バリアントの洞窟その4

 6人連れのパーティになった一行は、リューンから一時間ほど掛かるマイヤー養鶏場へ訪れた。
 森の端に作られた養鶏場は森にある敷地部分を高い杭で囲んであり、かなり広い土地を駆け回る放し飼いが基本らしい。卵を産む雌鶏たちでさえ、小屋の定位置に押し込められて餌を詰め込まれるのではなく、いくつか抱卵に適当そうな東屋があり、気に入った場所で産んでいくスタイルであるようだ。

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バリアントの洞窟その3

 慌ててカウンターにとって返したエセルの目に、初めてお目にかかる男女が飛び込んできた。
 後ろからついてきたフタバも彼らを認め、あらと声を漏らす。
 朗々と響く声で自己紹介を始めたのは、色んな人種の入り混じる交易都市でもあまり例のない紫色の髪を、胸元近くで切り揃えた僧侶だった。たとえ捧げ持つ聖北の印がなくとも、衒いなく相手を真っ直ぐ見つめる彼を見れば、難なく職業を言い当てることができるだろう。
 妙なのは、癖のない長い金髪を背に垂らした清廉な印象の女戦士が、目を伏し気味にしてやや斜め後ろで佇んでいることであり――物腰からすれば正式に剣の訓練を受けたらしい彼女が、どうして下級の聖職者に付き従うようにいるのか、関係性がまったく見えないことである。

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バリアントの洞窟その2

 エセルは元・木こりの少年とフェアリーという奇妙なふたり連れに、じゃが芋をたっぷり使った朝食を出してやった後、店の名前の由来になった柘榴の描かれた看板を磨くため外に出た。
 ここはそもそも、後継者がいなかったために潰れてしまった普通の宿屋があったのだが、どういう伝手があったのか、エセルが世話になった≪狼の隠れ家≫の亭主が建物ごと土地を買い取り、エセルへ新たな冒険者の宿を経営するよう頼んだのである。
 向こう3年間は、売り上げのいくらかを≪狼の隠れ家≫に送るのだが、その後は独立採算で続けていくことになっている。

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バリアントの洞窟その1

 小高い丘の上で一息ついたそばかすのある少年は、木を伐採するのに使った斧を逆さに立てて寄りかかり、ぼんやりと眼下に広がる光景を見ていた。
 森の異なる色調の緑が重なるその向こう、細くたなびく雲が幾層にも空に漂い、青い影を互いに落としこんでいる。虹等とは違い、特別に美しい現象でもないのだが、ふとした時に見惚れてしまうような魅力があった。
 少し前の地震で、重い家具を妙な体勢のまま支えようとして腰を捻った父に代わり、ここ5日間は少年が1人で木を切っている。
 その合間にできた新しい小さな友人は、まだ彼の元へ来る様子がなかった。

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