Sun.

主なき人形 6  

「まさか、あんな風に思ってたなんて・・・」

 ふう、とため息をついたのはアウロラだった。
 今、彼らはすでにリューンへの帰途についていた。
 結果として、確かに魔術師イアンを殺したのは村長である青年だった。 
 しかし、彼の言い分は、エディンの推理とは主張を異にしていたのである。

「・・・イアンさんを殺したのは確かに私です!しかし、それは金のためとか、そういう事ではないんです!」

と、青年は叫んだのだ。

「イアンさんがこの村にやってきたのは、父が他界してから間もなくの事でした」
「私は生前の父に孝行する事ができず、悔いていました。それで、イアンさんに父を投影して看病したのです」
「掘削作業は楽になり、私達はとても感謝しました。しかし、私はそのゴーレムに危険な香りを感じていました。それは炭鉱から人の手を除き、鉱夫の仕事を奪っていたのです」

 そして青年は、イアンに与えられた首飾りがゴーレム制御のアーティファクトで、首飾りを使えば誰でもゴーレムを動かせることに戦慄したのだという。
 ゴーレムは、鉱山の労働者の仕事を奪う潜在的な危険を持つ悪魔の道具だ、と青年は主張した。
 ルーシーはあまりのことに唇を震わせながら、父の学友の命を奪った男に詰め寄ったのだ。

「あなたは・・・、そのために実の父のように慕う人を手にかけたと言うの?狂ってるとしか思えない!」

 しかし、静かに青年は答えたのである。

「狂っている?・・・そうかもしれません。私にとっては村への愛も、イアンさんへの愛も本物だ!その狭間で私はこのような行為に至ったのです。狂っていると言うならそう言えばいいでしょう」

と・・・・・・。
 エディンが都市の治安隊に引き渡すと宣言した時も、青年は落ち着いていた。
 自分のしたことが殺人であったことを理解しながらも、ゴーレムは悪魔の道具だという主張を変えるつもりがなかったからだろう。

「・・・ゴーレムは人間社会に必要のない物なのかしら」

 ルーシーは沈痛な面持ちで言った。

「彼の言葉を気にしているのか?」

と、エディンが振り返る。

「まあ・・・ね。私が社会の役に立つと思う物が悪魔の道具って言われて、それは効くでしょう?」
「そうだな。彼の言うことは一理ある。いや、多くの真実を言い当てているかもしれない」

ScreenShot_20121210_175120296.png

 エディンは考えつつ言う。

「だが、二面性というのはどんな事にだってある。一方では有用であり、一方では危険でもある」
「物事の真理という奴だな」
「ああ。バランスを逸脱すれば、社会が淘汰するさ。俺達は、自分の信念に従って道を邁進すればいい」

 エディンとアレクが肩を並べて言葉を重ねる。
 そして、普段つまらなそうに引き結ぶ唇を微笑の形に直し、仲間を見渡してからエディンは言った。

「中には共に道を歩んでくれる者もいる。・・・そうだろう?」
「・・・いいこと言うじゃない」

 ルーシーは瞳に希望をちらつかせて微笑んだ。

※収入600sp+400sp、ゴーレムのコア※

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■後書きまたは言い訳
16回目のお仕事は、クエストさんの主なき人形です。
以前に記載した機械仕掛けの番犬の、有志様による続編のひとつとなります。
シナリオ内では、ルーシーの名前を明確に出さず「少女」と表現されていますが、このシナリオをやるには、クーポン「機械仕掛けの番犬-依頼解決」を所有してなければなりません。
実は村長の青年が死亡するルートもあるのですが、このパーティなら脅威を除いてから真相究明だろうと思い、このような感じになりました。

物語の冒頭にある集落は、カムイさん作の世捨ての集落のことです。こちらの店シナリオもオススメ。
そこに絡んで、ジーニとミナスが感じ悪くなっていますが、普段ならジーニが多少の悪口は流すので、二人は特に仲たがいしているわけではありません。
今まで呪文の研究をしているわけではなく鑑定人としての役割が大きかったので、塔の戒律を破る相手にはどうしても当たりがきつくなるのです。
また、道化師さん作の職業選択で、ジーニにセージ技能をとっています。これで物品鑑定や解読が可能になりましたので、ちょっと鑑定人らしくなったでしょうか?

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。


2012/12/30 13:31 [edit]

category: 主なき人形

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Sun.

