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階下に潜むモノ 5  

 アウロラやジーニ、ミナスが、手馴れた様子で補助魔法を唱えるのを横目で見つつ、ギルは途中で拾った、奇妙な目の紋様が入ったタワーシールドを構え直した。
 鑑定をしたジーニによると、これは≪邪眼の盾≫というもので、魔法回避率が高くなるらしい。
 斧と併用するのは・・・としり込みするリーダーに、ジーニは強気に言い放った。

「何言ってんの、アレクなんて慣れない魔法と精霊受け入れて、体内の魔力がしっちゃかめっちゃかなのよ?盾持つくらい、なんてことないでしょ」
「でも、なんで俺?後衛でもいいんじゃ・・・・・・」
「これね。邪眼の効果跳ね返す時、所有者が気絶してちゃダメなの。だから丈夫なアンタが持ちなさい」
「大丈夫ですよ、ギル。怪我したらすぐ癒しますからね」
『私もついていますよ』

 精霊含む女性陣に言われ、渋々ギルは盾を預かることとなったのである。
 そして、シェリの案内であちこちから水の流れ出している地下を駆け抜け、一行はとある大きな穴倉へと辿り着いた。

「ここ?」
「大きな破壊の跡・・・ここから地下水脈へと繋がっているわけだ」

ScreenShot_20121115_165027375.png

 ギルの台詞が終わると同時に、眼前に広がる水面が波立ち、大きく揺らめく。

「どうやら、この破壊の張本人が現れたようだな!」
「グオオオオオオ!!」

 雄叫びを上げつつ、巨大な海蛇が水からその首を持ち上げた。
 同時に、なんと一行の背後から、先ほども見た小型のバジリスクがやってくる。

「げ、挟み撃ち!?魔物の癖にやるじゃないの!」
「そんなこと言ってる場合か!俺が守るから、ジーニとミナスはこっちに来い!」

 エディンが怒鳴り、二人は慌ててその背中へと隠れる。
 ギルとアレクは大海蛇に向かって武器を構えた。

「よし、いくぜ!」
「おお!!!」

 勢いよく飛び出した一行は、エディンの重い一撃と召喚されていたスネグーロチカにより、背後からの強襲の憂いをまず取り除いた。
 ギルが気迫をこめた縄の操縦術で海蛇の移動を一時的に止め、アレクが追撃をかける。

「よっし、ここまで計算どおり!」
「計算なんか・・・・・・してたのかよッ!」

 恐慌状態に陥った海蛇を見て、アレクがにやりと笑みを浮かべる。
 だが、大海蛇の横に漂っていた眠りの雲の成分が、ミナスの小さな体を包む。
 ミナスは音もなく倒れ伏し、ギルが慌てた。

「うわわ、ミナス!?」
『大丈夫、あの子は眠っただけ・・・・・・。私が起こしましょう』
「頼む」

 体内にいるシェリと交信したアレクが走る。
 大海蛇は縄の拘束を引きちぎり、傷を再生させるが、追い討ちをかけるように、ジーニが再生した傷の上から【魔法の矢】を突き刺した。

ScreenShot_20121115_165457390.png

 さらなる憎々しげな咆哮。
 それに気をとられたアウロラが隙を見せてしまい、かなりの傷を負ったものの、

「っ!!これで終わり、だああ!」

ミナスが野人・ファハンの石つぶてに紛れ、小さなナイフを投げつけると、それは狙い過たず、大海蛇の口の中へと吸い込まれた。

「ギャアアアアアウウウウオオオオ・・・・・・」

 長大な体でのた打ち回り、しばらく大海蛇は咆哮をあげていたが・・・・・・やがて、最後の一声の響きが済むと同時に、水の中へと沈んでいった。
 それを見届けたらしいシェリが、アレクの体から離れてまた実体化する。

『皆さん・・・ありがとうございました。これでこの神殿も、元の姿に戻ります』
「別れの時間だな・・・・・・」

 そう呟いたアレクに、シェリは愛しげな目線を向けた。

『ひと時とは言え、主となった方よ。私はここで結界を張りなおさなければなりません・・・再び破られる事のないよう・・・強固な結界を』
「ああ。短い時間だったが、世話になった」
「シェリ、元気でね!」

