Fri.

永遠なる花盗人その4  

 彼らが訪れたそこは、まさしく秘密の花園だった。
 ありとあらゆる花が敷かれた極彩色の煉獄であった。
 びょうびょうとどこからともなく吹きつける強風が、無数の花弁を宙へと舞わせている。
 視界にそれを捉えたウィルバーがいち早く正体に気付き、

(……冗談ではありません)

と心の中で呻いた。
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2016/12/09 03:02 [edit]

category: 永遠なる花盗人

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永遠なる花盗人その3  

 赤と黒に揺れる未知の視界の中、少女は花にリボンを添えていた。
 その指先が淡く、赤く光ると、花の輝きと絡まって、少女の足元に液状の影を落としていく。
 訝しく思ったシシリーが口を開いた。

「……一体、何を」

 呟いた質問に応えがあることは期待していなかったが、はたして声が返ってきた。

「……花を育てているの」
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2016/12/09 02:59 [edit]

category: 永遠なる花盗人

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永遠なる花盗人その2  

 シシリーが未だ、少女の咲かせる白昼夢の最中にあった頃。
 リューン郊外の森――その昔、旗を掲げる爪が、魔女の薬草探索依頼を受けて訪れた場所だ。
 失明の危険がある娘を救うため、森のあちらこちらを探索し尽くしたつもりだったが、今いるのはかつて踏破したエリアから僅かに外れている地点である。
 質素だが整頓された小屋の中は元々木こり用のものだったようだが、けして居心地の悪いものではなかった。
 真新しい「白」い包帯で右半身を隠している男が、古い茶器で客にハーブティーを淹れる。
 この痛々しい姿の青年こそが、今回の依頼人で、ミカに植物系魔術の手ほどきをしたロバート・ライリーであった。
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2016/12/09 02:56 [edit]

category: 永遠なる花盗人

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永遠なる花盗人その1  

 ステンドグラス越しの月光を受けるシシリーの聖印は、真昼時のような影を彼女の胸に落としている。
 聖印の持ち主は、ようやく血色が元に復しつつある顔を仰いだ。
 春の海と同じ色の瞳に映るのは、リューンの郊外にある廃棄された聖北教会の内部である。
 ベルトポーチから開放されている光精の一種であるランプさんや、フォウの眷属であるスピカの照らす中の様子は、この教会が司祭の手から離れて久しいことを如実に示していた。
 鼻腔に侵入してくる黴臭さに、少女の傍らにいたアンジェが眉間に皺を寄せた。

「ひどく荒れてるね。……あんまり長居したくないな」
「そうね、私もよ。ミカ、平気?」
「ええ、私は大丈夫です……ひっ」

 ビクリと身を震わせた赤毛の女性の影法師を、小さな鼠が這い回っていた。

花盗人

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2016/12/09 02:52 [edit]

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