主なき人形 5  

 事前に補助魔法を唱え、【野人召喚】で地の精ファハンを呼び出しておいた一行は、再びオデッサ炭鉱にアタックしていた。

「お客さんの登場だな」

 エディンの合図で”金狼の牙”たちは得物を握り、素早く戦闘態勢を整えた。
 次々と繰り出される攻撃の後、アレクの放った【召雷弾】でゴーレムに止めを刺す。

ScreenShot_20121210_171344375.png

 しかし、コアが光り始め、ゴーレムの体が見る見る内に元通りに修復されていく・・・。

「やっぱりコアを捕らなきゃ終わらない、か」

 エディンは仲間から一歩離れ、彼らの間断ない攻撃でゴーレムに隙ができるのを窺った。
 途中、アレクがゴーレムの大きな拳に吹き飛ばされたものの、ギルの【暴風の轟刃】によろけたゴーレムの後ろ側に回ったエディンが、

「・・・取った!」

と叫んで、コアをゴーレムから引き抜いた。

ScreenShot_20121210_171959937.png

 ゴーレムはその動きを停止した。これで依頼は達成したと言っていいだろう。

「で、エディン?どうするのよ、村長のことは」
「このコアを見せて依頼料を払い終わったら、上手く切り出してみる」

 ジーニの質問にエディンはぼそりと答える。

 つまり、エディンの推理はこうだ。
 村長である青年は、魔術師イアンからゴーレム制御用のアーティファクトの効果を教えてもらい、ゴーレムの独占を考えた。
 そこでイアンを殺し、ゴーレム関連の書籍を処分して、稼動可能なゴーレムを隠す。
 後は一体を炭鉱で暴れさせ――冒険者にそれを破壊させる。
 鉱夫にはゴーレムがその際にすべて破壊されたと説明し、残りを自分の物とする・・・。
 その後は、イアンの日記にもでてきた業者に、高値で売り払うつもりなのではないか。

 日記にあった事と、エディンが村長に見せてもらった首飾りのことを合わせて考えると、その推理は妥当なように思われた。
 ”金狼の牙”たちは、ルーシーが人質にとられないようアレクとアウロラに護衛役を任じ、酒場へと重い足取りで入っていった・・・・・・。

2012/12/30 13:09 [edit]

category: 主なき人形

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Sun.

主なき人形 4  

 一度、オデッサ炭鉱に入った一行だったが、ゴーレムに仕込まれているコアが光り出し、ルーシーが叫んだことで退却を余儀なくされた。

「間違いない、自己再生型のゴーレムだわ!掘削用の割には随分と質の高いコアを使ってるわね!」
「・・・困ったな。あれを倒すにはどうすればいいんだ?」

 エディンのぼやきに、ルーシーが答える。

「そうね、やっぱりコアをゴーレムから奪取するしか方法はないわ」
「・・・奪取、か。気楽に言ってくれるぜ」

ScreenShot_20121210_163228328.png

 悪態をついたギルだったが、他に方法もない。
 ゴーレムの一撃を受けたジーニが気絶していることもあり、一行は酒場に戻ることにした。
 ジーニの回復をアウロラとミナスに任せ、ゴーレムからコアを奪取するイメージトレーニングをしていたエディンだったが、村長兼酒場の主人である青年が身につけている首飾りに興味を抱いた。

「・・・ん、綺麗な首飾りだな」
「・・・これですか?これは私の父の形見でして、肌身離さず持っているのです」
「親を敬うこと篤し、だな。どこかの誰かに見習ってほしいところだ」

 からかうようなギルの言に、ルーシーが不機嫌そうに「聞こえてるわよ」と彼の肩をつついた。
 やがて意識を取り戻したジーニが、ゴーレム起動と停止のコマンドワードが、イアンの庵にあるのではないか、と言い出した。

「ありえない話ではない。先の≪蒼石の指輪≫もそうだが、魔法の品は合言葉が決まっていることが多い。ゴーレムも例外ではなかったはずだ」

 アレクが、元冒険者である父母に教わった知識でジーニを援護する。
 結局、それならイアンの家に寄ってから炭鉱に行こう、ということになった。

 青年に教わった場所に建つその小屋は、みすぼらしくはないものの小さなものだった。
 しかし、窓の傍に花瓶が据えてある等、誰かによって管理されているのが窺えた。 
 死後も惜しまれる人格者だったのだろう、魔術師にしては珍しいケースである。
 興奮した様子を隠しきれないルーシーが、