 それぞれに別れを告げるアレクとミナスの後ろから、ひょっこり手を上げてジーニが言った。

「あのー、ね?お礼は?」
『そう・・・お礼の事ですが・・・上の階層の私が石像にされていた場所を調べてみてください。きっと皆さんのお役に立てる物と思います』

 また、途中の扉の部屋には、珊瑚でできた指輪もあると言う。
 収入に満足げに頷いたジーニが、弾んだ足取りで帰ろうとするのを、アウロラとエディンが慌てて止めながら追いかける。
 ミナスの手を引っ張って、ギルもその後に続いた。
 彼らを「やれやれ」と言って追ったアレクが、階段に足を乗せたところで、もう一度だけシェリに視線を向けたが結局何も言わず、確固とした上り方でその場を去っていった。

 状態異常を治すマジックアイテムや指輪を回収した一行は、その足でさっそく村長の家へと向かった。
 事情をつぶさに説明すると、

「魔物達を追い払ってくださったか!これでまた漁に出る事ができる・・・」

と、村長は安堵した。

ScreenShot_20121115_170706781.png

 報酬の500spを受け取ると、アケビ村に留まることもなく冒険者達は宿へと帰還した・・・。
 神殿は元の姿を取り戻し、村には再び活気が戻ってきた。
 彼らの活躍はこの小さな村で、永らく記憶に留められる事になるだろう。

※収入500sp、≪精霊杯≫≪神殿の鍵≫≪邪眼の盾≫≪珊瑚の指輪≫≪願いのアンク≫【召雷弾】入手※

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■後書きまたは言い訳
14回目のお仕事は、寝る前サクッとカードワースフォルダより、ABCさんの階下に潜むモノです。
大海蛇を退治するシナリオなのですが、短い中に戦闘ありお宝あり美女(?)ありの、いろいろ詰め込まれたお話です。
サクッとできるのに、下手な行動を取るとたちまち厳しい戦闘が待ち構えているので、とてもやりがいのあるお仕事だと思います。

作者のABCさんにはその意図はなかったと思うのですが、うちではシェリを【海妓召喚】の海精シレーネの亜種として扱っています。
ご存知の方も多いかと思いますが、これはMartさんの碧海の都アレトゥーザにて教わることのできる技能で、同じ海の精霊同士ということを鑑みて、何らかの関係があった方が面白いと思い、ミナスにそのように説明させました。
それに絡めて、ミナスのお母さんについても出してみました。想い出では美化されていますが、シレーネのほかにウムガルナやナパイアスも使う豪快なお母さんです(笑)。

また、精霊を連れ歩くことができるので、チラッとアレクの家庭環境についても出してみました。
本文中にもありますが、彼は精霊剣士と魔法使いの間に生まれた子で、父そっくりの美男子なのですが、それゆえにコンプレックスを抱いています。精霊に父ほど親和性がないことも一因ですね。
私としては、アレクをこれから魔法剣士に育てようと思っているのですが・・・さて、どうなることやら。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。
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2012/12/10 20:25 [edit]

category: 階下に潜むモノ

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Mon.

階下に潜むモノ 4  

 ミナスの精霊力の感知を頼りに一行が行った先には、小型のバジリスクがいたのだが、それを倒すことで手に入れた杯で、精霊の封印を解き呼び起こすことができた。
 力を取り戻し、石像から本物の精霊へと姿を変えた海精は、小さな手に精霊杯を掲げ持つミナスとその仲間に微笑みかけ、清らかな声で言った。

『あなた方が私をもとの姿に戻してくれたのですね・・・ありがとう、私は精霊のシェリと申します・・・』
「僕はミナスっていうんだ。元に戻れて良かったね、シェリ!」
「さっそくだが・・・・・・聞きたい事がある」

 興奮しているミナスを押さえ、エディンが一歩前に進み出る。

「この神殿、どうして魔物が住み着いてしまったんだ?」
『はい、それは・・・。この神殿の結界が破られてしまったからです。そのため魔物達が侵入し、私も石に変えられてしまいました』

ScreenShot_20121115_161358953.png

「結界が破られたあ?」

 すっとんきょうな声をあげたのはジーニである。
 彼女は長く魔術の勉強をした者として、こういった特別な造りをした遺跡に施された結界が、簡単に解けるような代物ではない事を知っていた。

「いったい、なんだってそんなことになったのよ?」
『結界が破れた原因は・・・地下水脈より巨大な魔物が現れ、神殿の地下が大きく破壊された事にあります』
「あちゃ~・・・・・・物理的損壊か。そりゃ、結界が破れるはずだわ・・・」
「巨大な魔物・・・」

