Wed.

Through the holeその4  

 嫌な夢から醒めたロンドは、自分が今いる牢屋の暗がりに、人のものとも獣のものともつかぬ大量の骨がみっしりと詰められていることや、乾涸びた人間の死体が折り重なっていることに気付いていた。
 だが、内臓が綺麗に持ち去られ、皮が丁寧に剥ぎ取られ、骨が余すことなく刳り貫かれていたそれらによっては、彼は恐怖を引き起こされることがなかった。
 つまり、と彼はひとりごちる。
 どうもロンドにとって怖いのは、

(置いていかれることなんだろうな…)

ということが分かった。
 もう必要ない、と。
 そう仲間たちから判断されることが恐ろしいのである。
 だからこそパーティの重戦士として誰よりも前に立ち、敵の攻撃を引き受けて暴れ回っていた。
 命を賭けて己の役目を全うすることで、自分の存在価値を示してきたのである。
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2016/09/07 11:45 [edit]

category: Through the hole

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Wed.

Through the holeその3  

 辺りには無数のねずみの死骸が転がっている。
 幾つかは下水の流れに乗って、上下に揺られながら遠ざかっていったようだ。
 ぴとん、ぴとんと雫の垂れる音が響く。
 鋼糸についたねずみの血を丁寧に襤褸切れで拭き取り、腕輪に武器を収めるとアンジェは言った。

「まったくさぁ……兄ちゃんを連れて行くに事欠いて、下水はないよね」
「だよな。暗いところは今までも出入りしてたが…臭いがな」

 テーゼンの嗅覚には、この冷たく湿気た迷宮に独特の臭気が届いている。
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2016/09/07 11:42 [edit]

category: Through the hole

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Wed.

Through the holeその2  

 リューンでも老舗に分類される、いつもの≪狼の隠れ家≫のカウンター。
 呪いを受けたから姿が変わらないだの、実は不老不死の手段を手に入れたのだの、色々と噂されている宿の亭主は、珍しくカウンター前に集ったあるパーティへ視線を向けた。

「……で、本当にどこにもいないわけだな?」
「……うん。ほんとーに、いないわけ。兄ちゃんが」

 アンジェを筆頭に、旗を掲げる爪の面々は疲れた様子でカウンターにもたれかかった。
 子どもをからかうような口調――いや、アンジェは正真正銘の子どもだが――で、宿の亭主が肩をそびやかしながら尋ねる。
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2016/09/07 11:40 [edit]

category: Through the hole

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Wed.

Through the holeその1  

 重々しい音が響いた。
 固い木材と――金属に覆われた重量が叩きつけられる、音。
 ロンドは今しがた痛めた肩を武骨な手で覆いながら、目の前のドアを睨み付けた。
 彼が現在いるのは、いつもと同じ宿――リューン市内でも老舗に分類されている≪狼の隠れ家≫の一室、テーゼンやウィルバーと一緒に使っている三人部屋なのだが。

「畜生……何だって開かないんだ?」

 ドアに鍵は掛かっていない。
 日の出と共に起きて身支度を整え、簡素な鍵を開けてからノブを捻ったのだから、施錠されていないのは当たり前だというのに、開く扉が今回に限って開かなかった。

地下水道
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2016/09/07 11:39 [edit]

category: Through the hole

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