Wed.

血塗られた村 5  

 ”金狼の牙”たちが、出口に差し掛かったその時・・・。 
 待ち構えていたゾンビ達が襲い掛かってきた!!

「ワイトまでいます!気をつけて!」

 ≪氷心の指輪≫を使い、詠唱に集中するアウロラの注意が飛んだ。
 ワイトはゾンビやスケルトンより上級のアンデッドで、人の生気を吸い取る特殊能力がある。
 それを耳にして、あらかじめ地の精霊・ファハンを呼んでいたミナスは、さらに彼の眷属を召喚した。
 ギルと精霊が傷つけたワイトを、アレクの新しい技である【召雷弾】が止めを刺す。
 ジーニは、これ以上仲間が傷つかないようにと、【魔法の障壁】を唱えた。
 多少の傷は入ったものの、重傷に陥る者もなく、無事彼らはゾンビ達を退けることができた。
 ギルが額の汗を拭い、仲間たちに声を掛ける。

「ふう・・・。さあ、早く行こう」

 洞窟を出るとまばゆい太陽光線が冒険者達の目に飛び込んできた。
 すぐそこには無人の村が見える。
 アウロラは痛ましげに村を見やったが、気を取り直して言った。

「とりあえず聖西教会に行って、事情を報告しましょう」

 そうして、一行が村を抜け出した時。

「こいつらです!私が先程ご報告した怪しい連中というのは。おのれ抜け出したか!」

 ローブを身にまとった老人に、慇懃無礼の見本のような声が応えた。

「ガルミッシュに呼ばれてこんな所に来てみれば、貴方がたでしたか・・・・・・」
「お前は・・・ボルラス!?生きていたのか!?」

 ギルがその姿に驚きの声を上げる。

ScreenShot_20121205_223911078.png

 なぜなら、ボルラスを【暴風の轟刃】で倒したのは彼だったからだ。
 見覚えのある風貌の死霊術士は、なんともいえないオーラを漂わせている。
 その時、ジーニの持つ杖が微妙に震えた。

「何だというの・・・・・・?この男に反応している・・・?」
「おそらく、自分にアンデッド化する魔法をかけていたのでしょう」

 ジーニの疑問を払拭するかのように、ラインが言う。聖戦士として戦ってきた中に、そういう禁呪の類があるのを知ったのだという。

「なるほどね・・・。この杖は、死霊術の禁呪に反応したんだわ」

 対峙するボルラスは、己の周りにいるアンデッドを見渡して言う。

「ふむ、戦力が整っていない」
「ボルラス様、しかしまだこいつらを逃すわけには・・・・・・」

 ローブの老人が言い募るのを、ボルラスが手をかざして遮り、冒険者達の方の一点に視線を固定した。

「・・・・・・ん?フリッツか・・・・・・クックック・・・・・・よし」

 ボルラスは何事か呪文を唱え始めた。
 するとフリッツの顔が見る見る、死人のそれになって行く!!

「なっ!?フリッツ!!」

 ボルラスと同じオーラを漂わせたフリッツが敵陣に加わるのを見て、ラインが驚愕の声を上げる。

「・・・・・・・・・・・・・・」

 フリッツは何も応えない。
 エディンが、銀の細剣を抜きながら舌打ちした。

「フリッツにアンデッド化する呪文をかけていたのか!!」
「それでは頼みましたよ。クックック・・・・・・」
「畜生、待てボルラス!!」

 ギルの叫びもむなしくボルラスが【帰還の法】を唱えて去っていき、残された老人は新たな戦力をもって冒険者達に向き直った。

「死ぬがよい!」

 まだ先の戦いの負傷が癒えないまま入った戦闘は、初っ端からアレクが重傷、ミナスも重傷一歩手前までに追い込まれた。
 しかし、すかさず【光のつぶて】をフリッツゾンビに打ち終わったアウロラが、今度は【癒身の法】をアレクに唱える。

「よしいけ、ファハン!」

 エディンがフェイントを掛けたためにできた隙を逃さず、ミナスの声に応じたファハンがガルミッシュを倒す。
 そのミナスの傷は、ラインが【癒身の法】を唱えて癒した。

「すいません、皆さん・・・・・・フリッツの奴を、よろしくお願いします」
「・・・・・・ああ」

 血を吐くようなラインの願いに、エディンがワイトの爪を細剣で防ぎながら頷く。
 そして、髑髏のついた杖を振り上げ【火炎の壁】を唱えたジーニは、気の強い眼でフリッツだったゾンビを見やった。