 エディンの興味は、結界よりもむしろ敵の正体であった。
 しかし、シェリは明確にそれに答えようとせず、凪いだ湖のような佇まいでさらなる言葉を発した。

『結界を張り直さなければ、この神殿はずっと魔物の住処のままです。皆さん・・・どうか私に力を貸してください。もちろんお礼は致します』
「そのつもりで来たのさ」

 得意げに鼻をうごめかせるギルに、海精シェリは喜色をあらわにして言った。

『本当ですか・・・ありがとう!』
「その地下の魔物とやらをやっつければいいんだろ?」
『ええ。地下へ行く為に雷属性の魔術が必要です。あなた方の誰かに、その魔術を授けましょう』

 精霊魔法かと思ったが、聞けば、この遺跡を作り出した古代人達が置いていった呪文書なのだと言う。
 一行の目がジーニをまっすぐ捉えたが、彼女は残念そうに首を横に振った。

「悪いけど、今回ばかりは私以外を選んでちょうだい。これ以上身体に魔術を修めると、魔法バランスが崩れちゃうわ」
「しかし・・・・・」
「俺がやる」
「アレク?」
「海精シェリよ。それは、欠片でも素養があれば唱えられるものか?」
『はい、ごく初歩の魔術ですから・・・』
「ではその雷属性の呪文を俺に宿してくれ」

 突然何を言い出すのかと心配そうに眺める仲間達に、アレクは小さく笑いかける。

「大丈夫だ。俺の母は魔術師だった。だから俺も魔法剣を扱えるんだ」

 ギルは「そうだったな」と言った。アレクの父が優秀な精霊剣士なら、アレクの母は偉大な魔術師だった。
 幼くして類のない聡明さで賢者の塔に入り、早くから魔法を意のままに操ったという彼女の逸話は多い。
 海精は端麗な指をアレクの白い額にあて、【召雷弾】を彼の体に宿した。

ScreenShot_20121115_162732906.png

『この魔術を、北の部屋の壁の装飾に向けて使用すれば、地下への道が開きます』
「おお、あのプレートがあったところか」
「なるほど、そういう仕掛けだったのですね」
『あなた方の幸運を祈って・・・』

 さらに、海精シェリはアレクの剣に口付けると、霞のようにその姿を変えて彼の中へと入っていく。

『一時的な契約ですが・・・・・・これで、私もあなた方に同行し、その傷を癒すことができます』
「にわか精霊剣士、というわけか」

 わずかに苦い影を含みながら、アレクがその端正な顔を歪めると、元気付けるようにギルが背中を叩いた。

「お前はお前、父親は父親だろ?頼りにしてるからな、アレク!」
「・・・・・・ああ、そうだな。任せておけ」

 アレクは、いつもこうやってギルが憂いを退けてくれることを思い出していた。

2012/12/10 19:52 [edit]

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Mon.

階下に潜むモノ 3  

 そうして進んだ一行の前に、上半身が馬で下半身が魚の形をしたモンスターが現れた!

「あ、ケルピーだ!」

 ミナスが慌てて後ろに下がる。

「けるぴー?」

 たどたどしい口調のギルに、ミナスが早口で説明した。

「こいつも海の精霊の一種なんだけど、水で相手の顔を包み込むんだ。たまに、水際で遊ぶ人を溺れさせたりもする。僕、苦手・・・・・・」
「ははあ。さては、お前もこいつに溺れさせられた口だな?」
「おい、そんなのんきに構えてる場合じゃないぞ、ギル!!」

ScreenShot_20121115_151548984.png

 アレクが水の槍と化したケルピーの尻尾を切り落とし、叫んだ。
 危うく難を逃れたギルが、素早く回り込んで攻撃に移る。

「そうはさせるか・・・よっ!」

 【薙ぎ倒し】をされたケルピーは、その数を一匹に減少させた。
 すかさず、【雪精召喚】に成功していたミナスが、生き残りの敵に襲い掛かるよう命令する。

「スネグーロチカ、お願い・・・!」

 ――戦闘はあっという間に終わった。
 ケルピーが中々レベルの高い敵であることをミナスから教わった一行は、ではもしかしたらボスが近いのではないか、と言って辺りの探索を始めた。

「んっと・・・あれ・・・?」

 すると、ミナスの精霊感知に引っかかるものがある。
 小さな体が導かれるようにして進むのを見て、慌てて仲間たちが走り出す。

「ミナス、どうしちゃったのよ!?」
「おい、勝手に行くな」

 周りに一切構わず、ミナスが清浄な濃い水の力を追っていくと、美しい海精を象った石像が中央に置かれている部屋へと辿り着いた。

「ここだ・・・・・・ここに精霊がいるよ、みんな!」
「え?」

 秀麗な顔を興奮で赤らめたミナスの言に、驚いたようにアレクが辺りを見回す。
 父は優秀な精霊剣士であったが、アレクにはその才能がほとんどないのでよく分からなかった。

