチームです。

今回は、まずアレクに魔剣を持たせるのが目的でした。
Djinnさんの魔剣工房での購入も考えたのですが、多くのリプレイ作者さんが利用されてることもあり、ちょっと変化球気味な装備が欲しいな・・・と店用フォルダをひっくり返していたら。あったじゃないですか~、このシナリオが。
安売りと掘り出し物と別々のチャンスがあったのですが、≪黙示録の剣(アポカリプス・ソード)≫は掘り出し物なので、自然、三つの地区を回る順番も掘り出し物メインになりました。”金狼の牙”的にはこれで正解だと思います。
呪文の【風刃の纏い】は防御の薄くて仕方ないジーニにぴったりだし、≪エア・ウォーカー≫は飛行や浮遊のキーコードがついた防具なので、欲しい隙間を埋めてくれるこのありがたさ・・・思わず拝みそう。

さて、娘さんから逃亡した(笑)”金狼の牙”一行は、リューンから逃げ出します。そこでまた、以前の因縁と出会ったりするのですが・・・果たして彼らは無事生還できるのでしょうか?

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。


2013/01/06 03:40 [edit]

category: 解放祭パランティア

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Sun.

解放祭パランティア 2  

「目に付いた物で使えそうなのは・・・」

 仲間が迷子にならないよう、気を配りながら歩くエディンが視線を走らせる。
 とある露店の固まった所を指差し、一行はどれどれと覗き込んだ。
 アレクは三振りある中で、一番安い値の付けられている剣が妙に気になった。
 店主のおばちゃんに声をかけ、鞘から抜いて刃を確認させて貰う。

「デザインは今のものじゃないな。全く傷がないが・・・」
「そんじょそこらにはない業物だよ!新品と一緒にしないどくれ」

 肩をすくめたアレクの目に、ふと柄にぎっしりと彫られた文字が映った。

「・・・・・・ルーン文字に似てる。ア・・・ポカ・・・リプス?」
「なんだアレク、それが欲しいのか?」

 じっくり吟味してるアレクの横で、エディンが別の剣を手にとって調べている。
 彼の手にあるのは、繊細な装飾が施された見事な細剣で切れ味は良さそうに見える。

「確かに古代に作られたものらしい」

 店主の主張に頷きながら、エディンがギルに声をかけて、アレクと自分の調べた剣を購入した。

「あ、おい。いいのか?」
「お前は若いが、見る目は確かだと思うよ。俺が鑑定するまでもないだろう。それに・・・」

と言って、エディンがクスリと笑った。

「アレク、すごいもの欲しそうな目でこの剣を見てたからな。まるで一目惚れした女見てるみてえだった」
「・・・・・・!そ、そんな目はしてない!」
「あー、ハイハイ。じゃあ、そういうことにしてやるよ」

 最後の真っ白な剣は、一瞥もしない。アレが全く実用に耐えることもできない剣であると、持つまでもなく二人には分かっていたのだ。
 そのほかに、ギルのメインウェポンである斧も出品されていたのだが、それは首切り用の斧と分かり、ギルは残念そうにため息をついてから諦めた。
 途中、赤い髪の若い戦士から、「どうやら、同業者のようだな。どうだい?首尾は」と問われ、

「ぼちぼちだな。得ばかりとはいかないみたいだ」

とアレクが応える。

「そうか・・・。やっぱり一筋縄には行かないな。こっちは駄目さ。狙ってた短剣にろくなのが無くてな・・・」
「まだまだ、これからじゃないか。諦めずに探せばきっと見つかるよ」
「そうだな、ありがとよ!そっちも良い物が見つかるといいな」

ScreenShot_20121230_222729953.png

 エディンの励ましに顔を綻ばせた戦士と別れ、冒険者たちが緑のローブを着た老婆に話しかけようとした時、老婆は売り場の方をさっと指さした。
 見ると、年は10歳くらいの男の子が店の品物を持って逃げようとしている。