「悪いわね、フリッツ。短い間だったけどさよなら」
「ぐはっ!!」

ScreenShot_20121205_225950875.png

 炎は、死体を焼き払った・・・・・・・・・。

「フリッツ・・・・・・・・・」

 ラインの呟きを、風がさらっていった。

 一行は聖西教会に行き事情を説明。
 近いうちにゾンビの巣窟と化したアラン村に軍勢を派遣する事が決定したらしい・・・・・・。

 一行は協力を約束すると帰路についた・・・・・・。

「そうですか・・・・・・フリッツが・・・・・・」

 教会で待ち焦がれていたレンフ司祭は、冒険者達の報告に驚き、そして聖戦士たちの最期に嘆息した。

「しかしよくやってくれました。これは報酬です」

 800spの報酬を得た”金狼の牙”たちは、ラインに別れを告げた。

「それではアラン村の件、準備が整い次第狼の隠れ家の方にお知らせいたします。その時はまた宜しくお願いします」
「では私達はこれで失礼させて頂きます」

 ジーニの挨拶を皮切りに、一行は宿へ帰っていった。

※収入800sp※

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■後書きまたは言い訳
15回目のお仕事は、マットさん&ジン太さんの血塗られた村(密売組織第二話)です。
こちらは、一話と違ってマットさんは概略を担当なさり、ジン太さんが製作されたそうです。
同輩のフリッツが敵に回り、ライン君には酷く気の毒なことになってしまいました。
ボルラス許すまじ!ですね。”金狼の牙”達としても、決してこのままにはできないでしょう。

ジーニの使う≪死霊術士の杖≫は、このシナリオと関係ないのですが、死霊術の禁呪やら生きてる人間のアンデッド化やら、非常に面白い要素がてんこ盛りだった為、杖が反応したということにしてみました。
今のところ、彼女に死霊術を習わせる予定はないのですが、ひょっとしたらシナリオ次第で・・・?

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2012/12/12 21:25 [edit]

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Wed.

血塗られた村 4  

 どこからか声がする・・・・・・。

「おい、おい、大丈夫か、起きろ!!」

 目が覚めると、ツンとした匂いが鼻をついた。
 冒険者達はようやく正気を取り戻し、辺りを見まわすと鉄格子に囲まれている。
 ラインが、眠りに落ちた際に打ったらしい頭を抱えつつ言う。

「どうやら捕まったようですね。ここはどこでしょうか・・・・・・?」

 するとすかさず、

「ライン?ラインじゃないか!?」

という声がした。
 声のした方を向くと、壁際に力強い風体をした男が座り込んでいる。
 見慣れない男に一瞬警戒の態勢をとった”金狼の牙”たちだったが、ラインが親しげに男へ寄り、その肩を叩いたことで体から力を抜いた。

「フリッツ!無事だったか。他の皆はどうした!?」
「ほとんどの奴がやられた。ゾンビーにされちまったんだ・・・・・・。ま、俺も順番待ちなんだけどな」
「えっ!?ゾンビー!?ヴァンパイヤにやられたんじゃなかったのか?」

 ラインの同輩らしきフリッツの台詞に、ミナスが小さく叫びを上げる。
 フリッツは静かに頭を振った。

「ヴァンパイヤ討伐は成功したんだ。その帰り道の事だった、突然数十体のゾンビに囲まれた、アレはあの村の住人だった・・・・・・」
「そんな事が・・・・・・」

と言ったきり、ラインは絶句している。
 ラインに代わってアレクが問う。

「あんたがずっとここにいたのなら、敵について何か分かったことはないか?」
「どうやらゾンビパウダーの密売組織が絡んでいるらしいな・・・・・・聖戦士団のほとんどは、幹部と思われる凄腕の魔術師にやられちまったんだ」
「ゾンビパウダーの密売組織か!」

 アレクが鋭い舌打ちを放つ。
 どうやら衝撃から立ち直ったらしいラインが、ようようと口を開いた。

「で、ほとんどがやられたと言っていたが、何人かは脱出できたのか?」
「ゾンビーどもに襲われた時、何人かの聖戦士は逃げる事ができたようだったからな・・・・・・」
「ふむ、何人かは無事か・・・・・・」

 ラインとフリッツのその会話に、エディンは首を捻った。逃げた聖戦士たちが無事であるならば、どうして1ヶ月以上もの間、何の音沙汰もなかったのだろうか?
 同じ事をラインも思い当たったようで、素直にそのことを口に出した。

