Wed.

泥沼の主 4  

冒険者たちが大蛇退治を終えて沼の入り口まで戻ってくると、そこには既に依頼人の姿はなかった。

「げー!?もしかして、依頼人とんずら?俺等ただ働き?」
「いや・・・よく見てみろよ、ギル。そこを」
「ん?」

アレクの指摘で、彼が寝そべっていた場所をよくよく見れば、岩の上に泥で汚れた皮袋がぽつんと置かれている。
狐につままれたような表情で、ギルが言った。

「あの皮袋が報酬か?」
「見てみりゃ分かるさ」

強烈な一撃を喰らい、頭がまだくらくらするものの、アウロラの必死の癒しで怪我は癒えたエディンが、皮袋を手に取り、中を確認する。
――すると、中には泥に汚れながらもキラキラと光り輝く金貨が、数にして三十枚ほど収められていた。

「少し多いな・・・320sp相当ある。・・・ん?なんだこれは」

エディンの訝しげな声に、他の仲間たちの視線が集まる。
彼が示しているのが、皮袋の裏側であることを理解したミナスが、もっと顔を近づけた後、「あ!」と大声を上げた。

「それ、精霊魔法の呪文だよ!効果は、詳しく見てみないと分かんないけど・・・【蛙の迷彩】って書いてあるよ」

よく手入れされた爪の目立つ人差し指を、皮袋の文字に当てつつ、ジーニがざっと解析した。

「ぱっと見たところ、術式からして補助魔法の一つじゃないかしら。良かったじゃないの、レアものの魔法よ」
「なら、この皮袋は、後でミナスがじっくり見るといい。魔法が増えるのは大歓迎だ!」

ギルの決定に、一同は大きく頷いた。今回のような冒険であれば、きっとこの呪文は、これから大きな役に立ってくれるに違いない。

――冒険者たちがその袋を懐に収めた時、沼の淵にある岩の上から蛙の鳴き声が聞こえてきた。
声に反応して冒険者たちがそちらを見ると、普通のものよりひとまわり大きな蟇が沼の中にある岩の上に座して、笑みを浮かべる様に頬を膨らませている。

「・・・ヒキガエルか。こいつは随分と立派なもんだ。この沼のヌシって奴かい?」
「蛇を退治した御礼でも言ってんのかね?こいつは律儀なもんだ」

エディンとギルが呟く様子をよそに、蟇は一際大きな鳴き声を上げて、沼へ飛び込んでいった。
それ見て、アウロラが首を傾げる。

「不思議ですね。どういうわけか、あの依頼人の笑い方に似てた気がしました」

――その晩、冒険者を讃える蛙達の唱は、夜明けまで止む事がなかったという。

※収入320sp、髭天狗茸×1、【蛙の迷彩】入手※

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■後書きまたは言い訳
タナカケイタさん作の泥沼の主を、金狼の牙たちの初冒険として選択させていただきました。
こちらのシナリオ、15分と想定プレイ時間は短いのですが、【聖霊の盾】の適正互換スキルが上手くすると手に入ったり、登場する依頼人の意外な(?)正体が面白かったりで、Leeffesお気に入りシナリオの一つです。
スタートは、あまりリューンから遠く離れないところがいいな、という個人的嗜好にばっちり当てはまったのも、選択の大きな要因でした。

CardWirthのリプレイは、すべからず文章が多くなるものですが、文才がない自分の小説で、それは読む側が苦痛になるだろうと思い、なるべく簡素に、分かりやすくを心がけて書いたのですが、いかがだったでしょうか?

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2012/07/25 17:46 [edit]

category: 泥沼の主

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Wed.

泥沼の主 3  

踏ん張りの利かない沼地であることを鑑みて、渾身の攻撃を繰り出せない冒険者たちを嘲笑うように、大蛇はエディンの胴を、激しく尾で叩いた。ジーニの指先から出た、甘やかな煙を被りながら、である。

「ぐえっ」
「ちょっと・・・【眠りの雲】が効かない!?」
「詠唱で手を抜いたんじゃねえのか!?」

硬い鱗を武器でいなしながら、ギルが怒鳴り返す。
慌ててミナスが、泥の中から器用に水の精霊の声だけを拾い上げ、エディンを癒した。

「【水淑女の守】よ・・・」

だが、蛇の攻撃は、続けてギルの体力も半分以上奪っていった。
そのまま、太い蛇身の締め付けにあってしまう。
中々詠唱に集中できないアウロラに代わり、急いでミナスが水の精霊で癒すも、長い蛇の体が波打つと、今度はギルを助けようと慌てて前に出ていたエディンが吹き飛ばされ、気絶してしまった。

