思いすがるものども その4

 結果的に言えば――最後のゴブリンの集団はシャーマン種の率いるもので、冒険者側に多少の怪我はあったものの、一掃することに成功した。
 やはり、カノンやミハイルの支援魔法の効果も大きかったのだろう。
 ゴブリンたちをやっつけた後に発見した、近くに隠されていた2つの木箱には、それぞれ金貨と石版が入っていた。

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思いすがるものども その3

 エゴンから示された羊皮紙による洞窟の地図――前にゴブリン退治を引き受けた冒険者の手によるもの――は、どう見ても子供の落書きレベルにしか見えなかった。
 件の洞窟に来るまでに、森で狼を蹴散らしてから作っておいた松明の揺れる明かりが、余計に黒い線の描くぐにゃぐにゃした図形を見づらくさせている。

「今いるの、ここでいいよね?」

 リュミエールが目を細めて指差した、二股の部分を通り越した瘤のような空間は、今彼らがいる現在地であった。

「ああ、その通りだ」

 小さなフェアリーの確認に応じたのは、≪太陽を送る者たち≫の仲間ではなく、30代前半くらいの、苦みばしった浅黒い肌の男だった。ハイムというらしい彼は、前日の説明の時にエゴンが言っていた盗賊ギルドの人間である。はしっこそうな中肉中背の身体といい、挨拶した際の油断のない目の光といい、なるほど、リュミエールよりもよほどに修練を積んだらしい相手だと知れた。

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思いすがるものども その2

 エゴン・パージターという名前である依頼の担当者は、年の頃なら22歳であるモイラとそう変わらないぐらいの若い学者だった。金髪碧眼に甘いマスクをした優男でありながら、ざっかけない口調にて裏表なく話しかけてくる人で、≪太陽を送る者たち≫も、安心して話を聞く事ができた。
 研究テーマは下級妖魔の生態であり、本来なら専門はコボルト(犬妖魔)なのだという。
 そんな彼が、何故ゴブリンの掃討依頼をしたのかといえば……。

「ここ半年の間に、2回もゴブリンの巣にされた洞窟があるって話なんだ」

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思いすがるものども その1

 ≪太陽を送る者たち≫が、アズールの温泉町から帰ってきて翌々日のことである。
西方諸国でも指折りの交易都市であるリューンは、夜中に激しい通り雨が降ったために、ひいやりとした空気と湿った匂いがそこかしこに残っていた。朝日に暖められた地面は未だ少しぬかるんでいて、朝から道を行き交いする旅人や荷運びの業者が、うっかり足を取られることもあった。
 眩しい午前の光にちらちら舞う埃が見える中、≪のんびり柘榴亭≫の一階の食堂でも、比較的早起きの者たちが既に活動を開始している。

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