「しかし、無事に聖西教会まで逃げ切れたとして、なぜ聖北教会に知らせが来なかったんだろう?」
「・・・教会内の体裁や派閥が壁になって知らせが遅れたとしか思えないな・・・・・・」
「ああ・・・・・・体裁か・・・・・・」

 納得したがやりきれない様子で、アウロラが嘆息した。

ScreenShot_20121205_220615312.png

 確かに、ヴァンパイヤ討伐に成功したはずの教会の精鋭たちが、何者とも知れない魔術師にしてやられたとは、教会の聖戦士に対する信頼性が無くなるだろうと隠す気持ちは分かるのだが・・・・・・。

「素早く対応を取っていれば助かった奴らも大勢いただろうに!」

 フリッツは怒りの拳を石壁に打ちつけた。
 仮にも討伐隊に選ばれるだけの腕前があるのだ。それだけの実力者が、為すすべも無く牢に閉じ込められ、仲間がゾンビにさせられるのを見てきたとなれば、彼の教会に対する怒りも無理も無いだろう。

「クソ!これだから聖職者って奴は!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

 ラインは赤くなったフリッツの拳を握り締め、黙って彼の怒りと嘆きを押さえ込むかのように震えている。

(聖職者の怠慢か・・・・・・)

 それで失われた同胞たちの生命のために、ただひたすらラインは祈った。

「話は分った。よし、とにかくここから逃げ出そう」

 全ての話を黙って聞いていたギルが、開口一番、きっぱりと言った。

「よっし、さすがリーダー。決断してくれる時はしてくれるねえ」
「石壁を破壊するとかは止めてよね。建物の造りをずっと見てたけど、それやったらこっちが下敷きになるわよ」

 たちまち、エディンが牢を調査し始め、今まで黙って辺りを眺めていたジーニが釘を刺す。

「脱出できるんなら、さっさと脱出したい所だが・・・」

 ギルの一言で急に生き生きとし始めた”金狼の牙”たちを、フリッツは驚いたように見やった。
 エディンがじっくり調べたところ、鉄格子には古めの南京錠がかかっているが何とかはずせそうだ。

「でも見張りがいるよね・・・・・・。まずアレを何とかしないと・・・・・・」

 牢の外の見張りは、ある程度の経験を持っているのだろう。駆け出しの冒険者にとっては、脅威となるかもしれないが、装備を取り上げられたとはいえ、彼らの敵ではない。本来なら。

「・・・・・・まず、不意を打つことですね。油断させなければ」

 アウロラの冷静な一言に、フリッツが頷く。

「よし、俺が仮病を使おう」

 真に迫ったフリッツの仮病にすっかりだまされた見張りは、うかうかと扉を開けてしまう。
 隙を突いて見張りを倒した一行は、装備を取り戻して牢の外に出た。
 フリッツによると、ここは村外れにある洞穴らしい。
 行き先を近いほうの聖西教会に定めて、一行は移動を開始した。

2012/12/12 21:04 [edit]

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Wed.

血塗られた村 3  

 行程は1週間ほど続いた。

「ここが問題の村だと思うのですが・・・・・・」

 村の入り口に入った瞬間、一向はその異常さに気がついた。
 ここには生きている人間の生気が無い・・・・・・。
 案の定、村を歩き回っても子供達の声などは聞こえてくる事も無く、透き通るような青空がかえってその不気味さを強調していた・・・・・・。
 ミナスが尖った耳の先をぴくりと動かす。

「精霊たちの声が聞こえない・・・・・・」
「なんなの・・・。これ・・・・・・・・・」

 寒気を感じたように身を震わせたジーニの怯えを打ち砕くように、ラインが声を上げる。

「こんな馬鹿な!このアラン村には30人ほどの人々が、生活していたはず!」
「・・・・・・何かのトラブルがあって、身を隠しているのかもしれない。まずは、村人を探そう」

 ギルが言うと、全員が頷く。
 そして小1時間ほど、人を求めて歩き回った一行だったが人影はまるでない。
 青い目に焦燥をにじませてラインが言う。

「う~ん、いったいどうなっているんだ・・・・・・。一度聖西教会の方へ行って話を聞いてみましょうか?」
「そうだよね、これじゃあ状況が掴めないものな・・・・・・」

 ミナスが呟く。他の仲間もあえて何も言わなかったが、ラインの意見に賛成らしく、教会の場所を彼に尋ねる。
 一行はここからしばらく離れた、聖西教会に向うことにした。

 辺りはいつのまにか暗くなり一行は交替で見張りを決め、キャンプをはることにした。
 見張りは、自衛もでき気配に鋭いアレクが勤めることになった。

「・・・・・・・・・・・・」

 しばらくして。
 仲間たちが健やかな寝息を立てる中、アレクは端麗な顔を焚き火の明かりに晒しながら、鋭い視線で辺りをうかがった。
 耳をすますと、カサカサと草むらが不自然にゆれる音がする。