「あっ!」

 小さく声を上げたアウロラの横を、素早く少年がすり抜けた。

「へへっ!のろま!お前なんかに捕まるかよ!」
「待てコラ、クソガキ!」

 少年は捕らえようとする店主の手をかわし、今にも逃げ出そうとしている。
 しかし、少年が逃げ出そうとするより一瞬早く、冒険者たちの手が少年の体を捕らえた。

「クソッ・・・!!」
「ほいほい。手の中のやつ離せよ。・・・ほら、おっさん」

 エディンが襟を掴んだ少年から品物を取り戻し、店主に放り投げた。

「ああ・・・ありがてえ!」
「品物は返ったんだから、この子のことはこちらに任せていただけますか?」
「あ?そいつぁ構わないが・・・・・・」
「おい、アウロラ。ここじゃ商売の邪魔しちまう、こっちだ」

 冒険者たちは露店と露店の間にあるスペースに少年を引っ張ってきた。

「おい坊主、何で泥棒なんかしたんだ?」

 ギルが何の斟酌も無く、真っ直ぐ相手を見て尋ねた。
 少年は、気まずそうに目を伏せて言った。

「関係ねえだろ。余計なことしやがって!」

 むっとして口を引き結んだ幼馴染に代わり、アレクが発言した。

「余計なことじゃないぞ。お前が道に外れるのを止めてやったんだ」
「悪いこと・・・。道に外れる・・・・・・」

 少年の顔は恐ろしいものでも見たように青ざめたが、またすぐに元の表情に戻った。
 おやおや、とエディンは思った。
 おそらく、この子どもは生粋のスラム育ちではない。それにしては、まだ罪悪感が根を張りすぎている。
 何かの弾みで親が破産したか、捨てられたか――。

(ま、いずれにしても、俺の目の前でモグリに仕事はさせられねえが)
「お・・・俺は道から外れちまっても良いんだ!俺が神様に嫌われるのはどうってことないんだ!」

 これは何か事情があると察した冒険者たちは、互いに頷き合うと、少年の事情を最後まで聞いてみることにした。
 ギルの肩車から降りたミナスが、自分とさほど背丈の変わらない相手を説得する。

ScreenShot_20121230_224049781.png

「怖がらなくて良いよ。官憲には話さない。約束するよ。だから、事情を教えて?悪いようにはしないからさ」

 少年は近い年頃のミナスを見て安心したのか、罪の意識で緊張した顔をいくらか和らげ、ぽつりぽつりと事情を話し始めた。
 それによると父親は死去、母親は働くところが無く、少年と少年の妹はいつも空腹を抱えて過ごしているらしい。

「エミリはまだ何も分からないし、お腹すかせてると可哀相なんだ!」

 エミリとは、年の離れた彼の妹らしい。

「だから盗ったものをご飯に換えて、エミリにお腹一杯食べさせてやりたいんだ・・・」
「・・・・・・」

 ギルは難しい顔で考え込んでいる。
 リューンと言う大都市で貧富の差は顕著だ。たとえ此処で彼が少年に金を出したとしても、それは一時しのぎにしかならず、根本の解決にはならない。
 とりあえず、全ての事情を聞いた冒険者たちは、少年を解放してやることに決めた。
 ジーニが珍しく優しげな笑みを浮かべて、少年を諭す。

「もう、泥棒なんかしないで。泥棒したもので買った食糧だって分かったら、きっとエミリちゃんは悲しむわ」
「でも・・・だって・・・」
「・・・聖北教会に行け。あそこなら、きっとお前達を助けてくれるさ」

 エディンの発言に、少年のみならず仲間たちも大きく目を開いた。

「・・・・・・なんだよ、俺が教会の名前出しちゃいけないってのか?」
「いえ。貴方が言い出すとは思わなかったもので・・・失礼しました」
「あのな・・・・・・」

 エディンとアウロラのやり取りをほっといて、ミナスが教会の場所を少年に一所懸命説明している。
 少年は口の中で何度か「聖北教会、聖北教会」と呟いてから、冒険者たちにぺこりと頭を下げて去った。

「ふん、妹のためにかい・・・ガキのくせになかなか見込みがあるじゃないか」

 老婆が呟いた声が、噴水の水しぶきで濡れた石畳に落ちて、消えた。

2013/01/06 03:15 [edit]

category: 解放祭パランティア

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Sun.

