小さいことはいいことだ? その3

 肉体的ダメージはさほどじゃないものの、精神的ダメージに多大な影響を受けたフタバは、目が明らかに死んでいた。ハイライトをどこかに置き忘れている。
 横を飛んでいるリュミエールが、気の毒に……と言わんばかりの顔になっているが、とてもここでフタバへ声を掛ける度胸はない。粛々とついて行くほかなかった。
 たまにヘドロの塊を発見し、鼻を摘まみながら武器の鞘などで掻き分けるも、未だに目的のものは見つからない。暗い通路の中で、松明の明かりにより、伸びた影法師たちがゆらゆら揺れている。

「こうなると、なるべく早く、例の指輪を見つけるほかありませんね。僕もここにずっとはいたくないですよ」
「全く同意見です。しかし、指輪はどこに行ってしまったのでしょう」

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小さいことはいいことだ? その2

 リューンを出て、ちょうど2日。
 町の人から教えてもらった依頼人の家は、アズールの郊外にある森に囲まれていた。
 柔らかな緑の色彩の多い中で、木漏れ日があちこちに差し込んでおり、可愛らしい小鳥の声も聞こえてくる。あまりにものんびりした様子に、正直、拍子抜けしたといっても良い。
 フタバが扉をノックすると、開いて出迎えてくれたのは、聡明そうな整った面差しの、20代半ばくらいの女性であった。ドワーフが主に作製することで知られる高価な視力矯正器具――眼鏡をさりげなくかけている。
 白いシャツにスリットの入ったロングスカートを身につけていて、きびきびした印象を与える人だ。

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小さいことはいいことだ? その1

 ≪のんびり柘榴亭≫の女主人であるエセルは、以前に店の経営を任される前、この仕事のイロハを教えてくれた光り輝く――特に頭が――師匠から言われていたことがある。

「いいか、宿にはたまに、食材をありきたりの道具や調味料で暗黒物質に変えてしまう、恐ろしい人材が所属することがある。そういう人材を台所に入れるのは、自殺行為に等しい。宿の冒険者たちや自分の身が惜しいのなら、決して彼らを入れてはいけないよ」

 そういう人はデスコックという称号を持ち、周囲をとんでもない恐怖に陥れるという。

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