「・・・・・・・・・?」

ScreenShot_20121205_210639937.png

 訝しげにアレクが剣の柄を握った瞬間、4体のゾンビがそこから飛び出してきた!

「くっ!!」

 とっさに抜き放った剣で1体を退治したものの、アレクの隙を狙い他のゾンビたちが仲間に襲い掛かる。

「起きろ!敵だ!」

 ギルとエディンがその声に跳ね起き、反応し損ねたアウロラとミナスをそれぞれ庇う。
 ジーニはどうにかゾンビの攻撃を杖で受け止めたが、防ぎきれずに腕を傷つけられた。

「痛いじゃないの!」
「すまない、ジーニ。声を掛けるのが遅かった・・・」
「まあいいさ、ゾンビならそんなに時間もかからないだろ。おい、アウロラ起きろよ、お前の専門だぞ」
「うー・・・んん・・・・・・??」

ScreenShot_20121205_210702296.png

 ギルがアウロラを揺り起こすが、中々目を覚まさない。
 ため息をついたギルが、斧を構えて向き直った。

「仕方ねえなあ」

 ゾンビとの戦いは、ギルの予測どおり程なく終わりを告げた。
 アレクが首をかしげる。

「なんだったんだ?」

 その横でエディンが、しきりと頭を振っている。

「なんだ・・・・・・?眠気が・・・」
「しまったっ。【眠りの雲】だ・・・・・・わ・・・・・・」

 死霊術士の杖を握り締め呪文に抵抗しようとしたジーニだったが、あまりの魔力の強さに抗えず、杖にもたれかかる様に眠ってしまう。
 他の冒険者たちも深い眠りに落ちていった・・・・・・。
 がさり、とゾンビが飛び出たのと反対側の茂みから、藍色のローブに身を包んだ老人が現われる。

「なんだこいつらは?・・・・・・戦力になるかもしれんし、ボルラス様に判断を仰がねばな・・・・・・」

 そして振り返り命じる。

「おい、お前等はこいつらを牢に入れておけ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 うつろな目を瞬かせることも無く、生きた死体は老人の命に頷いた。

2012/12/12 21:00 [edit]

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Wed.

血塗られた村 2  

 聖北教会に到着すると、今回はあっさりレンフ司祭のところに通された。
 司祭は、何名かの青い顔にびっくりしながらも声を掛ける。

「いやどうも・・・・・・。突然呼び出したりしまして、失礼をいたしました」
「いえ、そんな事は気にしていませんから。そんな事よりも、我々を呼んだ理由をお聞かせ願えますか?」

ScreenShot_20121205_203940953.png

 いつもであればリーダーであるギルか、交渉役のエディンあたりが話を切り出すのだろうが、教会であることと二日酔いの影響がないことから、アウロラがまず口火を切った。
 レンフ司祭は軽く頷くと、少し戸惑ったような様子で仕事の話を始めた。

「以前我々の聖戦士団が、聖西教会の依頼で、ヴァンパイヤに襲撃された村の調査に行った事は、お話した事と思うのですが・・・・・・」
「確かゾンビパウダーの密売組織を殲滅する依頼を受けた時に、そんなこと言ってましたよね?」

ScreenShot_20121205_204126968.png

 何とか吐き気の呪縛から抜け出たらしいジーニが、記憶を探って応じる。
 相槌を打ったレンフ司祭が、小さなため息をついて続ける。

「・・・・・・実は遠征から1ヶ月以上たつのですが・・・・・・。いまだに帰ってこないのです」
「ええっ!?」
「それは妙ですね・・・・・・。聖西教会といえば、往復2週間といった所なのに、連絡もつかないのですか?」
「はい、まったく・・・・・・」

 アレクが驚きの声を上げた他の仲間を制して気になることを訊くと、レンフ司祭が肯定した。
 ”金狼の牙”たちが、アケビ村の海精霊を助けてから結構な日にちがたっている。
 ゾンビパウダー密売組織の殲滅はそれよりも前だったから、確かに、レンフ司祭の戸惑い顔も腑に落ちる話だった。

