宿の地下の怪その4

 ”開かずの間”と伝えられた部屋は、泥濘のような闇と静寂に覆われていた。

「アンジェ!どこにいるのよ」

 シシリーは一同の先頭に立って、十数年来の付き合いの子の姿を求めた。
 仲の良い相手のこと、こうやって呼べばどんな状態でも返事だけは返すはずなのだが、一向に子どもらしいあどけない声が出てこない。
 その代わり、ごとりと何かが身じろぎした音がする。

「アンジェ?」

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宿の地下の怪その3

 浮かんでいたゲートが跡形もなく消滅し、床に転がっていた荷物袋を無事に回収し終えたシシリーたちは、ランプさんに照らしてもらいつつ毛生え薬探しを再開した。
 だが、一向に見つかる気配が無い。

「ここはハズレだな……」

 高いところを覗き込んでいたロンドが、首を回して結論を出した。
 丁寧に箱を開けたり閉めたりして捜していたウィルバーは、木箱の一つにどっかりと腰をおろして、それなりに長い脚を組む。
 そうして、おもむろに口を開いた。

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宿の地下の怪その2

「やれやれ、結局ネズミ退治をすることになっちまった」

 捜索の済んだ部屋の中を見渡して、テーゼンが愚痴った。
 あれほど翼を齧られつつもネズミが出てこないよう頑張って、やっと状況を打破できそうな仲間に攻撃魔法を使ってもらった(しかもギリギリで自分が避けた)というのに。
 愚痴の一つや二つ、出ようというものである。
 しかも、ネズミを一掃した後で毛生え薬の瓶を捜してみたのだが、やはりここにもないようである。

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宿の地下の怪その1

 その日、漁師町のシーサイドベッドから戻った旗を掲げる爪のリーダー、シシリーが一番遅くに起きたのはただの偶然だった。
 同室のアンジェとテアはとっくに起きた後のようで、ベッドの上の寝具は綺麗に畳まれている。
 いつにない遅れに多少の気恥ずかしさを感じながら、シシリーもいつもの通りに寝台を整え、顔を備え付けの洗面道具で洗った。
 塩で歯を磨きながら、外の天気を窓から確認する。
 晴天とも曇天とも言いかねる、微妙な天気だ――今日はあまり外出したくないな、とシシリーは思った。

宿の地下

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