「きっとゴーレムに関するものすごい蔵書があるんだわ」

と、本棚に並ぶ書物の背に書かれた文字を追っている。
 ふと、その顔が困惑した態になった。

「おかしいわ。ちょっと眺めただけだけど、ゴーレム関連の書籍がまったく見当たらないなんて」
「・・・確かにそれは妙ね」

 同じように本棚の書物を調べていたジーニが言う。この小屋を詳しく調査する必要があるかもしれないと、彼女は鋭い目線を辺りに這わせた。

「・・・ここだけ床の色が濃い。元は何かがあったと考えるべきでしょうね」
「・・・とすれば、本棚。ゴーレム関連の書籍が入っていたものかしら」
「・・・恐らくは」

 ジーニとルーシーは顔を見合わせ、膝のほこりを払った。
 その時、エディンがふと気になった寝台の隙間に手を突っ込んだ。

「何してるんだよ、エディン」
「ここに何か挟まってる・・・ほら、日記じゃないか?」

 そして古びた皮の表紙の本を取り出し、その中を改める。

「・・・この本の文面、古代文字のようだな。解読できればいいが」
「やってみましょう。貸してちょうだい」

 エディンから本を受け取ると、ジーニは慣れた手つきでページをめくり、その複雑に絡み合った綴りを細い指先で追っていった。

「『ここには日記の類を記す。わざわざ古代語で書くのは、読まれると恥ずかしいと感じる私の浅はかな感情によるものだ。』・・・村にやってきた経緯が書いてあるわ」
「あのゴーレムについて、何か書き残してないか?」
「ちょっと待ってね、もう少し進んでみる」

 旅の途中で負傷し、オデッサ村の前で気を失ったという魔術師イアンの述懐を斜め読みしたジーニは、次第に彼が村長である例の青年に、家族のような情を感じていた事を読み解いていった。
 世擦れた魔術師に、この村の人々は純朴な好意を向けたものらしい。
 その恩に報いるため、あの掘削用ゴーレムを開発したのだという。

「えーと。『今は私の魔力で動かしているが、制御用のアーティファクトをあの青年に渡した。いずれ種明かしをしよう。青年は喜んでくれるだろうか?』・・・・・・ってあれ?」
「アーティファクト?知らずに持ってるのか、あの村長」

 ジーニの読解に、エディンは首を捻った。そしてその後、続けられたジーニの朗読に、黒いたれ目に緊張をみなぎらせることになる。

「『アーティファクトには青い宝石を使った首飾りをあつらえた。あれはいずれ、この村の繁栄の象徴となるだろう。』だって。後日、ゴーレムを買い取りしたいって堀削業者がいたらしいけど、一蹴してるようね。ずいぶんとあの青年に肩入れしてること」
「青い宝石・・・首飾り・・・」

 エディンの脳裏に、かの青年とその首飾りが浮かび上がる。ジーニが続けて読んでくれた業者のくだりに、とある推理が固まりかけたが、それをこのまま突きつけても恐らく認めはしないだろう。
 隙を突く必要がある。
 エディンは、「炭鉱に行こう」と短く言うに留めた。

2012/12/30 13:03 [edit]

category: 主なき人形

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Sun.

主なき人形 3  

 青年が招いた彼の自宅の中は驚いた事に酒場のカウンターだった。
 冒険者が青年を見やると、悪戯っぽく微笑を浮かべている。

「言い忘れてましたが、私はこの村の酒場を営んでおりまして。勿論お代は結構ですよ」
「・・・それで、依頼の内容は?」

 出された茶を傾けて一息ついたミナスが切り出した。

ScreenShot_20121210_161035593.png

 ルーシーは呆れた表情になった。

「・・・まさか、私の依頼の最中に村の依頼を受けるつもり?」
「蔵書を見せてもらうなら数日はかかるんじゃない?その間暇を持て余すのもどうかと思ったのよ」

 けろりとした様子でジーニが説明し、ルーシーはますます呆れ顔になったが納得したようだ。
 しかし、青年が話し始めたその依頼の内容というのは、イアンとも関わりの深い案件だった。

 魔術師イアンは、なんとこの村で掘削用ゴーレムの開発に生前、成功していたのだという。
 ゴーレムは古代文明時、警備用に製作されたもの。それゆえ、現代の技術もその分野に特化しているそうで、魔術師イアンがゴーレムに掘削を行わせる事ができたのは画期的な研究の成果だと言っていたらしい。
 「ところが」と、青年は顔をゆがめて続けた。