解放祭パランティア 1  

 澄んだ藍色の瞳が、とある羊皮紙の表面に書かれている文字を追っている。

「えーと、『リューンの街の木漏れ日通りにて一日限りのバザーを行います』・・・?」

 可愛らしい声音で読み上げるミナスの後ろから、どれどれとアレクも覗き込んで続きを朗読する。

「ふむ。『大安売りの品・掘り出し物も多数出店』か」
「これって、良い物いっぱいありますよってこと?」

 パーティの年少組が首を傾げながら話し合うのへ、微笑ましく思った親父さんが声をかけた。

「何だお前達、その張り紙に興味があるのか?」

ScreenShot_20121230_213019343.png

「親父さん、これなに?」
「これは年に一回開かれる大バザーの広告だな。かなり大きな催し物で、色んな国から掘り出し物が集まる一種の祭りみたいなもんだ」
「お祭りなんだ!いいな、行ってみたいなあ・・・」
「・・・・・・武具の掘り出し物があるなら、俺も興味がある」

 たちまち目を輝かせた二人を見て、親父さんが朗らかに笑った。

「それにしても、今日これを見つけるなんて運が良かったな。これは、丁度今日開催されるんだ」
「今日!?」
「ちょっと待て、他の仲間を呼んでこよう。ミナス、その紙そのまま持ってろよ!」
「はは、まだ開催まで間はあるよ。今から行っても大分余裕があるさ」

 たちまち、アレクが”金狼の牙”の他面子を階下に集めてきた。
 親父さんから説明を受けた彼らも、祭りと聞いて浮かれた気分になったらしい。親父さんから「どうだ、行ってみるか?」と聞かれ、全員が全員、「行く!」と返事をしたのだから、その期待たるや相当のものだったのだろう。

「ねえ、バザーに行くの?」

 冒険者たちが出かける支度を始めていると、厨房の奥から話しかけられる。
 近くのギルが振り返ると、丁度布巾を片手に、この宿の娘さんが出てきたところだった。

「あ・・・娘さん」
「バザーに行くならちょっと頼まれてくれない?新しい髪飾りが欲しいのよ。ね。お願い!すっごい感謝するから買ってきて?」
(お金は払わないんだ・・・)

 二人の話を漏れ聞いていたミナスが心中で呆れていると、自己完結したらしい娘さんが、

「じゃ、頼んだからね。おみやげ楽しみにしてるわ。いってらっしゃい!」

と言って引っ込んでいった。これは、買わないと後が怖い。
 ジーニがじとっとした目でギルを見やる。

「ちょっと~。ギルバート~?」
「・・・・・・。ごめん」
「あいつの強引なのは変わらんな。まあ、覚えてたら買っていってやってくれ。あいつは今日も仕事でバザーに行けないから、お前たちに頼るしかないんだ」
「そうか・・・ま、そういうことなら仕方ないか。大変ね、娘さんも」

 いささか宿の娘に同情の念を覚えながら、冒険者たちは木漏れ日通りのバザー会場へと向かった。

 どうやらここが会場のようだ。
 かなり大きい広場が開演前の待合場として使われているが、それを埋め尽くすほどの大勢の人が今か今かと開演を待っている。

ScreenShot_20121230_214914015.png

「ここで間違いないようだけど・・・どこへ行ったらなにがあるのか、全く分からないわ」
「本当だな。これじゃ移動するだけで一苦労だ」
「困りました。案内板でもあればいいのですけど」