「んぎゃー!!気持ちわるっぬるぬるしてるっ」
「ぐ・・・今の、効いたぜ・・・」
「ギル!エディン!・・・うう、癒しの詠唱が間に合いません・・・!」
「やばいな・・・ギル、ちょっと待ってろよ!すぐ助ける!」
「だい・・・じょぶだって!」

火事場のくそ力とでも言うべきか、ギルのよく発達した筋肉が盛り上がると、そのまま豪腕で蛇の体を無理やり押しやった。

「ギル兄ちゃん、すっげー!」
「さあて・・・こっからが俺たちのターンだ!」

一撃、二撃と、着実にギルとアレクを中心として、蛇への傷を増やしていく。
ジーニがその後、詠唱の最中に攻撃され、重傷まで追い込まれるが・・・。

「えーい!!」
「――ッ!?」

ScreenShot_20120719_091904687.png

ジーニが倒れこむと同時、その向こう側にいたミナスが、己の頭ほどもある石塊を思い切り投げつけ、偶然、大蛇の急所に当てた。
試合終了のゴング代わりに大蛇が断末魔の叫びを上げた。
勝敗が決してからも大蛇は暫くの間、文字通り泥沼の中で「のたうちまわって」いたが、やがてその力すら失うと、自らが濁した水の中で物言わぬ”ひも”となった。

「か、勝ったああ!」

初勝利の余韻に、泥のしぶきが顔に散るのも構わず、ギルは大きな声をあげて両手を突き出したのだった。

2012/07/25 17:44 [edit]

category: 泥沼の主

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Wed.

泥沼の主 2  

・・・――宿を出て数刻の後、冒険者たちは馬折沼に到着した。
周囲には泥の匂いが漂っており、木々が空を覆っていて薄暗い。

「すごーい。靴が半分、泥に埋まっちゃった」
「まだ、山道に入ったばかりだというのに・・・」

ブーツにの埋まり具合にミナスが無邪気な声を上げ、服の裾をつまんでいたアウロラが、小さくため息をついた。
彼女の紫の法衣にも、容赦なく泥が飛び散っている。
しばらく進むと地面がぬかるみ始め、泥の道はやがて完全な沼地となった。
泥沼の上には粗末な板や石などが乱雑に並べられており、かろうじて道と呼べそうな程度のものが形成されている・・・・・・。

「・・・はい、到着っと。みなさん、ご苦労様。蛇はこの沼の何処かにいるとおもうから、適当に探して適当に退治しちゃって」
「アバウトだなおい」
「・・・いや、適当じゃ駄目でしょ」

ギルが呆れたように、ミナスが慌てて突っ込む。

「――へへっ。退治さえしてくれれば、何でもいいのさ。蛇は多分、奥のほうに居ると思う。足場が悪いから、くれぐれもご注意を・・・・・・」

一同が、すっかりテンションの盛り下がった様子で、「はーい」と返事をした。
それをとりなすように、ジャクジーが声を上げる。

「・・・ま、とにかく、ようこそ馬折沼へ!ゆっくりしていってね!」

彼は非戦闘員だということで、この辺りで退治終了の報告を待つつもりらしい。
心なしか、それを聞いたジーニの額に青筋が立ったような気がしたが、一行はそれ以上深く追求せず、進むことにした。世の中、掘り下げちゃいけない事柄もある。

その後、泥の道をかき分けるようにして進む中、先行して調査をするエディンが、≪髭天狗茸≫というものを見つけた。
大事そうに荷物袋へ仕舞いこむ彼に、ギルが訝しげに言った。

「・・・それ、食えんのか?キノコなんて、迂闊に拾い食いしないほうが・・・」
「大丈夫だ。珍しい植物だが、このままで薬として使える」

植物に詳しいのか、野外活動も得意なのか、エディンは妙に自信のある素振りだ。
潅木や朽木に生えるこの茸は、生のまま食しても高い体力回復効果が得られるのだ、と説明した。

(本当に大丈夫なんだろうか・・・・・・)

