遺跡に咲く花 4
素早くきわめて危険なガーディアンとの闘いは、はっきり言えばパーティが押されていた。
なんとなれば、まず最初に妖しい蜂どもは、攻撃の要であるギルとスネグーロチカに守られていたミナスを麻痺させたのである。
続けて、【火炎の壁】で一掃しようとしていたジーニまでもが蜂に刺され、一行の頭に危険信号が灯る。
だが、幸い、この蜂の毒は持続力が弱いものだったようで、【血清の法】を施されたミナスを含め、すぐに全員が戦線に復帰した。

体勢を立て直した”金狼の牙”は、すぐさま反撃に移り、蜂を倒した。
戦いが終わり全員がその場に腰を下ろしたが、エディンだけが、「この辺りから蜂が出たような・・・」と水槽の部屋を調べ直している。
その合間にアウロラが【癒身の法】を唱えて、全員の体力を回復させた。
「隠し扉だ!!」
エディンの興奮した囁きの後、また壁の一部がせりあがり、扉がもうひとつ出現する。
その部屋の向こうは、あいにくと何もないのだったが、鍵を内側から自由に開閉できることができたので、しばらく一行は休憩を取ることにした。
気を取り直して水槽の部屋からさらに先へと行くと、突き当たりの向こうで聞きなれない音が響いている。
「な、なんや?今の音は・・・」
「気をつけたほうがよさそうだ・・・もう一戦あるかもな。おい、リーダー」
「そうだな。リィナさんは、念のため扉の影に隠れててくれ。おい、みんな。さっき休憩したばっかりだから、大丈夫だよな?」
全員が彼の意を汲んで頷き、また戦闘態勢を整えた。
扉を潜ると、そこに待ち構えていたのは・・・。
「こ・・・こいつは・・・」
「きゃぁ!!」
ジグとリィナの反応をあざ笑うかのように、その通路に横たわっていたのは赤い大百足だった。
そのおぞましさに、アウロラが一歩下がる。
「うっ!!」
「なんやっちゅーねん!!!」
聞きなれない音は、おそらく大百足が身をよじっていた音だったのだろう。
まるで鎧を打ち鳴らしているような、硬い音があたりに響く。
それが合図だったかのように、大百足が大きな口を開けて威嚇してきた。
「来るっ!!」
ジーニがすかさず杖を構えて詠唱を始めた。
百足の恐ろしさは、蜂と同じように毒があること。そして、何より大きさによるタフさである。
全体攻撃である【薙ぎ倒し】と【火炎の壁】をしようとしているギルやジーニを横目に、エディンはひたすら、大百足の頭部が、長大な体から現れる隙を狙っていた。
彼が行なおうとしているのは、紅き鷹旅団掃討戦の前に習い覚えた【暗殺の一撃】である。対人であれば、この技が決まれば生きていられる一般人はいない。だが・・・・・・。
(このアホの様にでかい虫に効果があるか・・・やるなら、狙うのは頭だ。他は、俺の細剣じゃさっぱり刺さらない。)
大百足の尻尾が、【薙ぎ倒し】のように”金狼の牙”を襲う中、エディンの体は軽くその攻撃を飛び越え、百足の頭の上にあった。
「こいつを喰らえっ!」
「ギギギャアアアアアア!!」
【暗殺の一撃】は、柔らかい大百足の頭に大ダメージを与えたものの、エディンが危惧したとおり致死にまでは至らなかった。