「イアンさんが亡くなられた事でそれらのゴーレムは動きを停止してしまいました」
「炭鉱の村にとっては死活問題だな」
「・・・それだけならよいのですが、ゴーレムの内の一体が炭坑内で暴走し始めたのです。これには困り果てました」

 アレクの相槌に少し間が空いたものの、青年は頷いて言った。

「そこで、村民の総意で冒険者の方々を雇い、ゴーレムを破壊してもらおうとそういう次第になったのです」

 ジーニが、現実的な彼女らしく腕を組んで応じる。

ScreenShot_20121210_162243687.png

「・・・事情はわかったけど。依頼を受けるか受けないかは村長と話してからにするわ」
「言い忘れていましたが、私はこの村の村長も努めておりまして。親の七光りではありますが」
「これはしてやられたな」

 ギルは快活に笑った。
 報酬は600spが精一杯だと言う。条件としては相場より安い気がするが、この鉱山以外何も無い小村で暇を持て余すよりはましだろうと、”金狼の牙”たちは依頼を受けることにした。
 休息はこの酒場を自由に使って構わないという。
 炭坑の場所やイアンの家を教えて貰った一行は、早速出かけることにした。

2012/12/30 13:00 [edit]

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Sun.

主なき人形 2  


 炭鉱の村オデッサに到着した一行は、辺りをゆっくりと見渡した。
 オデッサ炭鉱はさして有名でもない、小規模な鉱山である。
 そのため、炭鉱が発見された後に村が成立しても、町には発展しなかった。
 村民は大半が鉱夫とその妻、子供達であると言って差支えない。
 流れ者の寄り集まった村、それがこの炭鉱の村オデッサだった。

 軋みをあげる水車や茅葺き屋根の家々を眺めていたルーシーが、ぽつりと言った。

「・・・イアンさんはこの村の小屋にこもって研究をしているらしいわ」

 魔術師イアン。
 ルーシーの父と違い、古典的とも言える石のゴーレムを研究しているコンストラクターだという話だ。

「・・・まずは村の人にイアンさんの家の場所を聞いてみるとするか」

ScreenShot_20121210_155153828.png

 リーダーらしく意見を言ったギルに仲間たちは頷き、辺りに村人がいないか探し始めた。
 すると、村民らしい青年が薪割りに精を出していたのが見える。

「・・・失礼」
「・・・はい、何でしょう?」

 ギルは、なるべく彼を脅かさないよう武器を隠しつつ、青年の後ろから控え目に声をかけた。
 その茶髪に緑の目と衣装が印象的な青年は、整った顔を困惑の色に染めていたが、やがて納得したように口を開いた。

「ああ、もしや依頼を受けてくださる・・・」
「・・・依頼?」

 青年の言葉を聞いて、アレクは怪訝そうな顔をする。
 少し顔を見合わせた後、思い切ったようにルーシーが、

「私達はイアンさんという魔術師に会いにきたのだけど」

と、自分達の目的を告げた。

「・・・イアンさんに?これは失礼、依頼の張り紙を先日出したものですから、その方々とばかり・・・」

 イアンに会いにきた用件を聞かれ、ルーシーが詳細を説明すると、青年は残念そうに眉をひそめ、目的の人物が亡くなっていることを一行に教えた。
 思わぬ凶報に、素っ頓狂な声を上げるルーシーを見つめ、アレクは自分の頭を撫でた。

「・・・まいったな。どうする、帰るのか?」
「ちょ、ちょっと待って。イアンさんの蔵書の一部をいただけるかもしれないわ」
「たくましいですね。先に墓参りでもするのが学友の娘の務めでしょう?」

 聖職者らしく、礼儀と年功序列にうるさいアウロラがそう言って少女を軽く睨む。

「うっ・・・」

 ルーシーはそのまま沈黙し、青年にちらちらと視線を送る。

「お墓参りですか。よければご案内しますが、お疲れではありませんか?」
「んー。僕、もう歩きつかれちゃった」
「・・・・・・ま、確かにちょっとした強行軍だったしな」
「先に私の家で茶でも召し上がってください」

 ぷっくりと頬を膨らませるミナスに、エディンが同意するように口を添える。
 その様子を微笑ましげに眺めた青年が、休憩を取るよう薦めてくれた。
 続けてそっと笑って言う。

「お時間があるなら先の依頼の話でも・・・」
「・・・ああ、なるほど」

 アレクが青年の如才なさに感心した。

2012/12/30 12:57 [edit]

category: 主なき人形

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