ギルとは違い、アレクは不安を口に出さなかったが、相棒と同じ感想を胸中に抱いていた。

板を並べた足場が南北と東に続く分岐点まできた。
この辺りは背の高い雑草が多く、先への視界を遮っている。

エディンが静かに索敵をすると、北の先から多数の蜂の羽音が聞こえる事に気づいた。

「・・・北の先が騒がしい。この先に蜂の巣があるのかもしれないな」
「蜂、イヤー。痛いのイヤー」

ミナスが長い耳をかばうように身を縮めた。
エディンがその頭を撫でつつ、他のメンバーに向かって言う。

「迂闊に近づいて興奮させると、集団攻撃される可能性がある。用が無いのなら進むべきではないだろう」
「なら、東へ」

一同はギルの決定のとおりに進むことにした。

羽音から離れるように歩くうち、陸に上がっていたトード達は、冒険者の姿を見つけると、その道を譲る様にして水中へと飛び込んでいった・・・・・・。

「ヒキガエルか・・・・・・」
「カエルがどうかしたの、ジーニ?」
「ん・・・いや、蛙を使い魔にする魔法使いも多いから、ちょっとね」

蛙のつけた小さな足跡をつつきながら訊いたミナスに、首をすくめて彼女は続けた。

「まあ、今回の依頼には関係ないだろうから、気にしないで」

すると、先行していたエディンが皆を静かに呼んだ。

「何かが這った様な跡が東に向かって続いている。この先に・・・」
「大蛇がいるのか」

ギルは自分の装備を、今一度整えた。
その横で、アレクも同じように武器を構えている。

補助魔法の類いがあれば、今がかけるべき時なのだろうが、そこまで魔法につぎ込める資金は、まだ彼らになかった。
とはいえ、駆け出しでこれだけスキルが整ってる方が珍しいのだ。今ある手持ちで頑張るしかあるまい。
一行は顔を見合わせると、ゆっくりと頷いた。

あまり大きな音を立てないように進んでいくと――とある所に出た。

藪が生い茂り、一層と暗くなった場所だ。
何かが潜んでいそうな不気味な湿った空気が漂っている。

冒険者たちが塒に近づくと、突然、叢の中から大蛇が姿を現す!
依頼人の言の通り、その体長は10mほどもある化け物だ。

アレクが剣を下段に構えつつ、冗談交じりに呟いた。

「”まだらのひも”は杖で叩くものだよな?杖以外でも大丈夫だろうか?」

それが推理物と呼ばれる本の引用であることに気付いたアウロラが、ため息をつきつつ応じた。

「まだらではありませんし、”ひも”という太さでも――」

三歩、アレクの後ろに下がって陣取る。そこが彼女の回復魔法の届く位置。
他のメンバーも、各々のポジションへと散り、体勢を整える。

「――ま、痛めつける分には何でも変わりませんけど」

その声を合図に、大蛇は冒険者たちへと襲い掛かった。

2012/07/25 17:43 [edit]

category: 泥沼の主

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Wed.

泥沼の主 1  

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きょとん、とした顔で聞き返したのはアレク、がっくりとテーブルに顔を突っ伏したのがギルだった。

「・・・大蛇退治?」
「記念すべき、初依頼が蛇退治・・・」
「蛇といっても、生物を見ると見境なく襲い掛かってくるし、仕事の邪魔になるから追い払って貰いたいんだよ」

先ほど宿に駆け込んできたばかりの依頼人の青年は、亭主が出した木製のカップを受け取り、中の冷水をぐいっと飲み干した。

依頼人は、”空の高さを知る”ジャクジーと名乗った。
質素な草木染らしい衣服と、透き通ったピンクトルマリンの瞳が、ひどくちぐはぐな印象を受ける。

「それに、なにより、僕は蛇って奴が苦手でね。普通の奴でも肝を冷やすのに、あんなに大物とあっちゃあ・・・・・・」
「分かります。蛇って、ぐにぐにうねうね動いて、本当に嫌なものですよ。ましてや大きいなんて・・・う。言ってて鳥肌が・・・」
「ね」

アウロラの迎合に、青年はそう言ってははは、と苦笑いする。

「馬折沼で植物採集、ねえ。薬草師からの依頼ってワケか」

ジーニは、厚めの色っぽい唇に、人差し指を乗せながら呟いた。

馬折沼というのは、中央公路脇の森林にある湿地帯のことだ。
足場が非常に悪いことで知られており、荷運びの馬が怪我をしやすいことから周辺の商人たちから忌避されている。
依頼人の青年は、そこから採集した植物で薬を作っているそうだ。

「報酬は金貨で三十枚――。ま、300sp相当ってところかな」
「300か・・・」

エディンは、眠たげな双眸を忙しげに瞬かせた。
退治する相手がただの大蛇ということを考えれば頷ける額だが、個人的には少ないと感じてしまう。
ピンクトルマリンの目が、真っ直ぐにエディンを貫いた。