「ねえ、君、海の精霊でしょ?お願い、僕の呼び声に応えて!」

 しかし、美しいその像は沈黙を保ったままだ。

「どうしちゃったんだろう・・・・・・精霊の力は、確かにここにあるのに」
「・・・・・・ひょっとしてさあ、彼女、封じられてるんじゃない?」
「封印、ですか?」
「うん。ほら、神殿なんかもそうだけど、こういう『何かに祈るための遺跡』って、その土地固有の気脈とか周りの環境なんかと上手く合致すると、たまーに強い力を得ることがあるのよ」
「そういえば・・・・・・水路を流れる水はとても清浄ですね。海精に力を与えるために、こういった遺跡の造り方をしていると考えることもできます」
「この神殿も、そういう特別な場所なんじゃない?でも、精霊を遺跡に現れた魔物が封印して・・・・・・」
「精霊力が働かなくなり、海が荒れだした」

 ジーニやアウロラの推測の最後を受けて、アレクがぽつりと呟いた。
 我が意を得たり、といった様子でミナスが頷く。

「きっとそうだよ!この子、早く助けてあげよう」
「しかし、助けると言ってもな・・・・・・」

 難しい顔をしたアレクに、ミナスが言い募る。

「大丈夫。この海精に共鳴した力の塊が、微かだけど感じ取れる。それをここに持ってくれば、その封印も解けるよ、きっと!」
「近いのか?」
「うん、ここからそう遠くないよ」
「分かった。ミナス、案内してくれ」

 ギルが信頼をこめた目でミナスを見つめ、幼いエルフは真剣な顔で頷いた。

2012/12/10 19:48 [edit]

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Mon.

階下に潜むモノ 2  

 ごつごつした岩や針葉樹に覆われた中を進むと、白い像を祀った遺跡の入り口が現れた。
 崩れかけた入り口をくぐった一行を迎えたのは、妙に無機質で真っ白な石に覆われた部屋だった。
 入って左手に木製の扉、右に細い通路が続いており、上を仰ぐとそこにも通路が覗いている。

「気をつけて、みんな。・・・水の精霊の力が、妙にざわめいてる。やっぱり、精霊達を阻害する奴がいるみたいだよ」
「ミナスがそういうなら確かだろう。用心していくぞ」
「ああ。まずは俺に探らせてくれ、リーダー」

 手近な扉を調べたエディンは、硬い表情で静かに下がり仲間に言った。

「・・・怪しい・・・・・・ここから先は気をつけて進んだ方が良い・・・」
「よし、アウロラ、ジーニ」

 海精と交信するまで、ミナスに無駄な体力を使わせないようにしよう、というのが一行の方針であった。
 なので、ギルの小さな呟きに応えた仲間は二名。【祝福】と【魔力の障壁】をかけ、一気に扉の先へと進む。
 突然、背後の扉が閉まった音がした。

「何!?」

 驚きの声をあげるギルの視界を塞ぐように、泥のゴーレムの出来損ないに見える敵が3体出現する。

「嫌な予感はこれか・・・・・・」

 武器を抜き放ってエディンが舌打ちし、手近な敵に襲い掛かった。
 敵が複数と見て、アレクとギルも【飛礫の斧】と【薙ぎ払い】を準備する。
 攻撃力自体は大したことないものの、その敵は縦横に戦場を駆け回る戦士達の防御力を下げる特殊能力を持っていた。
 ジーニが眉を潜める。

ScreenShot_20121115_145626203.png

「なんなの、こいつら?せっかく私が唱えた呪文を、なんだと思ってるのよ!」
「落ち着け、ジーニ!俺とギルだけで近接戦闘を仕掛ければ良い話だ、遠距離攻撃は頼む」
「もう、簡単に言ってくれるわね、アレクったら」

 ぶつくさ文句は言いながらも、ジーニは【火炎の壁】の詠唱に入る。
 結局はその呪文がトドメとなり、モンスターは小さな宝箱を落としていった。

「お、なんだろうな?」

 エディンがざっと調べると、鍵も罠もなかったのでそのまま蓋を開ける。
 中には、白い石で出来た鍵が納まっていた。

「これ、外にあった石像と同じ材質じゃないでしょうか?」
「じゃあこれ、神殿内のどこかを開ける鍵じゃないの?」

 女性2名が交わす会話に、アレクが無言で頷いた。

「かもしれん。とにかく、一休みしたら探索を続行しよう」

 移動を続けると、やがて三叉路に行き当たった。
 先ほどのと似たような扉がひとつ、細い通路が2つ。

「扉は・・・・・・さっきみたいにモンスターがいるかもしれないわね」
「んじゃ、通路を進むか?」
「うーん・・・・・・」

 唸り声を上げてからエディンが聞き耳をすると、どうも左の通路には敵がいそうな物音がしている。
 扉の向こうはよく聞き取れないということだったので、一行が選んだのは、水音がするという右の通路であった。
 通路の向こうでは、白い壁のかなり上方に穴が開いており、そこから清浄な水が水路に流れ込んでいることが分かった。

