緊急の依頼にてその4

「やはり――」

 ガウスは得心がいったような顔でそっと目を閉じた。

「アレは本当だったようだな…。人間よ…ここまで来るとは」

 彼が”森閑の悪魔”に聞いていた情報は、間違いなかったのだ。
 支配している魔獣たちが全滅したことを感知し、ガウスはぐるりと周囲を見渡した。
 実に稚拙な悪魔や魔獣たちを召喚するための魔法陣。
 召喚した対象を研究し、解剖し、合成し尽すことを意図した設備。
 相手の魔力を抑えるために拵えられた、いくつかの魔法の品。

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緊急の依頼にてその3

 レイスに似たローブ姿の生物が新月刀で斬りかかって来るのを、小柄な肢体が俊敏な蜂のように回避し続ける。
 死霊かと最初勘違いしたのだが実体はあるようで、アンジェの振るう糸や短剣は確実に相手へダメージを及ぼしていた。
 先ほど、Cブロックで奮闘している研究員からの援護要請に引き続き、悲鳴も聞こえてきていたのだが――今では、不気味なほど沈黙を保っている。
 さらにアンジェへ追いすがろうとした敵を、ロンドがスコップの一閃で吹き飛ばす。

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緊急の依頼にてその2

 集合場所でまず目を引いたのは、大剣一本を背中に負った金髪の青年だった。
 美丈夫という訳でもなく、どこの冒険者の店でも見かける風貌をしているが、滲み出る雰囲気はそこらの駆け出しや中堅とは一線を画している。
 青年の隣に立つ女性は、黒髪に黒い瞳と色彩的には地味なくせに、その麗姿は傾国の美女もかくやといった様子だ。
 ……しかし、その見た目とは裏腹に、装備している武器が鎌・刀が二本・槍とずいぶん物々しい。
 使い込んだ武器というのがすぐに分かるほど、全ての装備が違和感なく装備されている。

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緊急の依頼にてその1

 魔界において数多い派閥の中でも大勢力のひとつである魔王ディアーゼとその軍勢が、たかが人間の冒険者たちごときに滅ぼされたという噂は、相手を騙すのが本能といっても過言ではない悪魔たちにとってにわかに信じがたいことだった。
 だが、その斥候を務めていた”森閑の悪魔”が罠に嵌められていなくなった後も、ディアーゼ側の動きは全く見られず、ついには魔王の片腕と見做されていたフレッシュゴーレムの女が、なんと人間に負けて向こうの世界に居座っているとなると、その信憑性もいや増すというわけだ。
 いつしか――では、魔王を滅ぼした冒険者とやらに打ち勝てば、あの大勢力を率いていた悪魔よりも実力が上だと示せるのではないかなどと、埒もない話が伝播していった。
 そんな中である――かの”森閑の悪魔”が戻ってきたのは。

緊急依頼

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