「そこで貴方がたに調べに行って貰いたいのですが・・・・・・。もちろんそれなりの報酬は支払いさせていただきます」
「もちろん引きうけますよ」

 一も二もなく請け負ったギルに、エディンは苦笑しながらも同意した。
 聖北教会からの依頼ならば払い渋りはないだろうし、報酬が相場よりも少しいいことは、前回の依頼で確認済みだ。

「そうですね、それは捨て置けませんね。やりましょう」
「おお、そうですか!では今回もラインを付けますので、道案内をさせてやってください」
「う・・・・・・」

 聖戦士ラインがいい人物であるのは間違いないが、それと同行するのはまた別の話だった。
 前回の依頼でも、彼の行動に少々困らされたのは記憶に新しい。が、依頼人の意向を無視するわけにもいかないので、エディンは愛想笑いで応えた。

「ではさっそく明日にでも出発します。それでは・・・・・・」

 ”金狼の牙”一行がその場を去ると、レンフ司祭は顎に生えた髭を擦りつつ独語した。

「神のしもべたる我々が、信仰する心を持たない冒険者達に望みを託す・・・・・・。神はどう見ておられることかな・・・」

2012/12/12 20:57 [edit]

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Wed.

血塗られた村 1  

 今は太陽も真上に昇る時刻。
 昨晩の大騒ぎが尾を引いたのか、二日酔いに悩まされた顔をしたパーティが、いつもの酒場で遅い朝食を取っていた。

「ん~・・・・・・駄目だわ、まだ頭痛い・・・・・・」
「あんなたくさん飲むからです。ほら、ジーニ。お水をどうぞ」
「ジーニ、大丈夫・・・?」

 髑髏のついた杖を抱き込むようにして、ジーニがカウンターに突っ伏して嘆くのを、挟み込むようにしてアウロラとミナスが世話を焼いている。
 隣の席では、青い顔をしたギルとアレクが頭を抱えて、しきりと呻いていた。
 エディンは、まだ寝床から起き上がる様子はない。一番酷い飲み方をしていたせいだろう。
 そうして宿の中が後悔のブルースに包まれ始めた頃、ドアが軋みをあげて開いた。

「おや、こんな時間にお客かな?」
「こんな時間に客ですか!?」

 困った連中を見下ろしていた宿の親父さんとアウロラが、顔を上げて入り口を見やる。
 つられて他の冒険者達がそちらに目をやると、見覚えのある男が神経質そうな笑みを浮かべている。

「やあ、お元気そうで・・・・・・」

 そこには、かつてゾンビパウダー密売組織の殲滅に協力してくれた、聖戦士ラインが立っていた。
 頭を抱えていた手をどうにか上げて、ギルが挨拶する。

「ああ、お久しぶりですね・・・・・・。え~とラインさんですよね。どうしたんですかこんな時間に?」
「はい、実はまた頼み事を引きうけてもらいたいのです。教会の方までご足労をお願いできますか?」
「また頼み事?」

 ぱちくり、とミナスが大きな目を瞬かせてから、二日酔いの面子を心配そうに見た。
 ミナスはまだ酒盛りに混ざるには幼く、アウロラはアルコールを飲む前に他の仲間の世話を始めたので、この二人だけはアルコールの摂取が行き過ぎた報いを受けていない。

「みんな仕事に行けるかな・・・・・・?」
「なんとかなるだろう・・・・・・」
「エディン。起きてきていいの?」

 ミナスが地の底を這うような声に驚き、階段のほうを振り返ると、寝床を無二の友にしていたエディンが降りてきたところだった。
 おそらく、ラインの話し声に気づいて自主的にやって来たのだろう。
 ミナスの差し出すコップの水を飲み干すと、急にしゃきっとした様子になって言った。

「私達の協力を欲するって事は、何か問題でも起きたんですか?」

ScreenShot_20121205_202831640.png

 ラインに問うと、聖戦士は真剣な顔で頷く。

「まあそう言う事です・・・・・・。詳しい事は教会の方でお話しますんで」
「リーダー、どうする」

 エディンは、頭痛の酷さに声を発することが困難なギルに訊いた。
 ギルの手が頭から離れ、サムズアップする。

「ああ、はい。引き受けるんだな。わかりました。では教会に行きましょう」

 ギルの代わりにエディンが答えると、ラインはほっとした様子になった。

2012/12/12 20:54 [edit]

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