「おい、ギル。あの穴の横を見ろ」
「うん?」

 幼馴染に促され、ギルも彼の視線を追ってみると、水が出てくる穴の横に、古代文明のものらしいプレートのようなものがはめ込まれている。

「ここからじゃよく分からないな・・・・・・」
「ギル、そういえば一番最初の部屋で、上に通路があったでしょう?どこからか、2階に上がることができるんだと思いますよ。そうしたら、あれも調べられるんじゃないかしら」

 アウロラの台詞に、エディンが首を傾げる。

「だが、あんなに水が流れ落ちてたら調べるのも一苦労だぞ?腰にロープを巻けば、何とかいけるかもしれないが、危険は免れない」
「もっと先に、何かあるのかもしれないな。よし、もう少し進んでみよう」

2012/12/10 19:46 [edit]

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Mon.

階下に潜むモノ 1  

 リューン北東の小さな漁村、アケビ村。
 この村は、精霊の恵みによる近海での漁で、人々の暮らしが支えられているらしい。
 そんな折、精霊が住むといわれる村外れの神殿に、魔物の群れが住み着いた。

 ――今、”金狼の牙”たちの目の前に座る、白髪を綺麗に後ろへ撫で付けた村長が出した依頼書には、そう書かれていたのだった。

「おぉ・・・!あなた方が狼の隠れ家の・・・」
「はい。詳しいお話を聞かせてもらえますか」

 重い荷物を下ろしたアレクがそう言うと、村長はおもむろに語り始めた。

「アケビ村は、近海の漁により生計を立ててきた村です。それがこのごろは、その海が荒れ、とても漁に出られるような状況ではありません」
「そこまでは依頼書のとおりだな」
「はい。嵐の原因はおそらく・・・海精の神殿にあると思うのです」
「海精・・・」

 ぽつりとミナスが呟いたのを見て、ギルが言った。

「知ってるのか、ミナス?」
「うん。多分、海の精霊シレーネの仲間だと思う」

 ええと、とミナスは少し困ったような顔をして説明を始めた。
 ミナスは元々、水や氷の精霊と親和性が高いエルフの一族に連なる者だ。
 ”金狼の牙”に加わる前から、微小とはいえ水精・ウンディーネの力を借りることが出来ていた事からも、その才能の一端は知れるだろう。
 そんなミナスの母親が習得していた呪文のひとつに【海妓召喚】というものがあり、敵を沈黙や恐慌などに陥れ、味方を鼓舞する海の精霊を召喚することが出来たという。
 極めて術者の心の動きに敏感なため、戦闘時以外は姿を見せることは稀だというが・・・。

「『彼女達と交信しようと思ったら、強い意志と素直な心が肝心ね』って、お母さん言ってた。その神殿にいる精霊が、土地の守り神として長く定着していたら、少し能力なんかは変わっているかもしれないけど、話しは通じると思うよ」
「よし、ちょっと依頼に光明が見えてきたな!」

 嬉しそうに言うリーダーに頷いて、ミナスが村長に話の続きを促した。

「で、その神殿って・・・」
「はい。海に恵みをもたらしてくれる精霊を祭った神殿なのですが・・・その神殿に最近になって、恐ろしい魔物達が住み着いたのです。村の者達はこの魔物が、海の荒れの原因と言っております」
「そういうことはあり得るのか?」
「うん。もし、魔物達が神殿を瘴気で冒していたりしたら、精霊の力が届かない事もあると思うよ」
「本当に魔物達が原因であれば、神殿から追い払えばオーケーってことね」

 ギルにも分りやすくジーニが解説すると、彼は体勢を改めて村長に言った。

「そうか・・・よし、じゃあ俺達でも何とかなるだろう。依頼引き受けるから、とりあえず神殿の場所を教えてくれるか、村長?」

ScreenShot_20121115_143152046.png

「おぉ!頼まれてくれますか。ありがたい・・・。神殿は村を出て西に進んだ場所にあります」

 目印となるものの具体的な説明を受けた一行は、さっそく海精の住む遺跡へと向かった。

2012/12/10 19:42 [edit]

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