「近場の蛇退治だから、妥当な線だとは思うんだけど?」
「まあ、なあ・・・」

世慣れない若者が多いこのパーティで、今のところ、相場と報酬を引き比べられるのはエディンだけだろう。
年齢的なことで言えば、ジーニも彼と年は近いのだが、彼女は賢者の塔で過ごした年月の方が多い。
エディンはおさまりの悪いブルネットに左手を突っ込んで、ぼりぼりと掻いた。

「そんなに時間がかからないんだから、まあこんなもんか」
「・・・どうだい?引き受けちゃあくれないかな。あ、質問があるなら何でも訊いてくれたまえ」
「はーい、ジャクジーさん!僕、行く所のこと知りたい!」

ミナスは、ほとんどエルフの隠れ里に引き篭もっていた子どもだ。
その隠れ里が、ダークエルフとの争いで焼かれてしまい、冒険者とならざるをえなかった経緯がある。
そんな凄惨な記憶を引きずっているのか、彼は努めて明るく”子どもらしく”振舞っている。
しかし、今のその質問は、純粋に出かけるところへの好奇心に満ちていた。

「・・・あ、そうそう。沼には他にもトードやホーネットも生息しているんだ」
「それはちょっと、厄介ねえ」

手元の木製のカップに注がれた果実酒をグルグル揺らしつつ、ジーニが思案する。

「でも、彼らはこちらから攻撃しない限りは襲ってこない。気が立つと後が面倒だから、見逃してやっておくれよ」
「うーん。気をつけるよ」

ギルはどうにもがさつで、静かに歩くということに向いていない。
元傭兵で、南方の闘舞術を納めている母なら、簡単に出来るのかもしれないが・・・ギルはそこまで考えて、ぶるりと身を震わせた。
母との記憶は、物心ついた時からイコール特訓に近いものだ。
おかげで腕っ節には自信が持てているが、簡単に脳内から引っ張り出していいものでもない。

そんな相棒をよそに、アレクは退治目的の蛇について質問した。

「どんな感じなんだ?」
「多分、10mくらいはあるんじゃないかな・・・・・・?」

ジャクジーの説明を聞いて、アウロラが必死に両腕をこすっている。余程に蛇は苦手らしい。

「あいつらは生きてる限り成長し続けるっていうし、きっと突然変異種か無駄に長生きしてるんだよ」

という依頼人の推察に、リーダーであるギルが腕組みをしながら言う。

「でかいなら、攻撃は当たりやすそうだけど・・・」
「――あ、そういえば、一つだけ注意。・・・あいつ、毒蛇みたいだから、解毒の準備はお忘れなく」
「解毒・・・アウロラ?」
「すいません、毒はまだ私の実力では・・・ミナスなら、水の精霊と親和性が高いそうですが」

アレクの呼びかけに、アウロラはすまさそうに小さく手を合わせて、傍らの小さな仲間に話を振った。

「毒?うん、僕に任せてー」

小さな胸を張ったミナスの出鼻をくじくように、依頼人がさらに口を開いた。

「・・・それと、長いから、巻き付かれない様に注意してね。万が一の場合に備えて、呪縛を解除できると安心かも・・・・・・」

パーティは、いっせいに無言のままジーニの顔を見やった。
が、あいにくとジーニのレパートリーに【呪縛解除】の呪文は、まだない。
注視に対して、ひらりと繊手を振って否定してみせた。

そこでエディンが口を挟む。

「呪縛なら、俺がギルドに習ったやり方で、なんとかできるぜ」
「お、エディン本当?すげえなあ、ギルド!」
「毒と呪縛に注意な、――はい、了解」

無邪気に賞賛するギルを横目に、やれやれ、といった態でアレクが頷く。

報酬についても質問が出たが、宵越しの金は持たない主義だとかで、300spが彼の全財産だと言って憚らない。値上げ交渉は諦めるしかなかった。

「・・・いいだろう。その依頼、引き受けさせてもらう」
「ちょ、何でお前が仕切るんだよ!」
「・・・ありがとう。それじゃあ、準備ができたら言ってくれ。沼まで案内するからね」
「あんたも、何事も無かったかのようにスルーするなー!」

ギルを無視したアレクの決定に、全員賛同したのだった・・・。

2012/07/25 17:39 [edit]

category: 泥沼の主

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