Fri.

新人と私その5  

 気密性の高い、(ミカを抜かして)男だらけの狭い部屋の中に、ぱっと花が咲いたようである。
 堂々と大きな花弁を何重にも開く、匂い立つような艶やかな花――だが、その色は毒々しいまでの血の赤であることは間違いない。
 胸をそらすようにしてにこやかに現れたその女性に、少し戸惑ったような顔をしていた男は、気を取り直して声を掛けた。

「…ほお、お前も来たのか。これまた随分なタイミングだな。で、ここの事は話さなかったが良く場所が分かったな?」




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2017/04/28 19:25 [edit]

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新人と私その4  

 山中の獣道は、確かに心得のない人間にとって、道案内をしてくれる相手がいなければすぐ見失ってしまうようなものであった。
 だが、妖精のムルによって森や山の歩き方を習い、多々ある植物の判別が容易につくようになってきているミカにとっては、あまり困難な道ではない。

(だから……出来れば、断りたかったんですけど……。)

 やはり自分だけでも良かったか、とミカは気が重くなった。
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2017/04/28 19:21 [edit]

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新人と私その3  

 綺麗に整えられた部屋の中で、壁に掛かった絵や胡桃材の書き物机を物珍しそうに眺めているレイをよそに、その男性は淡々と口を開いた。
 彼は今しがた、ミカがリューンから運んできたオルゴールの木箱を受け取り、受領についての証明書を羊皮紙に書き記したばかりである。

「…遠い所わざわざご苦労さん」

 年の頃なら50歳前後――彼が、アントゥルの村の長である。
 落ち窪んだ双眸や頑固そうに引き結ばれた口は、少なくない責務を預かる男のことを、雄弁に語っているようだった。
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2017/04/28 19:19 [edit]

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Fri.

新人と私その2  

 リューンの数ある通りの中でも、最も有名な住宅街の”木の葉通り”。
 冒険者が探せば、たくさんの知り合い(依頼人等)が住んでいる通りでもある。
 井戸端会議をして高笑いする主婦たち、追いかけっこをして遊ぶ子供たちなど……様々な人が、それぞれの持つ時間を有意義に使っているように見えるだろう。
 凝った装飾がついていたり、端整なレンガ造りだったりする建物が多い中で、ミカとレイが訪れたのは、白い外壁を持つ一軒家だった。
 今回の依頼人たるティルア・ライン嬢の家である。
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2017/04/28 19:16 [edit]

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Fri.

新人と私その1  

 やや曇りがちな空の広がる、雨が上がった朝のリューン。
 やっと乾いてきた地面を選ぶようにして足を出し、若者たちが騒がしく去っていく。
 青物を扱う店舗では、果実や根菜の詰まった樽を奥から取り出し、新鮮に見えるよう朝日に当てて、通りかかりの主婦に声を掛け始めていた。
 そんなつかの間の明るさを見せている街中で、スラムにほど近い一角に、冒険者の店である≪狼の隠れ家≫があった。

新人と私

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2017/04/28 19:13 [edit]

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