しかし、尻尾で叩きつけられた床から起き上がったギルが、お返しの【薙ぎ倒し】で敵の体力を奪っていく。
フラフラになっている百足の弱点を、エディンの働きで理解したアレクは、ギルが斧を振り回した背後からタイミングよく飛び込み、一撃を加えた。
「やった・・・のか?」
「・・・みたいやな」
長大な赤い体をそこに横たえ、大百足は息絶えていた。
肩で息をするアレクの背中を、ポンとジグが叩いて労わった。
大百足のいた部屋には上りの階段があり、その先は扉があった。
開けると、なんとそこは石像のあった区画を乗り越えた先に続いていた。
「ここ・・・さっきの場所ですね・・・」
「繋がってたんだね!すごい仕組みだなあ」
遺跡の大体のマッピングしていたミナスが、驚いたように声をあげる。
目的の花は手に入れたのだから、もうここに用事はあるまい。一行は、出口に足を向けた。
久々の外に息をつくジグの横で、リィナがエディンから受け取った花を胸に抱きながら、潤んだ目で一行を見渡した。
「みなさん・・・ほんとに・・・本当にありがとうございました」
「お姉さん、もう行っちゃうの?」
「ええ。今日はもう、このまま帰ります。早く弟の元気な顔が見たいもの」
ミナスの寂しそうな顔に、残念そうに頷きつつも、リィナの顔は晴れ晴れと輝いていた。宿に着いたばかりの頃の、青褪めた様子とは一変している。
村まで送ろうとした”金狼の牙”だったが、リィナが向かう場所を聞いたジグが、
「あっちの方に帰んのやな。ほな、俺が送ってったるわ」
と言い出した。
「送り狼になるなよー?」
「だ、誰がやねん!」
ジグがギルにからかわれながらも、リィナが頷いたこともあり、一行はここで彼ら二人と別れることにした。
少ないけど、と言って差し出してきたリィナの報酬を笑顔で受け取る。

「それじゃ・・・皆さん・・・ありがとうございました。さようなら」
「弟さん・・・早くよくなるといいな」
”金狼の牙”は二人の背中が見えなくなるまで手を振って見送った。
「振り返らずに行っちまったな・・・」
「ああ。でも、弟が回復したら宿に礼に来る、と言ってたろう?」
「早くその日が来ればいいわね!」
ひとつの依頼をこなして、放心したようなギルの肩をアレクが叩く。
その横を、鼻歌でも歌いそうな表情で、ジーニが駆け抜けて言った。
※収入500sp※
--------------------------------------------------------
■後書きまたは言い訳
12回目のお仕事は、GroupAskさんの公式シナリオ・遺跡に咲く花です。
初めてプレイした時は、少しリィナ達のキャラ絵に違和感がありましたが、それを忘れさせてくれるようなリドルとラスボスの攻略に、すっかり魅せられたものです。
健気なリィナと闊達なジグのコンビ(?)の会話は、同行者として楽しませてもらいましたが・・・ジグの関西弁って、どこで身に着けたんだろう・・・?
当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。
なんとなれば、まず最初に妖しい蜂どもは、攻撃の要であるギルとスネグーロチカに守られていたミナスを麻痺させたのである。
続けて、【火炎の壁】で一掃しようとしていたジーニまでもが蜂に刺され、一行の頭に危険信号が灯る。
だが、幸い、この蜂の毒は持続力が弱いものだったようで、【血清の法】を施されたミナスを含め、すぐに全員が戦線に復帰した。

体勢を立て直した”金狼の牙”は、すぐさま反撃に移り、蜂を倒した。
戦いが終わり全員がその場に腰を下ろしたが、エディンだけが、「この辺りから蜂が出たような・・・」と水槽の部屋を調べ直している。
その合間にアウロラが【癒身の法】を唱えて、全員の体力を回復させた。
「隠し扉だ!!」
エディンの興奮した囁きの後、また壁の一部がせりあがり、扉がもうひとつ出現する。
その部屋の向こうは、あいにくと何もないのだったが、鍵を内側から自由に開閉できることができたので、しばらく一行は休憩を取ることにした。
気を取り直して水槽の部屋からさらに先へと行くと、突き当たりの向こうで聞きなれない音が響いている。
「な、なんや?今の音は・・・」
「気をつけたほうがよさそうだ・・・もう一戦あるかもな。おい、リーダー」
「そうだな。リィナさんは、念のため扉の影に隠れててくれ。おい、みんな。さっき休憩したばっかりだから、大丈夫だよな?」
全員が彼の意を汲んで頷き、また戦闘態勢を整えた。
扉を潜ると、そこに待ち構えていたのは・・・。
「こ・・・こいつは・・・」
「きゃぁ!!」
ジグとリィナの反応をあざ笑うかのように、その通路に横たわっていたのは赤い大百足だった。
そのおぞましさに、アウロラが一歩下がる。
「うっ!!」
「なんやっちゅーねん!!!」
聞きなれない音は、おそらく大百足が身をよじっていた音だったのだろう。
まるで鎧を打ち鳴らしているような、硬い音があたりに響く。
それが合図だったかのように、大百足が大きな口を開けて威嚇してきた。
「来るっ!!」
ジーニがすかさず杖を構えて詠唱を始めた。
百足の恐ろしさは、蜂と同じように毒があること。そして、何より大きさによるタフさである。
全体攻撃である【薙ぎ倒し】と【火炎の壁】をしようとしているギルやジーニを横目に、エディンはひたすら、大百足の頭部が、長大な体から現れる隙を狙っていた。
彼が行なおうとしているのは、紅き鷹旅団掃討戦の前に習い覚えた【暗殺の一撃】である。対人であれば、この技が決まれば生きていられる一般人はいない。だが・・・・・・。
(このアホの様にでかい虫に効果があるか・・・やるなら、狙うのは頭だ。他は、俺の細剣じゃさっぱり刺さらない。)
大百足の尻尾が、【薙ぎ倒し】のように”金狼の牙”を襲う中、エディンの体は軽くその攻撃を飛び越え、百足の頭の上にあった。
「こいつを喰らえっ!」
「ギギギャアアアアアア!!」
【暗殺の一撃】は、柔らかい大百足の頭に大ダメージを与えたものの、エディンが危惧したとおり致死にまでは至らなかった。