 ジーニの呟きに、両隣に立っていたエディンとアウロラが同意する。
 ミナスを肩車したギルがとにかく前へ進もうと促し、一行はぞろぞろと人の波を割って行った。
 そこかしこから、バザーを楽しみにしてるらしい客の声が聞こえてくる。

「世界中の人が集まる一年に一度のお祭りですからね。きっと魔法の品もどこかに混じってますよ!楽しみだなあ・・・」
「ねえ、書物区の大安売りの時間、知ってる?知ってたら教えて欲しいわ」
「今日は必ずお宝を買って帰らなくちゃ!さあ、早速武具を見てまわろっと!」

 金髪の魔術師らしい美青年や銀髪の敏捷そうな女性、鎧を着た綺麗なブルーアイの女性など、十中八九同業者と思われる姿がちらほら見られる。
 その中にちょっと場違いな感じの、しかしかなりこの場に慣れているらしい男性が一人、こっちへ来いと手招きしているのがアレクの視界に入った。

「なんだ、アレクの知り合いか?」
「いや、知り合いではない・・・が、多分あれは・・・」

 急に速度を上げてその男に近づいていったアレクの後を、仲間が慌てて追った。

「おう、どうした?どうやらどこに行ったらいいかわからねえって顔してるな」
「ああ。バザーに来たのは初めてなんだ」
「あんたら運が良いぜぇ。この会場で一番の情報通のこの俺様に出会えたんだからな」
「なるほど、あんたは情報屋なのか・・・」

 アレクが得心がいったように頷く横で、

(なんだかうさん臭いやつだな・・・)

と思ったギルが、鼻に皺を寄せて男を観察する。
 その視線に気づいていながら気づかないフリをし、男は言葉を続けた。

「へへ、まあ初心者のあんたらに基本を教えてやるから有り難く聞けよ」

 上から目線な発言にむっとするジーニの背中を、落ち着かせようとエディンが叩いて「金がいるのか?」と言うと、男は予想に反して首を横に振った。基本だから料金はいらないと。
 それならと、”金狼の牙”たちは売り場の種類や安売りのルール、有料の鑑定人についてなどを教えて貰った。
 さらに、バザーが終わったからってすぐ帰るのは素人のやり方だ、と情報屋が含み笑いと一緒に言う。

「常連は、バザーの後に楽しい物々交換タイムが始まるって事を知ってるんだ。恒例行事って訳さ」
「すごい面白そうだよ、ギル!」
「おっと、興奮して落ちるなよ!なああんた、それってどうやればいいんだ?」
「簡単さ。相手の持ってる品が欲しけりゃ、思い切って交換を申し出る。ここに居る奴らはそう言う開けた考えなんだ」
「ふーん、なるほど。無駄がなくて面白いわねえ」
「相手の欲しがるものが、こちらの手元にあったらラッキー!大抵1ランク上のものと交換してくれるぜ」

 中にはアイテムの価値を誤魔化してレアものをバッタ物と交換させたがる奴も・・・・・・と注意をされたが、すでに興奮したギルやミナスの耳には入っていない。
 これは自分が気をつけて見張らないと、とアウロラが後ろでこっそりため息をついた。
 大体のことを聞き終わった”金狼の牙”たちは、「情報が欲しいなら、またいつでも話しかけな」と手を振る情報屋と別れ、ぞろぞろと売り場に移動し始めた列に並んだ。

「さて皆さん。どこから回りましょうね?」
「・・・・・・我がままを言って悪いんだが、やはり俺は武器から見たいんだが」
「どうせ当てもないんだ。アレクがそうしたいなら、そっちから回ろう」

とギルが言って、彼らは剣や盾を並べた地区へと進み始めた。

2013/01/06 03:12 [edit]

category: 解放祭パランティア

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