しかし、尻尾で叩きつけられた床から起き上がったギルが、お返しの【薙ぎ倒し】で敵の体力を奪っていく。
フラフラになっている百足の弱点を、エディンの働きで理解したアレクは、ギルが斧を振り回した背後からタイミングよく飛び込み、一撃を加えた。
「やった・・・のか?」
「・・・みたいやな」
長大な赤い体をそこに横たえ、大百足は息絶えていた。
肩で息をするアレクの背中を、ポンとジグが叩いて労わった。
大百足のいた部屋には上りの階段があり、その先は扉があった。
開けると、なんとそこは石像のあった区画を乗り越えた先に続いていた。
「ここ・・・さっきの場所ですね・・・」
「繋がってたんだね!すごい仕組みだなあ」
遺跡の大体のマッピングしていたミナスが、驚いたように声をあげる。
目的の花は手に入れたのだから、もうここに用事はあるまい。一行は、出口に足を向けた。
久々の外に息をつくジグの横で、リィナがエディンから受け取った花を胸に抱きながら、潤んだ目で一行を見渡した。
「みなさん・・・ほんとに・・・本当にありがとうございました」
「お姉さん、もう行っちゃうの?」
「ええ。今日はもう、このまま帰ります。早く弟の元気な顔が見たいもの」
ミナスの寂しそうな顔に、残念そうに頷きつつも、リィナの顔は晴れ晴れと輝いていた。宿に着いたばかりの頃の、青褪めた様子とは一変している。
村まで送ろうとした”金狼の牙”だったが、リィナが向かう場所を聞いたジグが、
「あっちの方に帰んのやな。ほな、俺が送ってったるわ」
と言い出した。
「送り狼になるなよー?」
「だ、誰がやねん!」
ジグがギルにからかわれながらも、リィナが頷いたこともあり、一行はここで彼ら二人と別れることにした。
少ないけど、と言って差し出してきたリィナの報酬を笑顔で受け取る。

「それじゃ・・・皆さん・・・ありがとうございました。さようなら」
「弟さん・・・早くよくなるといいな」
”金狼の牙”は二人の背中が見えなくなるまで手を振って見送った。
「振り返らずに行っちまったな・・・」
「ああ。でも、弟が回復したら宿に礼に来る、と言ってたろう?」
「早くその日が来ればいいわね!」
ひとつの依頼をこなして、放心したようなギルの肩をアレクが叩く。
その横を、鼻歌でも歌いそうな表情で、ジーニが駆け抜けて言った。
※収入500sp※
--------------------------------------------------------
■後書きまたは言い訳
12回目のお仕事は、GroupAskさんの公式シナリオ・遺跡に咲く花です。
初めてプレイした時は、少しリィナ達のキャラ絵に違和感がありましたが、それを忘れさせてくれるようなリドルとラスボスの攻略に、すっかり魅せられたものです。
健気なリィナと闊達なジグのコンビ(?)の会話は、同行者として楽しませてもらいましたが・・・ジグの関西弁って、どこで身に着けたんだろう・・・?
当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。